「アレクサ」や「OKグーグル」の呼びかけに対応する音にこだわったオンキヨーのスマートスピーカー【キーパーソンに訊け!】

家電・AV

2017年後半から盛り上がりを見せているスマートスピーカー。クラウドとつながったAIアシスタントに話しかけるだけで操作できるのが特徴で、音楽の再生やニュースの読み上げ、検索エンジンによる調べ物などが行える。GoogleやAmazonなど、AIアシスタントを開発するネット企業が主導権を握る中、オーディオメーカーのオンキヨーもいち早く参入。製品開発の裏側や参入の背景にあった思いを訊いた。

SmartSpeaker P3(VC-PX30)
実売価格例:3万2184円
AmazonAlexa対応

SmartSpeaker G3(VC-GX30)
実売価格例:2万6870円
Googleアシスタント対応

<キーパーソンはこの人>
オンキヨー株式会社
AI/IoT事業推進室 室長
宮崎武雄さん

音楽の聴き方がスマートスピーカーによって大きく変わります!

オンキヨー株式会社
AI/IoT事業推進室 副室長 マーケティングマネージャー
八木真人さん

小さな筐体でいかに高音質を実現するか

今、AI(人工知能)を利用した「スマートスピーカー」に注目が集まっている。

日本では2017年後半に、各社からさまざまな製品が登場。AIアシスタントを開発する企業からは、Googleの「Google Home」、Amazonの「Amazon Echo」シリーズ、LINEの「Clova WAVE」が発売された。

一方、オーディオメーカー各社も、GoogleやAmazonのAIアシスタントに対応する製品をリリースしている。

オンキヨーが2017年11月に発売した「SmartSpeaker P3」(以下、P3)と「SmartSpeaker G3」(以下、G3)も、そのうちの一つだ。

「P3はAmazonのAlexa、G3はGoogleのGoogleアシスタントに対応しています。どちらの製品も、スマートスピーカーであっても音質にこだわるユーザーがターゲット。オーディオメーカーならではのサウンドには自信を持っています」

こう語るのは、両製品の企画を担当した同社AI/IoT事業推進室の宮崎武雄室長と八木真人副室長だ。

いい音のスピーカーを作ることにかけては、長い歴史とノウハウの蓄積を持つオンキヨーだが、今回取り組んだのは新しい分野であるスマートスピーカー。開発の過程では、苦心する点が多かったという。

その一つが、迫力あるサウンドと小型サイズの両立だ。

スマートスピーカーの設置場所は、リビングや寝室、キッチンなど、家庭内のあらゆる場所が想定される。そのため、なるべく小型であることが望ましい。

だが、筐体を小さくし過ぎると、サウンドの迫力が出ない。オーディオメーカーがそれをしてしまうわけにはいかないため、まずは音質を優先して開発。そのうえで、なるべく小型化する工夫を行ったのだという。

「P3は64ミリのフルレンジウーハーやデュアルパッシブラジエーターを搭載して、特に低音が豊かなサウンドに仕上げました。一方のG3は、80ミリウーハーやソフトドーム型ツイーターを搭載して、低音だけでなく、ボーカルや楽器音も引き立つサウンドになっています。小型化しながら高音質を実現するためには、スピーカーユニットの振幅量を高めたり、独自の信号処理技術を採用するなどの工夫も盛り込みました」(八木さん)

本体の前面には2.5インチ(64ミリ)のフルレンジウーハーを、背面にはパッシブラジエーターを装備(いずれも二つずつ)し、良質で広がりのある音質を実現。

従来スピーカーの1.5倍の振幅量、力強い駆動力のマグネットを持つのウーハーと、高品質のソフトドームツイーターで、低域から高域までバランスの取れたサウンドを鳴らす。

ユーザーの声をいかにうまく拾うかが重要

高音質と小型化の両立以外にも、クリアすべき課題があった。それは音の「入口」、つまりマイクの性能だ。

ユーザーが話しかけるだけで操作できることは、スマートスピーカーの大きな魅力だ。これは、本体に搭載されたマイクがユーザーの声をしっかりと拾うことが前提になっている。

これができていないと、呼びかけに反応しなかったり、話しかけに対する誤認識が起こったりして、結果、ユーザーのストレスにつながってしまうからだ。

ところが、スマートスピーカーにはマイクにとっての障害が多く存在する。

スピーカーが音を出していないときは問題ないのだが、音声や音楽の再生中に話しかける場合には、音声や音楽とユーザーの声を聴き分ける必要がある。また、オンキヨーのスピーカー設計は「箱を鳴らす」タイプの手法が多いが、この振動もマイクにとってはノイズとなってしまう。

マイク基板を天面のラバー部に直接固定。マイクに伝わるスピーカーからの内部振動を抑制し、フラットな特性を得ることで、ユーザーが声をかけたときの応答のよさを実現。

「迫力あるサウンドを鳴らしつつ、ユーザーの呼びかけにもちゃんと反応するように調整するのは、非常に大変な作業でした。マイクの搭載位置、マイク基板の設置のしかたや場所など、最後まで試行錯誤を繰り返しました」(八木さん)

筆者は今回、P3とG3の両方を試用してみたのだが、確かに大きめのボリュームで音楽を再生しているときでも、しっかりとこちらの声を認識する。これには驚きだった。

また、音質の素晴らしさにも感銘を受けた。スマートスピーカーの用途として、音楽をメインに考えている人であれば、この2モデルは有力な選択肢になるだろう。

P3の天面。再生/一時停止ボタンやボリューム調節ボタンのほかに、好きな放送局を四つまで登録できるプリセットボタンがある。

G3の天面。再生/一時停止ボタンとボリューム調節ボタンを装備する以外は、P3に比べてシンプルだ。

Google HomeやAmazon Echo、Clova WAVEなど、各社のスマートスピーカーと音を比較。P3(左から4番め)は迫力のあるサウンド、G3(右から2番めと3番め)は、明瞭でクリアなサウンドを聴かせる。

部屋の天井や浴室にもスマートスピーカーが

ところで、現在の日本のスマートスピーカー市場では、AIアシスタントを開発するネット企業が主導権を握っている。

そこにオーディオメーカーであるオンキヨーがいち早く参入した背景には、どんな思いがあったのだろうか。

「私たちがスマートスピーカーに参入したのは、当然、そこに大きな魅力と可能性を感じたからです。まず、スマートスピーカーがあることで、ものすごく簡単に、音楽との接点を増やすことができるという点が一つ。例えば、ふと思いついたアーティストの名前を口にするだけで、すぐに音楽が再生されます。また、最初はニュースや天気を知る目的であっても、これまで音楽が流れなかった場所にスマートスピーカーが設置されることで、絶対的に音楽を楽しむチャンスが増えます。スマートスピーカーのおかげで音楽を聴くことのハードルが下がり、いろんな場所で音楽を聴く環境が整うというのは、オーディオメーカーとしては歓迎すべき状況だと考えています」(宮崎さん)

今後は、AIアシスタントの性能も上がり、スマートスピーカーのユーザーが増えて、ニーズも多様化していくと考えられる。

オンキヨーの製品ラインアップはどうなっていくのかを宮崎さんに聞いたところ、意外な答えが返ってきた。

「将来的には、必ずしも今のスピーカーの形でなくてもいいと考えています。例えば、部屋の天井や浴室の壁面に埋め込むタイプの製品も視野に入れています。もちろん音質を重視する姿勢には変わりはありませんが、オンキヨーのブランドやこれまでのスタイルにこだわってはいません。今後も、ユーザーが音楽に触れるチャンスをどんどん拡げていきたいと思います」

Memo
P3は「DTS Play-Fi」、G3は「Chromecast built-in」のワイヤレス規格に対応。それぞれの規格に準拠したオーディオ機器で、音声コントロールによるマルチストリーミング再生が可能になる。

SPECIFICATION(SmartSpeaker P3)
●フルレンジウーハー/64mmプレス加工パルプコーン振動板×2●パッシブラジエーター/105mm×59mm振動版×2●Bluetooth/非対応●電源/AC100〜240V・50/60Hz●外部入力端子/AUX IN、AUX OUT(いずれもミニプラグケーブルを使用)●最大外形寸法/幅166.7mm×高さ201.5mm×奥行き106mm●質量/1.6kg●付属品/クィックスタートガイド、AUXケーブル×1、ACアダプター

SPECIFICATION(SmartSpeaker G3)
●ウーハー/80mmプレス加工パルプ振動板●ツィーター/20mmソフト型ドーム●Bluetooth標準規格/Ver4.2、Class2●対応プロファイル/A2DP●対応コーデック/SBC、AAC●Bluetooth最大通信範囲/10m●電源/AC100〜240V・50/60Hz●外部入力端子/非搭載●最大外形寸法/幅120mm×高さ168mm×奥行き123mm●質量/1.8kg●付属品/クィックスタートガイド、電源ケーブル

インタビュー、執筆/加藤 肇(フリーライター)

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