サバなどの青背魚に含まれるEPAやDHAといった不飽和脂肪酸は、総コレステロール値を減らして、善玉コレステロールを増やす働きがあります。また、EPAは「やせホルモン」とも呼ばれるGLP-1の分泌を促します。【解説】小田原雅人(東京医科大学糖尿病・代謝・内分泌内科主任教授)

解説者のプロフィール

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小田原雅人(おだわら・まさと)
東京医科大学糖尿病・代謝・内分泌・リウマチ・膠原病内科学分野主任教授。1980年、東京大学医学部医学科卒業。東京大学医学部第三内科入局後、90年に東京大学医学部附属病院助手。筑波大学臨床医学系内科文部教官講師を経て、96年に英国オックスフォード大学医学部に講師として赴任。2000年に虎の門病院内分泌代謝科部長に着任。04年1月に東京医科大学内科学第三講座主任教授。東京医科大学病院副病院長を経て、14年4月より現職。日本内科学会認定医・指導医、日本糖尿病学会認定医・指導医。

缶汁ごと調理するのが最も効率がよくお勧め!

2013年7月に出演したテレビ番組で、サバ缶の健康効果について話したところ、その放送翌日、日本中のスーパーからサバ缶が姿を消したことがありました。

こうして話題をさらったサバ缶の健康効果が、近年テレビなどでくり返し紹介されたことにより再び脚光を浴び、今また、サバ缶ブームが過熱しているそうです。

サバ缶の生産量は2014年にツナ缶を抜き、トップに躍進。大手の水産各社が増産に次ぐ増産を重ねても、需要に追いつかないと聞いています。

サバ缶を活用したレシピも、広がりを見せています。なかでも私のお勧めは、缶汁ごと使った「サバ缶みそ汁」です。

その理由は、サバの有効成分を無駄なく摂取するには、缶汁ごと調理に使うのが、最も効率的だからです。汁物にして飲み干すことで、有効成分を余さず体内に取り込めます。

また、みそ汁に仕立てれば、みそによる健康効果も、もちろん期待できます。

では、サバとみそ、それぞれの健康機能性を、説明しましょう。

冒頭で述べたように、サバなどの青背魚には、機能性成分が豊富に含まれており、優れた健康効果があります。

中性脂肪を減らして血液をサラサラに!

特筆すべきは、EPA(エイコサペンタエン酸)や、DHA(ドコサヘキサエン酸)などの、不飽和脂肪酸です。

食生活の欧米化が進むにつれ、私たち日本人の食事は、魚中心から肉中心へと変化してきました。魚食の減少と肉食の増加は、進む一方です。

牛肉や豚肉に含まれる脂は、脂肪酸の分類上、飽和脂肪酸と呼ばれます。バターやラードを想像するとわかるとおり、常温で固まりやすい性質があり、肝臓でコレステロールの合成を促します。

そのため、肉食に偏った生活で飽和脂肪酸を多くとり過ぎると、動脈硬化が進行。血管が詰まりやすくなり、高血圧の一因にもなります。

ひいては、心筋梗塞や脳梗塞などといった、取り返しのつかない事態を引き起こすことにつながるのです。

一方、サバなどの青背魚に含まれるEPAやDHAといった不飽和脂肪酸は、総コレステロール値を減らして、善玉といわれるHDLコレステロールを増やす働きがあります。

また、血液中の中性脂肪も減らし、血液をサラサラにする効果もあります。実際にEPAは、脂質異常症や、閉塞性動脈硬化症(主に足に起こる動脈硬化)の治療薬として利用されています。

EPAには、糖尿病や肥満を改善する効果もあります。

小腸の下部などに存在する特定の細胞から「GLP‐1」というホルモンが出ているのですが、EPAは、この細胞を刺激することで、GLP‐1の分泌を促すのです。

では、GLP‐1は具体的にどのような働きをするのでしょうか。

GLP‐1には、膵臓から分泌されるインスリンの分泌を促し、血糖値を下げる作用があります。一方で、血糖値を上げるグルカゴンという物質が増えるのを抑制する作用もあります。

つまり、血糖値を下げるのを助け、上げるのを抑えるという両面からの働きで、糖尿病を改善するのです。

近年の研究でこうしたメカニズムがわかってから、GLP‐1は、糖尿病治療薬として、臨床現場で使われるようになってきました。

さらに、GLP‐1には、脳の満腹中枢を刺激する作用や、胃の動きをゆっくりにして内容物を長くとどまらせる作用もあります。食欲が抑えられるので肥満の改善にも有効。そのためGLP-1は、「やせホルモン」とも呼ばれています。

このように、GLP‐1は、多方面から糖尿病や肥満の改善に効果的です。そして、その分泌を促す作用が、先に述べたとおり、EPAにあるのです。

そしてこのEPAは、特に、サバに豊富に含まれています。脂質の一種なので、脂乗りのいい旬の物がお勧めです。

とはいえ、常に良質なサバを求めるのは現実的に困難です。その点、缶詰なら、旬の時季に水揚げされたサバが原料になることが多いため、良質のEPAを効率的に摂取できます。

こうした成分の機能性といった専門的な話を抜きにしても、サバ缶の栄養価は、非常に高いといえます。

サバの身は、良質なたんぱく質です。高齢者は食が細くなることから、たんぱく質の摂取が不足しがち。これが、筋力低下や虚弱状態の原因となります。サバ缶は、手軽なたんぱく源として、大変有用です。

さらに、サバには、ビタミンB群やビタミンDも豊富に含まれています。疲労回復や美肌への効果はもちろん、認知機能の低下を防ぎ、骨粗鬆症の予防にも役立ちます。

《 サバ缶みそ汁で予防・改善! 》

⃝動脈硬化・高血圧、⃝脂質異常症、⃝心筋梗塞・脳梗塞、⃝糖尿病・肥満、⃝疲労感、⃝肌荒れ、⃝筋力低下、⃝物忘れ・認知機能低下、⃝骨粗鬆症、⃝便秘

みそ汁の塩分に過剰な心配は無用!

さて、一方のみそは、日本古来の発酵食品です。腸内環境の改善に、好影響を及ぼします。腸の働きを整えて、便通をよくするなどの効果が期待できるでしょう。

みそ汁にするとなると、特に高血圧ぎみの人にとっては、塩分が気になるところです。

しかし、「みそを摂取した場合」と「同じ塩分量を食塩で摂取した場合」を比較すると、みそのほうが血圧が上がらないことが、研究で判明しています。過剰な心配は無用です。

とはいえ、サバ缶みそ汁にすることで、ふだんより塩分をとり過ぎてしまわないよう、心がけるのは大切でしょう。例えば野菜を加えて具だくさんにすることで汁を減らすのも一案。または、サバ水煮缶には食塩が含まれているため、その分、みそを控えるのも合理的です。

こうしてサバ缶みそ汁を勧めると、毎日のようにとろうとする人がいます。しかし、なんでもそうですが、いくら体によくても、とり過ぎはいけません。

サバ缶を食べる量と頻度は、多くても2日に1缶、週に3回くらいまでが理想的です。もちろん、栄養成分的に近いイワシ缶やサンマ缶でも、似たような効果が期待できます。

私自身も、積極的にサバをとるようにしています。今日の昼食には、焼き塩サバ定食を食べました。家庭においては、サバを煮たり焼いたりするより、サバ缶みそ汁のほうがずっと手軽です。健康度向上のため、ぜひ食生活に取り入れてください。

画像: この記事は『壮快』2019年3月号に掲載されています。

この記事は『壮快』2019年3月号に掲載されています。

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