尿もれ改善のトレーニングというと骨盤底筋群を鍛えるものが主でした。ですが、体の使い方が昔とは違う現代では改善が難しいケースが増えていると感じています。そこで私は、加えて横隔膜からもアプローチしています。横隔膜の動きは自律神経を整えることにもつながるからです。【解説】岡本雄作(パーソナルトレーニングジムHPI代表)

解説者のプロフィール

画像: 解説者のプロフィール

岡本雄作(おかもと・ゆうさく)
パーソナルトレーニングジムHPI(High Performance Institute)代表。1982年大阪府生まれ。フィットネスクラブに3年、整形外科に5年勤務後に独立。現在は兵庫県西宮市でジムを運営しながら、大学チームとの専属契約、大阪テニス協会専属トレーナーとしても活動。人の身体を深く掘り下げ、整形外科や大学病院、栄養の専門機関、歯科医や眼鏡店など、あらゆる分野の専門家と連携しながら、不調をもたらす根本原因に対してアプローチすることを念頭に置いている。
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女性は止めること男性は出すことが難しい

私のジムには、体を鍛えたい、運動したいという方ばかりではなく、例えばめまいなど、原因不明の症状をなんとかしたいという方も多く通われています。そのような方も、それぞれの体に合わせたトレーニングで動ける体になってくるにつれて、症状が改善していきます。

症状改善の報告の際に女性からよく聞くのが、「実は尿もれがあったんですけど、それもよくなりました」という話です。

尿もれ」は、人に話しにくいことですし、まして私は男性です。初めてジムにいらしたときのカウンセリングで、自分から尿もれのことを話してくれる人はまずいません。

しかし、日常生活上で大変重要なことですし、改善可能なことでもあるので、最近は、出産経験のある女性には、私からたずねるようにしています。

尿もれの原因はさまざまですが、根底にあるのが直立二足歩行です。

四足歩行の動物と異なり、二足歩行のヒトは、骨盤の中にある内臓が、重力で垂れ下がります。それを支えているのが骨盤底筋群ですが、加齢によって骨盤底筋群がゆるんでくると、尿道括約筋が弱って尿もれが起こります。

加えて、「男性は尿を出すことが難しくなり、女性は止めることが難しくなる」傾向にあります。

女性の場合は、出産のときに骨盤底筋群が損傷しがちです。また、女性は膀胱から尿道が直下しているため、体の構造そのものが、尿がもれ出しやすい構造をしているからです。

さらには、膀胱から尿道にかけての体の働きは、自律神経知覚神経の支配を受けています。ストレスや閉経による女性ホルモンの減少などで、自律神経のバランスがくずれてくると、排尿システムがうまく作動しなくなります。

尿もれに悩む人は腰が反っていることが多い

尿もれ改善のトレーニングというと、これまでは骨盤底筋群を鍛えるものが主でした。

確かにそれは非常に重要なのですが、体の使い方が昔とは違う現代では、骨盤底筋群を鍛えるだけでは改善が難しいケースが増えていると感じています。

そこで私は、尿もれ改善のため、骨盤底筋群に加えて横隔膜からもアプローチしています。横隔膜の動きは骨盤底筋群に刺激を与え、自律神経を整えることにもつながるからです。

ジムに来られる人を見ても、皆さん、横隔膜の動きが悪くなっています。特に女性は、胸を張って肋骨が前にせり出し、腰が反っている「反り腰」の人が多いのです。尿もれに悩む方は、大なり小なり反り腰の傾向が見られます。

横隔膜は肋骨に支配されるので、肋骨が前にせり出すと、それに引っ張られて、横隔膜も斜め上に持ち上がります。さらに、腰を反ることで骨盤が前傾し、骨盤の下にある骨盤底筋群が斜め下に傾きます。

本来、横隔膜と骨盤底筋群は、並行が正しいポジションです。その形がくずれると、横隔膜は動きが悪くなってしまうのです。

画像: 左:理想の姿勢 まっすぐな姿勢で、横隔膜と骨盤底筋群が平行な状態。これだと、息を吸ったときに横隔膜が下がり骨盤底筋群が刺激される。 右:反り腰の姿勢 反り腰になると、横隔膜が持ち上がって骨盤底筋群が斜めに傾く。すると横隔膜の動きが悪くなり、自律神経のバランスがくずれて骨盤底筋群も刺激されない。

左:理想の姿勢
まっすぐな姿勢で、横隔膜と骨盤底筋群が平行な状態。これだと、息を吸ったときに横隔膜が下がり骨盤底筋群が刺激される。
右:反り腰の姿勢
反り腰になると、横隔膜が持ち上がって骨盤底筋群が斜めに傾く。すると横隔膜の動きが悪くなり、自律神経のバランスがくずれて骨盤底筋群も刺激されない。

自律神経と排尿システムを整え尿もれを撃退する
「横隔膜トレーニング」のやり方

トレーニングは下記の四つで構成されています。
横隔膜呼吸
座骨を感じながら骨盤底筋群を締める
立って骨盤底筋群を締める
クマ歩き
①と④で横隔膜にアプローチし、②と③で骨盤底筋群にアプローチします。

一般的に骨盤底筋群トレーニングでは、膣をキューッと締めてゆるめますが、慣れるまでは尿道と膣の区別がつきにくく、また、膣を締めるのが難しいという人がほとんどです。

そこで私が勧めているのが、左右の座骨が均等に座面に当たるようにイスに座ることです。この体勢になると、尿道、膣、肛門を意識しやすくなります。

骨盤底筋群は3層構造になっています。尿道、膣、肛門は一番上の3層目に並んだ穴です。これらを締めることによって、刺激が2層目、最も深いところにある1層目と順次伝わり、骨盤底筋群全体を引き締めることになります。

ですから、尿道、膣、肛門のどの穴を締めても行き着くところは同じです。やりやすいところで、最初に、おしっこを止める感覚で尿道を締めて、それができたら膣を引き上げるような感じで締め、最後におならを我慢する要領で肛門をキュッと締めます。

締めるときに大切なのが、力まないことです。慣れないと肩に力が入ってしまいます。

締めたときに肩が上がる人は力が入っているので、声に出して10数えましょう。これで力が抜けますし、呼吸も自然につきます。同時に横隔膜も動いて骨盤底筋群にちゃんと刺激が入るので、一石二鳥です。

さらに立った姿勢で尿道、膣、肛門を締めるトレーニングを行うと、骨盤底筋群のゆるみは大きく改善されていきます。

※下記①〜④のトレーニングを、通しで行う。朝、昼、晩の1日3回(できる人はそれ以上)行う。

①「横隔膜を動かす」その1(呼吸法)

画像1: 自律神経と排尿システムを整え尿もれを撃退する 「横隔膜トレーニング」のやり方

写真のように、上半身を前に倒し背中を丸くする。足は、かかとをお尻につけてつま先立ち。頭は床についてもつかなくても、どちらでも構わない。

その姿勢のまま、4秒かけて鼻から息を吸い、6秒かけて口から息を吐く。この呼吸を5回くり返す。

②「骨盤底筋群を締める」その1

画像2: 自律神経と排尿システムを整え尿もれを撃退する 「横隔膜トレーニング」のやり方

背筋を伸ばしていすに座る。
*左右の座骨が均等に座面につくよう意識する。

画像3: 自律神経と排尿システムを整え尿もれを撃退する 「横隔膜トレーニング」のやり方

1から10まで声に出して数を数えながら、尿道を締める(尿を止めるイメージ)。

同様に10まで数えながら、膣を締める(膣を引き上げるイメージ)。

同様に10まで数えながら、肛門を締める(おならを止めるイメージ)。

③「骨盤底筋群を締める」その2

画像4: 自律神経と排尿システムを整え尿もれを撃退する 「横隔膜トレーニング」のやり方

足を肩幅に開いて立つ

1から10まで声に出して数を数えながら、尿道を締める(尿を止めるイメージ)。

同様に10まで数えながら、膣を締める(膣を引き上げるイメージ)。

同様に10まで数えながら、肛門を締める(おならを止めるイメージ)。

①「横隔膜を動かす」その2(クマ歩き)

画像5: 自律神経と排尿システムを整え尿もれを撃退する 「横隔膜トレーニング」のやり方

床に両手両ひざをつく姿勢を取り、ひざを床から浮かせる。

この姿勢のまま、前に5歩歩く

画像6: 自律神経と排尿システムを整え尿もれを撃退する 「横隔膜トレーニング」のやり方

この姿勢のまま、後ろに6歩歩く。歩くときに呼吸を止めないよう気を付ける。

横隔膜トレーニングで胸やけまで消えた

横隔膜を動かすトレーニング(基本的な方法は上記参照)を行い、横隔膜がきちんと動くようになると、息を吸ったときに横隔膜が下がり、骨盤底筋群が刺激されます。その結果、尿もれが起こりにくくなります。

また、横隔膜の動きが悪くなると、呼吸が深く入らないため、肩を上げて浅い呼吸をするようになります。浅い呼吸は交感神経を優位にし、自律神経のバランスを乱します。

これも横隔膜が動くようになると、呼吸が深くなって自律神経のバランスが整い、排尿システムがうまく働くようになってきます。

ある50代の女性は、もともとは逆流性食道炎の改善が目的で、横隔膜を動かす練習を始めました。横隔膜が動かないと、胃液の逆流を防ぐ弁の役割を果たす筋肉が働かないからです。この女性は、3ヵ月で胸やけがなくなり、半年後には、20年来の尿もれがなくなりました。

また、33歳の女性は、出産後3年たっても尿もれが続いていました。お子さんと遊んで飛んだり跳ねたりするともれてしまうというのです。そこで、横隔膜を動かす呼吸法と、骨盤底筋群を締める体操を行ってもらったところ、4ヵ月で尿もれが解消しました。

このほかにも、尿もれが改善した人がたくさんいます。尿もれを「仕方のないこと」と諦めずに、ぜひ改善してください。

画像: この記事は『安心』2019年12月号に掲載されています。

この記事は『安心』2019年12月号に掲載されています。

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