【レビュー】広角ズームはこれでいいと思うほど高性能『SIGMA 10-18mm F2.8 DC DN | Contemporary』は性能・サイズ・価格とすべてに満足なAPS-C向けレンズ

レビュー

カメラにハマると、必ず悩むのがレンズをどうそろえるか? その基本が広角ズーム、標準ズーム、望遠ズーム+αといえますが、今回筆者は『SIGMA 10-18mm F2.8 DC DN | Contemporary』を試し、広角ズームはこれが一軍と感じました。その理由を解説します。

広角ズームレンズの定番F2.8通し

レンズラインアップの基本となる大三元レンズ

『SIGMA 10-18mm F2.8 DC DN | Contemporary』を装着した『Sony α7R III』。ボディに対してレンズがかなり小さいのがわかるでしょう

 

レンズ交換ができるカメラを手に入れると多くの方が悩むのがどのようなレンズを購入するか、要は所有するレンズのラインアップをどうするかでしょう。これは大昔から多くのカメラファンを悩ます問題で、これを悩むこと自体が楽しいともいえるのですが……。

 

そして、そのレンズラインアップの基本のひとつといえるのが、大三元レンズ+αです。ざっくりいうと16-35mmF2.8、24-70mmF2.8、70-200mmF2.8といった広角、標準、望遠ズームのF2.8通しレンズ(ズームしても開放F値が2.8から変化しない明るいレンズ)に100mmF2.8マクロレンズや85mmF1.8といった明るいポートレート向け単焦点レンズをプラスしたレンズラインアップで、プロのカメラマンとして仕事するには最低限必要なレンズラインアップともいわれていました。

 

参考までにですが、広角、標準、望遠ズームレンズの3本をF4.0通しのレンズでそろえること、もしくはそのレンズを小三元と呼びます。

 

多くのプロカメラマンやハイアマチュアは、さまざまな撮影シーンに対応できるように広角は16mm前後、望遠は200mm前後までは常に対応できるレンズラインアップを用意し、被写体や撮影シーンや目的がはっきりしている場合は、それに対応するレンズをプラスするスタイルが基本というわけです。そのためレンズラインアップの中核となる広角、標準、望遠ズームは信頼性が高く、高性能なレンズを選ぶのが基本といえるわけです。

APS-C向けで15〜27mm相当を実現する『SIGMA 10-18mm F2.8 DC DN | Contemporary』

『SIGMA 28-70mm F2.8 DG DN | Contemporary』(写真:左)と並べたところ。『SIGMA 10-18mm F2.8 DC DN | Contemporary』はとても小さい

 

大三元レンズや小三元レンズというニックネームが付くほど、広角、標準、望遠ズームレンズは多くのカメラユーザーがこだわりを持つレンズカテゴリーといえますが、今回筆者がテストした『SIGMA 10-18mm F2.8 DC DN | Contemporary』はAPS-C向けのズームレンズであり、35mm判換算で15〜27mm相当の画角をカバーするF2.8通しレンズ。大三元の広角ズームに相当するポジショニングになるのです。

 

しかし、撮像素子サイズの小さいAPS-C向けレンズということもあるのでしょうが、重さはわずかにソニー Eマウント用で約255g、大きさは直径約72.2mm、長さ約64.0mm。ソニー Eマウント用のほかにLマウント用、富士フイルム Xマウント用が用意されていますが、もっとも軽いXマウント用は重さは約250gしかありません。このサイズと重さは2023年10月現在、シグマ調べでAF対応、APS-Cミラーレスカメラ用、F2.8通しのズームレンズとしては世界最小最軽量です。

 

35mm判フルサイズ向けの『SIGMA 16-28mm F2.8 DG DN | Contemporary』のソニー Eマウント用が約450g、直径約77.2mm、長さ約102.6mmであることを考えると広角端が約1mm広い『SIGMA 10-18mm F2.8 DC DN | Contemporary』がいかにコンパクトなレンズであるかがよくわかるでしょう。

 

しかも、15〜27mmをカバーするF2.8通しレンズでありながら実勢価格は83,000円前後とかなりコストパフォーマンスも高い。さらに最短撮影距離が11.6cmと短く、最大撮影倍率は1:4と近接撮影にも強い。この『SIGMA 10-18mm F2.8 DC DN | Contemporary』の性能を各種チャートを使って、具体的に分析した結果をみなさんにお伝えしたいと思います。撮像素子の小さなAPS-Cは広角で不利という常識を覆すような結果が得られたので、細部までご覧いただけると幸いです。

 

実写チャートが裏付ける『SIGMA 10-18mm F2.8 DC DN | Contemporary』の高性能

広角端10mmでも絞り開放F2.8から周辺部までしっかりと解像

広角端10mmの絞り開放F2.8からチャートの周辺部分でも基準となるチャートの1.2の大部分を解像する『SIGMA 10-18mm F2.8 DC DN | Contemporary』

 

いまでこそ、筆者は、この記事のようなレンズレビューや先日のCP+のようなイベントではカールツァイスブースのレンズ説明のお手伝いなどをしていますが、十数年前までは感覚的過ぎるレンズの評価の表現が経験不足から理解できないことが多々ありました。そこで筆者のレンズの師匠である小山壯二氏にお願いしてレンズの性能を分析するチャートをいろいろと作っていただき、それを撮影して自分でもわかるように実写チャートでレンズの分析をはじめました。

 

この各種チャートを本人の備忘録的な意味や多くの方と共有したいという意図で「レンズデータベース」や「レンズラボ」といった電子書籍をAmazon Kindleで出版しています。電子書籍自体はかなりマニアックなデータ集なので、このシリーズの『SIGMA 10-18mm F2.8 DC DN | Contemporary データベース』に掲載した実写チャートの一部を転載して、その性能を解説していきます。すべてのデータを確認されたい方は電子書籍もご覧いただけるとうれしいです。

 

すでに上に実写チャートを掲載したのですが、『SIGMA 10-18mm F2.8 DC DN | Contemporary』の解像力はかなり筆者の予想を上回るものになっています。筆者の経験からいうと実焦点距離が10mmクラスの超広角はズームはもちろん、単焦点レンズでも絞り開放では中心に比べ、周辺部の解像力が大きく落ち、周辺光量落ちの影響で周辺部のチャートのほうが数段暗く、さらには中央部では正方形の形を保っているチャートが周辺部では大きく変形しているのが一般的です。

 

しかし『SIGMA 10-18mm F2.8 DC DN | Contemporary』の広角端10mm解像力チャートの結果は、使用したカメラの有効画素数から基準となるチャートは1.2なのですが、絞り開放のF2.8から周辺部でもその大部分を解像、中央部と周辺部のチャートの明るさもさほど変わらず、チャートの形の変形もほぼないことから、周辺光量落ちや歪曲の影響も軽微であることが観察されます。かなり優秀な結果です。

望遠端18mmでの解像力チャートの撮影結果。27mm相当ですが、基準となる1.2のチャートを中央部はもちろん、周辺部でもしっかりと解像しています

広角端の10mmでの解像力も予想以上だったのですが、望遠端の18mmについても解像力は上に掲載したチャートのとおりです。絞り開放のF2.8から周辺のチャートまで基準となる1.2のチャートをほとんど完璧に解像。広角端よりも高い解像力を発揮しました。また、チャートをみてもわかるように周辺光量落ちや歪曲の影響も広角端よりも、さらに軽微です。素晴らしい結果といえるでしょう。

 

実写チャートまでは掲載できませんでしたが、広角端、望遠端とも絞るとさらに周辺光量落ちの影響が弱まり、コントラストが向上、F5.6〜F8.0あたりが解像力のピークを示す傾向です。開放から十分に使えますが、余裕のあるときはF5.6〜F8.0あたりまで絞るとよいでしょう。

 

逆に注意したいのは、絞り過ぎによる解像力の低下、回折や小絞りぼけの発生が意外と起きやすくF11くらいから解像力の低下がはじまるので特別な理由がない限りF11よりも絞るのはおすすめできません。覚えておくと便利でしょう。

マクロレンズ並みに寄れる近接撮影性能に驚く

『SIGMA 10-18mm F2.8 DC DN | Contemporary』の広角端最短撮影距離で撮影した実写チャート。切手やペン先がかなりのアップで描写されています。

『SIGMA 10-18mm F2.8 DC DN | Contemporary』の近接撮影性能はスペック表によると、広角端は最短撮影距離が11.6cmで最大撮影倍率は1:4、望遠端は最短撮影距離が19.1cmで最大撮影倍率は1:6.9となっています。レンズのスペック表を見慣れている方なら最短撮影距離が11.6cmで最大撮影倍率は0.25倍はかなり優秀と感じるでしょうが、実写の結果からいうと、マクロレンズに差し迫る性能であることがわかります。

 

実はAPS-C向けのレンズである『SIGMA 10-18mm F2.8 DC DN | Contemporary』の広角端を使って実際に最短撮影距離で撮影を行うと写る範囲は上に掲載したチャートのように96×64mmの範囲になります。35mm判のレンズだと0.25倍は144×96mmの範囲が写るはずなのですが、撮像素子が小さいため写る範囲が狭まり96×64mmの範囲、35mm判に換算するなら0.375倍相当のアップで写るのです。

 

一般的に撮影倍率が0.5倍を超えるとマクロレンズと呼ばれますが、『SIGMA 10-18mm F2.8 DC DN | Contemporary』の広角端では、それに差し迫る0.375倍相当の近接撮影が可能になっています。しかも『SIGMA 10-18mm F2.8 DC DN | Contemporary』は広角端でも周辺光量落ちや歪曲が少ないので実用性も十分です。この特徴を利用してダイナミックな広角マクロ的な撮影を楽しむのもおすすめです。

星景撮影にも活用できるほど非点収差が少ないのにびっくり

実はレンズにとって点を点として、きっちり描写するのは難しいことです。それを観察するために星空を撮影しています

多くの方にとって「なんだ、それは?」となると思いますが、実はレンズにとって画面内の小さな点を点として描写するのはかなり難しいことです。サジタルコマフレアや非点収差などが発生し、実は夜空の星などは拡大すると点が点として描写されず変形しているのが一般的なのです。

 

『SIGMA 10-18mm F2.8 DC DN | Contemporary』は解像力などのチャートでのテスト結果が良好だったので、星景写真を撮影するには開放F値が2.8でズームレンズとやや不利な条件になるのですが、筆者は星空での非点収差などが発生を観察してみました。広角端の10mmを使用して上に掲載した星景写真を絞り開放F2.8からF3.2、F4.0、F5.6のそれぞれでシャッター速度は15秒、ISO感度はぞれぞれ3200、4000、6400、12800として撮影。それぞれの条件で撮影した画像の左上の端「A」の部分を拡大して本来点として描写される星がどの程度変形しているかを観察しています。

 

非点収差やサジタルコマフレアなどで変形すると、多くの場合、点から鳥が羽を広げたような独特の変形が観察されるのですが、『SIGMA 10-18mm F2.8 DC DN | Contemporary』の広角端10mmではほとんど観察されませんでした。本来点で描写されるはずの星が拡大で線になっているのは、シャッター速度が15秒と遅いので星の動きが描写されるためです。広角端10mmにおいて『SIGMA 10-18mm F2.8 DC DN | Contemporary』は非点収差の発生も少なく優秀です。ぜひ星景写真の撮影などにもチャレンジしてみてください。

 

掲載はできなかったのですが、望遠端の18mmでは広角端に比べて非点収差が発生しやすい結果だったので、星空や星景写真を撮影するなら広角端のほうがおすすめです。この点は覚えておくとよいでしょう。

シャッター速度が15秒と遅いので星が動き、点が線になってますが、羽根を広げたような変形などはほとんど観察されません。とても優秀です

 

広角ズームのレギュラーとしたい性能

レンズラインアップとしてどう組み合わせるかも楽しい

超広角ズームレンズといえば、広大な風景というイメージですが、軽量コンパクトで明るく、近接にも強いので自宅で子どもを撮影するのも楽しいのです

解像力、近接撮影、非点収差のチャートのほかに、軸上色収差やぼけディスク、周辺光量落ちのチャートも撮影したのですが、『SIGMA 10-18mm F2.8 DC DN | Contemporary』で気になったポイントは、広角端の10mmでぼけに色つきやザワつきが見られる傾向くらいです。10mmの広角でぼけの美しさを追求するシーンはあまりないので、筆者は大きな問題とは感じていません。

 

それどころか、一般的な16mmからではなく15mm相当から27mm相当までをカバーする超広角のズームでF2.8通し、実勢価格は8万円台、しかも重さは約250g程度といいことづくしの1本といえます。普段使いのレギュラー超広角ズームとしては文句なしの1本です。

 

そうなると『SIGMA 10-18mm F2.8 DC DN | Contemporary』をほかのどんなレンズと組み合わせて、自分のレンズラインアップを組み上げるかという楽しい問題が発生するのですが、素直に考えるなら、同じAPS-C向けのコンパクトで軽量なF2.8標準ズーム『SIGMA 18-50mm F2.8 DC DN | Contemporary』(約290g)と組み合わせて、軽量コンパクトな広角ズーム+標準ズームで15mm相当〜75mm相当までをカバーする案もありでしょう。

 

しかし、普段35mm判フルサイズ機を使っている筆者は『SIGMA 10-18mm F2.8 DC DN | Contemporary』に『SIGMA 24-70mm F2.8 DG DN | Art』(約835g)『SIGMA 28-70mm F2.8 DG DN | Contemporary』(約470g)を組み合わせて、クロップを併用して広角端15mm相当〜105mm相当までをカバーするレンズラインアップも魅力的だと感じています。これだとお店取材的な仕事はレンズ2本で十分に可能です。

 

高画質で軽量コンパクト、しかも明るいF2.8通しで広角端は超広角の15mm開始、実勢価格が8万円台とコストパフォーマンスも高い『SIGMA 10-18mm F2.8 DC DN | Contemporary』は明るい超広角をまだ持っていない方にも、すでに持っている方にとっても自分のレンズラインアップと組み合わせを見直してもよいほどよくできたレンズに仕上がっています。超広角ズームレンズで悩むならAPS-C向けではありますが『SIGMA 10-18mm F2.8 DC DN | Contemporary』は外せないレンズといえるでしょう。常用レンズとして非常におすすめの1本です。

 

<公式サイト>
SIGMA

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齋藤千歳(フォトグラファーライター)

元月刊カメラ誌編集者。新しいレンズやカメラをみると、解像力やぼけディスク、周辺光量といったチャートを撮影したくなる性癖があり、それらをまとめたAmazon Kindle電子書籍「レンズデータベース」などを出版中。まとめたデータを元にしたレンズやカメラのレビューも多い。使ったもの、買ったものをレビューしたくなるクセもあり、カメラアクセサリー、車中泊・キャンピングカーグッズなどの記事も執筆。現在はキャンピングカーを「方丈号」と名付け、約9㎡の仕事部屋として、車内で撮影や執筆・レビューなどを行っている。北海道の美しい風景や魅力を発信できればと活動中。

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