骨はかたいので、一度作られると変化しないイメージをお持ちのかたが多いかもしれません。実際には、骨は絶えず活発に新陳代謝を行っています。丈夫でしなやかな骨を保つためには、古い骨を壊し、絶えず新しい骨に作り変える必要があるのです。この働きを骨代謝といいます。【解説】大渕修一(東京都健康長寿医療センター研究部長)

解説者のプロフィール

画像: 解説者のプロフィール

大渕修一(おおぶち・しゅういち)
東京都健康長寿医療センター研究部長、高齢者健康増進事業支援室長、在宅療養支援研究部長。理学療法士、医学博士。介護予防の定着や、健康寿命を延ばす方法の普及活動を精力的に行っている。著書に『健康寿命の延ばし方』(中央公論新社)など多数。

代謝を促して骨密度がアップ!

年とともにもろくなってくる骨。その骨を鍛えるために、どんな運動がいいのでしょうか。例えば、筋トレをすれば、骨が鍛えられるでしょうか。あるいは、ストレッチをして、じっくり骨に負荷をかけるのがいいのでしょうか。

実をいうと、筋トレも、ストレッチも、骨を鍛えるという点からすると、有効な運動とはいえません。

かつては、どんな運動でも骨が鍛えられると考えられていた時期がありました。しかし、2000年代以降、そんなに単純な話ではないことがわかってきました。

有効なのは、骨に衝撃を与える運動です。そして、その運動として、まず第一に勧められるものが、先ごろNHK『あさイチ』でも紹介した、「かかと落とし」です。

1995年、イギリス・ノッティンガムのクィーンズメディカルスクールによる研究報告で、1日50回のかかと落としを行うことによって、骨が強くなることが示されました。

その後、研究が進んだ結果、骨に衝撃を与えることの重要性が広く認識されるようになりました。今では、筋トレと、骨トレは別物であると考えられるようになっています。

骨を鍛えるには、1時間も筋トレをする必要はありません。50回のかかと落としなら、せいぜい1~2分。時間もかかりません。

皆さんのなかには、骨はかたいので、一度、作られると変化しないイメージをお持ちのかたが多いかもしれません。しかし、実際には、骨は絶えず活発に新陳代謝を行っています。

丈夫でしなやかな骨を保つためには、古い骨を壊し、絶えず新しい骨に作り変える必要があるのです。この働きを骨代謝といいます。

かかと落としは、立った姿勢で、床にトンとかかとを打ちつけます。こうして一気に衝撃を与えると、その衝撃によって骨代謝が促され、骨密度がアップするのです。

年を重ねることにより、誰でも骨の量は減ります。しかし、全員が同じように減っていくのではありません。年齢や体質、偏食やダイエット、喫煙や飲酒、運動習慣などの条件によって、個人差が出てきます。

特に女性は、閉経を迎える50歳前後から骨量が急激に減少します。これは、女性ホルモン(エストロゲン)が骨代謝に関わっているためです。女性ホルモンの分泌低下によって、骨密度が著しく下がり、骨粗鬆症になります。

60代では2人に1人、 70歳以上になると10人に7人が骨粗鬆症といわれています。最近では、若い女性の発症も増えています。

骨粗鬆症になると、つまずいて手やひじをついたり、くしゃみをしたりといった、わずかな衝撃で骨折してしまうことがあります。骨折がきっかけで、寝たきりになり、認知症が進むリスクも高まります。

ですから、骨粗鬆症にならないよう、日ごろから骨を鍛えておきたいものです。女性の場合、予防的な側面からも、閉経前のまだまだ骨が元気なうちから、かかと落としを行っておくといいでしょう。

男性の場合も、女性ほどではないにせよ、骨はもろくなっていくので、鍛えておくことは重要です。

画像: 元気なうちから始めよう!

元気なうちから始めよう!

がんばり過ぎずにまずは1ヵ月続けよう!

では、1日に、どれくらいかかと落としを行えばよいでしょうか。

先に紹介したイギリスの研究と同様に、1日50回程度を目安にするといいでしょう。こうした健康法では、がんばり過ぎてしまうかたもいますが、かかと落としは、むやみに多くやる必要はありません。

やり過ぎて、疲労がたまってしまうと、特に最初は逆効果になります。大事なのは、適度な回数を毎日続けることです。始めたら、まずは、1ヵ月続けることを目標にしましょう。

骨代謝では、破骨細胞が古くなった骨を壊し、次に、骨芽細胞が新しい骨を作ります。この骨を壊す過程で、いったん骨がもろくなります。

その時期は、破骨細胞が働き出して2週間め辺りとされています。それを過ぎると、さらに2週間かけて、骨芽細胞によって新しい骨が作られていきます。こうしたスパンを考えると、1ヵ月続けることが骨の作り変えのためにも重要なのです。

なお、股関節に先天的な障害があるかたは、かかと落としをしていて痛みが出たら、中断してください

ひざ痛のあるかたは、かかと落としの際に、背すじをピンとさせて、ひざをできるだけまっすぐ伸ばして行うといいでしょう。曲げて行うよりも、ひざへの負担が少なくなります。

ちなみに、骨粗鬆症の予防で特に重要なのはカルシウムの摂取ですが、それだけでは足りません。カルシウムの吸収を助けるビタミンD、骨作りを助けるビタミンK、 さらに骨密度の低下を防ぐたんぱく質など、さまざまな栄養素を摂取することも大切です。

日本人の平均寿命と健康寿命の差を比べてみると、男性では約9年、女性は約12年もの差があります。健康でいきいきとした人生を送りたいと誰しも願うものです。しかし、実際には多くの人が長い間「健康ではない」状態で過ごしているといってもいいでしょう。

骨がもろくなって、骨粗鬆症となり、寝たきりになってしまうのは、誰もが避けたいところだと思います。骨は、私たちの日常の多くの活動を支える、大切なかけがえのない器官です。かかと落としによって骨粗鬆症を予防し、骨を健康に保つことは、健康寿命を延ばすことにもつながるでしょう。

「かかと落とし」のやり方

【かかとを上げる高さ】
2~3cmから始め、少しずつ高くする。体調や慣れに伴い、高さを調節する。
【ポイント】
1日50回を目安に毎日続けること

画像1: 【骨粗鬆症を予防】話題の「かかと落とし」で骨密度がアップする

背すじを伸ばし足を肩幅に開いて立つ。

画像2: 【骨粗鬆症を予防】話題の「かかと落とし」で骨密度がアップする

両足のかかとを上げる。
両足のかかとを床にストンと落とす。
※②~③をくり返す。

画像3: 【骨粗鬆症を予防】話題の「かかと落とし」で骨密度がアップする

フラフラする場合
イスや壁に両手をついて行う。

「ながらかかと落とし」がお勧め!
・テレビを見ながら ・バス停でバスを待ちながら ・電車の中で手すりにつかまりながら ・台所で食事の支度をしながら …など、無理なく続けましょう!

画像: この記事は『壮快』2019年5月号に掲載されています。

この記事は『壮快』2019年5月号に掲載されています。

This article is a sponsored article by
''.