ストレスの影響を受けやすい人を、漢方では「肝」が弱っていると考えます。心も体も余裕を持ってゆったりと過ごし、アロマオイルなどで嗅覚に働きかけ、神経を癒してあげることが大切です。酸味のある食べ物や柑橘系など香り高いものは「気」の巡りを改善するので、ストレス解消に役立ちます。【解説】大久保 愛(薬剤師)
執筆者のプロフィール
大久保 愛(おおくぼ・あい)
薬剤師、国際中医師、国際中医美容師、漢方カウンセラー。アイカ製薬株式会社代表取締役、漢方生薬研究所開発責任者、一般社団法人腸内細菌検査協会理事、株式会社東進メディカルアドバイザー。秋田県出身。昭和大学薬学部生薬学・植物薬品化学研究室卒業。秋田の豊かな自然の中で、薬草や山菜を採りながら暮らす幼少期を過ごし、漢方や食に興味を持つ。薬剤師になり、北京中医薬大学で漢方・薬膳・東洋の美容などを学び、日本人で初めて国際中医美容師資格を取得。漢方薬局、調剤薬局、エステなどの経営を経て、漢方・薬膳をはじめとした医療と美容の専門家として活躍。おうちで薬膳を手軽に楽しめる「あいかこまち」を開発。漢方カウンセラーとして、年間2000人以上の悩みに応えてきた実績を持つ。著書『1週間に1つずつ 心がバテない食薬習慣』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)は発売1カ月で7万部のベストセラーに。そのほか、女性の体に特化した『女性の「なんとなく不調」に効く食薬事典』(KADOKAWA)を出版するなど、「食薬」の普及を行っている。
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本稿は『女性の「なんとなく不調」に効く食薬事典』(KADOKAWA)の中から一部を編集・再構成して掲載しています。
イラスト/Eriy
「肝」が弱るとストレスに弱い体質になる!
●イライラ・気分の落ち込み/無茶をしたらクラクラする/決断力がない/緊張しやすい
●疲れ目・ドライアイ/顔の筋肉がピクピクする
●食いしばりであごに力が入る
●首・肩・背中が張りやすい
●生理前におなかや胸が張る
●おりもののにおいが気になる/生理周期が安定しない
ストレスに弱い体質とは?
ストレスの影響を受けやすい人を、漢方では「肝」が弱っていると考えます。そして、「肝」にダメージを与える行動を「久行」と呼び、せっかちに動き回る状態を表します。常に頭が働き、ぼーっとすることを忘れています。
心も体も余裕を持ってゆったりと過ごし、アロマオイルなどで嗅覚に働きかけ、神経を癒してあげることが大切です。
また、酸味のある食べ物や、柑橘系など香り高いものは、「気」の巡りを改善するので、ストレス解消に役立ちます。
漢方で考える
漢方で考える「肝」の働きは、肝臓の働きに自律神経の働きが加わった感じだと考えていただけるとよいと思います。
そして、ストレスで自律神経が乱れた状態を「肝気鬱結」と呼びます。
女性の場合には、体に貯蔵している鉄(フェリチン)が不足しやすいのですが、この状態を「肝」の「血」が不足している「肝血虚」といいます。不定愁訴の原因でもある鉄欠乏性貧血とも考えられます。
ストレスに弱い体質にお勧めの「食薬」は、アブラナ科の野菜や柑橘類
自分が心地よく感じる香りで嗅覚を刺激すると、滞った感情が解放され、「肝」の働きが整います。
周りの様子や視線、あるいは過去や未来のことを気にするよりも、今の自分を大切にしましょう!
ストレスが大敵な理由
自律神経は、血管、肝臓、胃腸、肺、心臓など、意識して動かすことのできないものをコントロールしています。そして、ストレスを受けると、交感神経が優位に働き、動悸・息切れ、肝血流量の低下、胃の不調、神経伝達物質であるノルアドレナリンの放出など、全身的に症状を感じます。こうして、漢方でいう「肝気鬱結」と「肝血虚」が引き起こされるのです。
さらに、ストレスによって自律神経が乱れ、胃痛を感じたり、食欲がなくなったり、ストレスで過食・偏食をしたりすると、肝臓に蓄えられている鉄(フェリチン)の量が低下する「肝血虚」になります。一般的に、貧血の基準値に異常が見られる前に低下するので、うつ、不眠、肩こり、めまいといった不定愁訴の原因となり、さらにストレスに弱くなります。
また、鉄を蓄える以外の肝臓の働きとして、多くの酵素との関係があり、解毒と合成を繰り返す“精密工場”のような働きがあります。そのため、解毒と合成の材料となるタンパク質、ビタミンA・C・E、B1、B12の摂取も大切です。
ストレスと女性ホルモン
ストレスが多いときに、女性ホルモンに影響を感じた経験がある人は多いと思います。
それにはきちんと理由があります。脳の視床下部という部分に、自律神経を調整する機能、ストレスによりホルモンを分泌する機能、女性ホルモンを調整するホルモン(性腺刺激ホルモン放出ホルモン)を分泌する機能が揃っているからです。つまり、女性ホルモンとストレスに関係する部分が共通しているのです。
そのため、大きなストレスがかかると、生理周期が長くなったり短くなったりして、安定しにくくなります。
ストレスは、メンタル的なことだけではなく、環境の変化や季節の移り変わりなど、さまざまな変化により感じるものです。生理前後の様子がいつもと違うと感じたときには、気候の変化はないか、無理しすぎていないか、気を使いすぎていないか、自分の思っていることをため込んでいないかなどを確かめ、生理による変化を1カ月の”成績表”と考えて、自分と向き合ってみましょう。
食生活での注意
脂身の多い肉の食べすぎはNG
▼有害物質 アンモニア
動物性タンパク質は大事ですが、質と量に注意です。
焼き肉などで脂の多い肉を食べすぎると、腸内環境が悪化します。便として体外に排泄しきれなかった有害物質は、体内に吸収されて肝臓で無毒化されます。これが肝臓の負担になる場合があります。
また、肝臓の働きが低下し、油脂の消化を助ける胆汁がうまくつくり出せなければ、脂肪分が腸内環境を荒らしてしまいます。便やガスの状態を見ながら、とり入れましょう。
お酒や糖質のとりすぎはNG
▼有害物質 アセトアルデヒド
アルコールが肝臓で分解が行われる過程で、アセトアルデヒドという肝障害の原因物質になります。
このアセトアルデヒドは、体のあちこちに生息しているカンジダ菌が死滅するときにも発生します。カンジダ菌は腸内でも増殖するため、そのエサになる砂糖や小麦などの糖質のとりすぎは、ストレスによる不調を悪化させてしまうかもしれません。お酒、砂糖、小麦に気をつけましょう。
あなたに必要な「食薬」動物性タンパク質と鉄分、香り高い食材で「肝」を整えストレスに打ち克つ
貯蔵鉄(フェリチン)の不足や毒素のたまりやすい生活が、ストレスに弱い体質をつくります。
ストレスを感じたときには、「肝血」を補う食材、巡らせる「理気」作用のある食材で乗り越えましょう。
ストレス体質を改善する食材リスト
●ローズマリー
●鶏肉
●アサリ
●小松菜
●レモン
●ブリ
●ルッコラ
●ユズ
●菜の花
●タコ
●グレープフルーツ
●バジル
●セロリ
●ホタテ
●春菊
●海苔
●マスタード
●サーモン
●クローブ
●カルダモン
●オレンジ
●イカ
なお、本稿は『女性の「なんとなく不調」に効く食薬事典』(KADOKAWA)の中から一部を編集・再構成して掲載しています。 詳しくは下記のリンクからご覧ください。
※(2)「漢方の五行説とは 肝心脾肺腎の五臓に分類」の記事もご覧ください。