イギリス国外で初めて開催されるロンドン・ナショナル・ギャラリーの大規模所蔵作品展が、東京・上野の国立西洋美術館で開催されている。新型コロナウイルスの影響で、会期が変更になり、日時指定券の購入が必要など、異例の対応となっている。チケット購入方法や、7月週末に訪れた混雑状況、学芸員が解説するおすすめ動画を紹介する。
ロンドン・ナショナル・ギャラリー展に行ってみた!
ロンドン・ナショナル・ギャラリーとは
ロンドン中心部、トラファルガー広場に面して建つロンドン・ナショナル・ギャラリーは、2,300点を超える絵画を所蔵する世界屈指の美の殿堂だ。無料で入場することができ、年間を通して、日本人のみならず、世界中から多くの観光客が押し寄せるロンドンの人気観光スポットだ。
現在開催されているロンドン・ナショナル・ギャラリー展ではクリヴェッリの《受胎告知》やゴッホの《ひまわり》など、同館所蔵の名品61点が初来日。これまで、英国外で同館所蔵作品展が開催されたことはなく、世界初の試みで、歴史的な開催となる。TOKYO2020のオリンピックイヤーだからこそ、実現できたとも言われる前代未聞の企画展だ。
<ロンドン・ナショナル・ギャラリー展 概要>
【東京】
場所:国立西洋美術館(東京・上野公園)
開催日:2020年6月18日(木)~10月18日(日)
【大阪】
場所:国立国際美術館(大阪・中之島)
開催日:2020年11月3日(火・祝)〜2021年1月31日(日)
チケット購入方法・発売時期
チケットの現地販売は行っていないので要注意
東京会場では、事前に入場日時を指定した「日時指定入場券」をスマチケ・イープラス・読売新聞オンラインチケットストア・ファミリーマート店頭Famiポートのいずれかで、購入する必要がある。
今後のチケット発売時期は、以下の通り。
入場時間区分は、30分ごとに区切って設定されている。ただし、本展は入れ替え制ではないので、一度入場すれば、好きなだけゆっくりと鑑賞することができる。
混雑状況はTwitterで確認
リアルタイムの混雑状況の確認方法
専用ツイッターで、会場状況が報告されている。
前売り券・招待券を持っていて、日時指定券を購入せずに直接会場へ行く予定の人は、入場整理券の配布有無などの状況を確認できる。混雑すると入場できないこともあるので、「前売券・招待券用 日時指定券」200円を購入すれば、確実に入場できる。
ロンドン・ナショナル・ギャラリー展(東京展)
@国立西洋美術館会期:2020年6月18日(木)~10月18日(日)
※ただし、6月18日(木)~21日(日)は前売券・招待券をお持ちの方と無料鑑賞対象の方の方のみご入場いただけます休館日:月曜日、9月23日
※ただし、7月13日、7月27日、8月10日、9月21日は開館— 【公式・会場状況】ロンドン展 (@now_london20art) June 4, 2020
7月週末の状況をレポート
入場口での感染症対策は?
日曜日の〈14時半~15時入場〉のチケットを購入して、本展へ行った。会場の外に人が多く集まるような場所はなく、どちらかというと閑散としている印象だ。超人気企画展とは思えないような、静かな光景だ。
前売り券・招待券の入口と、日時指定券の入口が、左右分かれていたが、どちらも列ができている様子はなかった。会場外に、ソーシャルディスタンスを保つための線も引かれていなかったので、おそらく列が長くなるということは、あまりないのではないか。
14時50分に入館。建物に入ると、まずアルコールで手指を消毒し、マスク着用がよびかけられていた。入場者が見た目でわかる検温は実施されていなかった
〈14時半~15時入場〉の列に人は並んでいなかったので、チケットを切り、そのまま階下の展示室へ行くことができた。14時50分時点で、〈15時~15時半入場〉のチケットを持つ人が15人ほど、館内で一定の距離を保ちながら、待っていた。
ゴッホの『ひまわり』をゆっくり鑑賞
人気企画展ともなると、館内は混雑し、お目当ての作品にたどり着くまでも一苦労という印象。しかし、本展では、日時指定チケットの導入と入場制限により、混雑はなく、驚くほど自由に好きなだけ鑑賞することができた。
筆者が訪れた時は、クリヴェッリの《受胎告知》の前で7~8人が鑑賞。一番の注目作品であるゴッホの《ひまわり》の前でも、多くて15人程度、少ない時間は3人程が鑑賞していた。
そのほかの人気作品の前は、常に数人。ある作品の前には誰もいないというような光景も見られた。ロンドンの本家ナショナルギャラリーでも、こんなにゆっくり贅沢に鑑賞できる機会は滅多にないのではないだろうか。
東京に来れない方に「無料解説動画」を公開
主催者が公開する解説動画
新型コロナウイルスの影響で、展示が全て完了しているにも関わらず、お客さんを入れることができなかった国立西洋美術館。そこで、なんとか全国の人に楽しんでもらいたいという想いから、本展の監修者である川瀬佑介さん(国立西洋美術館研究員)が、会場の実際の作品の前で見どころの解説を行う動画をYouTubeで無料公開している。美術展を訪れる前の予習に。鑑賞後の復習に。そして、東京に来ることができない全国の皆さんに、ぜひじっくり見てもらいたい。
イントロからセクションごとに7つの動画が公開されており、「ロンドン・ナショナル・ギャラリー展」必見の作品を解説付きで見ることができる。
ロンドン・ナショナル・ギャラリー学芸部長の解説動画
ブリティッシュ・カウンシルは、ロンドン・ナショナル・ギャラリー学芸部長のクリスティン・ライディングさんが、国立西洋美術館の会場から主要作品を紹介する動画を公開している。約30分の動画だが、前述した監修者の川瀬さんとはまた違った視点で語られることもあり、こちらの動画も必見だ。
まとめ
名画を鑑賞できる貴重な機会を逃さないで
会期変更や日時指定券の導入、ギャラリートークに代わる解説動画の公開など、より多くの人に安心して鑑賞してもらいたいという、主催者側の心意気が感じられる企画展。いつでも自由に訪れることができない不便さはあるものの、人気企画展では避けられない長蛇の入場列に並ばなくてすむことや、ゆっくり鑑賞できる展示室など、訪れる側のメリットも多い。
空きがあれば、当日でもインターネットでチケットを購入してから入場することもできる。美術ファンはもちろん、ゴッホの《ひまわり》しか知らないという人も。世界中の人が「一生に一度は見たい」と口をそろえる作品の前に立てる、貴重な機会を逃さないでほしい。
◆小嶋彩葉(編集ライター)
医療系広告代理店の勤務を経て、編集兼ライターとして独立。現在は、子育て・旅行・映画関連記事などを中心に執筆活動を行う。また、2児の母として、育児に奮闘中。