スマートウォッチはあまり進化してない
ずいぶんと話題になった「スマートウォッチ」。一時期の盛り上がりよりは、今は少し落ち着いたように感じます。私も、いろいろ使ってみましたが、最大の難点は、バッテリーの減りが早いことと、バッテリーが切れたときに機能が使えないだけでなく“時間”さえも分からなくなること。ですが、今、それを克服したモデルがいろいろ提案されています。
その様に書くと、ずいぶん進化したように感じられるのかも知れませんが、実はそうではありません。スマートウォッチを体系的に特長づけて見ましょう。
3つに分類されるスマートウォッチ
まず、スマートウォッチは、ウェアラブルデバイスです。「携帯」ではなく「身にまとう」これが大きな特長です。
そして、スマートフォンを私は、3つに分けます。出自で分類するのです。すなわち、「ヘルスメーカー」が作ったスマートウォッチ、「スマートフォンメーカー」が作ったスマートウォッチ、そして「時計メーカー」が作ったスマートウォッチです。持っている機能を見ると、一見、似ているようですが、実は全く異なる思想で作られています。
ヘルスメーカーのスマートウォッチfitbit
スマートウォッチに最低必要な、時計・アラーム・電話とメールの着信通知に加えて、健康データーが取れるのが、ヘルスメーカーが作ったスマートウォッチです。
万能に見えるスマートウォッチですが、今の形にしたのは、Fitbitではないでしょうか?
フィットネストラッカー
FB410RGGY-CJK
fitbitのスマートウォッチの原型は、万歩計です。これが各種センサーの発達により、変わったのです。特に大きいのは血流を測定できることです。これで、脈拍など、循環器系のかなりのデーターを手に入れることができます。
そして睡眠。私もお世話になっていますが、睡眠の善し悪しで、疲労度はグッと変わります。
そしてこのデーターは、刻一刻と変わりますので、膨大な情報量になります。このため、スマホを通してネット上に情報を上げます。このため、スマホは専用アプリを持っているのです。この専用アプリは、「健康日記」とも呼ぶべきアプリです。
しかし、健康に関する情報は、「食事」「運動」「睡眠」が基本3要素なのですが、fitbitを付けていても食事のログを自動で記録することができません。食事の数値データー「カロリー数」を記録できないのです。このため、基礎代謝、運動による消費カロリーだけ分かるだけですので、例えばダイエットに使うには片手落ちなのです。また、血圧などを記録することもできません。健康ログというには、ちょっと足らないかなぁという感じです。
運動時も付け、睡眠時も付けることが前提ですから、重量はかなり軽く作られています。またバッテリーの持ちも約5日前後。一週間はもたないけど、出勤日だけなら何とかバッテリー切れを起こさないくらいです。
スマホメーカーのスマートウォッチApple Watch
サムソンの「Galaxy Watch Active」、ファーウェイの「HUAWEI WATCH GT」、などもありますが、やはり代表例は、アップル社の「Apple Watch」でしょう。
Apple Watch Series 4(GPSモデル)
MU6A2J/A
スマホメーカーが作っただけあって、多くの点がスマホと同じ思想で作られています。ほぼスマホと似た機能が付いています。
スマホにあって、スマートウォッチにない機能は、「電話」と「カメラ」でしょうか?
技術的には入れることができるのですが、もし入れた場合、少々使い勝手は悪くなると思います。逆に、スマートウォッチにあってスマホにないのは「健康データー」。
他のスマートウォッチでは余り重視されないスケジュールや住所録管理機能の使い勝手、最近では「×× PAY」と呼ばれる電子決済も便利です。
しかし逆の言い方をすると、Apple Watchは、手首に巻くiPhoneであり、ほぼ同機能を手首とポケット双方に持つことになります。ムダと言えば、ムダ。このため、Apple Watchは、「ヘルス」に力を入れています。
問題はこれだけの多機能ですから、電力を多く消耗します。まあ、約1日でなくなります。スマホと同じ機能を持たせようと言うのですから、スマホのバッテリー問題も、そのまま持ち込んだ状態です。
Apple Watch – ビデオとTV CM
Apple Watchは、健康的な毎日を過ごすための究極のデバイスです。Apple Watchがどのようにして、あなたをアクティブで健康的に保ち、大切な人とつながり続けられるようにするのかをビデオで紹介します。
www.apple.com
時計メーカーのスマートウォッチGLAGOM ONE
機能から入った上の2つに対し、時計メーカーのスマートウォッチは考えが違います。
それは「時計」としての機能。そして、アクセサリーとしての「デザイン」を重視しています。つまり、普通に時計として使えるのが最低の機能であり、今の腕時計が多種多様のデザインで市場に受け入れられているように、個性的なデザインが必要と言うわけです。
例えば、先日発表されたGLAGOM社のスマートウォッチもこのカテゴリーの中に入ります。(GLAGOM社は、ベンチャーですが、考え方は時計メーカーと同じです。)
GLAGOM ONE
GL101J
まず、このメーカーがしたのは、盤面をカラー液晶ではなく、e-inkで構成することでした、e-inkは電子書籍 Kindle(キンドル)などに使われている技術で、白黒でしか表示できませんが、一度表示すると、電気を通し続けないと読めない液晶と違い、その表示のまま固定してしまうことができるのです。このため、非常に長く使うことができます。時計機能だけだと、ほぼ1ヶ月。
これに、「アラーム」「電話・メール受信」「ヘルス」などの機能が付いています。
ただ、「ヘルス」に関しては、他のアプリへのデーター転送もできないですし、fitbitのように、ビッグデーターを持ち、そこからアドバイスするという機能は持っていません。
しかし、スマホを常時携帯する現在、この程度のスマートウォッチで十分と言えば、十分です。しかも、デザインはいろいろ錬っています。
まとめ
スマートウォッチが変わるのは「単独で使えるようになる時」
現在のスマートウォッチを大別してみました。「機能」と「バッテリー」の関係が、考え方で違うことがお分かりいただけたと思います。
あとは皆さんの気分に合わせてセレクトして頂ければと思います。
今後、スマートウォッチに激変が走るとしたら、スマホが側になくても使えるスマートウォッチが出る瞬間でしょう。バッテリー技術は、ここ10年で急速に伸びており、今後も続くと予想されています。
もしそうなると、スマホの機能が、実用的なレベルで、全部スマートウォッチに入る可能性があります。が、それは使い勝手も含め、かなり作り込まないと厳しい世界。ここ数年で変わるモノではないと思います。
◆多賀一晃(生活家電.com主宰)
企画とユーザーを繋ぐ商品企画コンサルティング「ポップアップ・プランニング・オフィス」代表。米・食味鑑定士の資格を所有。大手メーカーでオーディオ・ビデオ関連の開発に携わる。趣味は東京散歩とラーメンの食べ歩き。