幼稚園や学校行事で我が子だけをどアップで撮影したいと思ったことはありませんか? しかし、超望遠ズームレンズは高いと尻込みしている方も多いでしょう。ですが、マイクロフォーサーズなら最安15万円以下で800mm相当の超望遠ズームレンズも入手可能。その実際を紹介します。
執筆者のプロフィール
齋藤千歳(さいとう・ちとせ)
元月刊カメラ誌編集者。新しいレンズやカメラをみると、解像力やぼけディスク、周辺光量といったチャートを撮影したくなる性癖があり、それらをまとめたAmazon Kindle電子書籍「レンズデータベース」などを出版中。まとめたデータを元にしたレンズやカメラのレビューも多い。使ったもの、買ったものをレビューしたくなるクセもあり、カメラアクセサリー、車中泊・キャンピングカーグッズなどの記事も執筆。現在はキャンピングカーを「方丈号」と名付け、約9平方メートルの仕事部屋として、車内で撮影や執筆・レビューなどを行っている。
マイクロフォーサーズって一体何?
ざっくりいうなら撮像素子の小さなレンズ交換式ミラーレス一眼カメラの共通規格
デジタルカメラに興味を持ったことのある方なら35mm判フルサイズという言葉を聞いたことがあるのではないでしょうか? これは撮像素子(画像をとらえるためのセンサー)のサイズが35mm判フィルムと同じ約36×24mmと大型のセンサーを搭載したカメラを指しています。ちなみにかなり大ざっぱに言うなら撮像素子サイズが大きなカメラほど画質性能的に有利で価格が高くなります。
そして、35mm判フルサイズと同じように撮像素子サイズを表す言葉としてAPS-Cサイズがあります。こちらはメーカーによって多少サイズが違いますが、だいたい23.6×15.8mm。35mm判フルサイズの約半分の面積をもつセンサーになります。
そして、今回おすすめしているマイクロフォーサーズは約17.3×13mm。35mm判フルサイズの1/4の面積をもつセンサーを採用したカメラで、現在はオリンパスとパナソニックが開発したマウントの共通規格であるマイクロフォーサーズ(micro 4/3)という規格に適合したカメラが一般的です。
一般的なコンパクトカメラやスマートフォンは、これらよりもかなり小さい1/2.3型(6.2×4.6mm)や1/3.2型(4.5×3.2mm)といった撮像素子が採用されています。
撮像素子が小さいと望遠撮影に有利なのが重要なポイント
撮像素子のサイズが大きいほどデジタルカメラの画質的に優位だと説明しておいて、なぜ一般的なレンズ交換式ミラーレス一眼カメラ規格のなかでも撮像素子サイズが小さいマイクロフォーサーズをおすすめするのか? 理由は簡単。技術の進歩により一般的なユーザーが要望する画質を最新のマイクロフォーサーズ機が十分に超えていると考えているからです。
細かく比較をすれば、35mm判フルサイズ機の方が画質はキレイですし、ノイズも少なくなります。ですから、作品撮影などでは当然筆者も35mm判フルサイズ機を使用しますが、その時にはレンズの作品撮影に対応する高価で大型のものを使います。
また、撮像素子サイズが小さいとカメラ本体やレンズが小さくできるのも大きなメリットです。実際に店頭などで比べてもらうとわかりますがマイクロフォーサーズ用レンズはかなりの超望遠でも35mm判フルサイズ用に比べると小さく、軽く、そして安いのです。
そして、我が子を撮るという点に絞るならマイクロフォーサーズ機は望遠に強いという特徴があります。35mm判フルサイズ用のレンズを撮像素子サイズが約半分のAPS-C機に付けると焦点距離にして約1.5倍相当の望遠撮影が可能になります。これが撮像素子サイズが1/4のマイクロフォーサーズ機だと約2倍に。35mm判フルサイズ用の200mmはマイクロフォーサーズ機に装着すると400mm相当になるのです。幼稚園や学校行事で我が子を撮影するシーンはほとんどが望遠レンズでの撮影になり、ある意味望遠に強いほど優位といえます。
さらに撮像素子サイズが小さいマイクロフォーサーズではレンズの中で鮮明に像を結像しなくてはいけないイメージサークルというエリアも小さくなるので、小さくて軽くて安価な超望遠レンズが設計しやすいというメリットがあります。
結果、今回紹介するOM SYSTEMの「M.ZUIKO DIGITAL ED 100-400mm F5.0-6.3 IS」のように200〜800mm相当をカバーする超望遠ズームで、最安値では新品で150,000円以下というレンズが現れてくるのです。
「M.ZUIKO DIGITAL ED 100-400mm F5.0-6.3 IS」で運動会を撮影する
我が子だけをどアップでとらえたい
オートフォーカス(AF)や手ぶれ補正機能を搭載した一般的なズームレンズでは望遠端は600mmまでが一般的で「M.ZUIKO DIGITAL ED 100-400mm F5.0-6.3 IS」のように800mm相当というレンズはかなり少数派です。35mm判フルサイズ向けの800mm単焦点の超望遠レンズは平気で100万円越え、重さも3kgを超えるものが普通。三脚座を除くレンズ重量が約1,120g、大きさが約⌀86.4×205.7mmしかない200〜800mm相当に望遠ズームレンズがいかに規格外かがよくわかります。しかも価格は最安値なら15万円以下。
筆者は同じOM SYSTEMのプロ向けハイエンド機「OM SYSTEM OM-1」の組み合わせで息子の運動会を撮影したのですが、結果は掲載した写真のとおりです。「OM SYSTEM OM-1」はプロ向けのハイエンド機ですが最安値なら20万円程度で入手できます。
上に掲載した写真は、レンズもボディも軽く、手ぶれ補正が強力なので手持ちで連写撮影したため、撮影後にわずかにトリミングして画角を整えています。オリジナル写真は下に掲載しました。実は望遠端の800mm相当で撮影しようと思ったのですが、アップになりすぎるため、ちょっとひいた737mm相当で撮影しています。ほかの子どもたちも走っているのですが、息子だけをどアップでしっかりとらえることができました。
極論するなら、自分で撮るのは我が子のどアップだけでいい
冷たい言い方に聞こえてしまうかもしれませんが、筆者は自分が撮影する息子の運動会の写真は息子だけが写っていればいいと思っています。理由は2つ。せっかくなら、撮影した息子の運動会の写真をスマートフォンやパソコンの壁紙にしたり、プリントアウトして飾ったりしたいと考えても、ほかのお子さんがいっしょに写っているといまどきいろいろと問題が発生することもあるので、明確にうちの子をだけをアップで撮影したいから。そして、もうひとつは、うちの子のアップだけでなくていいのなら、保育園などが手配してくれている写真屋さんの写真でいいからと考えているのです。
そのため、子どもの運動会を撮影するなら超望遠ズームレンズ一択と考えています。しかも今回の使用したマイクロフォーサーズのOM SYSTEM「M.ZUIKO DIGITAL ED 100-400mm F5.0-6.3 IS」+「OM SYSTEM OM-1」なら200〜800mm相当の超望遠撮影を全体重量2kg以下で実現。被写体認識AFや強力な5軸手ぶれ補正なども利用できるので三脚なしで十分に撮影できます。おかげで筆者は息子をスタート地点で撮影した後、カメラを持ったまま走ってゴール地点に先回りして2度撮影することができました。多くの方におすすめする重要なポイントは価格、OM SYSTEMの「M.ZUIKO DIGITAL ED 100-400mm F5.0-6.3 IS」+「OM SYSTEM OM-1」ならなにかと値上げの続く昨今でありながら市場最低価格なら35万円程度でハイエンドプロ機+200〜800mmの超望遠撮影環境が手に入ります。
子どもが生まれていいカメラを買おうと思ったら、小さくて軽くて安価、しかも望遠撮影に強いマイクロフォーサーズのレンズ交換式ミラーレス一眼カメラも選択肢に入れることをおすすめします。