「おいしそうな料理」を窓際の席で逆光で撮影すると、料理の質感がアップし柔らかな雰囲気で再現できるからいい。ここでは、最近のトレンド「真ふかん」構図の解説もする。「逆さま撮影」、バッテリー内蔵のLEDライト「リアルプロクリップライト」(ケンコー・トキナー)を使った撮影術も知っておこう。
今回撮影に使用した機種
●アップル「iPhone 11 Pro」「iPhone XS Max」
●Google「Pixel 4 XL」
●サムスン「Galaxy Note 10+」
●ソニー「Xperia 5」
目指せ!“SNS映え”
スマホ写真術 料理
ポイント❶
飲食店では、窓際の席を確保し、逆光で撮るべし
「おいしそうな料理」といえば、SNSの人気ジャンル。しかし、飲食店での撮影は、店内の照明しだいなので、難易度は高い。昼間であれば、日差しの力を借りるのが得策だ。
となれば、席選びが重要になるが、必ず窓際を選びたい。さらに、気をつけたいのが座る向き。
窓を背にして座れば、窓からの光がちょうど料理に順光で当たってよさそうだが、実際は違う。順光の場合は、料理を明るく照らすため、発色はよくなるものの、質感などを再現しにくいのだ。
そこで、窓に向かって座り、窓からの光が料理に向かってくる逆光状態になるような位置関係を確保してほしい。
窓際の席で逆光で撮れば、料理の質感がアップし、柔らかな雰囲気で再現されるようになる。
■座る席を選ぶことが第一のポイントだ!
昼間なら席は窓際に限る。しかも、窓に向かって座るように心がけ、料理に逆光が当たるように撮ってみよう。
[iPhone XS Maxで撮影]
■逆光なら、料理の質感が柔らかく再現される
窓を背にした順光状態(左)だと、発色はいいものの質感が硬い感じ。
窓に向かって座り、(右)のように逆光で撮ると、料理の質感が柔らかく再現されるのがわかる。
[iPhone XS Maxで撮影]
ポイント❷
斜めからでは物足りない。真ふかんで撮るのが新しい
料理の撮影方法といってもいろいろあるが、王道の斜め上からの構図が飽きられたのか、「真ふかん」の構図が最近のトレンドだ。
カメラを料理の真上に持っていき、図鑑に掲載されている写真のように、真っすぐに撮影する方法だ。
構図としては単純明快で、料理の全体が見渡せるプレーンな印象が、ウケている要因なのかもしれない。
撮るときに気をつけたいのは、自分の腕やスマホの影が料理にかぶらないようにすること。
もし、スマホカメラのレンズが二つあるなら、「望遠」に切り替えて、料理の皿からできるだけスマホを離して撮影しよう。こうすることで、影が入りにくくなる。
なお、望遠レンズは、書類を歪みなく撮影するときにも有効なので、「物の形を端正に写したいなら、望遠レンズ」と覚えておくといいだろう。
■斜め上からねらってもおいしそうに写るが…
[Galaxy Note10+で撮影]
Before
斜め上からねらう通常の料理の撮り方。これはこれで見た目に近い、おいしそうなスイーツに撮れているのだが……。
After
真上から撮影してみた。インスタグラムなどのSNSでは、写真を真四角にトリミングすることも多いので、真ふかん構図で撮るとさらに相性がよくなる。
ポイント❸
スマホを逆さに持って撮ると、おいしさが引き立つ!
どのスマホも、カメラのレンズはボディの上部に搭載されている。だから、通常はレンズが上にある状態で撮るわけだ。
しかし、ここでスマホをあえて上下逆さに持てば、レンズが下になり、テーブル上の料理などにさらに近寄ったローアングル写真の撮影が可能になる。
「上下を変えても、ほんの十数センチの差なのに?」と思われるかもしれないが、接写撮影だと、このちょっとした高さの違いが作画の大きな違いとなる。
下記の作例では、料理にぐっと寄れて、おいしさが引き立つ印象だ。なお、スマホカメラには方向センサーが入っているので、逆さにして撮っても、天地が逆にならず、きちんと表示される。
この「逆さま撮影」は、料理だけでなく、小物や街角で見かけた草花などの撮影にも応用できるので、試してみるといい。
■あえてスマホを上下逆さまにして撮ってみよう
スマホを上下逆さに持って構え、ぐっと被写体に寄って撮影してみよう。
[iPhone XS Maxで撮影]
■周りがうまくボケて、料理の一品が強調される
通常の構えでも(左)のように、きちんと料理は撮影できる。
しかし(右)のように、スマホを逆さにして撮れば、料理の一品にグッと寄ることができ、周りをボカしたような表現が可能になる。
[iPhone XS Maxで撮影]
ポイント❹
LEDライトを使えば、作った料理もおいしく写せる!
料理を撮影するとき、たいていは室内のため、ちょっと暗めになる条件が多い。
室内の明かりそのままだと、何となくメリハリのない、沈んだ印象の料理に写ってしまうことが多い。
そんなとき、飲食店内では難しいが、家庭であれば、少し照明を加えれば、料理を引き立てることができる。
最近は、バッテリー内蔵のコンパクトなLEDライトがたくさん発売されているので、これを手軽に利用してみよう。
単に明るさを補うだけであれば、料理の真上から照らせばいい。
しかし、これだとメリハリや、料理のシズル感(みずみずしさや光沢感)がうまく表現できず、スマホの内蔵LEDライトを使ったのと大差がない。
LEDライトを斜め横から照らし、うまく影を作りながら撮影するのがコツだ。
■料理を斜め横から照らすようにLEDライトを持つ
料理を斜め横から照らすようにLEDライトを持つ。目で見ながら光の当たり具合を観察できるので、じっくりといい位置を見極めよう。
[iPhone XS Maxで撮影]
ケンコー・トキナー
リアルプロクリップライト
実売価格例:4260円
■どんよりした色に写った料理も、鮮やかな印象に
ちょっと暗めの部屋の照明で撮ると(左)のように、どんよりとした色に写ってしまう料理。
(右)のように、斜めからの光を入れることで、みずみずしさの感じられる鮮やかな印象に変わる。
[iPhone XS Maxで撮影]
■解説/吉村 永(カメラマン)モデル/八嶋夏世(ソレイユ)