血糖値スパイクが日常的に繰り返されると、すい臓が疲弊しインスリンの分泌機能が低下します。また、血糖値の乱高下は血管を傷つけます。万病を招く食後の血糖値の急上昇を防ぐのに、一役買うのが「リンゴ酢ソーダ」です。【解説】辛浩基(しんクリニック院長・医学博士)
解説者のプロフィール
辛浩基(しん・こうき)
しんクリニック院長・医学博士。1984年、東邦大学医学部卒業。1997年、東京都大田区の蒲田駅前にしんクリニックを開院。一般内科、眼科のほか、特に糖尿病を専門にしており、糖尿病合併症の早期発見、早期治療のほか、診療とは別に糖尿病教室も開設し、患者一人ひとりに最も適した治療を行っている。日本内科学会認定医、日本糖尿病学会認定医。東邦大学医学部内科非常勤講師。
しんクリニック=http://shinclinic.jp/
食後の眠さ、体のだるさに要注意
食後は眠くなる、体がだるい──これをあたりまえと思っているかもしれませんが、実は血糖値が乱高下しているからかもしれません。
ご飯やパン、イモ類、お菓子などの糖質を含む食品は、体内でブドウ糖に分解されてから吸収され、血液中に溶け出します。つまり、食事をすれば血糖値は上がります。
健康な人の体内では、すい臓から分泌されるインスリンというホルモンによって、血糖値の上がり下がりは一定の幅で保たれています。
しかし、大盛りのご飯やラーメンなど、糖質を多く含む食べ物を一気に食べると、食後30〜60分後をピークに血糖値が急激に高くなります。また、間食に甘いお菓子を食べたり、甘いジュースを飲んだりしても、同じことが起きます。
血糖値が急激に上がると、その血糖値を下げるために大量のインスリンが分泌され、今度は血糖値が急降下します。
このように、血糖値がジェットコースターのように急激に上がったり、下がったりする状態を「グルコーススパイク(血糖値スパイク)」と呼びます。
大量のインスリンにより、低血糖状態になると、空腹感、イライラ、眠気、不眠、集中力の低下、頭痛、吐き気など不快症状が起こり、体質的に太りやすくなります。
血糖値の乱高下が日常的に繰り返されると、すい臓が疲弊し、インスリンの分泌機能が低下してしまいます。インスリンの作用が不足すると、血糖値が下がらなくなり、糖尿病になります。
また、血糖値の乱高下は血管を傷つけます。血管は傷つくと、硬く、もろくなっていき、心筋梗塞(※1)や脳梗塞(※2)などの重篤な病気にかかるリスクが高まります。
※1:心臓の血管が詰まって起こる病気 ※2:脳の血管が詰まって起こる病気
糖尿病になり、症状が悪化すれば、腎不全や失明、足の壊疽などにもつながります。こうした万病を招く食後の血糖値の急上昇を防ぐのに、一役買うのが「リンゴ酢ソーダ」です。
5〜10倍の炭酸水で薄めて飲むのが◎
食前に酢を取ると、糖の吸収が穏やかになります。
ブドウ糖は小腸で吸収され、血糖値が上昇するのですが、食前に酢を取ることで、胃腸のぜん動運動が抑えられ、炭水化物の消化スピードを遅らせることができます。
その結果、消化物がゆっくり小腸に移動するので、血糖値が急激に上昇しないのです。
さらに、食前に消化のスピードが遅れると満腹感が持続しますから、食べ過ぎが抑えられ、ダイエットにもつながります。
酢ならば、なんでも同等の効果がありますが、特に私がお勧めするのは「リンゴ酢」です。酸味のもとである酢酸の量は穀物酢と変わりませんが、甘みがあって、断然飲みやすく、続けやすいからです。
リンゴ酢を炭酸水で割って飲むと、さらに効果的。炭酸で満腹感が得られ、よりダイエット効果が期待できます。サッパリして飲みやすく、夏バテや疲労の蓄積を予防するので、まさに暑い季節にピッタリです。
リンゴ酢は飲みやすいのですが、そうは言っても原液では刺激が強過ぎます。濃いリンゴ酢を飲むと、胸やけがしたり、胃を痛めたりします。1回に大さじ1杯のリンゴ酢を、大さじ5〜10杯の炭酸水で薄めて飲むのが適量です(下記参照)。
《リンゴ酢ソーダのとり方》
リンゴ酢大さじ1に対し、炭酸水5〜10を加える
いつ飲んでもよいが、食後の血糖値の急上昇を抑えるには食前に飲むのが効果的。ダイエット効果も得られる
2年前に、私が出演したテレビ番組『その原因、Xにあり!』(フジテレビ系)の中で、不眠に悩むかた4名に夕食前にリンゴ酢を飲んでもらったところ、4名とも深い眠りが得られるようになった、という実験結果が得られました。
これは夕食前にリンゴ酢を取ったことで、寝ている間の血糖値の乱高下を抑えることができたからだと思われます。
もちろん血糖値の乱高下を防ぐためには、糖質過多の食生活を改善し、バランスのよい食事にすることがたいせつです。今日から試せる一つの有効な習慣として、ぜひ「リンゴ酢ソーダ」を実践してください。