AI、IoTが当たり前になった現在ですが、AIは搭載しているのに、あえてネットにつながないで使う家電が出てきました。アイリスオーヤマの新型テレビLUCA(ルカ)シリーズとフジ医療機の新型マッサージチェアです。その機能は音声認識です。Amazon、Googleが、AIスピーカーを導入する時、音声認識はビッグデーターが最も活かせる機能だからと豪語し、その後、確かに音声認識機能は上がっています。なのに、なぜ今更なのでしょうか?

アイリスオーヤマの場合

ネット接続の音声操作がテレビで採用されなかった理由

ユーザーがアイリスオーヤマの家電に、まず期待するのは「安価」なことでしょう。しかし、ただ安価なだけでしたら、生産量が多く人件費の安い中国に負けます。このため、アイリスオーヤマは、その家電に必要な標準機能に、一機能を加えます。いわゆる「なるほど」機能です。多くは「スゲー!」とは言えない機能ですが、ないとちょっと「らしくない」感じです。

スイッチのオン、オフ、チャンネル、ボリューム操作が「音声操作」できるのが今回の「なるほど機能」。細かな画質操作などはできませんが、マニアでもなければ、あまりそんなことはしないわけで、多くの人にはリモコン不要で「便利」となるわけです。

しかし、なぜアイリスオーヤマは、音声認識で「ネット接続なし」を選んだのでしょうか。音声認識で先行する、Amazon、Googleの敷居が高かったからでしょうか。

理由は、アイリスオーヤマが「黒物家電」参入を決めた理由とかぶるモノでした。

テレビは、冷蔵庫、洗濯機、エアコンと合わせ、4大家電と呼ばれてきました。技術がないとできない上に、高額。つまり高い売り上げに欠かせない商品です。この4大家電で事業を誤ると、会社が傾くと言われたモノでした。そして「平面テレビ」の市場を見事に中国メーカーに持っていかれた結果、日本の家電メーカーはガタガタに。シャープ、パナソニックを始め、ソニー、東芝など大きな影響がありました。

このため、アイリスオーヤマが取った手法は、テスト販売による参入可否の決定です。そしてアイリスオーヤマは参入を決めましたが、私は不思議に思いました。なんせ、今の量販店は、中国メーカー製テレビを扱うようになり、液晶50型が10万円で手に入るからです。

アイリスオーヤマが「行ける」と踏んだのは、販売チャネルに「ホームセンター」を選んだからです。ここはプラスチックの収納ボックスなど、もともとアイリスオーヤマが強い販売ルートです。その上、テレビなどの家電の品揃えは良くない。つまり中国メーカーも参入していないチャネルです。ここに、安い、大型液晶テレビを展示販売したのです。

テレビの寿命は10年。つまり、テスト販売の2018年当時買ってくれたユーザーは、2008年頃テレビを買い換えたと考えられます。当時は、50インチで30万円。まだ平面テレビの値がこなれる前でした。ところが、それから10年。何時も行くホームセンターで、約3分の1の価格で、同じサイズが買える。同時に、買えなかったサイズは、プラス数万円。しかも4K。「なるほど、お買い得!」となるわけです。

ホームセンターは、東京都市部にもないわけではありませんが、少ない。要するに、店舗が大きいことが必要です。このため郊外に多い。住宅もマンションではなく、一戸建て。一戸建てで、Wi-Fiを付けた人はスグ分かると思いますが、実は、Wi-Fiは、すべての部屋が全部同じ強度というわけには行きません。ひどい場合には、使えない場所というのが出てきます。

これに対し、「なるほど」機能は、商品の目玉です。全ユーザーが同じように使えなければなりません。このため、Wi-Fiを使わなかったのです。

フジ医療器の場合

ネット接続の音声操作がマッサージチェアで採用されなかった理由

フジ医療器のマッサージチェアも同様の理由で、ネット接続せずに使える音声操作を採用しています。しかしこちらは、より切羽詰まった状況です。

というのは、マッサージチェアを使っている時は、基本的に、人が動かないように拘束されるからです。そうでないと、自動で「肩位置がここ、だからここをモンで…」なんてことはできません。

皆さんはマッサージチェアで揉んでもらっているとき、「太ももの前面」はなぜ揉む機能がないのだろうか、と思ったことはないでしょうか。答えは、火事や地震など、緊急移動が必要な時に、マッサージチェアから自力で脱出できるようにするためです。

それでなくても、動きにくいほど体をホールドした上に、リクライニングまでかけます。そして、マッサージ時に力を入れられるといけませんので、なるべく脱力できるように設計されていますからね。私も試しに抜け出そうとしてみましたが、布団の寝起きとは全く違うので、手こずりました。

Wi-Fiなどの通信系は、このような緊急事態の時、使えなくなる可能性があります。ルーターがやられたらつながりません。だからそんなことがないように、ネットを介さない音声操作を採用したわけです。

もともとマッサージチェアは、リモコンが非常に使い難い。かなり使い込む必要があります。このリモコン機能の一部を音声操作できるようにしたわけですが、これがすこぶる快適。その上、安心なわけです。ちなみに、このモデル、特に足のマッサージは気持ちよく、やみつきになります。

Wi-Fi以外の方法はないのか?

どんなモノも、Wi-Fi接続が当たり前のようですが、Wi-Fi以外でネット接続する方法はないのでしょうか。

実はあるのです。もともとWi-Fiが広く認知されたのは、重いデーター、具体的には高画質写真、ムービーという映像系の重いデータを扱うためです。その典型例が「スマートフォン」。このススマートフォンがデータ転送にWi-Fiを採用したので、一気にメジャーになったわけです。

しかし、家電は、そんな重いデータを扱いません。GB(ギガバイト)ではなく、多くはKB(キロバイト)程度。大きな差があるのです。では、データ量が少ないという前提で考えると、2つの規格がクローズアップされます。

その一つは、PLC。Power-line communication。日本語では「電力線通信」と言います。要するにコンセントに電源ケーブルを差し込むと通信が出来ます。

もう一つは、LPWA。Low Power, Wide Area。こちらは低消費電力で、部屋のどこでも送信できる仕組みです。

ただ、こちらを採用すると、データの送受信機を安くしなければならない、スマホ操作をさせる場合は工夫が必要、とWi-Fiとは違った問題が出てくることもあり、今、いろいろなメーカーが実証実験中です。

こうしてみると、IoT家電の最終形態は未だ見えずという感じもします。AI搭載といっても、まだまだいろいろな方向性があるということをお分かりいただければと思います。

◆多賀一晃(生活家電.com主宰)
企画とユーザーをつなぐ商品企画コンサルティング、ポップ-アップ・プランニング・オフィス代表。また米・食味鑑定士の資格を所有。オーディオ・ビデオ関連の開発経験があり、理論的だけでなく、官能評価も得意。趣味は、東京歴史散策とラーメンの食べ歩き。

This article is a sponsored article by
''.