【認知的不協和とは】片付けられない人が簡単に片づけ始める「魔法の言葉」

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心理学には「認知的不協和」という用語があります。これは自分の中にある矛盾に不快感を抱き、それを解消しようとする現象を指します。これは、ふだんの掃除や片づけにも利用できます。自分に言い聞かせる(暗示する)のです。【解説】樺沢紫苑(精神科医・作家)

解説者のプロフィール

樺沢紫苑(かばさわ・しおん)
精神科医・作家。1965年、札幌市生まれ。1991年、札幌医科大学医学部卒業。2004年からシカゴのイリノイ大学に3年間留学。帰国後、樺沢心理学研究所を設立。インターネット媒体を駆使し、累計40万人以上に、精神医学や心理学、脳科学の知識や情報をわかりやすく伝え、「日本一、情報発信する医師」として活動している。『人生うまくいく人の感情リセット術』(三笠書房)、『学びを結果に変えるアウトプット大全』『学び効率が最大化するインプット大全』(サンクチュアリ出版)など、多数のベストセラーがある。
Youtubeチャンネル:https://www.youtube.com/webshinmaster

人は矛盾を抱えると解消したくなる

掃除や片づけは、多くの人にとっての悩みの種であると思います。私はYouTubeで、精神医学や心理学に基づき、皆さんの質問にわかりやすく回答する動画を2000本以上投稿していますが、掃除や片づけに関連した質問もよく届きます。

整理整頓が苦手な人や、なかなか掃除に取りかかれない人が、スムーズに片づけられるようになるためには、どうすればいいのでしょうか?

実は簡単な方法で解決することができます。「言葉」を利用するのです。言葉というのは、実は大きな魔力を秘めています。

心理学には、「認知的不協和」という用語があります。これは自分の中にある矛盾に不快感を抱き、それを解消しようとする現象を指します。

公共のトイレなどで、「きれいに使っていただきありがとうございます」という貼り紙をよく見かけると思います。これはまさに認知的不協和を使った、トイレのきれいな利用を促す方法なのです。

トイレを汚く利用すると、目の前に書いてある「きれいに使っていただきありがとうございます」という言葉との矛盾が生じます。そのため、人は「トイレをきれいに使わなくては」という心理になるのです。

これは、ふだんの掃除や片づけにも利用できます。片づけを始める前に、「私の部屋はすごくきれい」と自分に言い聞かせる(暗示する)のです。

もしくは、部屋の壁や冷蔵庫など、目のつきやすい所に「私の部屋はすごくきれい」と書いたものを貼っておくのもいいでしょう。

すると、自分が抱えている「私の部屋はとてもきれい」という暗示と、散らかっている現実の部屋との間に矛盾が生じ、片づけをしようという気持ちが強くなるのです。

「私の部屋はすごくきれい」は冷蔵庫など目につきやすい所に紙に書いて貼っておくものいい

脳は意外と単純で言葉の影響を受けやすい

この他にも、併用するとより効果のある心理テクニックがあります。

脳は意外と単純に聞こえた言葉の影響を受けます。例えば、悪いニュースを聞いたとき、自分とは関係がないことでも、気分が悪くなってしまうものです。

ですので、実際に片づけを始めるときに、まず「さぁ、やろう!」と声に出してみましょう

脳が刺激されて、体が動きやすくなり、片づけのスイッチが入ります。声に出すときは、大きい声ではっきりと口に出すことがポイントです。

そして、ゴミ箱のゴミを捨てるなど小さなことをやってみます。すると脳は「作業興奮」(後述)に入りやすくなり、やる気が生まれてどんどん片づけが進むようになるのです。

「作業興奮」というのは、嫌々でもとりあえず手を動かしてみたら、やる気が出てくるという脳のしくみです。例えば、朝、仕事が嫌だと思っていても、とりあえずメールチェックを行っているうちに、気づいたらどんどん仕事が進んでいた……というような状態です。

何もしなければ、やる気のスイッチは入りませんが、簡単なことでいいので作業を始めると、脳に刺激が伝わり、やる気が生まれるのです。

また、「まずは机の上だけを片づける」「次にトイレだけをきれいにする」など、5分でできる程度に、片づける所を小分けにするのもコツです。

そして、一つひとつの小さな片づけが終わったときに、「きれいになってうれしい!」と声に出しましょう。一段落したときに達成感を得ることで、次の片づけへのモチベーションアップにつながります。

人はうれしいことや楽しいことがあると、脳からドーパミンという物質が分泌されます。このドーパミンは、やる気がわく効果があるのです。

そのため、「きれいになってうれしい!」という達成感を重ね、やる気が途切れない「ドーパミン・サイクル」を作ると、片づけが苦にならない体質になるでしょう。

いっぺんに片づけをやるのではなく小分けにして区切りをつけるといい

命令口調はどんな人でも反抗心がわいてしまう

ここまでは、片づけられない本人のためのメソッドをお伝えしましたが、子どもやパートナーなどに片づけをうまく促すコツもあります。

最もやってはいけないことは、「片づけなさい」と命令口調で言うことです。

不思議なことに、命令口調は誰でも、どんな些細なことでも、反抗心がわくものです。身内だとなおさらでしょう。

片づけてほしい相手には、「私=I」を主語にした「アイメッセージ」で伝えるのが効果的です。「お茶碗を片づけてくれたら、お母さんはうれしいな」「ゴミを出してくれたら助かるな」といった具合です。

そして、片づけてくれたら「こんなにきれいになってすごい」とほめましょう。相手の片づけへのモチベーションはアップします。

片づいていると前向きで豊かな人生に

片づけられない原因が、病気を患っているということもあります。

几帳面で完璧主義な人は、強迫性障害という病気にかかりやすいことがわかっています。この病気の人は、大事なものまで捨ててしまうのではないかという恐怖を抱え、不必要な物を過剰に貯めこんでしまいます。

また、認知症の人やうつ病の人も片づけができなくなってしまいます。片づけに対して異常な不安を覚えたり、突然片づけができなくなったりした場合は、医師に相談することをお勧めします。

健康なのに片づけられないかたは、なかなか物を捨てられないというタイプが多いものです。

物を捨てられない=過去にしがみついているとも考えられます。それは、未来へ進めないということにもつながり、新しいことにチャレンジする意欲もわかなくなってしまいます。

また、雑然と物が置いてあると、目に入る情報が多く、仕事や勉強の集中力もダウンします。

片づいていると……
脳がスッキリする
仕事や作業が効率的になる
新しい発想が生まれやすい
前向きになれる

片づいていないと……
新しいことにチャレンジする意欲がわかない
集中力がダウン
仕事や作業の効率ダウン、時間の浪費

ですので、ふだんから物をためず、必要なくなったら捨てる習慣を身につけておくことが、部屋などを散らかさないうえでたいせつです。

中には、もらい物など、捨てるのがためらわれることもあるでしょう。そんなときは、ほかの人にプレゼントするのがお勧めです。捨てることへの罪悪感がなくなり、相手も喜び、お互いいいことずくめです。

片づいている状態では、余計な情報が入ってこないので、脳が活性化し、仕事や勉強もはかどるようになります。捨てるということは、脳に新たなスペースができることでもあり、新しい発想も生まれやすくなるのです。

脳がスッキリすると、余裕ができて、やりたいことも浮かび、さらなるステップアップをしたくなるなど、人生をより前向きに楽しめるようになるはずです。

片づけられる人になることで、前向きでより豊かな人生を歩んでいけます。心理学の言葉のテクニックをうまく利用して、片づけ上手な人間になりましょう。

片づいてる部屋は心身にとっていいことだらけ!

この記事は『ゆほびか』2019年12月号に掲載されています。

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