具体的な庭づくりの基本手順を紹介します。理想の庭を実現するためにも今の庭をしっかりと観察して、現状を把握することが大切なポイントになります。人気のナチュラル、和モダン、イングリッシュテイストなど具体的にイメージしましょう。【解説】戸倉多未子(ガーデナー)
著者のプロフィール
戸倉多未子(とくら・たみこ)
有限会社グレイスオブガーデン代表。ガーデナー。暮らしを豊かにする緑の庭づくりをモットーに、小さな庭からエクステリア、ガーデンリフォームまでオリジナルガーデンを手がける。化学肥料に頼らない、自然の恵みを生かした庭づくりを得意としている。ガーデニング講師歴30年、ガーデニング関連の雑誌などでも活躍中。
▼グレイスオブガーデン(公式サイト)
▼戸倉多未子(facebook)
▼@tamikosanexma(Twitter)
▼tamiko.tokura(Instagram)
本稿は『小さな庭のつくり方』(永岡書店)から一部を抜粋して掲載しています。
庭カルテをつくろう
質問に答えて、あなただけの庭カルテを完成させよう
わが家の庭KARTE(カルテ)
Q1 庭でしたいことは?
家族の意見も聞きながら、庭でしたいこと、必要な要素を具体的に考えていきましょう。
(例)
□畑で野菜づくりにチャレンジしたい
□ティータイムを楽しみたい
□日曜大工の道具置き場がほしい
□芝生でくつろぎたい
Q2 どんなテイストが好き?
和? ナチュラル? など好みのテイストをもとに、全体の方向性をイメージしてみましょう。
(例)
□草花や木がいっぱいのナチュラル
□落ち着いた和モダン
□イギリスの田舎風景
□南国のようなリゾート
□雑貨がいっぱいの庭
□樹木がうっそうとした雑木林
Q3 庭にとり入れたい要素は?
気になるキーワードにチェックを入れましょう。
(例)
□花壇
□ウッドデッキ
□芝生
□アプローチ(小道)
□バラのパーゴラ(つる性の植物をからませる構造物)
□パティオ
Q4 どんな草花を植えたい?
あこがれの植物、好きな形、目的に合わせたものをひとつ決めてそこからイメージを広げてみましょう。
(例)
□紅葉を楽しめる樹木をシンボルツリーに
□レモンなどの実がなる樹木で収穫してみたい
□ローメンテナンスですむ木にしたい
□憧れのバラ
□とにかく花をいっぱい咲かせたい
Q5 今の庭の気になるところは?
改善したい点、困っている点などを書き出してみましょう。
(例)
□狭すぎる
□日あたりが悪い
□土のあるスペースがない
□道路の歩行者の視線が気になる
□エアコンの室外機や給湯器が気になる
まずは今の庭の現状チェックからスタート
具体的な庭のプランニングをする前に、まず今の庭の状況や環境、家のまわりのスペースをよく観察することが大切です。上の質問項目に回答しながら、自分の庭のカルテをつくってみましょう。
おおまかなカルテを完成させたら、さらに細かく記録します。例えば庭の日あたりがよいなら、1日の日照時間はどのくらいか、今まで植えたことのある植物など、気づいたことをメモしてみましょう。
また、庭の入口、居間、2階のベランダなど、いろいろな角度から庭を眺めて、写真を撮るのも有効です。写真で客観的に見直すことで、今まで気づかなかった庭の長所や短所を発見することができます。
庭で何をしたいかを考える
01 家の中から庭を眺めたい
02 友人を招いてお茶会をしたい
03 ペットや子どもが遊べるスペースをつくりたい
04 畑をつくって野菜を育てたい
05 バーベキューを楽しみたい
06 道路からの視線を遮りたい
家族構成の変化も考慮して庭の使用目的を考えよう
庭づくりのステップの中でもっとも大切なのが、庭で何をしたいかを考えること。家族の意見もとり入れながら、庭でどう過ごしたいのかを検討しましょう。
また、庭の使用目的も年月が経つと変わっていきます。
例えば共働きでお手入れの楽な石のテラスにしたけれど、時間が経って家庭菜園をはじめたくなったとなると、工事が必要になります。子どもが芝生で遊べるように芝張りにしたけれど、子育てが忙しくて手入れができずに雑草だらけになってしまった……など、実際によく寄せられる声です。今の暮らしと家族構成をふまえたうえで、その先のことまで想像を巡らせてみましょう。
庭のテイストをイメージする
いちばん人気のナチュラル
ナチュラルな庭づくりに欠かせないのが、木材やレンガなど自然素材を使ったアイテムと草花です。空間に立体感が生まれるレイズドベッド(高さのある花壇)を使うのもおすすめ。
しっとり落ち着きのある和モダン
灯篭や飛び石などを配した和風の庭は落ち着いた雰囲気がありますが、暗い印象にもなりがち。和の構造物を残しながらも、思い切って洋風の植栽をとり入れるのもおすすめです。
なつかしい田舎の風景イングリッシュ
イギリスの田舎風景を思わせる庭には、バラやハーブ類の植栽がおすすめです。小道にレンガを敷いたり、オーナメントを置いたりしてもよいでしょう。
南国感ただようリゾート風
大ぶりの葉の熱帯植物を植えたり、コンテナを海外の壺に変化させると、南国リゾート風に変身します。庭の外壁を白くして明るく見せるのも効果的です。
植物をうまく植えることでさまざまなテイストが実現できる
次に庭のテイストを考えます。上に紹介したもの以外にも、バラが咲き誇るローズガーデン、アンティーク雑貨のあるブロカント風の庭、雑木林風など何通りものテイストが考えられます。レンガが好き、カラフルな色使いにしたいなど、キーワードから導き出してもよいでしょう。庭の本を参考にしたり、庭巡りをしてイメージを膨らませるのもおすすめです。
自宅とまわりの風景(庭から見える道路や隣家)との調和を考えることも大切ですが、狭いスペースなら、その環境とはまったく別のテイストにして、別世界をつくり上げるのも方法です。
植物を植えることで、家とまわりの環境は不思議と調和していきます。和風建築だから和の庭にするといったしばりを設けず、アイデアをどんどん膨らませてみましょう。
樹木を選ぶ
中・高木
高さが2mを超えるもの。中木と高木があり、高木は5m超になるものも。幹が太くてかたく、高さがあるので日よけにもなります。ただし、高木でも庭では3m程度で剪定することが多い。エゴノキ、ハイノキなどが人気。
常緑樹
1年中葉を茂らせる樹木。葉の大きな常緑広葉樹と、葉の細い常緑針葉樹があります。落葉しないので目隠し用の樹木として好まれています。オリーブ、ミモザ、ソヨゴなどが人気。
落葉樹
秋から冬にかけて葉を落とす樹木。葉の大きな落葉広葉樹と、葉の細い落葉針葉樹があります。ハナミズキ、ジューンベリー、ヤマボウシなどが人気。
果樹
食用になる果実をつける木です。落葉樹と常緑樹があり、樹高や枝の広がり方もさまざま。レモン、ブルーベリー、ユズ、フェイジョアなどが人気。
低木
生長しても高さが3m以下のもの。1m程度のものが多く、大きくても人の背丈くらいなのでお手入れのしやすさが魅力です。中・高木と花壇の植物とのつなぎ役にもなります。アジサイ、セイヨウニンジンボク、ミツマタなどがあります。
シンボルツリーがあると小さな庭がぐっと引き締まる
どんなに小さな庭でもシンボルツリー(庭のシンボルとなる木)を1本植えることで、空間に縦の要素が加わり、庭空間がぐっと引き締まった印象になります。これは樹木に限らず言えることですが、壁やフェンスを設けるなど、狭いスペースこそ縦の空間を思い切って有効に活用しましょう。
樹木選びの際に気をつけたいポイントはひとつ。剪定しやすい木を選ぶことです。どんな樹木も3年を過ぎると生長が加速します。樹木によって生長スピードは違うので、できる限り生長が遅く、樹形の美しい木を選びましょう。形が整っていると、ある程度放置しても美しい姿のまま保たれます。最初の樹木選びが、その後のお手入れのしやすさにつながります。
草花を選ぶ
一年草
発芽から花を咲かせて枯れるまで、1年以内の植物。花つきがよく、華やかな花色の植物が比較的多いで、花壇などの手前側に植えるとよいでしょう。マリーゴールド、サルビア、パンジーなど多種多様。
多年草
花が咲き終わったあとも枯れずに越冬し、翌年再び花を咲かせて数年間は楽しむことができる草花です。球根植物も多年草の一種で、ハーブ類は多年草が多いです。代表的なものにマーガレット、クリスマスローズ、タイム、カザニアなどがあります。一年草と宿根草の間を埋めるように植えましょう。
宿根草(しゅっこんそう)
シーズンオフには地上部が枯れても、地下根が生き続け、翌年も花を咲かせる植物です。冬場に枯れることを考えると、後ろめに植えるのがいいでしょう。本書では多年草の一種と考えます。代表的なものにデルフィニウム、エキナセアなどがあります。
テイストが決まると植物も決まる草花の形、質感、色で変化を出す
草花には、1年ごとに植え替えが必要な「一年草」と、一度植えれば毎年花をつける「多年草」があります。植える場所やお手入れのことなど、用途に合わせて選びましょう。
草花は、形、質感、色で変化を出すことができます。シャープな縦ラインが印象的な花、小さな花をたくさんつける花、ベルベットのような質感の花などさまざまです。
色の数は多いとごちゃごちゃして散漫な印象になるので、ひとコーナーにつき2~3色に絞るとよいでしょう。白、ブルー系などメインの花の色を決めたら、補色の黄色を添える程度に。
最近はカラーリーフの色や模様のバリエーションが豊富です。花と上手に組み合わせて、センスアップとローメンテナンスの一石二鳥をねらうのもおすすめです。
なお、本稿は『小さな庭のつくり方』(永岡書店)から一部を抜粋して掲載しています。下記の本は、知りたい情報の全文がコンパクトにまとまった一冊です。詳しくは以下のリンクをご参照ください。