脳梗塞にならないためには、過食を避けて塩分を控えめに。さらに、血管をやわらかく保つうえで、NO(一酸化窒素)を作るL-アルギニンやビタミンB群の葉酸を摂取することが推奨されます。今回はNOを増やすのに役立つレシピをご提案します。【解説】森本将史(横浜新都市脳神経外科病院院長)
解説者のプロフィール
森本将史(もりもと・まさふみ)
医学博士。脳神経外科医。IMS横浜新都市脳神経外科病院院長。京都大学医学部卒業後、国立循環器病研究センター、ベルギーのルーヴェン大学などで研鑽を積み現在に至る。専門分野は、脳卒中疾患(脳梗塞、脳出血、クモ膜下出血)。できるだけ薬に頼らず、脳卒中疾患を克服できるように生活習慣を改善することを提唱している。
脳梗塞を予防する食事のコツ
L-アルギニンが豊富な食材で血管をしなやかに
脳梗塞を予防するためには、日ごろから食事に気をつける必要があります。生活習慣病や肥満、動脈硬化が進行すれば、それに比例して脳梗塞のリスクが高まります。
食事の基本は、過食を避け、栄養バランスをよく考えて食べることです。野菜や海藻類などを積極的にとって、ビタミン・ミネラル・食物繊維などを欠かさないようにしましょう。
また、内臓脂肪を蓄積する肥満は、脳梗塞にとって大敵です。内臓脂肪がアディポサイトカインという物質を分泌した結果、血栓ができやすくなって動脈硬化が進行します。
そうならないためには、常に「腹八分目」に抑えることを心がけ、糖質をとり過ぎないようにしましょう。
糖質の過剰摂取は、肥満の原因になるだけでなく、血中の余分な糖分が増加して血管を傷つけます。高血糖の状態が続くと、全身の血管が障害されて動脈硬化が進行し、血栓も生じやすくなるのです。
脳梗塞にならないために、食生活で留意すべきポイントをいくつかご紹介します。
●減塩は必須
高血圧は、血管に負担を与えて脳梗塞のリスクを高めます。減塩は、脳梗塞予防において必要不可欠です。
1日の塩分摂取量は少なくとも10g以下に抑えましょう。すでに高血圧と診断されているかたは、1日6g以下を目指してください。
減塩のコツは、出汁を利用する、柑橘類の酸味や香辛料を活用するほか、食卓の調味料を「かける」のではなく、「つける」ようにするといいでしょう。
●NOを増やす
脳梗塞を防ぐためには、しなやかでやわらかい血管を保つことが大切です。そのためには、NO(一酸化窒素)の産生を増やすことも有力な手段です。血管内で発生するNOという物質が、血管をやわらかくすることがわかっているのです。
NOは、L-アルギニンというアミノ酸から作られます。アミノ酸は、たんぱく質の構成要素です。アミノ酸を増やすためには、たんぱく質が豊富な食品をとる必要があります。
L-アルギニンが豊富な食品は、赤身の肉、魚、鶏肉、卵、豆、大豆、ナッツなどが挙げられます。
また、ビタミンB群の仲間である葉酸も、NOを増やすのに役立ちます。葉酸は、ブロッコリーやホウレンソウなどの緑色の野菜や、焼きノリや緑茶などに多く含まれます。
●よい油を選ぶ
肉の脂身、ラードなどの動物性脂肪は、とり過ぎるとLDLコレステロールや中性脂肪を増やす「飽和脂肪酸」です。NOを増やすためには、たんぱく質が必要ですが、肉を食べる際は脂身を落とす、赤身を選ぶなどの配慮をしましょう。
特に気をつけたいのはマーガリンやショートニングなどの「トランス脂肪酸」を含む油です。これらもLDLコレステロールを増やします。トランス脂肪酸は、パン、菓子類、加工食品など、さまざまな食品に含まれているので要注意です。
一方、大豆油やコーン油といった植物油に豊富なリノール酸は、体内で合成できません。食事によって摂取する必要がありますが、過剰に摂取すると体内の炎症反応を促進させて、動脈硬化の原因となることが指摘されています。
かわりに推奨されるのが、オメガ3系の「不飽和脂肪酸」であるDHAやEPA、α-リノレン酸などです。サバやサンマ、イワシなどの青魚や、エゴマ油やアマニ油などに含まれているので、できるだけ摂取するようにしましょう。
DHAは動脈硬化や高血圧を予防して、LDLコレステロールを低下させます。EPAはDHAと同様の働きをするほかに、血栓ができるのを防いで血流をよくします。さらに、中性脂肪を下げる働きも見逃せません。
さて、ここまで脳梗塞の予防に役立つ食事面でのポイントをお話ししました。それに基づいたレシピ(下記参照)をぜひ活用してください。
脳梗塞を防ぐには「水分」のとり方も重要
水分が足りないと血液がドロドロになりリスク大
そして、私がもう一つ強調したいのは、「水」です。いくら食事に気を配っても、体内の水分が不足しているようでは、脳梗塞を防ぐことはできません。
体内への水分補給が十分になされず脱水状態に陥ると、血液が固まりやすくなり、ドロドロになってしまいます。その結果、血管が詰まりやすくなって、脳梗塞のリスクも高まるのです。
実は、「のどが渇いたから水を飲む」というのでは遅いのです。特にご高齢のかたは、自律神経の働きが低下しているので、のどの渇きを感じにくくなっています。また、頻尿になることを懸念して、水分をあまりとらない傾向があるといえます。
したがって、ご高齢のかたは、よりいっそう意識して水を飲む必要があります。のどが渇くと感じる前に、ちょっとずつとる習慣を身につけていただきたいものです。
長年の食生活を変え、食事内容を適切にコントロールすることは難しいものです。最初から万全を目指さなくともけっこうですから、無理のない範囲で脳梗塞の予防に役立つ食生活を送っていただければ幸いです。
【レシピ】血管イキイキ!血液サラサラ!脳梗塞に負けない食事
鶏レバーと菜の花のマスタード和え
苦みを存分に楽しめる
【材料】(2人分)
鶏レバー…100g
菜の花…100g
粒マスタード…大さじ1
ゴマ油…小さじ1/2
しょうゆ…小さじ1/4
【作り方】
❶鶏レバーは冷水でさっと洗い、半分に切って脂肪や血の塊を取り除く。
❷鍋に湯を煮立てて(1)を入れ、10分ほどゆでて火を通す。火を止めて冷ましてから水気を切り、5mm幅に切る。
❸鍋に湯を煮立てて菜の花を入れ、色よくゆでる。冷水に取って手早く冷まし、水気をしぼってから3cmの長さに切る。
❹(2)と(3)を混ぜ合わせ、粒マスタード、ゴマ油、しょうゆの順に加えて和える。
ブリとカブのユズ煮
カブの甘みが口いっぱいに豊かに広がる
【材料】(2人分)
ブリ…2切れ(200g)
カブ…4個
ユズ…1/2個
コンブ…4cm角×2枚
水…400ml
塩…少々
【作り方】
❶鍋にコンブと分量の水を合わせ、20分ほどおく。
❷ブリは半分に切る。カブの葉は茎を2〜3cm残して切り落とし、3cmの長さに切る。ユズはくし形に4等分に切る。
❸(1)を中火にかけ、カブ、ユズを加えてふたをして15分ほど煮てから、ブリを加えてさらに10分煮る。
❹カブがやわらかくなったら、塩、カブの葉を加えてひと煮する。
カボチャと油揚げの呉汁
大豆イソフラボンたっぷり!体もポカポカ
【材料】(2人分)
カボチャ…150g
油揚げ…1/2枚
だし汁…300ml
大豆(ゆで)…100g
キヌサヤ…6枚
みそ…大さじ1
【作り方】
❶カボチャはひと口大に切る。油揚げもひと口大に切り、さっとゆでて油抜きをする。
❷キヌサヤは筋を引いて半分に切る。
❸大豆は粗くつぶす。
❹鍋にだし汁を入れて中火にかけ、(1)を入れる。ふたをして7~8分煮て、カボチャがやわらかくなったらみそを溶き入れる。
❺(2)、(3)を加えてひと煮する。
サケのクルミ焼き
こんがり!サクサク!クリスピー!
【材料】(2人分)
サケ…2切れ(200g)
クルミ…20g
コショウ…少々
乾燥パセリ…小さじ1
オリーブオイル…大さじ1/2
レモン…適宜
Ⓐしょうゆ…小さじ1/2
みりん…小さじ1/2
【作り方】
❶クルミは包丁で細かく刻む。
❷サケにⒶを絡め、コショウを振り、パセリと(1)をまぶす。
❸フライパンにオリーブオイルを中火で熱し、(2)をこんがりと焼いて火を通す。
❹皿に盛りつけて、くし形に切ったレモンを添える。
パプリカの豆乳スープ
野菜が苦手なかたにもお勧め!濃厚な味わいに大満足
【材料】(2人分)
赤パプリカ…150g
タマネギ…50g
ベーコン…1枚(20g)
オリーブオイル…大さじ1/2
米…大さじ1(10g)
水…100ml
豆乳…200ml
塩…少々
コショウ…少々
Ⓐ湯…100ml
ローリエ…1/2枚
タイム…少々
【作り方】
❶パプリカとタマネギは薄切り、ベーコンは細切りにする。
❷鍋にオリーブオイルを熱し、タマネギとベーコンを加えてくったりとするまでよく炒め、さらにパプリカを加えてさっと炒める。
❸Ⓐと米を加えてふたをし、煮立ったら弱火にして10分ほど煮る。
❹(3)の粗熱を取り、ローリエを取り除いて分量の水を加えてミキサーにかける。なめらかなスープ状にして鍋に戻す。
❺(4)に豆乳を加えて中火にかける。煮立ち始めたら火を止め、塩とコショウで味を調える。
鶏ひき肉とレンコンのミートローフ
フワフワのなかにコリコリしたレンコンの歯ごたえが楽しめる
【材料】(2人分)
鶏ひき肉…150g
レンコン…50g
万能ネギ(九条ネギなど)…50g
ミニトマト…4個
マスタード…少々
Ⓐ塩…小さじ1/4
コショウ…少々
タイム…少々
オレガノ…少々
【作り方】
❶レンコンは細かく刻む。葉ネギは小口切り。
❷鶏ひき肉に(1)、Ⓐを加えてよく混ぜひとまとめにする。
❸オーブンシートを広げて(2)をのせ、直径5~6cmの円筒状に形作り、シートで巻いて形を整えて両端を輪ゴムで留める。
❹鍋に(3)と分量外の湯100mlを入れ、ふたをして中火にかける。煮立ったら弱火にして10分蒸し煮にする。
❺火を止めたら、ふたをしたままで冷ます。切り分けて盛りつけ、ミニトマトとマスタードを添える。
豆腐と鶏ささみのおろし煮
おなかにも優しいあっさり味
【材料】(2人分)
木綿豆腐…200g
鶏ささみ…2本(120g)
ホウレンソウ…100g
ダイコン…200g
Ⓐだし汁…300ml
塩…少々
しょうゆ…少々
【作り方】
❶ホウレンソウは湯を煮立てて色よくゆでる。冷水に取って手早く冷まし、水気をしぼって4cmの長さに切る。ダイコンはすりおろして水気を切る。
❷鶏ささみは筋を引いてひと口大のそぎ切りにする。
❸鍋にⒶを合わせて中火にかける。木綿豆腐を大きめのひと口大に割って加え、煮立ったら(2)を加えてふたをし、4~5分煮て火を通す。
❹ホウレンソウを加え、再び煮立ったらダイコンおろしを広げてのせ、さらにひと煮する。
アスパラガスとタイの白和え
ささっと作れる華やかな一品
【材料】(2人分)
アスパラガス…100g
タイ(刺し身用)…80g
木綿豆腐…100g
素炒りピーナッツ…20g
砂糖…大さじ1/2
塩…少々
【作り方】
❶アスパラガスはグリルでしんなりするまで3~4分焼き、食べやすい長さに切る。
❷タイは3~4mmの厚さのそぎ切りにする。
❸ピーナッツは薄皮をむいてなめらかにすりつぶす。
❹(3)に豆腐を加えてさらにすりつぶし、砂糖、塩を加えてすり混ぜ、(1)と(2)を加えて和える。
カリフラワーとサケのおかゆ
ピーナッツが絶妙のアクセント!
【材料】(2人分)
カリフラワー…150g
サケ(刺し身用)…80g
米…2/3合
水…1L
コンブ…4cm角×2枚
素炒りピーナッツ…10g
セリ…10g
【作り方】
❶米はといで水気を切る。
❷鍋に(1)、分量の水とコンブを入れて20分おく。ふたをして強火にかけ、煮立ったら弱火にして30分炊く。
❸カリフラワーは小さく裂き、サケは7~8mm角に切る。セリは細かく、ピーナッツは粗く刻む。
❹(2)にカリフラワーを加えてさらに15分炊く。
❺米がやわらかくなったら、サケを加えてひと煮して火を止める。器に盛りつけてセリ、ピーナッツを散らす。
イカとシュンギクのパスタ
おいしい!ヘルシー!ボリューム満点!
【材料】(2人分)
イカ…1杯(250g)
シュンギク…120g
トマト…150g
パスタ(ペンネ)…120g
ニンニク…1片
赤唐辛子…1本
オリーブオイル…大さじ1
塩…少々
【作り方】
❶イカは足を引き抜いて、内臓、目、くちばしを取り除いて皮をむき2~3cm幅の輪切りにする。足は食べやすい大きさに切る。
❷トマトは1cm角に切る。シュンギクは葉を摘んで4~5cmの長さに切る。
❸ニンニクはつぶし、赤唐辛子は半分にちぎる。
❹パスタはたっぷりの湯で表示時間どおりにゆでて汁気を切る。
❺フライパンにオリーブオイルと(3)を入れ、中火で熱し、(1)を加えて炒める。色が変わり始めたらトマトを加えて炒める。
❻トマトが崩れたらシュンギクを加えてさらに炒め、しんなりしたら(4)を加えて混ぜる。塩で味を調える。
イチゴのフローズンヨーグルト
イチゴのおいしさギュッと凝縮
【材料】(6人分)
イチゴ…200g
プレーンヨーグルト…200g
Ⓐレモン汁…大さじ2
ラム酒…大さじ1
砂糖30g
【作り方】
❶ヨーグルトはペーパータオルを敷いたザルに入れ、30分おいて水気を切る。
❷イチゴはヘタを取り、4つ割りにする。
❸(2)をつぶしながらⒶと混ぜる。
❹(1)と(3)を混ぜ合わせる。ときどき空気を含ませながら凍らせる。
グレープフルーツのジャスミンゼリー
さわやか!おしゃれ!フルーティ!
【材料】(6人分)
グレープフルーツ…小1個(200g)
ジャスミン茶…300ml
粉ゼラチン…5g
冷水…大さじ3
砂糖…25g
ミントの葉…適宜
【作り方】
❶粉ゼラチンは冷水に振り入れて戻す。
❷グレープフルーツは薄皮をむいて、果肉を大きくほぐす。
❸熱いジャスミン茶に、(1)と砂糖を加えて溶かしてから粗熱を取る。
❹器に(2)と(3)を流し入れて、冷やして固める。
❺固まったらミントを添える。
■料理・栄養計算/検見崎聡美(料理研究家・管理栄養士)■スタイリング/北舘明美