自分で精魂込めてつくった野菜は、スーパーマーケットに並んでいる野菜とは大きく違います。私自身の成功と失敗の経験値のなかで培った「加藤流」の野菜の育て方をご紹介します。育っていく野菜を想像し、収穫の楽しさを考えてみてください。そこに、やりがいや楽しさが見出せれば、野菜づくりは成功に大きく近づきます。【解説】加藤正明(東京都指導農業士)
執筆者のプロフィール
加藤正明(かとう・まさあき)
東京都練馬区農業体験農園「百匁の里」園主。東京都指導農業士。日本野菜ソムリエ協会ジュニア野菜ソムリエ。34歳まで民間企業に勤務したのち、家業の農業を継ぐ。2005年に「百匁の里」を開園、野菜づくりのノウハウからおいしい食べかたまで伝授している。野菜ソムリエ協会主催の第2回ベジタブルサミット枝豆部門で最高得点を得て入賞。NHK趣味の園芸「やさいの時間」では、番組開始時より栽培管理と講師を務める。著書に『加藤流 絶品野菜づくり』(万来舎)がある。
▼百匁の里(公式サイト)
▼やさいの時間(みんなの趣味の園芸)
▼専門分野と研究論文(CiNii)
本稿は『達人が教える!農家直伝 おいしい野菜づくり』(永岡書店)から一部を抜粋して掲載しています。
イラスト/小春あや、まんが・イラスト/上田惣子
はじめに
自分で精魂込めてつくった野菜は、スーパーマーケットに並んでいる野菜とは大きく違います。
完熟したトマトは香りたち、ニンジンは色濃くさわやかな風味をただよわせます。シュンギクはふわふわとやわらかく、生で食べると、ことのほかおいしいのです。とれたてのダイコンは力を入れなくても包丁の刃がスーッと通り、口に入れれば、とろけるようなみずみずしさ。
そのおいしさに、野菜が苦手な人の先入観がくつがえるのを、何度も見ています。
みなさんにそんなおいしい野菜を味わっていただきたく、私は「百匁(ひゃくめ)の里」という農業体験農園を開いています。農園では、老若男女さまざまな方が、野菜づくりを楽しんでいます。
そんな農園の方々の様子を見てきて気づいたことや、私自身の成功と失敗の経験値のなかで培った「加藤流」の野菜の育て方をご紹介します。
野菜づくりは、まず土づくりからスタートします。野菜がのびのびと根を張れるように、土をしっかり耕してやわらかくする必要がありますが、これはなんとも地味な、どちらかといえばつらい作業かもしれません。
けれど、ここが肝心。育っていく野菜を想像し、収穫の楽しさを考えてみてください。そこに、やりがいや楽しさが見出せれば、野菜づくりは成功に大きく近づきます。もちろん、楽しいことも次々と起こります。芽が出る、つるがまく、蕾がつく…少しずつの野菜の変化に、日々、一喜一憂するのも野菜づくりの醍醐味のひとつです。
基礎知識も網羅し、初心者の方でも迷わず始められるようになっています。
それぞれの野菜の育てかたは、わかりやすくイラストで順を追って解説しました。参考にしていただければ、「つくってよかった!」と思える、おいしい野菜ができるでしょう。みなさんの野菜づくりのお役に立てれば、たいへんうれしく思います。
プロローグ
野菜づくりを始めよう!
家庭菜園の多くは、自宅のほか、自治体の市民農園や民間の貸し農園を借りて始めます。理想は毎日、最低でも週に一度は行きたいので、無理なく通える場所に探しましょう。
(1)自宅の庭
毎日、観察や手入れができ、収穫もベストなときにすぐできる。日当たりや風通しが重要だが、スペースがあるなら、まずは庭から始めてみるのがよい。
(2)市民農園タイプ
区画を貸し出す、市町村が主催する市民農園など。道具など必要なものは自分で用意し、借りた場所で自由に栽培する。期間は1〜2年単位のところが多いが、いろいろなケースがある。
(3)体験農園タイプ
栽培指導が受けられ、設備も整っていることが多い。つくる野菜は決められていて、タネや苗も用意してくれる。きちんと学びたい初心者におすすめ。期間は1〜2年のところが多い。
step(1)
何をつくるか、野菜を知る
どんな野菜があり、育てやすいのは何か。また栽培上とても大切な「科」について知りましょう。
step(2)
いつどこで何を育てるか
好きな野菜を考えなしに育ててもよく育ちません。適した時期と、ポイントになる「輪作」を解説します。
step(3)
必要な道具とは
適した道具があってこそ、作業がスムーズにきちんと行えます。畑作業に欠かせない道具を知りましょう。
step(4)
栽培に適した土をつくる
野菜づくりの重大なポイントである土。しっかり耕し、酸度調整を行う方法を紹介します。
なお、本稿は『達人が教える!農家直伝 おいしい野菜づくり』(永岡書店)から一部を抜粋して掲載しています。詳しくは下記のリンクからご覧ください。