国産の洗濯機は、「標準」洗濯がJEMAで定められています。衣類は「木綿、化繊、混紡」、水は「水道水」、洗剤は「自由」です。確かに日本では扱いやすい条件です。しかし、洗濯が「汚れ落とし」「衣類ケア」であることから考えると、この標準条件は、不利です。まず気になるのは水温。洗剤がフルポテンシャルを発揮するには、少々温度が低いのです。では、海外では、どうであろうかと言うことで、高級白モノ家電メーカーと称えられるドイツ ミーレ社の洗濯の標準条件を聞いてみました。中々感じるところがあると思います。

「お湯洗い」は、対「黒死病」から

ドラム式洗濯機を語るとき、ヨーロッパは日本のように水が豊かでなかったように言われますが、ちょっと違うようです。

ヨーロッパで、一番恐れられたのは「疫病」だそうです。「コレラ」「天然痘」「スペイン風邪」など、幾つもの感染症が流行りましたが、特に「黒死病」と呼ばれたペストは、何度もヨーロッパを蹂躙しています。イタリアのボッカチオの書いた「デカメロン」は、ペストを逃れて郊外で立てこもった人たちの話で、ペストが流行ると町を捨てる程でした。

このペスト他、病原菌に対抗するために、彼らは、下着、シーツなど肌に直接触れるモノは、煮沸洗濯するようになったそうです。これがお湯洗いの原点ではないかと言われています。当時、お湯を沸かすのは凄い手間(薪ですからね)だったため、洗濯日を決め、町の広場で大釜で湯を湧かし、皆で使ったとか。当然、毎日は不可能な話で、ここから週一回の Washtag(ヴァッシュターク、Washday、洗濯日の意)が始まったそうです。

実は、欧州の場合、「お湯」で洗うとプラスになることがすごく多いです。

例えば、水質。欧州は日本と異なり、ミネラルが多い硬水です。ところがミネラルは、洗濯をするときに活躍する洗剤の泡立ちを抑えてしまいます。ところが水温を高くしてやると、化学活性が高くなりますので、化学物質(洗剤成分=界面活性剤)がまたいきいきと働き始める。当然、泡もたつと言うわけです。

それは兎も角、お湯を沸かすと言うことは、ヨーロッパでも大変だったわけです。当然、使うお湯の量は少ない方がベター。ここから先は、鶏と卵のような話ですが、少ないお湯で洗えるようにドラム式が出来たのか、ドラム式だからお湯を使うのが当然なのか、いずれにせよ、欧州はドラム式、お湯洗いが一般なわけです。

木綿と化繊は別洗い

日本の標準洗濯では、木綿と化繊は同じ扱い。水でジャブジャブですが、欧州では明確に分けます。と言うのは、最適なお湯の温度が違うからです。木綿は基本60℃、化繊は基本40℃。布種に合わせたに洗い方をするのが、あたりまえなのです。ま、当然、それは自分の流儀に反すると、別温度設定も可能です。ちなみに、木綿の場合、最大90℃まで温度を上げることができます。「煮沸消毒」の伝統も残っています。

このため、下着、シーツにもっとも使われているのは、木綿だそうです。よく出来ています。

洗剤は、白、色もので別。

洗剤はと言うと、市販の洗剤も使用可能です。しかしミーレの場合、自社洗濯機で一番使いやすいように、チューンした洗剤がおすすめです。

基本は、2つの洗剤を混ぜて使用します。
1の洗剤は、白モノ用。主には木綿系です。欧州では下着、シャツ(これも下着の一種とみられます。)は圧倒的に白が多いです。肌に触れるので、よりキレイにという考え。このため、白基準です。
2の洗剤は、色もの用。主には化繊です。こちらはおしゃれ着で、40℃のデリケート洗い。この2種類の洗剤を洗濯物の種類により、自動調整し使うのがミーレ流。

特殊洗剤としては、ウール用、スポーツウェア用、アウトドア用(ゴアテックス)用、ダウン用などがあります。

有名バレエ団、有名ミュージシャンは、移動公演にミーレの洗濯機を持って行くと言われますが、そうでしょうね。私も、マウンテンパーカーをショールームで洗わせてもらったことがありますが、汚れが落ちているのはもちろんのこと、ふわりとした風合いが蘇ったのには、ビックリしました。並のクリーニング屋より、よほど確かです。

日本とどこが違うのか?

ドイツ ミーレの考え方は、洗濯という家事をサポートすると言うよりは、大切な衣類を、ケアしながら、長く楽しむという、「衣類ケア」の考え方が基本で、それを外しません。
30分の洗濯時間を前提としてなどという、衣類に無理を強いることをなるべく避けようとします。まぁ時短、省エネの流れは、ヨーロッパでも一緒で、そのモードも搭載していますが、決してそれがメインではありません。

もし便利さをメインにしたら、本末転倒と誹られ、「高級」白モノ家電メーカーの座は失われるでしょう。ベストの衣類ケアとして洗濯という、ガチッとして砕けることのない考え方で、作られているように思います。

逆に、日本の場合は、手っ取り早いが、洗濯としては少々不利な条件の下、ベストな回答を出そうとしている様です。ランニングコストなども含めるとバランスがよいとも思いますが、衣類ケアの観点からいうと、少々もの足らないです。これは日本の洗濯機の出来が悪いと言っているわけではありません。標準洗濯がそうだというわけです。このため、汚れ落としを主眼にするとなると「特別コース」を洗濯することになります。これがチョッチ分かりにくいです。

個人的には、メーカーのフラッグシップモデルは、ミーレの様に衣類ケアのベストを作るとして頑張ってくれたらと思います。

ベストの条件で、日本の家電メーカーの知見を使うと、衣類に優しく、汚れを落とすこともできるし、お湯洗いでも省エネしつつ対応できるよう思います。

ちなみに、ミーレの洗濯機を日本で使用するときは、洗剤量はヨーロッパで使用するときの1/2だとか。それ位、日本の水は軟質で洗濯に合っているのです。逆に、だからこそ「水洗い」でもかなりの結果を出せているわけです。

また、日本のセーターは水洗いを前提としているので、海外洗濯機の指示(30℃洗い)だと盛大に縮むと言います。こちらは着られなくなるので、複雑な気分です。言えるのは、洗濯表示タグは必ずチェック、その通りに対応してくださいということだけです。

◆多賀一晃(生活家電.com主宰)
企画とユーザーをつなぐ商品企画コンサルティング ポップ-アップ・プランニング・オ
フィス代表。また米・食味鑑定士の資格を所有。オーディオ・ビデオ関連の開発経験があ
り、理論的だけでなく、官能評価も得意。趣味は、東京歴史散歩とラーメンの食べ歩き。

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