耳の穴もみは、全身の血流をよくしてさまざまな効果を発揮しますが、耳のツボ刺激の効果も見逃せません。この刺激は、乱れた自律神経のバランスを取り戻すように働きます。例えば、のぼせ、イライラ、不眠などといった症状に効き目を現すでしょう。【解説】三井康利(聖隷沼津病院内科医長・伊豆楢の森診療所所長)

解説者のプロフィール

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三井康利(みつい・やすとし)
聖隷沼津病院内科医長・伊豆楢の森診療所所長。1997年北里大学医学部卒業。日本内科学会認定医、日本補完代替医療学会学識医、日本温泉気候物理医学会温泉療法医、日本旅行医学会認定医、日本消化器病学会専門医、日本消化器内視鏡学会専門医として医療の第一線で診療に当たっている。

患者さんに勧めたら予想を上回る降圧効果!

私は長年、医師として働きながら、西洋医学に対する疑問を抱いてきました。

西洋医学は、基本的に対症療法です。病気から派生する症状を抑え込むことには長けていますが、病気を根本から治すことは苦手なのです。

例えば、高血圧の患者さんに降圧剤を投与すれば、血圧は基準値内に下がるでしょう。確かに数値は下がりますが、これは明らかに対症療法による効果で、高血圧症という大本の病気が治ったわけではありません。

単に薬の力で数値を無理に下げているだけなので、服用をやめれば血圧は上昇します。私は「西洋医学は、病気を根本からよくすることはできない」という西洋医学の限界を感じていました。

また、私は10年ほど前、過労によるストレスで体をこわしました。西洋医学的な処方を試しましたが、なかなか改善しません。

そこで、快方へと導くために、さまざまな健康法や治療法を研究しました。それ以来、西洋医学以外の治療法についても、積極的に取り入れるようになったのです。

西洋医学が苦手としている生活習慣病などの慢性疾患、自律神経失調による多くの不定愁訴などに対して、ヨガや東洋医学などの知恵も動員し、総合的な治療を試みようと考えました。

そして現在、多くの代替療法を導入し、患者さんの治療に当たっています。

耳を利用した健康法を最初に知ったのも、ちょうど10年くらい前のことでした。東洋医学では、耳には多くのツボが集まっているとされます。

ツボを刺激することで、気(生命エネルギー)の通り道である経絡の流れをよくし、遠隔部位の症状を改善できると考えられています。

フランス人医師のポール・ノジェは、こうした耳と全身との対応関係に着目し、それを体系化しました。それが、「耳介療法」です。

耳の穴もみ」は、東洋医学的なツボ療法や耳介療法を、さらに進化させた健康法だといえるでしょう。では、耳の穴もみには、どんな効果が期待できるのでしょうか。

私は、この健康法に興味を持った患者さんたちに、セルフケアとして日ごろ実践していただきました。

その結果、30名を超える患者さんから、いろいろな報告がありました。「めまいがよくなった」「肩こりが楽になった」「気分がスッキリした」「イライラが解消」「寝つきがよくなった」「ひざ痛が改善」など、実に幅広い効果をもたらすことが示されたのです。

なかでも、血圧を下げる効果には、目を見張るものがありました。降圧効果が得られたかたは、私の当初の予想を上回って、30数名中5人もいたのです。

迷走神経を安全に刺激し血圧が下がる

耳の穴をもむことで、なぜ、血圧が下がるのでしょう。

耳の周辺には、顔面神経、三叉神経、迷走神経など、多くの神経が分布しており、耳の穴には、迷走神経の末端がきています。迷走神経は、体性神経(運動神経と感覚神経)と副交感神経が合わさったもの。つまり、耳の穴もみは、迷走神経=副交感神経への刺激となるのです。

ストレス社会に生きる私たちは、自律神経のバランスがくずれ、交感神経優位の状態が続く傾向にあります。交感神経が優位になると、血管が収縮して血圧が上昇します。この状態が長く続けば、血管への負担が増して血圧が上がるのです。

耳の穴をもむことは、迷走神経を刺激することになります。これによって、くずれていた自律神経のバランスが整って、血圧が下がるのではないかと考えています。

しかも、耳の穴の場合、適度な刺激を迷走神経に与えられます。例えば、首を通る迷走神経を刺激すると、過剰な負担となります。場合によっては、失神などの副作用が起こることも考えられるので、あまり積極的にはお勧めできません。

しかし、耳の穴の場合には、こうした危険性はほとんどなく、安全に刺激できるのです。

また、この自律神経の乱れを調節する効果は、血圧を下げること以外にもあります。ストレスなどによって交感神経が緊張していると、不眠、イライラ、気分の落ち込みなどの不定愁訴が起こります。こうした不定愁訴に対しても、耳の穴もみが持っている自律神経調節作用が有効に働くでしょう。

実際に、耳の穴もみを試した患者さんのうち、多くのかたで不定愁訴がよくなっています。例えば、リラックスして眠れるようになったという人がいますが、それも、この調節効果のおかげと考えられます。

ちなみに、耳の穴を時計に見立てるとしましょう。左の耳で見た場合、6時から9時の辺りの位置に、迷走神経が来ています。その辺りを刺激すると、特に気持ちよく感じられるようなら、ぜひそこを重点的に押してみてください。

また、はっきりとした違いは感じないというかたでも、高血圧にお悩みのかたは、ぜひ、その辺りを重点的に押してみましょう。

画像: 「私も日ごろから実践しています!」

「私も日ごろから実践しています!」

足先までポカポカ!私の疲れ目も解消した

また実際に、耳の穴もみを行っているうちに、耳だけではなく、耳の周辺や顔へと温かさが広がっていくのがわかるでしょう。なかには、足先までポカポカしてきたというかたもいらっしゃるはずです。

私は、耳の穴もみを行う前と後で前屈を行い、体の柔軟性を確かめてみました。すると、前屈をしたあとのほうが、明らかにやわらかくなっていたのです。

これは、耳の穴もみによって、耳の周辺→顔全体→首→肩というように、体のさまざまな部位で血流がよくなったことを示すものです。全身の血流改善によって、多くの効果が期待できます。

全身の血流が活発になれば、筋肉がやわらかくなって緊張が緩みます。肩こりや慢性腰痛のかたは、ぜひ試してみるといいでしょう。

小脳の異常が原因のめまいは別にしても、内耳の循環不全による耳鳴りやめまいなどを解消するうえでも、耳の穴もみは非常に役立ちます。

さらに、美容面でもお勧めです。顔のむくみを取って血色をよくするため、小顔効果、美顔効果も期待できるでしょう。私自身、耳の穴もみによって、眼精疲労と鼻づまりが解消しています。

私は、自分の3人の子供たちに、耳の穴もみをしてあげることがあります。すると、しばらくすると子供たちの体の緊張がほぐれて体が温まり、目がトロンとしてきます。

耳の穴もみには、一定のリラックス効果があるので、ストレスからくる過敏性腸症候群などにも効く可能性があります。

ここまでお話ししてきたように、耳の穴もみは多様な効果を発揮しますが、長年悩まされてきた不定愁訴などの場合、効果がすぐに現れるとは限りません。できるだけ根気よく、2~3ヵ月間は、耳の穴もみを続けてみてください。

ただし、耳の穴の中は敏感な場所なので、皮膚を傷つけないよう注意して行いましょう。

いつでもどこでも気軽にできる耳の穴もみは、副作用もありません。皆さんも健康のため、ぜひ活用してみましょう。

画像: この記事は『壮快』2019年10月号に掲載されています。

この記事は『壮快』2019年10月号に掲載されています。

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