【子供の口臭】ドブ臭い、うんちの臭い…原因と対策 歯磨きのコツとデンタルフロス、ブクブクうがいのススメ

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子供が近くで話をしているときなどに、「ん?子供の口が臭い?」と感じることはありませんか。大人ほど頻度は高くありませんが、子供も口臭が強くなることがあります。たまに臭う程度で、すぐに消失するなら気にしなくてもいいのですが、常に臭い、あるいは、強い口臭がしばしば感じられる場合は、対処が必要です。【解説】朝田芳信(鶴見大学歯学部小児歯科教授)

解説者のプロフィール

朝田芳信(あさだ・よしのぶ)

鶴見大学歯学部小児歯科教授。1986 年 日本大学松戸歯学部卒後、米国ジャクソン研究所に2年間留学。日本大学松戸歯学部小児歯科学講座助教授を経て2001 年より現職。2008年~2012年公益社団法人日本小児歯科学会理事長。日本小児歯科学会専門医認定委員会委員長など。著書に「保育者が知っておきたい子どもの歯と口の病気」(学建書院)、「ドクター朝田の間違いだらけの子どもの歯みがき」(春陽堂書店)など。

イラスト/鶴見大学小児歯科提供 取材・構成/狩生聖子

口臭の原因

口内細菌が原因の「ドブ臭」「うんち臭」

口臭は、大人も子供も同じで、大きく次の4タイプに分けることができます。

(1)生理的な口臭
朝、起きたときやお腹がすいているとき、緊張しているときなどに起こる。

(2)飲食によるもの
ニンニクなど、強い臭いの食べ物や飲み物で発生する。

(3)病的な口臭
むし歯、歯ぐきの炎症(歯周病)、鼻閉(アレルギー性鼻炎や副鼻腔炎など)によるもの。

(4)心理的口臭
実際には口臭がないのに、子供を見る周囲の視線やしぐさから、保護者が「うちの子の口臭がひどいのではないか」などと思ってしまう。思春期の子供の場合、本人がこのように感じてしまうことが多い。

小さなお子さんに圧倒的に多いのは、(1)の生理的口臭と(3)の病的口臭です。

いずれも、臭いの元は、「メチルメルカプタン」という揮発性の硫黄化合物です。ちょっと聞き慣れない言葉ですよね。これは、私たちの口の中にいる細菌の仕業によって発生する物質です。人間の口の中には500種類以上の細菌がすみついています。口中の細菌の種類や数は、人体の中で腸に次いで多いのです。

細菌の中には、食べかすや舌の表面からはがれ落ちた上皮をエサにしているものが多くいます。メチルメルカプタンは、これらのうち、たんぱく質を好む細菌の働きによって発生します。細菌が食べかすなどに集まり、たんぱく質を分解する際に起こる臭いなのです。

メチルメルカプタンのにおいは、「ドブのにおい」とか「うんちのにおい」「腐ったタマネギのにおい」と形容されるほど強烈です。実際、「子供の口からドブのにおいがする」という、親御さんからの相談も少なくありません。

唾液が減ると口臭が強くなる

どんなに歯みがきをしっかりしても、食べかすはゼロにはできません。つまり、上記(1)の生理的口臭は、強弱の違いこそあれ、誰もが持っているものなのです。

生理的口臭は、朝の起床時に強くなります。睡眠中は口の中の唾液が減り、自浄作用が低下するため、悪臭を発する細菌が繁殖しやすいからです。そのほかにも、緊張やストレス、空腹時にも唾液の分泌が減少します。ですから、口がたまに臭う程度で、歯磨きをしたり、口をゆすいだりしてすぐに消失するようなら、気にしなくてもいいでしょう。

しかし、子供の口が常に臭い、あるいは、強い口臭がしばしば感じられる場合は、対処する必要があります。こうした口臭は、お子さんの年齢や口臭が強くなる時間帯によって、ある程度その背景がわかるので、対策を立てることが可能です。具体的に解説していきましょう。

むし歯と口臭の関係

4~5歳、あるいは7歳前後に、それまでなかった口臭が頻繁に感じられるようになった場合、むし歯が引き金である可能性が高いでしょう。

4~5歳は乳歯が生えそろう年齢、7歳前後は一番奥に「第一大臼歯(通称・6歳臼歯)」という永久歯が生えてくる年齢です。いずれも、子供のむし歯が最も発生しやすい時期です。

4~5歳で乳歯が生えそろうと、歯と歯の間のむし歯が多くなります。また、7歳前後に生えてくる第一大臼歯は溝が深く、この部分にむし歯ができやすくなります(約50%がむし歯になっているという報告もあります)。

むし歯菌が、口臭と直接、関係するわけではありません。しかし、むし歯ができると穴のあいた部分に、食べかすが詰まりやすくなります。これが大きな原因です。また、むし歯のある歯は健康な歯に比べ、汚れが付着しやすく、通常のブラッシングだけでは食べかすが取り切れないことが多いのです。結果、汚れが何日もたまり続け、放置される状態になるので、ここに細菌が集まり、口臭が起こりやすくなります。

口臭が強くなる時間帯は?

朝ものすごく臭い場合は「口呼吸」が原因かも

次に、口臭が強くなる時間帯から探ってみましょう。

前述のように、朝起き抜けの口臭はあまり気にする必要はありませんが、口臭が強すぎる場合は「口呼吸」が原因である可能性があります。口を開けたまま眠ると、口の中がより乾燥して細菌が増殖します。まずは、お子さんが寝ているときの状況を観察してみましょう。

口呼吸の原因が、アレルギー性鼻炎など鼻の病気(鼻呼吸が難しい状態)であれば、耳鼻咽喉科の治療でよくなります。ただ、鼻の病気がなくても、口呼吸になっている子供がたくさんいます。口を閉じるのが苦手で、自然と口が開いてしまう子供が増えているという指摘もあります。口呼吸が習慣化すると、口やのどが乾燥してウイルスや細菌が繁殖しやすくなり、感染症にもかかりやすくなります。

耳鼻科で異常が見られず、口呼吸のクセがある場合は、歯科医師に相談するといいでしょう。歯科医院は、歯を中心に口の中をトータルで診てもらえる場所です。口の機能を改善するセルフケアを教えてもらって実行すると、改善するケースも少なくありません。後述しますが、私は口呼吸の改善に「ブクブクうがい」を勧めています。

口呼吸がないのに朝の口臭が続く場合は、寝る前の口腔ケアが不十分である可能性があります。就寝前の歯の清浄についても、のちほど解説します。

日中の口臭は「食べかす」が原因

日中に子どもの口が臭い場合は、食べかすの影響が強いでしょう。この場合も、「飲食後、しばらくしてから口臭が起こる」のか、「飲食後、すぐに口臭が起こる」のかで、食べかすのついている場所の予測がつきます。

「飲食後、しばらくしてから」の場合は、歯自体に汚れがたまっていることが多く、前述のようにむし歯がある可能性が高いと考えられます。

一方、「すぐに口臭が起こる」場合は、舌に食べかすが付着している可能性が高くなります。舌をベーっと出したときに、舌に白い物(舌苔)がついていたら、まず間違いないでしょう。舌の表面は新陳代謝が激しく、古くなると上皮がどんどんはがれ、新しい細胞ができていきます。同時に、食べかすがたまる場所でもあり、これらが積み重なったものが舌苔です。舌苔は、飲食をきっかけに刺激されやすく、舌の細菌が活発に働いて臭いを発します。

口臭を改善するセルフケア

子供でもデンタルフロスは必須

子供の口臭対策で最も大事なのは、食べかすを取り除くための口腔ケアです。ブラッシングだけでは歯と歯の間の汚れが取り除けないので、デンタルフロスを使う習慣をつけましょう。歯ブラシだけで落ちるデンタルプラーク(歯垢、細菌のかたまり)の除去率は58%であるのに対して、デンタルフロスを加えると86%まで上がるという研究報告があります。

デンタルフロスには、必要な長さにフロスを切り取って指に巻き付ける「ロールタイプ」と、持ち手にフロスが取り付けられている「ホルダータイプ」があります。どちらを使っても構いません。ホルダータイプには、尖った部分がなく、かわいいキャラクターがついている「子ども用」もあります。

なお、ホルダータイプのデンタルフロスと似ているものに「歯間ブラシ」がありますが、これは歯のすき間が広い大人や歯周病の人に向くセルフケア商品です。歯のすき間が狭い子供には向きません。

デンタルフロスは4~5歳から使うことを勧めています。親御さんが使っている様子を見せると、子供も興味を持つようになります。最初は手助けをしながら、むし歯ができやすい奥歯を中心に、フロスを使ってみましょう。

仕上げみがきは少なくとも8歳まで

また、子供の歯磨きは、できるだけ親御さんが仕上げ磨きをしてあげましょう。子供はひじや肩がぐらぐらと動き、歯ブラシが適切な場所になかなか当たらないものです。このため、できれば姿勢の安定する8歳くらいまで、仕上げ磨きをしてあげてください。第一大臼歯(通称・6歳臼歯)が生え始めてからの2年間は、永久歯が最もむし歯になりやすい時期でもあります。その点からも、8歳までは仕上げみがきをしてあげましょう。

舌苔が付着している場合は、仕上げみがきの際に、歯ブラシでやさしく「舌みがき」をして、汚れを取り除いてあげましょう。汚れをかき出すイメージで、歯ブラシを舌の奥(根本)から手前(先)に向けてゆっくり動かします。舌みがき用のブラシを使ってもいいでしょう。

就寝前には必ず歯磨きを

子供の歯磨きは一日何回行うべきか?という問い合わせは、数多く寄せられます。「朝昼晩は大変!」「その都度、仕上げ磨きは無理!」と思われる方が多いのでしょう。

結論から申し上げますと、歯磨き(デンタルフロスと舌磨きも含みます)は、就寝前には毎日必ず行ってください。それ以外の、「朝起きてすぐ」「朝食後」「昼食後」「夕食後」などは、ブクブクうがいなど、可能な範囲のケアでOKです。前述したように、就寝中は唾液の分泌量が減り、自浄作用が働きにくくなります。歯や舌の汚れを取らずに寝てしまうと、むし歯のリスクが高まるのはもちろん、口臭の原因となる細菌も増殖します。就寝前には、必ず歯磨きとフロス、舌磨きをしましょう。

「ブクブクうがい」のすすめ

歯みがきに加えて、ぜひお勧めしたいのが、食後の「ブクブクうがい」です。

ブクブクうがいは簡単でありながら、口の中の汚れを取り除くのにとても効果的です。口臭予防はもちろん、むし歯や歯周病予防にも役立ちます。

また、ブクブクうがいを習慣にすることで、頬の筋肉と口の周りの口輪筋が鍛えられるので、咀嚼する力がつき、食べる機能が発達します。また、口を閉じる筋肉も発達するので、口呼吸の改善も期待できます。口の乾燥を防ぐことができ、口や舌の自浄作用が働くようになります。舌苔もできにくくなるでしょう。

子供が歯みがきやフロスをどうしても嫌がる場合は、ブクブクうがいだけでもけっこうです。ただしブクブクうがいは、正しく行ってこそ、効果があります。「口の中に水を行き渡らせ、汚れをしっかり洗い流す」ことを意識しながら、取り組みましょう。4歳くらいからは比較的すぐにできるようになりますが、練習を兼ねて、3歳ごろから始めるといいでしょう。

ブクブクうがいの際、口がうまく閉じられず水が漏れてしまう場合は、口周辺の筋肉がまだ弱いと考えられます。水を口に含まずに頬を膨らませる「空気うがい」で練習を重ねると、筋肉が鍛えられ、ブクブクうがいができるようになります。

ステップ1:空気うがい

(1)口に空気を含み、両頬を5秒間、ぷーっと膨らませます。

(2)次に片方の頬だけ、5秒間膨らませます。このとき、膨らんでいないほうの頬を手で押さえると、やりやすくなります。

(3)(2)を左右交互に行います。
*空気の移動を感じるようにするのがコツです。

(3)最後に、頬にためた空気を、舌を出しながら吐き出します。

ステップ2:水を含んだ状態で「空気うがい」をする

実際に、少量の水を口に含んだ状態で、ステップ1の動作を行います。左右交互に5秒間ずつ行い、吐き出します。少しずつ時間を長くし、10秒間ずつ水の移動ができるようにしていきます。ここまでマスターすれば、ブクブクうがいはすぐにできるようになります。
*親御さんが、子供の頬を軽く触って、水をどちらの頬にためるのか指示してあげると、上達が早いようです。

ステップ3:ブクブクうがいをやってみよう

水を口に含んだ後、左右交互に移動する時間を徐々に早くしていきます。「クチュ(右)、クチュ(左)、クチュ(右)」といった具合に繰り返し行います。これを20~30秒間行った後、水を吐き出します。これができたら、ブクブクうがいは完成です。毎日、歯みがきの後や食後などに行う習慣をつけましょう。

まとめ

子供の口臭は、口腔内に残った汚れによって、悪臭を発する細菌が繁殖することが主な原因です。歯磨きやデンタルフロス、舌磨き、ブクブクうがいなどで、口臭の元となる汚れを洗浄しましょう。子供のうちに、口腔を清潔にする習慣を身につけ、口呼吸を直しておくと、一生の宝物になります。大人も子供も、歯や舌をきれいにする意味をよく理解し、明るい雰囲気で歯磨きをしましょう。

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