高いクリーナーにこだわる必要はない
レコードは、盤面の汚れが音質低下の原因となる。
末長くいい音で聴くためには定期的な手入れも必要だ。
実は、ディスクユニオンでは、公式メンテナンスグッズを自社開発している。
「これらは、もともと業務用に作ったものなんです。仕事で使う場合、最も大事なのは作業の効率化と作業時間の短縮です。例えば、専用クリーナー『レコクリン』は、素早く伸びて、あっという間に拭き取れるので、慣れてくると片面を15秒ほどで洗浄できてしまう。我々は月に何千枚ものレコードを扱っていますので、その意味では、ほかのメーカーさんの何百倍も安全テストを繰り返した末に完成した、確かな商品です」(ディスクユニオンJazz TOKYO店長・生島昇氏)
レコクリン
レコクロス
業務用である以上、ランニングコストを抑えることも考えなければならない。それが結果的に、レコクリンは1本1512円といった低価格化につながったという。ただし、レコード洗浄用ベース「レコベース」だけは2万3760円と強気の価格設定だ。
「レコベースはやや敷居が高いのですが、最大の特徴は、レコードを置いたときに盤面が底に接触しないこと。クリーニングの悩みは、A面をきれいに磨いても、B面を磨く際にA面側を敷き布などの上に置くため、どうしてもまたホコリが付いてしまうんです。で、再度A面を磨くと、今度はB面にホコリが付くという無限ループに陥ってしまう(笑)」(生島氏)
「レコベース」は、盤面を外周とラベルのエッジのみで固定するので、音溝をボードに接触させることなくクリーニングができる。
レコードのクリーニング プロ直伝の実践講座
1 レコベースの枠の上に置く
アクリルボードにLP盤の外周と同サイズのゴムリングが貼ってあるため、設置も簡単。なお、10インチ盤は内側リングのみで固定することになるが、使用可能(7インチ盤、SP盤は使用不可)。
2 レーベルカバーをかぶせる
レコベースにはラベルが濡れるのを防ぐためのカバーも付属している。クリーニング作業の確実性と効率性を追求する姿勢と、レコード好きへの配慮がうかがえる。このあたりは、さすがレコード屋。
3 クリーナー液をレコードに垂らす
レコード専用クリーナー「レコクリン」は、音溝の微細な凹凸の奥まで素早く浸透。強い還元力でカビやチリを包み、表面から剥離させる。汚れが原因のノイズの低減に効果大だ。
4 クリーニング用のクロスを用意する
専用クロス「レコクロス」は、汚れを取り込んだクリーナー液を素早く吸着する。毛羽立ちや繊維が残らない特殊な不織布を使用しており、帯電性が低く、静電気を発生させにくい。
5 溝の方向に沿って素早く拭き取る
レコクリンは盤面と接触した瞬間に汚れを取り込むため、短時間で拭き取るほど効果を発揮する。クリーナー液を音溝に沿って盤全体に伸ばしながら、素早く拭き取るように作業しよう。
レコード針のクリーニングはどうすればいい?
最も簡単な手入れ方法は、シリコン素材のクリーナーを使うこと(写真はオンゾウ・ラボのゼロダストスタイラスチップクリーナー/2850円)。汚れてきたら水洗いできる。
ゼロダスト スタイラスチップクリーナー
柔らかなシリコン部分で針先にタッチ。レコードをかける前に、毎回針先をチョンチョンするのを習慣にしておくといい。もちろん、レコードのゴミを取っておくことが何より重要。
レコードのメンテ&保管のポイント
1 ホコリによる傷つきに注意
溝にたまったホコリは盤質の劣化やノイズを招くだけでなく、レコード針も消耗させてしまう。
2 横に重ねるのではなく、縦に置くべし
反りの原因になるので平積みは厳禁。縦に置く際も、斜めにならないように気をつけること。
3 とにかく聴いてやるのが大事
頻繁に聴いてやることでカビの原因となる湿気を逃がすことができ、音溝も強くなる。
解説/須藤 輝(フリーライター)
協力/ディスクユニオンJazz TOKYO