2018年夏、九州電力が、九州エリアで開始したIoTサービス「QuUn(キューン)」。AIスピーカーも同名のこのサービスが、2019年5月に全国展開されます。made in Japan、日本生まれのAI。さて、海外のAIサービスと何が違うのでしょうか。
呼びかけの言葉が、自由に設定できる
音声AIの場合、どこからが関係ない会話であり、どこからが主人のオーダーなのか、理解してもらう必要があります。そのため、呼びかけの言葉が決まっています。
例の「OK, Google(グーグル)」とか「Alexa(アレクサ)」です。しかし、これがなかなか馴染めない。特に朝起きたときなどは、「えーと、何だっけ」と考える始末です。
それに対し「QuUn」は、自分で「名前」を設定することができます。
3字以上なら、何でもいいそうです。犬に人気のある「ショコラ」でも、好きなアニメから「アスカ」でも「シンジ」でも構いません。これなら、人に呼びかけるのと同じで、抵抗なく呼ぶことができます。ちなみに、3字以上の理由は、2字だと判別しにくいからだそうです。
私は、アマゾンエコーが家にありますが、アレクサに慣れるまで、一週間位時間が掛かりました。その時、呼びかけを変えられたらと、何度思ったことか!
ちなみに、QuUnの標準は「ハロミント」。これは開発時に日常会話で使われない「ミント」を使っていたからだそうで、「ハロー+ミント」から来ています。
九州電力の新ブランドQUUN
QUUNとはじめる未来の暮らし。さぁ、今日も、未来と話そう。
www.quun.life
標準ボイスは声優「雨宮天」
海外のAIの受け答えは、合成された女性の声。しかもイントネーションが、妙に関西弁ぽい(本の朗読させるとよくわかります)ところがあります。慣れるまで、かなり違和感がありました。
それに対しQuUnは、同じ合成音声ですが、声優「雨宮天」のオリジナル音声です。
2014年「一週間フレンズ。」「アカメが斬る!」にブレイクした人で、今も大人気の声優さんです。海外のオタクも羨むクール・ジャパン。その中の第一人者。私は彼女のファンではありませんが、さすがプロ。いい感じです。
また、海外のAIは、「隙の無いよく出来た秘書」という感じを醸し出します。取っつきにくい感じもします。
それに対しQuUnは、いつも冷静で礼儀正しい「スマート」をはじめ、気楽に話しかけられる「フレンドリー」、かわいいものが大好きな「プリティ」、元気に何にでも興味津々な「キッズ」、穏やかで優しいお嬢様「キュート」、平和で楽しい暮らしを守る「ヒーロー」のキャラを選択することができます。
ただ、発表会場でも声が上がりましたが、日本アニメの華「ツンデレ」がないのはちょっと残念です。
九州電力の新ブランドQUUN
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赤外線リモコン家電に標準対応
今できるIoTサービスの人気の1位、2位は、セキュリティーと家電操作。
しかし、海外AIスピーカーの場合、IoT対応家電、つまりWi-Fi内臓が条件です。
ボチボチ増えつつありますが、100%ではない上、家電の寿命は一声 10年。家庭内の家電のほとんどは非対応です。
それに対しQuUnは、今の日本の実情を把握、赤外線リモコン対応家電(=Wi-Fi非内臓)への対応を標準にしています。
間に赤外線コントローラーを噛ませることが必要となりますが、コントロール画面から推定すると、アプリの出来がとても良さそうで、いろいろな機能が使えそうです。また、「QuUnおまかせモード」もあり、なかなか凝った出来です。
同様のことは、市販の赤外線コントローラーでも可能ですが、アプリの出来、そして設定が非常に難しいことが多く、ON/OFFだけに終始した人も多いと思います。
標準想定家電は、エアコン、テレビ、照明の3つ。
寝床の中からコントロールしたい家電3つを考えてもらえば、間違いありません。QuUnは、「おやすみ」「おはよう」など、一言で、この3つを同時にコントロールすることも可能。カスタマイズもよく考えられています。
セキュリティーに、見守りサービスも
2018年春に行われたある調査では、IoTにさせたいことNO.1だったのは、玄関周りのセキュリティー、スマートロックでした。
IoTインターフェイスのAIスピーカーを、セキュリティーに役立たせることはできます。
しかし、よくあるのが、「怪しいことが起こっている、侵入者らしきものがいる、でも、さぁどうしよう?」となることです。
家にいれば、大声を出して外に助けを求めるのがイイと思いますが、外出先で家が荒らされているかも知れない、ということが分かった時、どうすれば良いのでしょうか?
その点は、QuUnはきっちり考えています。
自宅に居るときは、多機能ボタンで大きな音を出し、誰かに駆けつけてもらい撃退。
また、外出先なら、アプリにある「セコム駆けつけサービス」のボタンで、セコムに対応してもらうことが可能です。しかもセコムでの費用は出動したときだけだそうです。
また、よく話題にのぼる「見守りサービス」。
必要なのですが、見守られている方からすると「ほっといてくれ!」と言われるサービスです。
特に映像、音声で確認となるとプライバシーの侵害もありので大変です。以前紹介した象印のポットでの見守りサービスは、見られている感じがないからこそ、今でも支持され続けているわけです。
九電の場合は、電気の使用量から推し量ります。こちらも、象印のように、見られている感じはありません。見守り結果は、QuUnで教えてくれます。
また、当然、九電がバックに付いていますから、電気代、節電のアドバイスも付いています。
今回のQuUnは、カスタマイズしやすく、日本のユーザーに馴染み易いのと、サービスの設定もかなり使いやすいと言えます。このレベルのサービスパッケージがあると非常に使いやすい。「初めての人にでも負担のないIoT」に対応しているよく出来たAIスピーカーであり、サービスだと言えるでしょう。
◆多賀一晃(生活家電.com主宰)
企画とユーザーをつなぐ商品企画コンサルティング、ポップ-アップ・プランニング・オフィス代表。また米・食味鑑定士の資格を所有。オーディオ・ビデオ関連の開発経験があり、理論的だけでなく、官能評価も得意。趣味は、東京散歩とラーメンの食べ歩き。