コロナの影響で人は外出自粛のために食品の買い溜めをするようになりました。肉や魚、乳製品、発酵食品の保存には、冷凍しないギリギリの温度で冷蔵する「チルドルーム」が重要となってきます。しかし、このチルドルームのスペースって意外と狭いですよね。今回は冷蔵庫に後付けすることでチルドと同様の状態で食品の保存を可能にする家庭用鮮度保持装置「DENBA Fresh」を紹介します。
DENBA Freshがビックカメラで取り扱い開始
昨年、コロナの影響で冷蔵庫の市場が活性化したようです。要するに買い溜めです。今ドキの冷蔵庫は、冷蔵で、肉、魚、野菜と言う生鮮食品を一週間美味しく食べられるように設計してあります。日本の冷蔵庫は5ドア設計が多いですが、冷蔵はそのうちの2ドア。冷蔵室と野菜室。差は、湿度です。野菜は低湿ではすぐ萎れますので、幾分でも高湿化させます。そして冷蔵室の中に、多くの場合はチルドルームを設けています。これは冷蔵より低めの温度設定。冷凍しないギリギリの温度で冷蔵します。肉、魚の鮮度維持にピッタリ。乳製品も同様です。面白いのは、発酵食品も、それ以上発酵させないためには、冷蔵室よりチルドルームに入れるのがお勧めです。まぁ、そうなるとチルドルームのスペースが足りないため、もっと増やして欲しいと思っている人も多いと思いますが・・・。
そんな中、ビックカメラが、DENBA(株)の DENBA Freshの扱いを始めました。ちょっと面白そうな技術なので、皆様にご紹介したいと思います。
肉や魚を冷凍すると味が落ちる理由は?
先ほど「チルド」という言葉を出しました。凍らせないギリギリの低温保存と聞き、冷凍でいいじゃないかと思われる人も多いと思います。冷蔵庫メーカーがチルドにこだわる理由は、生鮮食料品を冷凍すると美味しくなくなるからです。
理由はわりと簡単な話です。生き物は体内に多くの水分を持ちます。人間の場合、成人男子で体重の60%、新生児だと実に80%。これは水分が栄養を体の隅々まで行き渡らせるなど、新陳代謝に欠かせないからです。人間を例に出しましたが食材も同じです。人は生き物を食べて生きているのです。さて、水は凍ると体積が増えます。生き物は細胞でできていますが、細胞の中には水分が多く入っています。凍り膨張すると、その水分の体積が増え、細胞を形成する細胞膜、細胞壁を壊してしまいます。凍らせ、解凍した食材から多量の液体が出ていることがありますが、それは冷蔵だったらでない、細胞が破壊されて出てきた体液(主には水分)です。栄養、旨味が外に逃げるわけで、その分、風味が失われます。これを防ぐために考え出されたのが、凍らせない低温保存。チルドというわけです。
しかし、こういう考えも成り立ちます。水が氷になって膨張する性質。これを緩和することができれば、その分、風味を食材に残せるし、冷凍(=長期保存)もしたい放題。DENBAの「DENBA Fresh」は、そういう考え方に沿って開発されたモノです。
チルドルームと同じ状態を作り出すDENBAの技術
DENBAのホームページを見ると、「DENBA + は、水を共振させ水分子活性化よりによる技術を活かした、食品の鮮度保持システムです。食材の細胞活性化によって、食品の鮮度を長く保ち、菌の発生を抑制し、ロス率を限りなくゼロに近づけることができます。」とあります。
「水を共振させ水分子活性化」は、こう書くととても分かりにくいのですが、ほとんどの人は毎日お世話になっていると思います。電子レンジです。電子レンジは、激しく共振振動させることにより、振動エネルギーを熱に変えます。電子レンジは食材一つ一つの細胞の中の水分が沸いているのです。想像すると凄いイメージが湧いてきますね。もともと電子レンジは、第二次世界大戦の兵器開発から生み出されたものです。地雷は踏むと爆発ですが、こちらは踏むと丸焦げ・・・。かなりいやな構図です。
DENBAは、そこまで強く共振させません。そうした場合の、水の挙動はいろいろなものがあると言います。例えば「クラスター化」なども挙げられます。通常の水の性質は、水分子が均等にあることが前提ですから、クラスター化したように、非均一の場合、どこか、挙動が変わる場合があります。ただ、ここら辺は、経験則的な効果で、理論だって、体系的にまとめられてはいないと思います。
DENBA Freshの場合、0〜-4℃でも固化せず、チルドと同じ状態になることが一番大きな効果でしょうか?つまり、氷点下でも凍らないわけです。細胞膜、細胞壁を壊さないまま(=美味しい状態のまま)冷蔵の数倍の期間の保存が効くのです。ちょっとすごい。
DENBA Fleshは冷蔵庫に後付けして使う
このDENBA Fleshですが、冷蔵庫そのものではありません。後付けの、オーディオ・アクセサリー的な扱いです。独立で、自分でセットすることになります。これは一般の白物家電では、ほとんどない考えです。また冷蔵庫メーカーも、このような機器と並行で使うことは考えていないと思います。認知されていない仕様は、結構大変です。
最後に
DENBA Fresh
これまで業務用として販売されていた鮮度保持DENBAテクノロジーを家庭用冷蔵庫向けに製品化いたしました。
家庭用冷蔵庫に後付けする事で、庫内全域が鮮度保持空間に!水分子を共振する事で、食品の細胞に働きかけ活性化。
かなり癖がある家電ですが、今年からビックカメラが扱うそうです。気になるお値段ですが、198,000円(税込み)。正直、かなりお高い。容量の小さい冷蔵庫なら、最新モデルが購入できる価格です。ただ考えてみてください。今後、今のような贅沢な食品ロス、大量廃棄の時代ではなくなります。家庭で多いのは、期限切れ、鮮度落ちによる廃棄。それがなくなると、かなり世界は変わってきます。
ちなみに、この「DENBAテクノロジー」は、世界43カ国の国と地域で特許を取得しているほか、フードサービス機器において国内で圧倒的なシェアを誇るメーカーの製品にも採用されているそうです。
コロナで変わる生活。食材の保存の仕方も、もう一度考える時かも知れませんね。
◆多賀一晃(生活家電.com主宰)
企画とユーザーをつなぐ商品企画コンサルティング ポップ-アップ・プランニング・オフィス代表。また米・食味鑑定士の資格を所有。オーディオ・ビデオ関連の開発経験があり、理論的だけでなく、官能評価も得意。趣味は、東京散歩とラーメンの食べ歩き。