日常生活のなかで、痛みの少ない動作や習慣を見つけて、休養と運動をバランスよく実践することで、慢性的な痛みが軽減し、股関節の軟骨が再生するのです。「自分にとって最適な休養と運動の量」を知るのに役立つのが、「股関節らくらく日記」です。【解説】矢野英雄(富士温泉病院名誉院長)

解説者のプロフィール

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矢野英雄(やの・ひでお)

富士温泉病院名誉院長。変形性股関節症における保存療法の第一人者。人工股関節、二足歩行の歩行解析などの研究実績を持つ。ノルディックウォークの推進にも尽力している。

痛みを感じない生活が変形性股関節症を改善

変形性股関節症の痛みから逃れる手段として、手術という選択肢がありますが、「手術は受けたくない」という人も多いでしょう。

私は、手術をしなくても股関節の損傷の多くは改善でき、機能も再建できると考えています。実際、私の病院では、約2500人の股関節症の患者さんが、手術をしない保存療法で改善しています。

日常生活のなかで、痛みの少ない動作や習慣を見つけて実践することが、股関節の修復につながります。物理的に股関節への負担を減らす以外に、「痛み」の悪影響を断つことが大切なのです。

痛みを感じると、一瞬、呼吸が止まります。このとき、神経や筋肉、血管は一気に緊張し、血流が悪化するのです。

この状態が頻発すると、酸素と栄養素の運搬が滞り、股関節はますます壊れやすくなります。痛みを感じない生活を送ることが、変形性股関節症を改善する基本といっても過言ではありません。

とはいえ、休み過ぎてはいけません。股関節を支える筋肉を鍛え、骨自体も強化するために、適度な運動も必要です。しかし、運動も、やり過ぎると痛みを誘発します。

つまり、休養と運動をバランスよく実践することで、慢性的な痛みが軽減し、股関節の軟骨が再生するのです。

日記を見せることで家族や職場が協力的に!

「自分にとって最適な休養と運動の量」を知るのに役立つのが、「股関節らくらく日記」です。

これまでに私は、変形性股関節症の患者さんの多くに、股関節らくらく日記を勧めてきました。その結果、個人差はあるものの、1〜2ヵ月ほどで、改善傾向が見られます。

そのなかには、軟骨が再生したり、大腿骨頭(太ももの骨の先端の丸い部分)の形がきれいに整うなど、レントゲン写真で変化を確認できた例も少なくありません。

股関節らくらく日記では、痛みの度合いを前日と比較して、0から10で評価し、毎日記録します。最初に記録するときは、痛みがない状態を0、これまでに経験した最高の痛みを10とします。翌日からは、前日の痛みと比較します。

股関節らくらく日記の基本項目は、次のとおりです。
日付
痛みの度合い
歩数
コメント

コメント欄には、「天気」「家(職場)での出来事」「体重」「股関節以外の痛み」「体調」など、股関節とは関係ないと思われることも、書くように勧めています。

画像1: 【変形性股関節症が改善】おすすめは「日記」をつけること 自分を知ることで痛みをコントロールできる

特に、股関節以外に痛みがある場合は、必ず書き留めてください。股関節痛は腰痛やひざ痛、肩や首の痛みなどにつながることが多く、逆に、それらの痛みが股関節の痛みを悪化させていることもあります。

例えば、股関節の動きが悪いと、歩行時に足をけり出せないので、肩を動かして動きをカバーしようとします。すると、肩に負担がかかり、肩に痛みが出ます。同様に、股関節の動きを補完する腰やひざに、痛みが出ることもあります。

股関節らくらく日記をつけていると、どんな条件で痛みが増減するのかが見えてきます。「階段を上り下りした日は痛みが強くなる」「寒くなると痛い」「鍼灸で痛みが和らいだ」など、自分の条件が見えてきたら、痛みの少ない生活を送りやすくなるはずです。

「職場でトラブルがあった」「姑から電話がかかってきた」といった精神的な要因で痛みが増悪するケースもあります。股関節に直接関係ないと思われることでも、先入観を持たずに、コメント欄に書いてください。

股関節に痛みがあると行動に制限がかかり、引きこもりがちになります。家族や友人知人とのコミュニケーションが不足し、孤独感や焦燥感が高まることで、ますます痛みが増すという悪循環に陥ります。

股関節らくらく日記は、痛みのコントロールに役立つばかりでなく、周囲に自分の状況を理解してもらう資料にもなります。実際、日記を見せることで、家族や職場が協力的になったという話をよく聞きます。

画像: ※プリントしてお使いください

※プリントしてお使いください

また、股関節らくらく日記のほか、スキーのストックに似た2本のポールを使って歩くノルディックウォーク(下の図を参照)も、股関節の機能再建に有効です。

二足歩行では、左右どちらかの股関節に交互に体重が乗りますが、両手にポールを持って交互につくことで、股関節への負担を軽減できるのです。股関節を保護しつつ、足の筋力維持に役立つので、積極的に勧めています。

同時にノルディックウォークには、歩行姿勢の改善、歩行速度の向上、股関節の屈曲拘縮(関節が曲がったままで固まること)の予防、気分・意識の向上などの利点があります。

【ノルディックウォークのやり方】

画像2: 【変形性股関節症が改善】おすすめは「日記」をつけること 自分を知ることで痛みをコントロールできる

《ポールの長さの決め方》
•普通の杖より少し長め
•身長(cm)×0.63が目安
ポールを持って床についたとき、ひじを直角に曲げた状態から、手が2cm程度下がるように長さを調節する。ただし、歩き方や体形などによって、最適な長さは異なる。

画像: 日記を見せることで家族や職場が協力的に!

《ポールのつきかた》

画像3: 【変形性股関節症が改善】おすすめは「日記」をつけること 自分を知ることで痛みをコントロールできる

前に出した足と反対側の手に持ったポールの先端を、つま先の横辺りにつく。足に絡まないよう、体のやや外側につく

痛みの少ない生活と、自分に合った量の運動を続ければ、年齢を問わず、変形性股関節症は改善します。

自分の体を守るのは自分自身です。股関節に不安や痛みのある人は、まず、股関節らくらく日記で、自分を知ることから始めましょう。

画像: この記事は『壮快』2019年6月号に掲載されています。

この記事は『壮快』2019年6月号に掲載されています。

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