インゲンには、つるあり種とつるなし種がありますが、家庭菜園ではつるなし種がおすすめ。コンパクトに育って本支柱やつる用のネットの必要がなく、収穫まで50〜60日と短いため、手軽に栽培できます。7月上旬ごろまで何回か時期をずらしてタネをまくといいでしょう。【解説】加藤正明(東京都指導農業士)
執筆者のプロフィール
加藤正明(かとう・まさあき)
東京都練馬区農業体験農園「百匁の里」園主。東京都指導農業士。日本野菜ソムリエ協会ジュニア野菜ソムリエ。34歳まで民間企業に勤務したのち、家業の農業を継ぐ。2005年に「百匁の里」を開園、野菜づくりのノウハウからおいしい食べかたまで伝授している。野菜ソムリエ協会主催の第2回ベジタブルサミット枝豆部門で最高得点を得て入賞。NHK趣味の園芸「やさいの時間」では、番組開始時より栽培管理と講師を務める。著書に『加藤流 絶品野菜づくり』(万来舎)がある。
▼百匁の里(公式サイト)
▼やさいの時間(みんなの趣味の園芸)
▼専門分野と研究論文(CiNii)
本稿は『達人が教える!農家直伝 おいしい野菜づくり』(永岡書店)から一部を抜粋して掲載しています。
イラスト/小春あや、まんが・イラスト/上田惣子
ツルナシインゲン
難易度
★★
気をつけたい病害虫
- さび病
- 炭そ病
- モザイク病
- アブラムシ
- ハダニ類
など
成功&おいしさの決め手
●やわらかくておいしいサヤにするためには、適度な温度と湿度が必要。マルチを張って、地温を上げ、土中の水分を保とう。
●マメの粒が目立たないうちに、若どりを。サヤがやわらかく、シャキッとした歯ごたえが楽しめる。
畝づくり
植えつけの1~2週間前に、溝を掘って元肥を施し(溝施肥)、畝を立てます。穴あきの透明マルチを張ります。
元肥を施す
畝の中央となるところに深さ20cmの溝を掘って元肥を施し、土を埋め戻す。
元肥 溝1mにつき
●牛ふん堆肥 0.5ℓ
●有機配合肥料 20~30g
●熔成リン肥 10g
畝を立ててマルチを張る
高さ5~10cmの畝を立て、穴あきの透明マルチ(規格9230)を張る。
ココが決め手!
元肥の入れすぎは×。
つるばかりのびて実がならない
「つるボケ」を招く
インゲンなどのマメ科野菜の根には、根粒菌という土壌微生物が共生しています。根粒菌は、空気中のチッ素をとりこんで宿主であるマメ科野菜に提供します。チッ素は茎や葉の生長を促すので、元肥を与えすぎると、つるばかりのびて実つきが悪い「つるボケ」の原因になってしまいます。つるボケするとひょろりとのびて、倒れやすくなります。元肥を与えるときは、ほかの植物に比べて、控えめにするのがコツです。
(1)タネまき
マルチの各穴に、タネを3粒ずつまき、鳥よけ、強風よけのための防虫ネットをかけます。
穴をあけてタネをまく
マルチの穴に、指で深さ2cmのまき穴を3つあけて、タネを1粒ずつまく。土をかぶせてから手で押さえる(鎮圧)。そうすると、地中から水分が上がってくるので、水やりは不要。
防虫ネットをかける
防虫ネットをトンネルがけする。トンネル用の支柱を畝をまたぐように70~80cm間隔でさし、骨組みにする。防虫ネットの片端を結んでから骨組みにかぶせ、もう片端を結んでピンと張る。ネットのすそに土をのせて固定する。
重要!
鳥に狙われるので防虫ネットを必ずかける
マメ類の大きなタネは、特に鳥に狙われやすいもの。芽が出るまでの間、ネットをかけておくと安心です。
(2)間引き
初生葉(マメ類で双葉の次に出る葉)が開いたら間引きをし、1つの穴につき2株の2本立ちで育てます。
(3)支柱立て
ツルナシインゲンは本支柱やつる用のネットがなくても栽培できますが、強風などで倒れないように、仮支柱で支えるとより安定します。
草丈10cmになったら細い茎が風で
振り回されないように支える
長さ50~60cmの仮支柱を2本用意し、茎の太い部分をはさむように互い違いに地面にさす。仮支柱どうしをひもで結ぶと、より安定する。
(4)追肥
花がつき始めたら、サヤがよくつくようにするために、マルチの穴に化成肥料をまいて追肥します。
追肥 マルチ1穴につき
●化成肥料 10粒
(5)収穫
タネまきから50〜55日、サヤが13〜15cmになったら収穫します。サヤのつけ根をハサミで切りとります。
保存&おいしい食べ方
生のままか、ゆでて冷凍保存
生のまま冷凍する場合は、へたとかたいすじをとり、使いやすい長さに切るか、長いまま保存袋に入れて冷凍を。使うときは凍ったまま沸騰した湯に入れ、好みのかたさにゆでてから調理します。または、塩少々を入れた湯でかためにゆで、粗熱をとってから保存袋に入れて冷凍すれば、そのまま炒めものや揚げものに使えて重宝します。冷蔵はそのまま保存袋に入れて。
冷蔵保存:1週間
冷凍保存:1カ月
油揚げなどと煮ものにしたり、
天ぷら、フライなど揚げものに
細切りにした油揚げや豚肉と一緒に炒め、酒、みりん、しょうゆで味つけして、やわらかくなるまで煮れば、ご飯のおともにぴったり。油との相性もいいので、天ぷらやフライなど、揚げものにするのもおすすめです。
なお、本稿は『達人が教える!農家直伝 おいしい野菜づくり』(永岡書店)から一部を抜粋して掲載しています。詳しくは下記のリンクからご覧ください。
※㉑「初心者向けの人気野菜 コマツナの育て方」の記事もご覧ください。