各局が誇る珠玉のおすすめ番組を一挙紹介「新4K8K衛星放送で見ようよ!」に麻倉怜士さんが出演

本欄「麻倉怜士の4K8K感動探訪」が、テレビ番組になった。特選街webで前編・後編の2回に分け連載した「丸2年かけ4K修復した『男はつらいよ』全49作が BSテレ東4K で見られる!」。その記事を見たBSテレ東の幹部から「麻倉さんの記事の内容に沿って番組をつくりたい」と依頼があった。それが、2020年11月14日(土)に放映された、BSテレ東の「新4K8K衛星放送で見ようよ!」だ。この番組にインタビューされ、出演した話をしよう。

執筆者のプロフィール

麻倉怜士(あさくら・れいじ)

デジタルメディア評論家、ジャーナリスト。津田塾大学講師(音楽理論)、日本画質学会副会長。岡山県岡山市出身。1973年、横浜市立大学卒業。日本経済新聞社を経てプレジデント社に入社。『プレジデント』副編集長、『ノートブックパソコン研究』編集長を務める。1991年よりオーディオ・ビジュアルおよびデジタル・メディア評論家として独立。高音質ジャズレーベル「ウルトラアートレコード」を主宰。
▼麻倉怜士(Wikipedia)
▼@ReijiAsakura(Twitter)
▼ウルトラアートレコード(レーベル)

自局を代表する4Kコンテンツ「寅さん4K」

いまひとつ盛り上がりに欠ける4K/8K放送に注目してもらおうと、NHKとBS民放5社が、そのキャンペーンの一環として、4K8K放送の魅力をアピールする共同制作のPR番組を制作。11月にそれぞれのチャンネルで放送している。

BS日テレは、11月21日10時~10時15分、11月22日11時30分~11時45分まで15分番組を、BS朝日は11月14日10時~10時55分、11月29日11時~11時55分の55分番組、BS-TBSは11月21日23時~23時30分、11月28日18時30分~19時の30分番組だ。

各局の放送時間が異なるのは、共通コンテンツだけか、その局の独自4Kコンテンツを加えるかの違いだ。共通コンテンツは4K8Kのメリット、視聴方法、武田良太総務大臣、前田晃伸NHK会長、大久保好男民放連会長からのメッセージ、各局の自慢番組紹介…という内容だ。BS日テレは、独自コンテンツなしで、共通コンテンツのみだが、他局は独自コンテンツを後半に付けた

BSテレ東の30分番組は、前半がこの共通コンテンツで、後半の15分が、BSテレ東4Kの独自コンテンツだ。その独自コンテンツ部分が、今回紹介する「4K『男はつらいよ』全49作」についての話だった。

なぜ、BSテレ東が、「寅さん4K」を「自局を代表する4Kコンテンツ」として選んだのか。それは、非常に力の入った、あらゆる面で素晴らしい4K作品だからだ。

映画を見た時の感動性が得られる

そもそも、民放で「ピュア4K」は稀の稀だ。一作でも光るところが、2年を掛けて全49作を放送するというのだから、「BSテレ東4Kは、ピュア4Kで頑張っている!」と評価が上がるのは必至だ。松竹では、2019年は1969年の第1作公開から50年目の周年であり、それを記念してデジタルアーカイブ企画が持ち上がり、2年掛かりでデジタルマスタリングが敢行されていた。それにBSテレ東4Kが乗った形となる。

BSテレ東の「新4K8K衛星放送で見ようよ!」で、私はまずこう述べた。

「絵の成り立ちとしてすごくクオリティが高い。良い画質というだけでなく、映画を見た時の満足感とか感動性も得られるというのが第1印象でした」

実は、私は放送画質にも感動したが、大もとのオリジナルデジタルファイルが、もの凄い高画質であったことにも、さらに感心したのである。

先日、先進映像協会の映像表彰の「ルミエール・アウォード」の審査会があり、松竹からノミネートされた「4K『男はつらいよ』」の非圧縮オリジナルファイル(放送はHEVCフォーマットで圧縮)を見る機会があった。

放送も、さきほどのコメントで述べたように素晴らしい画質なのだが、非圧縮ファイルは、非常にクリヤーで、コントラストがしっかり描かれ、色の透明感も格段に高かった。さすが東京現像所とイマジカ、全力をあげて取り組んだ修復は素晴らしい成果を上げたと思った。ちなみに、ルミエール・アウォードでは「グッドプラクティス・アワード 2020」 を獲得している。

「新4K8K衛星放送で見ようよ!」での筆者

特選街web

「こんな色があったのか」が必ず発見できる

私は、放送ではさらにこう語った。

「『男はつらいよ』は、これまでも何回も見た人がおられると思いますが、絶対に違いますね。これまでのイメージを覆すような『こんな色があったのか』とか、『こんな階調、模様があったの』みたいなところが必ず発見できますね。初めて見る人でも『こんなにヒューマンな映像がこの世にあるのか』と思うでしょう。本当に日本の映画界における偉業だと思います」

特に注目すべきは、肌色だ。今回の4K修復の映像は、黒がしっかりとベースを作っている。さくらさんの黒髪は完全な黒ではなく、ちょっと赤が入っている。こうした「些細な色の違い」もはっきり分かる。肌は、まさに日本人の肌。質感がとても良く出ていて、中小企業の社長さんは頑張ってテカっている感じ。さくらさんはおっとりとした優しい肌だ。寅さんも事件が起こったり、憔悴する時にはそうした肌色になる。元気な時には、バイタリティのある光った肌色だ。

今回の大修復を指揮した五十嵐真氏(松竹映像センター取締役技術本部長)は、本欄「麻倉怜士の4K8K感動探訪」での記事にも登場していただいたが、BSテレ東の番組でも、インタビューされている。松竹的な考えが出ていてとても興味深い。

「女優をいかに美しく見せるか。寅さんが一瞬でマドンナとよばれる女優さんに恋します。その時、お客さんは寅さんと同じ目線でマドンナを見ているわけで、寅さんと同じように一瞬で、恋に落ちてもらうように、女性をきれいに撮る必要があります。例えば、とらやでマドンナが寅さんと再開する場面がありますが、久しぶりにマドンナと会えた寅さんの気持ちで、お客さんに見ていただけるように、マドンナをきれいに撮っていますね」(五十嵐真氏)

人物画が持つ「肌のパーソナリテイ性」は、今回の「4K寅さん」を見る、大事なポイントだ。各作品で登場人物、マドンナも違うが、寅さんを取り巻く家族、親戚は不変という、肌の違いと同一性を見る楽しみが初めて今回の修復で与えられた。4Kでこの番組を見るというのが、最も「男はつらいよ」のオリジナルに近い画でみることになるのである。

文/麻倉怜士

▼BSテレ東
「新4K8K衛星放送で見ようよ!」(再放送)
11月29日(日)17時~17時30分

「新4K8K衛星放送で見ようよ!」

BSテレ東4K『男はつらいよ』12月の放送予定

◆12月12日(土)
『男はつらいよ・柴又より愛をこめて』
18:30~20:54
マドンナ:栗原小巻

©1985 松竹株式会社

◆12月19日(土)
『男はつらいよ 幸福の青い鳥』
18:30~20:54
マドンナ:志穂美悦子

©1986 松竹株式会社

◆12月26日(土)
『男はつらいよ 知床慕情』
18:30~20:54
ゲスト:三船敏郎

©1987 松竹株式会社

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麻倉怜士(AV評論家)

デジタルメディア評論家、ジャーナリスト。津田塾大学講師(音楽理論)、日本画質学会副会長。岡山県岡山市出身。1973年、横浜市立大学卒業。日本経済新聞社を経てプレジデント社に入社。『プレジデント』副編集長、『ノートブックパソコン研究』編集長を務める。1991年よりオーディオ・ビジュアルおよびデジタル・メディア評論家として独立。高音質ジャズレーベル「ウルトラアートレコード」を主宰。

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