最近、疲れが取れなくてつらい――。そんなふうに思う人は多いのではないでしょうか。そんなときに効率よく疲れを取る方法が、東洋医学の考え方のひとつ「ツボ」です。古代の中国人は身体のなかに「経絡」という「気」の通る通路を見出して、その要所に「ツボ」を定めました。「気」や「経絡」は目に見えるものではないので、本当にあるのかはわかりません。しかし、現代の科学の目で見ても、ツボの位置はたしかに人体の要所に存在しています。この記事では、自律神経の不調、急な腹痛、低血圧に効果のあるツボを紹介します。【解説】斎藤充博(指圧師)
本稿は『こころとカラダが最高にゆるむ いやしのツボ生活』(永岡書店)から一部を抜粋・加筆して掲載しています。
疲れを取るツボ
毎日いろんなことで疲れていませんか?
「最近、疲れがとれなくてつらい」
そんなふうに思う人は多いのではないでしょうか。たとえば、寝起きの悪い人は朝起きるだけで大変です。その後も、通勤や通学、仕事に家事、1日が終わる頃にはヘトヘトになってしまいます。生きていくことは疲れることでもあるのです。この調子で疲れがたまっていくと、だんだん感覚が鈍くなっていって、やがて自分の疲れに気づかなくなってしまいます。
疲れをため込まないようにするために、毎日の行動ごとに発生する「疲れ」を、そのつどとりのぞきたいですね。やり方はかんたん。心にゆとりを持って、ゆったりと休息をとればいいのです。
ところが、忙しい現代人はそうもいきません。そんなときに効率よく疲れをとる方法が、東洋医学の考え方のひとつ「ツボ」です。古代の中国人は身体のなかに「経絡」という「気」の通る通路を見出して、その要所に「ツボ」を定めました。
「気」や「経絡」は目に見えるものではないので、本当にあるのかはわかりません。しかし、現代の科学の目で見ても、ツボの位置はたしかに人体の要所に存在しています。
朝の不調に効果的なツボ
身体の不調って、朝、目覚めたときに一番感じられるのではないでしょうか。
身体がだるかったり、冷えていたり……、そんな不調が、ツボをおすことで改善したらうれしいですね。スッキリ目覚めて気持ちのよい1日をスタートするために朝の不調に効果的なツボを紹介します。今日からセルフケア生活を始めてみましょう。
ツボでセルフケア
自分でかんたんにおせるツボ
この記事にたどり着いた方のなかには、おそらくマッサージ院や、鍼灸院に通っている人も多いのではないでしょうか。たしかに、そこにいる施術者はツボのプロです。行けばほとんどの場合、キッチリと回復させてくれるでしょう。
しかし、どんなに上手な施術者であっても、あなたが言葉にするのがむずかしいような不快感や、身体に出る前のほんのちょっとした不具合は、限られた治療時間のなかでは、見過ごしてしまう可能性があります。
そんなときには、家のなかでのセルフケアが、むしろプロの施術よりも効果を発揮します。自分の不快感のある場所を、自分の気分に応じて、自分で納得するまでケアができるからです。
ツボの位置について
むずかしくない!気軽に試してみて
「ツボ」なんて聞くとちょっとむずかしそうな気がしてくるかもしれません。本などで見ても位置が合っているかどうか、わかりにくいですよね。
でも、位置は「だいたい」でもいいんです。正確な位置を調べるよりも「おしているときの気持ちのよさ」を大事にしてください。気持ちよければ効いていると思っていいでしょう。
ちなみにプロの施術者も教科書に書いてあるとおりにツボをおすとは限りません。ツボの位置は人によって違うからです。
ツボをおすコツ
- 不調が気になったらすぐにおしましょう。
- 位置はだいたいで大丈夫です。
- 強い刺激を求めすぎないようにしましょう。
- ツボの周辺もおしましょう。
- おして「ヘンだな?」と思ったら、
医療機関に相談しましょう。
ツボをおすときの注意事項
- 指圧する場合は、息を吐きながら
3〜5秒程度かけてゆっくりとおすのが基本です。 - 1回の刺激は、ひとつのツボにつき、
3〜10回が目安です。 - 左右対称にあるツボは、
左右とも刺激を与えてください。 - 効果には個人差があります。
必ずしも症状が改善するとは限りません。 - ツボをおした際に身体に違和感が生じたり、
症状がひどくなった場合には、すみやかに中止して、
医療機関に相談することをおすすめします。
(1)自律神経の不調に効果のあるツボ
労宮(ろうきゅう)と内関(ないかん)
季節の変わり目って、気温の変化がつらいですよね。身体がついていけず、体調をくずしがちです。
東洋医学には、自律神経に効くとされるツボがいくつかあります。そのなかでも手のひらの中央にある労宮、手首にある内関がおしやすいです。つらくなったときにおすのもいいですが、天気予報を見て、1日の気温差が激しいときには、あらかじめおしておくのがおすすめです。
また、季節の変わり目って「部屋のなかが暑いのか寒いのかわからない」なんてことがありませんか? 温度が低いはずなのに、なぜか暑く感じたりするときは「湿度」が高くなっている可能性が高いです。ぜひ部屋のなかに湿度計をおいてみてください。
労宮(ろうきゅう)の位置
手のひらのまんなかのくぼんだところにあります。
内関(ないかん)の位置
手首を曲げたときにできるシワから、指3本分のところにあります。
押し方のコツ
どちらのツボも親指でおすときに、手の反対側から4本の指でしっかりとおさえると、おしやすいです。
(2)急な腹痛を和らげるツボ
合谷(ごうこく)
合谷(ごうこく)の位置
親指と人差指の付け根にあります。
押し方のコツ
親指と人差し指ではさみ込むようにおすと、とてもよく効きます。
(3)低血圧に効果のあるツボ
人迎(じんげい)
人迎(じんげい)の位置
首の前側にあります。のどぼとけから指2本分外側にある、動脈の拍動が感じられる場所です。
押し方のコツ
親指で首の外側に向かっておすようにします。
中庸(ちゅうよう)とは
毎日を健やかにすごすための考え方「中庸」
東洋医学には「中庸」という考え方があります。中庸とはあらゆる方向に偏りがなく調和がとれている状態のことです。……ちょっと抽象的でむずかしいですね。
心がうまくいっていないときのことを考えてみるとわかりやすいかもしれません。イライラしたり、悲しくなったり、喜びすぎてあとでかえって落ち込んだり……。そういうときって、心が何かに執着したり、周りが見えていなかったりしていませんか。
毎日がんばっていると、ついつい何かに集中してしまうもの。それ自体は悪いことではありません。しかし、それがすぎると、心や身体の調子が悪くなってしまいがちです。
これに対して、とくになんでもないときってありますよね。イライラもしていないし、喜んでもいない。余裕があって、なんならちょっとヒマに感じる。そんな、とくに大事には思わないような、なんでもない瞬間。これが「中庸」で、毎日を穏やかに暮らす秘訣だと考えています。
自分が何かに集中しすぎたな、と気づいたら、ちょっと立ち止まってみましょう。そして「中庸」という考え方を思い出してみてください。
なお、本稿は『こころとカラダが最高にゆるむ いやしのツボ生活』(永岡書店)から一部を抜粋・加筆して掲載しています。詳しくは下記のリンクからご覧ください。
いやしのツボ生活
著者のプロフィール
斎藤充博 (さいとう・みつひろ)
指圧師。埼玉大学教養学部卒業。日本指圧専門学校(浪越学園)卒業。都内の「ふしぎ指圧」にて施術を行っている。ミッションは「すべての人によりよく動ける楽しさを」。著書に『子育てでカラダが限界なんですがどうすればいいですか?』(青月社)、『こころとカラダが最高にゆるむ いやしのツボ生活』(永岡書店)、監修した本に『ツボストレッチ』(日本文芸社)がある。
▼斎藤充博のお仕事ページ(ブログ)
▼斎藤充博(@3216)(Twitter)
イラスト
serico (せりこ)
イラストレーター、絵本作家、漫画家。東京造形大学美術学科絵画専攻卒業。大人可愛い動物・食べ物イラストが得意。絵本挿絵やステーショナリー雑貨、商業施設のメインビジュアル等を手がける。近作は「冷え性ラッコのミトンくん」(朝日小学生新聞)や『めくってあそぼう!ねずみさんのおおきな木のおうち』(永岡書店)など
▼リトルコチカ(公式サイト)