【みかんの皮】を食べるメリットは?抗炎症作用をもつ「ヘスぺリジン」の成分に注目

美容・ヘルスケア

ミカンの皮の有用性を知ったら、あなたもきっと、皮を捨てられなくなるはずです。まずお伝えしたいのは、ミカンの皮に豊富に含まれている、ヘスぺリジンというフラボノイドの効能です。ヘスぺリジンは抗酸化作用に加え、優れた抗炎症作用も併せ持つ、健康づくりに非常に役立つ成分なのです。【解説】熊沢義雄(順天堂大学医学部非常勤講師・前北里大学教授)

解説者のプロフィール

熊沢義雄(くまざわ・よしお)
医学博士。順天堂大学医学部非常勤講師。前北里大学教授。1968年、山梨大学大学院発酵生産学終了後、(社)北里研究所、北里大学薬学部、北里大学理学部に40年間在籍。2008年に北里大学を定年退職後、北里大学発のベンチャー企業である(株)Vino Science Japanを設立。フラボノイドの研究と、それを活用した健康食品の開発に尽力している。日本細菌学会名誉会員。

ミカンの皮に豊富な抗炎症作用に注目!

ミカンを食べるときにむいた皮を、捨てていませんか?私は毎朝、季節の柑橘類を皮つきのままミキサーで粉砕した物を、小さじに3杯ほど、ヨーグルトにかけて食べています。

皮をむかず、まるごと使う点が「塩ミカン」とも共通していますね。

ミカンの皮」の有用性を知ったら、あなたもきっと、皮を捨てられなくなるはずです。

では、皮のどんな成分が、何に役立つのでしょうか。まずお伝えしたいのは、ミカンの皮に豊富に含まれている、ヘスぺリジンというフラボノイドの効能です。

植物の苦みや渋み、色のもとになる成分をポリフェノールといいますが、フラボノイドは、その一つ。もともと、植物が外界の刺激から自分を守り、酸化を抑えるために作り出している物質です。

フラボノイドというと、日本では抗酸化作用ばかりが強調されています。もちろん、体内の酸化防止やアンチエイジングも重要ですが、私が最も注目しているのは、ヘスぺリジンの持つ抗炎症作用です。

炎症というと、悪いイメージがあるかもしれません。しかしそもそも炎症は、体を守るための一過性の生体反応です。

例えば、異物である病原菌などが体内に入ったとします。すると、血液中の白血球が、周囲に警報を発令。細胞は臨戦態勢となり、攻撃を受けた部位の血管が拡張します。周りから血液やリンパ液がどんどん集まってくるため、患部が赤く腫れたり熱を持ったりするのです。

こうした急性の炎症は、病原菌と体の戦いが終われば治まります。しかし、攻撃が強過ぎたり、炎症が長く続いたり、体内に元からある物質が自らの組織を攻撃したりと、通常では起こりえない反応を示すことがあります。これが、慢性炎症です。

炎症には多くのタイプがありそのメカニズムも多様ですが、慢性炎症が長引くと、次のような疾病の発症につながります。

(1)生活習慣病…肥満、糖尿病、脂質異常症、高血圧、心臓病、慢性腎臓炎、非アルコール性脂肪肝炎など
(2)動脈硬化による疾患…虚血性心筋症、脳卒中など
(3)自己免疫疾患…関節リウマチ、乾癬など
(4)脳神経系の疾患…アルツハイマー病、パーキンソン病など
(5)ガン…発生や転移など

ミカンがない場合は旬の柑橘類を使えばOK

私たちはまず、人工的にリウマチにしたマウスにヘスぺリジンを与える実験を行いました。症状が緩和する確証を得られたことから、2004年、企業と大学の合同研究チームが発足。ヘスぺリジンの抗炎症作用について臨床試験を実施しました。

試験では、リウマチの患者さんにヘスぺリジンの入った飲料を提供。これを毎日、3ヵ月間にわたり飲んでもらいました。すると、専門医による評価で、3分の1の患者さんに「効果があった」と診断されたのです。

血液中の炎症を示す値も明らかに低下しており、ヘスぺリジンの抗炎症作用が認められた結果となりました。

先述のとおり、ヘスぺリジンには抗酸化作用、つまり体内で発生した活性酸素を除去する働きもあります。こうした働きに加え、優れた抗炎症作用も併せ持つ、健康づくりに非常に役立つ成分なのです。

このヘスぺリジンは、ミカンの果肉よりも、皮のほうに多く含まれています。正確にいうと、皮の内側の白い部分です。

苦みが多く、食感もボロボロとして食用には不向きな皮ですが、塩ミカンのように果肉といっしょに粉砕することで、甘みが加わり、おいしく食べられます。

果肉よりも皮に含まれる成分としては、ほかにも、高脂血症に効果的なナリンジン認知症予防に効くノビレチン花粉症対策に役立つナリルチンなどが挙げられます。

ちなみに、オレンジ色をした外皮や果肉には、β-クリプトキサンチンという色素成分が豊富です。糖尿病骨粗しょう症への予防効果が、静岡県は三ヶ日町の住民を対象とした疫学調査で、明らかになっています。

挙げてきたいずれの成分も、ミカンとは含有量が異なりますが、たいていの柑橘類に含まれています。ミカンが手に入らなければ、私のように、旬の柑橘類を使ってもいいでしょう。

このように、ミカンの皮は、驚くほど多様な疾病を撃退する健康機能性食品なのです。そうと知ったら、皮を捨てることはできませんね。ぜひ塩ミカンを有効活用してください。

《塩ミカンに含まれる有効成分》

【ヘスぺリジン】生活習慣病全般、動脈硬化による疾患、自己免疫疾患、脳神経系の疾患、ガン
【β-クリプトキサンチン】糖尿病、骨粗しょう症
【ナリンジン】高脂血症
【ノビレチン】認知症
【ナリルチン】花粉症

この記事は『壮快』2019年5月号に掲載されています。

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