ワカメをはじめ、コンブやノリなどの海藻類は、栄養学的に大変優れた食材です。しかし、海藻はもともとメインになるような食材ではありません。大量に食べるのは人体にとって不自然。逆に思わぬ作用を生む可能性もあり、とり過ぎは禁物です。【解説】丸山弘子(北里大学医療衛生学部大学院医療系研究科・生体構造医科学群准教授)

解説者のプロフィール

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丸山弘子(まるやま・ひろこ)
北里大学医療衛生学部大学院医療系研究科・生体構造医科学群准教授。附属再生医療・細胞デザイン研究施設副施設長(病理学兼担)。北里大学衛生学部卒。保健学博士。日本応用藻類学会会長。食習慣による生活習慣病予防効果、海藻由来成分の生理活性効果と作用機序の解明などをテーマに研究を続けている。

ワカメを食べたほうが肝臓の脂肪蓄積が少ない

私は、かれこれ40年近く海藻の研究に携わっています。

これだけ長く研究していても海藻の世界は奥深く、興味が尽きることはありません。新たなテーマを掘り下げる度に、海藻の魅力を再発見しています。

これまで、さまざまな種類の海藻を扱ってきましたが、5年ほど前からは「ワカメの長期摂取による生活習慣病の予防効果」をテーマに据えて、研究に取り組んできました。

結論からいうと、ワカメを食べることは、生活習慣病の予防につながります

私たちの研究グループは、実験用マウスを用いて、ワカメの摂取が体にどのような影響を与えるかを調べました。

まず、マウスを四つのグループに分けて、次のように、それぞれ異なるエサを与えます。
❶通常食のみ
❷通常食+ワカメ粉末(1%)
❸高脂肪食のみ
❹高脂肪食+ワカメ粉末(1%)

実験開始時点のマウスは、人間の年齢でいうと、20代といったところでしょうか。これらのマウスを、ほとんど寿命に近い老齢期まで飼育。その後、解剖して肝臓の状態を調べました。

このとき肝臓に焦点を当てたのは、生活習慣病の発症に、脂肪肝が密接にかかわっているからです。

脂肪肝には、飲酒に起因するアルコール性と、そうでない非アルコール性(NASH)がありますが、いずれも肥満や糖尿病といった生活習慣病の兆候として認められます。

つまり、肝細胞がどれだけ脂肪変性を起こしているかを解析することで、生活習慣病の進行度がわかるのです。

実験では、高脂肪食を食べさせた❸群と❹群のマウスを比較し、脂肪変性した肝細胞の蓄積量を調べました。

その結果、ワカメ粉末を加えた❹群のほうが、有意に脂肪の蓄積が少ないと判明。さらに、遺伝子検査により、肝臓の炎症を示す数値も、❹群のほうが明らかに低下していました。

つまり、ワカメの摂取が脂肪肝の進行を抑制し、肝臓の炎症を防ぐことに役立つと、わかったのです。

また、一般に、肥満や糖尿病が悪化して糖代謝の機能が著しく低下すると、急激な体重減少が見られるようになります。

これについても、❸群と❹群を比較したところ、❸群のほうが、早期に体重が減少し始めました。つまり、生活習慣病を発症したあとも、ワカメを摂取していた❹群のほうが、病気の進行を抑制できたのです。

私たちはその後も継続して、ワカメの長期摂取が体にどう影響するか研究を進めています。ほかにもこれまでに、肝臓の糖代謝を高める作用や、いわゆる長寿遺伝子の発現を増やす作用などが明らかになりました。

スープや和え物に加えて週に数回食べればいい

では、なぜワカメを食べることで、こうした健康効果が得られるのでしょうか。
実は、ワカメに含まれるどの成分がどう体に作用するのか、その機序は、まだ解明できていません。

おそらく、色素成分の一種であるフコキサンチノールや、たんぱく質の一種であるワカメペプチドなどの、微量な成分がなんらかの働きをしていると推察されます。

さらにいうと、私はこれまでの研究成果から、こうした健康効果をもたらすのはワカメに限らないと考えています。

ワカメをはじめ、コンブやノリなどの海藻類は、栄養学的に大変優れた食材です。全体の約50%にも及ぶ豊富な食物繊維に加え、各種のミネラル類やビタミン類も多く含まれています。

体内で生成できない必須アミノ酸が、バランスよく含まれている点も見逃せません。

また、ワカメやコンブ、モズクといった褐藻類には、ぬめり成分のフコイダンが含まれています。フコイダンには、抗ガン作用、コレステロールや血圧の低下作用、抗ウイルス作用など、さまざまな生理機能があることがわかっています。

多様な栄養素に、海藻特有の機能性成分などが相乗して、さまざまな健康効果を生み出しているのでしょう。

海藻がこれほど健康にいいとなると、毎日積極的にとりたくなりますね。しかし、ちょっと待ってください。

海藻はもともと、メインになるような食材ではありません。そのうえ、有効成分の含有量はごくわずかです。大量に食べるのは、人体にとって不自然。逆に思わぬ作用を生む可能性もあり、とり過ぎは禁物です。

私は、スープや和え物に加える程度の量を、週に数回食べるくらいで、十分だと思います。

ちなみに、乾燥や加熱などの加工により、海藻の栄養成分が損なわれる心配は、ほとんどありません。手軽な乾燥ワカメを利用するのもけっこうです。

ぜひ、脂肪肝をはじめとした生活習慣病対策に、海藻を上手に役立ててください。

画像: 少量をときどき食べる程度で十分!

少量をときどき食べる程度で十分!

画像: この記事は『壮快』2019年1月号に掲載されています。

この記事は『壮快』2019年1月号に掲載されています。

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