【逆流性食道炎の症状の緩和・予防】胃酸の逆流を防ぐセルフケア「猫背解消ヨガ」のやり方

美容・ヘルスケア

胃酸が逆流する原因は、肥満や姿勢の悪さ、ストレスなど、さまざまです。まずは服薬治療が基本。そして重要なのが、生活習慣の改善です。逆流性食道炎の原因は、元をたどれば生活習慣である場合がほとんどです。胃酸が逆流する原因の一つに「姿勢の悪さ」があります。前かがみの姿勢は、腹部を圧迫して胃を押すため、物理的に胃酸が逆流しやすいのです。ネコ背を正して姿勢をよくすることで、胃酸の逆流を防ぎ、症状を緩和できます。【解説】大谷義夫(池袋大谷クリニック院長)

解説者のプロフィール

大谷義夫(おおたに・よしお)
池袋大谷クリニック院長。1989年、群馬大学医学部卒業後、九段坂病院内科医長、東京医科歯科大学呼吸器内科医局長、同大学呼吸器内科兼任睡眠制御学講座准教授、米国ミシガン大学留学などを経て、2009年に開院。医学博士。日本呼吸器学会専門医・指導医、日本アレルギー学会専門医・指導医。監修書に『逆流性食道炎を自力で防ぐ!』(扶桑社)がある。

呼吸器系の症状との併発が少なくない!

逆流性食道炎」は、ここ20年ほどで患者数が急増していることから、注目を集めています。

胸やけなどの症状に悩む人はいまや3人に1人といわれており、テレビや雑誌でたびたび「新国民病」として取り上げられるようになりました。

私は呼吸器科を専門としています。逆流性食道炎は消化器系疾患なので、なんの関連があるのかと、いぶかしむ向きもあるかもしれません。

ところが、呼吸器の症状を訴えて来院される患者さんを診察していると、逆流性食道炎の症状を併発している人が少なくないのです。

例えば、来院理由としてトップに挙がる「長引くセキ」。この原因として最も多いのが「セキぜんそく」です。

セキぜんそくとは、カゼなどのウイルス感染、タバコの煙やアレルギー性物質、ストレスなどが要因で、気道に慢性炎症を生じ、セキが2週間以上、慢性的に続いている状態を指します。

次に多いのが、アレルギー性鼻炎や副鼻腔炎により、鼻水がのどに落ちる「後鼻漏」。

そして、3番めに多いのが、逆流性食道炎なのです。

患者さんの問診時によくよく症状を聞くと、胸やけやゲップがつらい、という話が出てきます。ただし、実際に食道に炎症があるケースは、それほど多くはありません。

胸やけなどの症状があっても内視鏡検査で炎症が見られない場合は、「非びらん性胃食道逆流症」と診断されます。

ネコ背の姿勢が腹部を圧迫し胃酸の逆流を招く

胃酸が逆流する原因は、肥満や姿勢の悪さ、ストレスなど、さまざまです。

それぞれの原因に応じた対処法がありますが、まずは服薬治療が基本。胃酸の分泌を抑えたり、酸性度を薄めたりして当座のつらい症状を緩和させます。

そのうえで重要なのが、生活習慣の改善です。逆流性食道炎の原因は、元をたどれば生活習慣である場合がほとんどです。

逆をいえば、薬により症状がよくなっても、原因となっている生活習慣を変えないと、再発率が高まります。症状の改善には、薬による治療とセルフケアの両輪が欠かせません。

そうした観点から、逆流性食道炎の予防や症状緩和に効果的なセルフケアを、一つご紹介しましょう。「ネコ背解消ヨガ」です。詳しいやり方は、下の図解を参照してください。

先に述べたように、胃酸が逆流する原因の一つに「姿勢の悪さ」があります。前かがみの姿勢は、腹部を圧迫して胃を押すため、物理的に胃酸が逆流しやすいのです。

実際、逆流性食道炎の患者さんには、腰が曲がっている人やネコ背の人が多く見られます。ネコ背を正して姿勢をよくすることで、胃酸の逆流を防ぎ、症状を緩和できます。

胃の内容物の誤嚥は危険な肺炎も引き起こす

また、背骨や肋骨のゆがみも胃酸の逆流を招く一因です。これには、横隔膜の機能が関連しています。

横隔膜は呼吸筋の一つです。横隔膜といっても、膜ではなく筋肉で、肺の下辺り、胸部と腹部の境界に位置します。ここには、食道が通るための穴(食道裂孔)が開いていて、この穴より下が、胃になります。

胃の入口(噴門)は、下部食道括約筋という筋肉の働きにより、通常は閉じています。そのため、胃の内容物が逆流せずに済んでいます。

この、食道裂孔と下部食道括約筋を支えているのが、横隔膜なのです。

横隔膜の筋力が低下すると、食道裂孔の形状がいびつになります。穴が広がった結果、胃の一部が横隔膜の上にはみ出した状態が、「食道裂孔ヘルニア」です。これは、逆流性食道炎の発症要因の一つです。

また、横隔膜の衰えは、下部食道括約筋の働きも低下させます。噴門がきちんと締まらないため、胃酸が逆流しやすくなるのです。

このように、横隔膜は胃酸の逆流防止に、大きな役割を果たしています。しかし、背骨や肋骨がゆがんでいると、横隔膜の可動域が狭まるなど、正常な働きが妨げられてしまいます。

横隔膜を正常に機能させるには、よい姿勢を保ち、横隔膜をよく動かすよう意識しながら、大きく深い呼吸をすることが大切です。

ネコ背解消ヨガは、横隔膜の機能を向上させるといった面からも、逆流性食道炎の予防・症状緩和に有効といえるでしょう。

ところで、逆流性食道炎は、呼吸器系疾患である「誤嚥性肺炎」とも、深い関連があります。誤嚥性肺炎とは、口腔内細菌を含んだ唾液を誤って飲み込んだことに起因する肺炎です。

一般にはあまり知られていませんが、これにはもう一つ、発症要因があります。それが、胃食道から逆流した内容物の誤嚥なのです。

高齢者はのどの筋力の衰えにより誤嚥しやすく、免疫力が低いため、肺炎になると生死にかかわります。胃からの逆流を防ぐことは、危険な誤嚥性肺炎の予防にもつながります。

逆流性食道炎の症状がある人は、放置せず治療しましょう。症状のない人も、これを機に、ぜひ予防に努めてください。

ネコ背解消ヨガのやり方

(1)と(2)を1セットとして、1日に5セット行う。
無理に腰を反らしたり、あごを上げ過ぎたりしないよう注意する。
慣れたら回数を徐々に増やし、1日に10セットほど行うとより効果的。

両手を床について、うつぶせになる。手のひらは肩の横に置き、足は腰幅に開く。おでこと足の甲は床につける。

鼻から息を吸いながら、手のひらで床を押し、太もものつけ根から上半身を起こす。そのままの姿勢で、吸って吐いてを3回くり返す。

この記事は『壮快』2019年8月号に掲載されています。

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