【心因性のガス腹対策】ガス腹は過敏性腸症候群のガス型か呑気症の2タイプ 今すぐできる対処法を専門医が指南

美容・ヘルスケア

検査をしても、腸に異常は見つからないのに、「仕事に行こうとすると下痢をする」「電車内で腹痛が起こる」「会議中にガスがたまって苦しくなる」といった場合、心療内科の対象になります。これは、過敏性腸症候群という病気です。【解説】大林正博(心と体のクリニック院長)

解説者のプロフィール

大林正博(おおばやし・まさひろ)
心と体のクリニック院長。1983年に浜松医科大学卒業後、東京大学医学部心療内科入局。同大学附属病院心療内科、藤枝市立病院、自治医大さいたま医療センターなどを経て、1997年より現職。

緊張や不安により腸が過敏になった結果

私は20年ほど前から、心療内科のクリニックを開業しています。ここ数年、「おなかの張り(腹部膨満感)」や「おなら」の悩みを抱える患者さんが増えた印象です。

心療内科では、心理的・社会的な要因で引き起こされる体の症状を扱います。

また、検査をしても、腸に異常は見つからないのに、「仕事に行こうとすると下痢をする」「電車内で腹痛が起こる」「会議中にガスがたまって苦しくなる」といった場合、心療内科の対象になります。

これは、過敏性腸症候群という病気です。緊張や不安に陥ると、腸が過剰に動いたり、過敏になったりする病気で、日本では、13〜14%の人が罹患するとされますから、珍しい病気ではありません。

過敏性腸症候群は、大きく四つのタイプに分けられます。患者数の多い順に、❶便秘型、❷下痢型、❸便秘下痢交代型、❹ガス型です。

ガス型とは、「おなかにガスがたまって苦しい」「おならが頻発する」といった症状です。こうした状態を「ガス腹」ともいうようです。

2016年に定められた世界的な診断基準では、便通の異常を必須条件としたため、ガス型が除外されました。しかし当院では、ガスで困っている患者さんが多いので、従来どおり「ガス型」といっています。

ガス型は、過敏性腸症候群のなかで最も治りにくいとされ、受診する科もわかりにくいので、私のもとに遠方から多くの患者さんが見えるのでしょう。

マッサージやストレッチで心身をほぐそう

ガス腹のもう一つの原因に、「呑気症」があります。空気を飲み込み、それが消化器に入ってしまうことで、ゲップやおなかの張りが現れます。

原因としては、ストレスのほか、口呼吸早食い、奥歯をかみ締める「食いしばり」、いいたいことを我慢して言葉を飲み込む、などがあります。呑気症と過敏性腸症候群を併発している人も、多く見られます。

ストレスが原因でガス腹に悩む患者さんのほとんどは、今お話しした、過敏性腸症候群のガス型と呑気症です。

どちらも、「おならのにおいと音」「おなかの張り」「腹痛」「グルグルというおなかの音」「症状が出るのではないかという不安」といった症状や悩みが生じます。

なお、ガス型の場合、ガスが通常よりも多く詰まって苦しくなるわけではありません。腸の動きが停滞して、ガスが一部に偏ったり、腸管が知覚過敏になって、少しのガスや便に過剰反応してしまったりするのです。

どんなときに腹部膨満感やおならがひどくなるのか、時間や場所、場面などをメモしておくと、受診のときに役立ちますし、対策を立てることもできます。

例えば、呑気症の場合、「朝は症状がなく、夕方にかけて発症・悪化する」「排便やおならでは改善しない」「ストレス要因がないと軽くなる」という傾向があります。

私が患者さんに勧めるセルフケアは、まず、心身の疲労が蓄積しないように、気分転換を挟みながら仕事をするとか、一日30分でも一人になる時間を持つなどの工夫です。

もう一つは、おなかのマッサージです。ガスがたまっていると思われるところを優しくなでて、ガスを腸内にまんべんなく散らすイメージで行います。マッサージには、気持ちを落ち着ける効果もあります。

ガスを散らすイメージで優しくなでる

処方する薬には、整腸剤や抗不安薬、抗うつ剤の一種であるSSRIがあります。

漢方薬を処方することもあります。例えば、「大建中湯」は血流を促進しておなかを温め、腸を整えます。

緊張時に症状が出ることがわかっていて、「この日だけは体調を万全にしたい」という場合には、抗不安薬を頓服的に飲んでもらうこともあります。「精神的に安定すれば、症状が軽くなる」という経験を積むことで、薬を飲まなくてもよくなるケースが多いのです。

ストレスのため、緊張や不安がある人は、肩を上げ下げしたり、首を回したりして、首から上をほぐすだけでも楽になります。歯ぎしりのクセがある呑気症の人は、就寝前に軽く全身のストレッチをするのもお勧めです。

脳腸相関」という言葉をご存じでしょうか。脳と腸は、直接つながる神経は少ないにもかかわらず、密接に関係しています。精神的なストレスが、腸の蠕動運動に影響を及ぼしたり、腸で作られるセロトニンという神経伝達物質が、脳内で情動のコントロールにかかわったりしているのです。

消化器内科を受診して異常がなく、ここで紹介したセルフケアを実践しても症状が改善しない場合は、心療内科を受診することをお勧めします。

この記事は『壮快』2019年11月号に掲載されています。

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