「ラジカセ」はあっても「ラジMD」はない? 読者の”気になる疑問”にプロが回答!

知識

レコードとCD、なぜトレース方向が逆なの?

Q
アナログレコードは回転しながら外側から内側へと針が移動しますが、CDやDVDは再生時に内側から外側に向かってピックアップ部が移動すると聞きます。その違いには、何か理由があるのでしょうか? (E・Kさん 山口県 60歳)

A
いい質問ですね! これは、AV評論家の林正儀さんに聞きましょう。


トレース方向が逆になった理由ですね。その前に基本を押さえましょう。どちらも渦巻き状に音声を記録するディスクです。この場合、外側か内側のどちらかをスタートにしなければなりませんね。まず、アナログレコードに針を落とす場合を考えましょう。誰がやっても、外側をスタートにしたほうが、失敗なくできるはずですね。わざわざやりにくい内側にする必要はありません。

ただ最近では、音質へのこだわりから逆カッティングされたレコードも発売されています(TACETレーベルの「交響曲第5番」など)。レコードは外側のほうが音質がよくなるので、最後に音楽的なクライマックスがある楽曲のために、わざわざ渦巻きを逆にしたのです。それでもOKというアナログレコードは、規格がおおらかですね。

もう一つの理由は自動再生です。盤の大きさを検出して針を落とすわけですが、レコードには30センチのLP盤と17センチのEP盤があるので、外側スタートが便利です。昔のオートチェンジャーも基本的に同じ仕組みですね。

──なるほど。では、CDはなぜ内側から再生されるんでしょうか?


CDは、外側と内側とで音質が一定になる(内から外へとスローダウンする)仕組みなので、音質面の縛りはありません。

デジタル記録のCDがなぜ内側からにしているかというと、TOCというディスク情報(演奏時間や曲数の情報)が、スタートの合図として最内周に記録されていることが一つと、アナログ同様、やはりディスクのサイズに関係した事情があります。CDの規格には、12センチCDのほかに8センチ盤もありますよね。内側にTOCがあれば、どちらのサイズであっても、そこを最初に読めば済むということで、起点を内側に決めたようです。

──レコードはアナログ的な理由だし、CDはデジタル的な理由なんですね! よくわかりました!

ラジカセは復活したが、ラジMDは無理?

Q
ラジカセは復活したのに、なぜ「ラジMD」は復活しないのでしょう? MD(ミニディスク)の特性からいって、無理なのでしょうか? (T・Aさん 北海道 73歳)

A
この質問も林さんに聞きましょう。確かに、ラジオ+MDの新製品は見かけませんね。


ラジMDもMDそのものも、市場から消えてしまったままの状態ですね。実は現状でも、ソニーはMDのブランクディスクを作り続けていますし、ティアックだけはデッキなどを作り続けているのですが、復活というにはほど遠い状況です。

音声がATRACという規格で圧縮されていて、CDより音質が低いことや、また、ネットで手軽に好きなだけ音楽が聴ける今、一枚に15〜16曲しか録音できないことなど、わかりやすい理由はもちろんあるのですが、さらにもっと深いわけがあるのです。

実は、 カセットテープと違って、MDは海外でほとんど普及しませんでした。つまり、ほぼ『日本国内規格』なので、いったん市場を畳んでしまうと、もう一度立て直すのは至難の業なのです。

──作っても、日本でしか売れないということですか?


そうです。それと、最もネックになるのは、ハード機器の製造コストでしょう。たとえラジMDであっても、たくさんのパーツからなるMDのメカや、また、ATRACの制御プログラムを書き込むICチップまで作り直すとなると、コストも手間も大変です。

手作業などの少量生産には不向きで、数万〜数十万台売れないとビジネスとして成り立たないでしょう。そこが、ローテクでアナログ技術を駆使したレコードプレーヤーやカセットデッキとの違いですね。アナログの機器ならば、部品や組み立てを再現すれば復活可能です。ベルトやモーターなど、たとえ少数・少量でも、りっぱに再生産できる要素がありますね。

1992年の発表当時は最新だったデジタル技術のATRACが、今では一般的でないフォーマットになってしまったこともあって、復活はまず無理でしょう。MDがパソコンに差し込めて、音楽データを取り込めたりすればいいのですが……。

──MDは物として残るので、エアチェックしたものをコレクションするのに向いていたと思われますが、大復活は難しそうですね。ありがとうございました。

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特選街web編集部

1979年に創刊された老舗商品情報誌「特選街」(マキノ出版)を起源とし、のちにウェブマガジン「特選街web」として生活に役立つ商品情報を発信。2023年6月よりブティック社が運営を引き継ぎ、同年7月に新編集部でリスタート。

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