お気に入りのブランド服や、一点限りのニット。いまや毛玉取り器は100円ショップでも手に入る時代だが、それで本当に服に良いのだろうか。大切な服であればあるほど、気になってしまう。そこで今回は開発者の狙いを聞くとともに、12年間にわたって 『毛玉とるとる』が定番な理由に迫っていく。※読者プレゼント付き
毛玉はなぜできる? ほうっておくとなぜ服に穴が空いてしまうのか
ウールのセーターを筆頭に、着れば着るほど増えていく毛玉。いまや格安で手に入るようになった毛玉取り器で退治すればいいと思うのだが、どうにも引っかかることがある。
毛玉をとり続けたら、セーターはどんどん薄くなって着ていても寒くなってしまうか、しまいには生地に穴が空くか、なくなってしまうのではないか。
そうなるとむしろ我慢して毛玉取り器を使わない方が長持ちするのではないか。いや、でもそれだとみっともないし。
それではまず、毛玉がどうしてできるかの基本を学びたい。
毛玉は摩擦することで、糸がほつれて、それが絡まって生まれる。その飛び出た毛玉をカットするのが毛玉取り器の役割だ。
毛玉取り器の上部に、円形でたくさんの穴が空いているのが、外刃。その穴から入ってきた毛玉を、回転する内刃が合わさることによってスパッと切れる。電動シェーバーとまったく同じ原理である。
今回は12年にわたってトップクラスのシェアをキープし続けているマクセルイズミ「毛玉とるとる」シリーズのフラッグシップモデル『毛玉とるとる KC-NW722-K』(充電/交流式・幅66×奥行95×高さ185mm/約216g・市場想定売価 税込4,850円・発売中)のサンプルをメーカーに借りることができたので、実際に使用しながら人気の理由を実感してみたい。
『毛玉とるとる KC-NW722-K』の使用感/安定感のある切れ味でていねいに毛玉攻略ができる
『毛玉とるとる KC-NW722-K』は、よくある乾電池タイプではなく、充電してコードレスで使うことも、充電/交流式がゆえに充電しながら使用することもできるタイプ。フル充電は約8時間で、使用可能時間は約38分。52mmの大型刃はなかなかのインパクトで、穴の大きさもさまざまだ。
刃の部分には「ふわふわガード」が装着されており、服の質感に合わせて、毛足の長さを3段階に調整できる。「careモード」は、おしゃれ着などの繊細な衣類や、出かけようとして玄関先で毛玉に気づいたときでも、着たままで使用できるモード。パワフルに攻め込みたいときには「powerモード」がおすすめだ。
手に持ってみるとそこそこの重量感があって、安定した毛玉取りが可能だ。最初はcareモードで使ったのだが、たしかに生地の風合いを損なわない的確な毛玉とりができたと思う。ただ思っていたよりも切れ味がかなりいいので、作業が進む、進む。
さらに、powerモードで豪快に切れ味を確かめたいので、毛玉だらけの靴下に使用してみたら、これが爽快な使い心地。ついつい夢中になってしまった。ただこうした感覚はいままであまり味わったことがないような…。
毛玉取り器は刃物。切れ味が何よりも大切
いつもはここで感想を述べるのだが、今回はその前に開発者の狙いを聞きたくなった。アーティストのニューアルバムや新作映画など、たいていのモノにはコンセプトがあるもの。モノを使うにあたって、開発者の狙い(コンセプト)を聞くことでより良いレビューができるのではないかと考えたのだ。
昨今はSNSの普及で消費者の声は拡大するばかり。その一方で作り手、とくに開発者の意見を知る機会は少ない。そうなると作り手の狙った使い方をしないまま、バッドな評価に沈んでしまう製品も少なくない。
「特選街web」として、それでは製品も浮かばれないだろうと感じてしまうこともあるので、狙いを聞いた上で判断してみたいと思ったのだ。
答えてくれたのは、マクセルイズミ株式会社 家電事業本部企画課 召田寛隆(めすだ・ひろたか)氏だ。1997年に入社しさまざまな現場を経て、技術部に異動し、ドライヤー、ヘアアイロン等ヘアケア製品の設計に携わり、15年から商品企画課に配属され、最近5年間替刃不要で話題を呼んだ6枚刃シェーバー『everedge(エバーエッジ) IZUMI PREMIUM』の開発にも携わっている人物だ。
「毛玉取り器は、刃物製品です。切れ味こそが命だと考え、ひたすらに追求してきました。当社の源流となる泉精器製作所は1956年より電動シェーバー用の刃を作り続けてきた刃物メーカーです。その先人のノウハウを受け継ぎ、ブラッシュアップし続けてきた技術力が、『everedge』や『毛玉とるとる』の抜群の切れ味にもつながっているのです。
毛玉は放置しておくと大きくなり、生地を引っ張りつづけることで、最終的には服に穴が空いてしまいます。衣類を長持ちさせるためには、適切な毛玉取りが必要不可欠なのです。しかしカットする際に、刃の切れ味が悪いと、生地を引っ張ってしまい、やはり穴が空いてしまうのです。
生地をなるべく傷めずに、必要最低限の毛玉をカットする。そのためには何より切れ味の良い刃が必要なのです。食材をつぶさずに上手にカットするのに切れ味の良い包丁が必要なのと同じ理由です」
とはいえ包丁の刃とは違い、『毛玉とるとる』の刃はむき出しになっているわけではない。一体どのように切れ味を高めているのだろうか。
「外刃の穴から入ってきた繊維を、内刃で挟んだ瞬間にきれいにカットする。そのためには内刃と外刃の合わせを徹底的に追求する。それが『毛玉とるとる』の核心です」
その結果、女性ユーザーを中心に、「細かい毛玉が取れる」「穴が空かない」と強い支持を受け続けているのだと召田氏は強調する。
もちろんそうした刃の部分以外にも、静電気防止剤配合のダストボックスの大容量化や、近年のガジェットのスタンダードUSB Type-C充電を可能にした「KC-NR522」など、使い勝手の進化にも余念がないようだ。
“とるとるはクルクル”円を描くように力を入れずに使う。インタビュー時に聞いた使用法を改めて実践してみると、確かに心地よいカットノイズが軽快に響き渡る。引っかかりがなく切れるからこそ、生地を傷めない。大切な衣服にうかつな製品は選べないという気持ちが新たになった。
ポップなネーミングとは裏腹にそこにはたぐいまれな技術力が込められていることがわかって使うと、さらに毛玉取りが楽しくなってきた。
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