高野豆腐には、内臓脂肪や中性脂肪を減らす成分がたっぷり含まれています。また、リバウンドしてしまう大きな原因に、無理な減量による筋肉量の低下があります。高野豆腐で筋肉をつくるたんぱく質をしっかり補給していればリバウンド防止に役立ちます。【解説】土田隆(よこはま土田メディカルクリニック院長)
解説者のプロフィール
土田隆(つちだ・たかし)
よこはま土田メディカルクリニック院長。東邦大学医学部卒業。東邦大学医療センター大森病院、磯子脳神経外科病院などでの勤務を経て、2011年によこはま土田メディカルクリニックを開設。自身の急激なダイエットの経験から、予防医学の必要性を感じ、肥満治療に力を入れている。書籍『肥満治療の名医が考案 たった2週間で内臓脂肪が落ちる高野豆腐ダイエット』(アスコム)が好評発売中。高野豆腐の情報やレシピを多数掲載。
自分自身を実験台にたどり着いたダイエット
私はこれまでに、2万5千人以上のかたの肥満治療に当たってきました。この経験から痛感しているのは「カロリー制限を守り、運動をがんばるダイエットは続かない」ということです。
「気軽に、楽しく続けられる」理想的なダイエット法はないものかと研究を重ね、注目したのが日本の伝統食「高野豆腐」でした。
高野豆腐は、「凍り豆腐」「凍み豆腐」とも呼ばれる保存食。豆腐を凍結して熟成させ、乾燥させたものです。
高野豆腐がなぜダイエットに効くのかは追ってご説明するとして、私自身、体重維持に高野豆腐を活用しています。
30年以上前、私も肥満に悩まされました。当時は脳神経外科医として勤務していましたが、日々の激務で、毎日深夜になってから夕飯を食べていました。さらに食べることでストレスを解消していたこともあり、55kg(身長163cm)だった体重が75kgになってしまったのです。
その後、遠洋航海の漁船で船医として働いたことも、体重増加に拍車をかけました。3ヵ月半の間捕れたての魚をおなかいっぱい食べ続けたところ、下船したときには88kgの肥満体に!血液検査の結果は軒並みアウトでした。
焦った私は、食事を1日500kcalに制限する過激なダイエットを行い、1ヵ月で19kg減量しました。栄養不足で元気はなくなり、もともと低かった血圧がさらに下がりフラフラになりました。
誤ったダイエットの危険性を経験し、「どうしたら健康的に、苦労なくやせられるか」を、私は自分を実験台にしてさまざまなダイエットを試み、そうして行きついたのが、健康的にやせられる高野豆腐ダイエットだったのです。
今は、食べすぎが続いたな、と思ったら、夕食を高野豆腐にしています。
1人前として、水で戻した高野豆腐を2枚用意します。高野豆腐を半分の厚さに切り、水分を絞ってからチーズやハムをのせます。それをフライパンで、高野豆腐がカリッとするまで焼いて完成です。私はフライパンで焼いていますが、オーブントースターなどで焼いてもいいでしょう。
このピザと、小ぶりのグラス2杯の赤ワインが、食べすぎた後の私の晩酌兼夕食です。チーズやハムをトッピングすることで、わずか2枚の高野豆腐でも十分満足できます。このように高野豆腐を活用して、今は55kgをキープしています。
土田隆先生の高野豆腐の食べ方
◆高野豆腐のピザトースト風
水に戻した板状の高野豆腐の水気をしっかり絞り、薄く切ってからチーズとハムなどをのせて、フライパンかオーブントースターで焼く。
やせホルモンの分泌を促す
さて、高野豆腐は、製造過程で豆腐の水分を徹底的に抜くため、植物性たんぱく質や脂質、ビタミン、ミネラルなど大豆の栄養素が凝縮され、普通の豆腐より栄養価がアップしています。
この高野豆腐を1日1枚食べることで、さまざまな健康効果を得ることができます。ダイエットや健康維持に役立つ栄養がぎっしり詰まっている高野豆腐は、究極のダイエット素材といえるでしょう。
【糖質は白米の約20分の1】
低糖質の高野豆腐はダイエットの強い味方です。乾燥状態の高野豆腐の糖質は100g中3.9g。白米100g中の糖質量は76.6gですから、約20分の1しかありません。
ご飯やパスタ、パンなど糖質の多い炭水化物を減らして高野豆腐を食べたり、炭水化物を高野豆腐に置き換えたりすれば、大幅に糖質をカットすることができ、効果的に体重を落とすことができます。
【たんぱく質でリバウンドを防ぐ】
高野豆腐に含まれる成分の約50%がたんぱく質です。その量は、同じ大豆食品の木綿豆腐の約7倍。高野豆腐1枚(16.5g)には8.2gものたんぱく質が含まれています。これは牛乳240mlに相当します。
ダイエット後にリバウンドしてしまう大きな原因に、無理な減量による筋肉量の低下があります。高野豆腐で筋肉をつくるたんぱく質をしっかり補給していれば、リバウンド防止に役立ちます。
【食物繊維でおなかいっぱい】
高野豆腐はとても食べごたえがあります。これは、含まれる食物繊維の多くが不溶性食物繊維だからです。
不溶性食物繊維は水分を含むと膨らみ、満腹感を得やすいのです。消化に時間がかかるため腹持ちもよく、1枚食べただけで満足できます。また、ダイエットにつきものの便秘を解消する作用も期待できます。
【ぽっこりおなかを解消する成分が豊富】
メタボのサインであるぽっこりおなかの原因は、たまりにたまった内臓脂肪です。血中の中性脂肪が過剰になると、内臓脂肪に変化してしまいます。
高野豆腐には、内臓脂肪や中性脂肪を減らす成分がたっぷり含まれています。その一つ、βコングリシニンという成分は、内臓脂肪を燃焼させる作用があります。
内臓脂肪が減ると「やせホルモン」といわれるアディポネクチンが増え、脂肪の燃焼を促し余分な脂肪の蓄積を防ぎます。高野豆腐を食べることで脂肪が燃えるよい循環ができ、ぽっこりおなかが改善します。
また、高野豆腐が熟成される過程でできるレジスタントプロテイン(消化されにくいたんぱく質)は、血中の中性脂肪の上昇を抑えたり、動脈硬化を促進する血中の悪玉コレステロールを減らしたりします。
高野豆腐の成分の3分の1は脂質です。そのうち約8割は、中性脂肪や悪玉コレステロールを減らし、動脈硬化を防ぐ不飽和脂肪酸です。このほか、脂肪の代謝を促す大豆サポニンも、うれしい成分です。
高野豆腐を1日1枚食べるだけで、これらの栄養をしっかりとりながら、健康的にダイエットができるというわけです。
やせにくい高齢者でも効果
治療でも、高野豆腐ダイエットの手応えを感じています。体重が減りにくい60~80代のかたも、1日1枚高野豆腐を食べるようにしてもらったところ、3ヵ月で平均2~3kgの減量に成功したというかたが続出しています。
また、やせたことに加えて、「元気になった」「美肌になった」という感想が多く聞かれるのも、たんぱく質に富む高野豆腐ならではの効果です。
特に高齢のかたのダイエットは、見かけが細くなればいいというものではありません。健康的に、元気にやせることがなによりも重要です。
また、高齢になるにつれて、体重が数kg落ちただけで、血圧などの数値が下がることもめずらしくありませんから、血液の数値が気になるかたも、ぜひ試してください。
高野豆腐は1枚約30円とお財布に優しく続けやすいことも、メリットといえるでしょう。1日1枚高野豆腐ダイエットの効果を、ぜひご自身で実感してほしいと思います。
幅広い料理に使えるのが高野豆腐の魅力
味にクセがない高野豆腐は、和洋中の料理に幅広く活用できます。これも、私が高野豆腐をお勧めする大きな理由です。
私が晩酌によく食べる高野豆腐のピザトースト風のレシピを前項でご紹介しましたが、そのほかにも、さまざまな高野豆腐レシピを開発中です。参考までにご紹介しましょう。
【高野豆腐ハンバーグ】
ひき肉と高野豆腐を半々の割合で混ぜて作る「高野豆腐ハンバーグ」は、わが家の定番料理です。
高野豆腐は水で戻してから水気を軽く絞り、フードプロセッサーでミンチ状にします。これをひき肉と混ぜ、塩コショウをして成形し、熱したフライパンで焼きます。
肉の量を半分にすることで、カロリーを抑えられるのはもちろんのこと、油っぽいものが苦手な高齢者にも食べやすい、サッパリとおいしいハンバーグになります
【高野豆腐パスタ】
高野豆腐をパウダータイプに加工した「粉豆腐」は、どんな料理にも活用でき、料理のレパートリーを無限に広げてくれる使い勝手のいいアイテムです。
我が家には製麺機があるため、小麦粉と粉豆腐を半々に混ぜて高野豆腐パスタをよく作ります。先にお話ししたピザトーストと同じく、ダイエット中でも罪悪感を覚えることなくパスタを楽しでんいます。
ダイエット効果をさらにアップ!
高野豆腐はアレンジできる楽しさ、未知のおいしさ、そして無限の健康効果を秘めた食材です。私は、高野豆腐のこうした特性を生かし、ダイエットの効果を高めた「即やせパウダー」を考案しました。
材料は、粉豆腐、カツオブシ、トウガラシ、干しシイタケの四つです。粉豆腐以外の材料をパウダー状にしてから、粉豆腐と混ぜ合わせるだけで完成です(作り方は下記参照)。四つの食材に含まれる栄養素の相乗効果によって、ダイエット効果がパワーアップします。
粉豆腐は、これまでご説明したきたように、筋肉をつくるたんぱく質、内臓脂肪や中性脂肪を減らす成分が豊富です。そして、残り三つの食材には、次のダイエット効果があります。
【カツオブシ】
カツオブシには、うま味成分であるイノシン酸がたっぷり含まれています。このだし効果によって、即やせパウダーはいろいろな料理に使うことができます。イノシン酸には、新陳代謝を高める働きもあります。
ヒスチジンというアミノ酸は、脂肪の燃焼を促す酵素を活性化したり、食欲を抑えたりする働きがあることから、ダイエットや肥満予防効果がある成分として期待が集まっています。
【トウガラシ】
トウガラシの辛味成分であるカプサイシンは、代謝(体内の物質の処理)を高めて脂肪の燃焼を促進します。また、脂肪を燃やして熱をつくる褐色脂肪細胞を活性化させる働きがあります。代謝が高まると血行がよくなるので、むくみや冷えが改善しやすくなります。
【干しシイタケ】
干しシイタケに多く含まれるビタミンDは、粉豆腐に含まれるカルシウムの吸収を高める働きがあります。即やせパウダーを継続してとることで、骨の健康維持に一役買います。干しシイタケは、糖や脂質の代謝に欠かせないビタミンB1、B2も含まれています。
下記の作り方で作った即やせパウダーは、大さじこんもり3杯で、板状の高野豆腐1枚分になります。スープやみそ汁に入れて飲んだり、小麦粉と置き換えてお好み焼きにしたり、ハンバーグのつなぎにしたり、さまざまな料理に活用できます。
ちなみに、この即やせパウダーは、ダイエット効果が最も高まるように配合を考えてあります。そのため、辛いものが苦手な人は少々辛かったり、食べにくかったりするかもしれません。基本の即やせパウダーをベースに、好みや料理に合わせて材料の配合を変えたり、抜いたりしてもかまいません。
即やせパウダーを料理に加えて2週間、3週間と毎日食べていると、やせやすい体に変わって体重が無理なく減り、メタボのポッコリおなかも解消に向かっていくでしょう。
「高野豆腐パウダー」の作り方
【材料】
*大さじこんもり約30杯分(およそ10日分)
・粉豆腐……170g
・カツオブシ……20g
・トウガラシ…3本
・干しシイタケ……10g
*粉豆腐は商品が市販されていますが、板状の高野豆腐をミキサーにかけたりおろし金でおろしたりして作ることも可能
【作り方】
❶カツオブシを耐熱容器に広げる。600Wの電子レンジで1分加熱したら手で軽くほぐす。
❷ミキサーに(1)とトウガラシ(種ごと)、干しシイタケを入れ粉砕する。
❸(2)の粉末と粉豆腐を混ぜ合わせて完成。
●大さじこんもり3杯(高野豆腐1枚分)が1日の目安量。これを汁物に混ぜたり、小麦粉、だしの代わりなどとして摂取する。
●出来上がった即やせパウダーは、冷蔵庫保存で2週間をめどに使い切るようにする。