腎機能が低下する原因はいろいろ考えられますが、一因として動物性脂肪のとりすぎが挙げられます。そこで、腎機能の改善にお勧めするのが「切り干し大根スープ」です。大根には体の中の古い脂肪を溶かし排出する作用があります。【解説】三浦直樹(みうらクリニック院長)
解説者のプロフィール
三浦直樹(みうら・なおき)
医療法人花音会みうらクリニック院長。1995年に兵庫医科大学を卒業後、関西医科大学小児科学教室に入局。97年に退職し、西本クリニックなどで非常勤勤務を行うかたわら、各種自然療法を研究。2009年、みうらクリニック開院。2013年より始めた望診法講座は、日本各地で開催されていて、受講者は600名を超える。著書『顔を見れば隠れた病気がわかる』(マキノ出版)など多数。
動物性脂肪のとりすぎで腎臓の機能が低下
私は薬だけに頼らない幅広い治療法を求めて、これまで20年以上にわたり、自然療法を研究・実践してきました。
患者さんにも、マクロビオティック(玄米を主食とした穀菜食の食事法)や東洋医学の考え方をベースにした食事、身近なものを使った手当て法などを指導しています。これまで、多くの病気からの回復や、病気にならない体づくりをサポートしてきました。
その中から、今回は腎機能を高めるための養生法を一つ、紹介しましょう。
腎機能が低下する原因はいろいろ考えられますが、一因として、動物性脂肪のとりすぎが挙げられます。
動物性脂肪は、牛肉や豚肉などの食肉や、バターや牛乳といった、乳製品に多く含まれています。動物性脂肪をとりすぎると、血管に脂肪がたまって、やがて動脈硬化(血管の内側にコレステロールなどが付着して血管が狭く硬くなり、血液の流れが悪くなる状態)を引き起こします。
特に詰まりやすいのは、もともと細い毛細血管です。
腎臓には糸球体といって、毛細血管が無数に密集した器官があります。そのため、東洋医学では、動物性脂肪をとりすぎることによって、腎臓の糸球体の毛細血管が動脈硬化を起こし、腎機能の低下につながると考えるのです。
糸球体の毛細血管が動脈硬化を起こすと、当然、血流が滞ります。すると、血液を流すために強い圧が必要になって、血圧が高くなります。
また、腎臓は水をつかさどる臓器なので、腎機能が低下すると、むくみ、冷え、頻尿や無尿といった排尿障害の症状が起こってきます。
さらに東洋医学では、腎機能の低下=副腎機能の低下ととらえます。副腎はホルモンを産生する臓器です。その機能が衰えると、ホルモンバランスが乱れ、女性なら子宮や卵巣、男性なら前立腺に問題が生じます。
腎臓が弱ると耳鳴り難聴が起こることも
腎臓は骨、髪の毛、耳にも関係しているため、骨粗鬆症や脱毛、耳鳴り、難聴といった不調につながる可能性も考えられるでしょう。
そこで、動物性脂肪のとりすぎによる腎機能低下の改善にお勧めするのが、「切り干し大根スープ」です。
大根には、体の中の古い脂肪を溶かし、排出する作用があります。なかでも大根は、天日に干すと、体の細胞を引き締める効果が強くなります。これによって、体の奥にたまった脂肪を絞り出す効果があるのです。
血管にこびりついた古い脂肪が取り除かれれば、腎機能が高まり、前述したような不調も改善することが期待できます。
また、生の大根が体を冷やしやすいのに対し、天日に当てている切り干し大根は体を冷やしにくいのも、冷えに弱い腎臓にとってうれしい点です。
天日に当てることで、ビタミンDをはじめとする各種ビタミン、カルシウムや鉄分などのミネラルも増えます。骨粗鬆症や貧血の予防・改善にも有効といえるでしょう。
高血圧や貧血にも効果は抜群
ただし、最近はボイラー乾燥された切り干し大根も出回っています。購入するさいは、販売店に確認するか、パッケージに「天日干し」と書かれたものを選ぶようにしてください。
ほとんどのスーパーに天日干しのものが売っていますが、万が一、手に入らなければ、買ってきた切り干し大根を自分で天日干しするのも一つの方法です。
自分で天日干しをする場合は、竹ざるの上に切り干し大根を適量広げて、ベランダなど日当たりのいいところで3時間ほど干すだけです。それだけで、天日干しのものと同等の効果を期待できます。
切り干し大根スープの作り方は、下のレシピを参照してください。切り干し大根は、細かく切ることで、エキスが出やすくなります。
こした後の切り干し大根も、みそ汁に入れたり、別途調理して食べてください。食物繊維も豊富なので、便秘の改善にも効果的です。
私のクリニックでは、高血圧、貧血、便秘、コレステロール値の高い人などに、よく切り干し大根スープを勧めています。実際に数値が下がったり、症状が改善したりした人が多くいます。
高血圧や、腎機能の低下からくる症状をお持ちで、動物性脂肪のとりすぎに心当たりのある人は、ぜひ切り干し大根スープを試してみてください。
大根は古い脂肪を溶かすだけでなく、新たな動物性脂肪の沈着を防ぐ働きもあります。脂っこい肉料理や揚げ物を食べるときに、切り干し大根スープを一緒にとるのもお勧めです。
「切り干し大根スープ」の作り方
【用意するもの】(2食分)
・切り干し大根(天日干しのもの)…10g
・水…2カップ(400ml)
【作り方】
❶切り干し大根を2カップの水で戻す。
❷(1)の切り干し大根をざるでこして、戻し汁だけを取り出す。切り干し大根が吸って水が減っているので、2カップ分になるよう戻し汁に水(分量外)を加える。
❸水で戻した切り干し大根をみじん切りにして、戻し汁と一緒に鍋の中に入れる。
❹弱火で15分ほどクツクツと煮る。
❺ざるで切り干し大根をこして、コーヒーカップ1杯分(約120ml)を、空腹時によくかむようにして飲む。
※こした切り干し大根は、別途調理して食べてください。