「智恵子は東京に空が無いという」というのは、高村光太郎の『智恵子抄』の一節。実際は、精神を病んだ智恵子の心情を読んだ言葉ですが、たしかに東京の「夜」空は、お世辞にも綺麗とは言えません。明るすぎて、ほとんど星の見えない、ただ月だけが煌々と輝く夜空です。そんな東京でも、星が、星雲が見える天体望遠鏡が、フランスから上陸しました。仏・Unistellar社(ユニステラ社)の天体望遠鏡「eVscope」です。

天体観測は実は初心者には難しい

天体観測は、初心者に対して難しいことがあります。
1つめは、その星の位置に合わせることです。目で捕らえられる星なら、ファインダーと呼ばれる、倍率の低い(5倍程度)、位置合わせ用の望遠鏡の中心(多くの場合、十字が切ってある)に合わせます。そして、ピントをきちんと合わせると「ほら見えた」となります。月などは、これで十分。非常に美しい、教科書に載っているような状況で観ることができます。

自分の眼で捕らえられる星はこれでイイのですが、東京などで見える星は限られます。
つまり、ほとんどの星は見えません。月を見続けるのも結構オツなものなのですが、「いやいや土星の輪っかが観たい」「次はヤマトに出てくる大マゼラン雲が観たい」「ウルトラマンのM78星雲が観たい」と学問の原動力でもある好奇心を抑えることはできません。

肉眼で捕らえられない天体を観測するには、赤緯と赤経を使います。
が、この位置合わせが結構難しい。基準となる北極星で極軸を合わせることからはじめなければなりません。

ところが、自分でキチンと合わせたつもりでも、星には「名札」が貼られていません。
要するに、間違えてセットしても、それが「合っているか、間違いか」がわからないのです。学問、とくに天体観測のような基礎的な学問は、手間と好奇心のせめぎ合い。手間に負けると、好奇心も薄れて行きます。

この手間に負けなければ、好奇心の赴くまま、いろいろなことができます。

デジタルで解決

さて、今の時代、ほとんどのモノはデジタルで動きます。
私も昔、プログラム教育を受けましたが、その時は、プログラムをカードに打ち込むやり方。怠け者の私は、こんな方法はすぐにとって変わられると思い、理論は勉強しましたが、実習はほとんどしませんでした。でも、デジタルは理解していますし、現在デジタル機器を使うのに、困ることはありません。

この初心者の躓きをなくせば、天文学にもっと興味をもってくれる人も増えるのでは? と考え、クラウドファンドで立ち上がったのが、Unisteliar(ユニステラ)です。要するに、天体望遠鏡が何をしているのさえ理解すれば、あとは機械がしてもいいのでは、という考え方です。

画像1: japan.unistellaroptics.com
japan.unistellaroptics.com

導入した技術は、大きく2つです。
1つは、「自動位置合わせ機能」。なんたってスマホ1台、1台にGPSが搭載されている時代です。その星が見える位置に、天体望遠鏡を自動で合わせることも可能です。

2つめは、都会からでも、いろいろな星が見えるようにしたこと。
こちらは、デジカメ技術を取り入れました。今のデジカメは、暗がりでも実に鮮明に撮影できます。これは光感度が高い撮影素子ができたからです。

つまり、都会のネオンなどで、弱くなった光でも「機械の目」なら捕らえることができ、画像化できるということです。その上、デジカメでご承知の通り、大きくするのには、光学拡大(光学ズーム)とデジタル拡大があります。光学拡大が2〜3倍でも、デジタル拡大は10倍までできるのが普通です。

このため、レンズの力だけで拡大して見るのではなく、デジカメの撮影素子で画を取り込み、モニターなどで見るわけです。

また、今までの場合、光が弱く、肉眼で捕らえきれない場合は、シャッタースピードを落とし(1分とかいう場合もあります)、光をためて写真に焼き付けるということをしていましたが、デジタル化してしまえば、全く問題ありません。

こうして、雲などで星からの光が完全に遮られない限り、東京のど真ん中でも、好きな星を見ることができる望遠鏡が完成したわけです。

画像2: japan.unistellaroptics.com
japan.unistellaroptics.com

残念!ライブ体験できず!

実は、「お披露目会の前に、撮影会しますので来て下さい」とお誘いを受け、行ってみました。
場所は、渋谷公園通りを登り切り、代々木公園へとつながるケヤキ通り。アイドルの宣伝カーが、持ち歌をガンガン流しながら何度も通るようなところです。

しかし、残念なことに、当日は雲の切れ間ができる、この目で星雲などを拝むことはできませんでした。しかし、NHKビルの屋上のアンテナはハッキリ拝ましてもらいました。肉眼、双眼鏡だと、闇に紛れそうなところを、ジラジラした感じでなく、かなりシャープに見ることができ、その片鱗を伺わせてくれるものでした。

でも、見たかったなぁ、大マゼラン雲…。

画像3: japan.unistellaroptics.com
japan.unistellaroptics.com

ネットワークで学問に貢献

そして、この「eVscope」の面白さは、アマチュアでも観測できる、ということだけではありません。「ネット接続が出来る」ということは、世界中の「eVscope」とつながっていることであり、超新星爆発、地球に近づく小惑星などの情報を、面白情報を共有化しながら観測できる、ということです。つまり、アマチュアながら、天文学の最前線にいるだけでなく、貴方の観測データが、明日の天文学の礎になるということです。

価格は35万9820円(税抜)と安くはないですが、子どもと一緒に楽しめる。世界の同好の人と一緒に観測できる。夢拡がるネットワーク「家電」といえるでしょう。

◆多賀一晃(生活家電.com主宰)
企画とユーザーをつなぐ商品企画コンサルティング ポップ-アップ・プランニング・オフィス代表。また米・食味鑑定士の資格を所有。オーディオ・ビデオ関連の開発経験があり、理論的だけでなく、官能評価も得意。趣味は、東京歴史散歩とラーメンの食べ歩き。

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