漢方では、全身のバランスを整えることを目指します。その結果、主要な症状を治そうとすると、思ってもいなかった他の不調も連動して改善することができます。具体的には、人間の体を「肝・心・脾・肺・腎」の五臓に分類します。五臓はそれぞれが連携して、「気・血・水」を巡らせたり、貯蔵したり、活用したりしながら健康を保っています。そして臓器によって、どのような生活習慣から影響を受けやすいのかが異なります。【解説】大久保 愛(薬剤師)

執筆者のプロフィール

画像: 執筆者のプロフィール

大久保 愛(おおくぼ・あい)

薬剤師、国際中医師、国際中医美容師、漢方カウンセラー。アイカ製薬株式会社代表取締役、漢方生薬研究所開発責任者、一般社団法人腸内細菌検査協会理事、株式会社東進メディカルアドバイザー。秋田県出身。昭和大学薬学部生薬学・植物薬品化学研究室卒業。秋田の豊かな自然の中で、薬草や山菜を採りながら暮らす幼少期を過ごし、漢方や食に興味を持つ。薬剤師になり、北京中医薬大学で漢方・薬膳・東洋の美容などを学び、日本人で初めて国際中医美容師資格を取得。漢方薬局、調剤薬局、エステなどの経営を経て、漢方・薬膳をはじめとした医療と美容の専門家として活躍。おうちで薬膳を手軽に楽しめる「あいかこまち」を開発。漢方カウンセラーとして、年間2000人以上の悩みに応えてきた実績を持つ。著書『1週間に1つずつ 心がバテない食薬習慣』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)は発売1カ月で7万部のベストセラーに。そのほか、女性の体に特化した『女性の「なんとなく不調」に効く食薬事典』(KADOKAWA)を出版するなど、「食薬」の普及を行っている。
▼アイカ製薬(公式サイト)
▼@Ai_loveflower(Twitter)
▼aivonne85(Instagram)

本稿は『女性の「なんとなく不調」に効く食薬事典』(KADOKAWA)の中から一部を編集・再構成して掲載しています。

人間の体質は5つに分けられる

漢方では、「整体観念」という考えを柱としています。人間は自然界の一部であるため、自然の変化にも影響されるというものです。

自然界には、不変的なものはなく、常にすべてが連動し、変化しています。当然、人間も自然の変化に影響されて体調が変化します。

例えば、気圧が変化し、大きな雲が風によって流れ、それにより分厚い雲で太陽は陰り、雨が降り、湿度が上がり、日照時間が短くなります。

そうすると、人の汗は蒸発しづらくなり、体温調節が難しくなり、自律神経が乱れ、日光によってつくられる神経伝達物質のセロトニンや、骨を強くするビタミンDの量が減少します。

このように考えると、自然と人はそれぞれ単独で存在しているのではなく、連動して存在していることがよくわかりますよね。

また、体の不調も、独立して存在しているのではありません。不調は必ず何かと連動していると考えます。不調をきたしている部分だけを薬で抑えたとしても、それに連動する臓器に影響が及ぶため、他の部分に支障が生じると考えるのです。

そこで漢方では、全身のバランスを整えることを目指します。その結果、主要な症状を治そうとすると、思ってもいなかった他の不調も連動して改善することができます。

この関連性をひもとくために、漢方では「五行説」を使います。五行説では、人間を含め、自然界にあるすべてのものを5つに分類します。

具体的には、人間の体を「肝・心・脾・肺・腎」の五臓に分類します。

五臓はそれぞれが連携して、「気・血・水」を巡らせたり、貯蔵したり、活用したりしながら健康を保っています。

そして面白いことに、臓器によって、どのような生活習慣から影響を受けやすいのかが異なります。

  • ストレス→「肝」
  • 血行不良→「心」
  • 冷え→「脾」
  • 便秘→「肺」
  • 不眠→「腎」

どの臓器が強いか・弱いかは、人それぞれの傾向があります。

例えば、ストレスが多いと体調をくずす人がいます。しかし、その人は多少冷えたくらいでは体調をくずさないかもしれません。また、ストレスが多いと体調をくずすけれど、多少の寝不足は平気な人もいます。

逆に、冷えたり寝不足になったりするとカゼを引くけれど、ストレスには動じない人もいます。

これは、生理周期や年齢によっても変化していきます。

「20代の頃は食べすぎても平気だったのに、今はすぐに体調に出る」とか「生理前はストレスに弱くなって胃痛があるけど、普段は問題ない」といったことを感じたことはないでしょうか?

今の自分の状態を把握したうえで、五臓のバランスを整えていくことが大切です。

気・血・水を巡らせる5つの臓器

画像: 気・血・水を巡らせる5つの臓器

ストレス体質(嗅覚)

  • ストレス
  • PMS(月経前症候群)
  • 解毒
  • 貯蔵鉄(フェリチン)の不足
  • 自律神経
  • 肝血流の低下

血行不良体質(視覚)

  • 貧血
  • 運動不足
  • 生理痛
  • 酸素や栄養の巡りが悪い
  • ヘモグロビン値が低下

冷え体質(味覚)

  • 冷え
  • 胃の不調
  • 内臓下垂
  • 体のエネルギーをつくる
    ミトコンドリアの働きが低下
  • 排卵異常
  • 膵臓の働き

便秘体質(触覚)

  • 便秘・下痢
  • 呼吸
  • 免疫系の乱れ
    (リンパ球・顆粒球のバランス)
  • 肌・粘膜が弱い(アレルギー・鼻炎)
  • 生理前の肌荒れ

不眠体質(聴覚)

  • 寝不足
  • 生理不順
  • 更年期障害
  • 腎臓の働き(エリスロポエチンなど)
  • 副腎の働き(コルチゾールなど)
  • 内分泌系

食薬と五感の結びつき

▼癒すとよい五感

嗅覚

▼五臓の働きを乱す習慣(漢方的解釈)

ストレス
(自律神経が乱れ、肝血流量の低下による「肝気鬱結」)

▼起こりやすい状態

貯蔵鉄(フェリチン)が不足している「肝血虚」

▼とりたい栄養素

アブラナ科の野菜、柑橘系、鉄、タンパク質、ビタミンC

▼具体的な食材

ローズマリー/鶏肉/アサリ/小松菜/
レモン/ブリ/ルッコラ/ユズ/
菜の花/タコ/グレープフルーツ/
バジル/セロリ/ホタテ/春菊/海苔/
マスタード/サーモン/クローブ/
カルダモン/オレンジ/イカ

▼不調を放置すると

「脾」が弱る冷え体質に
(交感神経が優位になり、胃に負担がかかる「肝脾不調」)

▼女性特有の症状

PMS(月経前症候群)

▼癒すとよい五感

視覚

▼五臓の働きを乱す習慣(漢方的解釈)

血行不良
(全身の毛細血管に酸素や栄養の届かない「心気虚」)

▼起こりやすい状態

貧血気味で体を巡る血が不足している「心血虚」

▼とりたい栄養素

夏野菜、良質な油(オメガ3脂肪酸・脂溶性ビタミン、短鎖脂肪酸)、スパイス、鉄

▼具体的な食材

アジ/大葉/卵/サバ/オイルサーディン/
パプリカ/チアシード/ココア/レバー/
パセリ/ローズ/ミント/カボチャ/
ココナッツオイル/サフラン/塩鮭/
アボカド/ニンジン/シナモン/
ブラックペッパー/カキ/カレーパウダー

▼不調を放置すると

「肺」が弱る便秘体質に
(血の不足で酸素の供給が低下して肺に影響し、呼吸をつらく感じる「心肺気虚」)

▼女性特有の症状

生理痛

▼癒すとよい五感

味覚

▼五臓の働きを乱す習慣(漢方的解釈)

冷え
(胃腸の働きや血流量が低下し代謝が悪くなる「湿困脾胃」)

▼起こりやすい状態

胃が弱くて疲れやすく、ミトコンドリアの動きが悪くATPが不足する「脾気虚」

▼とりたい栄養素

消化補助食材、ビタミンB群、
マグネシウム、鉄、タンパク質

▼具体的な食材

鶏ひき肉/タマネギ/煮干し/おでんの具材/
切り干し大根/干しシイタケ/とろろ昆布/
マイタケ/梅干し/大根おろし/キャベツ/
塩昆布/シジミ/モロヘイヤ/牛すじ/
ゴボウ/フェンネルシード/
コリアンダーシード/干しスルメ/
カブ/小エビ/オクラ

▼不調を放置すると

「腎」が弱る不眠体質に
(冷えにより膀胱が収縮しトイレが近くなる「脾腎陽虚」)

▼女性特有の症状

排卵異常

▼癒すとよい五感

触覚

▼五臓の働きを乱す習慣(漢方的解釈)

便秘
(横隔膜や腸の動きが悪い「肺気虚」)

▼起こりやすい状態

便秘やアレルギー体質でリンパの巡りが悪く、免疫が低下する「肺陰虚」

▼とりたい栄養素

発酵食品、食物繊維、ネギ類、ビタミンB群、ミネラル

▼具体的な食材

杏仁/葛粉/こんにゃく/米ぬか/
里芋/高野豆腐/みそ/卵黄/大根/
豚バラ/レンコン/ショウガ/ささみ/
ニラ/オオバコの種皮/オリゴ糖/
オートミール/バナナ/ニンニク/
ネギ/もち麦/ザーサイ

▼不調を放置すると

「肝」が弱るストレス体質に
(腸内で発生したガスを肝臓が無毒化できず負担になる「肝胆湿熱」)

▼女性特有の症状

生理前の肌荒れ

▼癒すとよい五感

聴覚

▼五臓の働きを乱す習慣(漢方的解釈)

寝不足
(内分泌系や脳に負担がかかる「腎陰虚」)

▼起こりやすい状態

むくみやすく、腎臓でつくられるホルモンが不調な「腎陽虚」

▼とりたい栄養素

亜鉛、マグネシウム、ビタミンD、ビタミンC、ビタミンB群

▼具体的な食材

納豆/酢/ひよこ豆/うずらの卵/
カシューナッツ/マッシュルーム/
クルミ/栗/枝豆/キクラゲ/小豆/
玄米/ギンナン/山芋/アーモンド/
ヒジキ/ピーナッツ/モヤシ/黒豆/
黒ゴマ/ピスタチオ/ラム肉

▼不調を放置すると

「心」が弱る血行不良体質に
(腎臓がつくる造血ホルモンの産生低下が心臓に影響する「心腎不交」)

▼女性特有の症状

生理不順、更年期障害

なお、本稿は『女性の「なんとなく不調」に効く食薬事典』(KADOKAWA)の中から一部を編集・再構成して掲載しています。 詳しくは下記のリンクからご覧ください。

画像: 【五行説の性質】五臓の働きと「食べもの」との深い関係 肝・心・脾・肺・腎と病気を考える
女性の「なんとなく不調」に効く食薬事典
¥1,270
2021-01-02 10:39

※①「未病とは なんとなく不調の原因は?」の記事もご覧ください。

This article is a sponsored article by
''.