スマホ料金の値下げが始まったが、家庭の固定回線のインターネット料金は値下げしないのだろうか。読者から届いた素朴な疑問に、専門家がわかりやすく解説してくれた。
家のネット代もスマホのように値下げされる?
読者からの質問
スマホ料金の値下げが始まりますが、家庭の固定回線のインターネット料金は値下げしないのでしょうか?スマホが20Gバイトまで2980円で使えるなら、固定回線のインターネット契約が不要になる家庭も増えるのではないかと思われます。それにより、インターネット料金の引き下げも起こるといいなと期待していますが……。 (T.Yさん 広島県 36歳)
編集部:
家のインターネットの固定回線って、高いですよね。フリーライターの福多利夫さんに聞きましょう。値下げの可能性はありますか?
専門家の回答
専門家:
「現在、光ファイバーの固定回線が値下がりする気配は感じませんね。というより、各社から10Gbpsという高速のプランが登場したことで、実質的には値上げになっていると思います。今後、固定回線は200Mbpsから2Gbpsの実効速度になり、料金は5000円から7500円の範囲というのが主流という状況が続くでしょう。
技術的にも値下げにつながる要因は見当たりませんし、まだまだ光ファイバー自体も、全国隅々まで張りめぐらさなければなりませんから、価格競争という段階でもないと思います。値下げの可能性があるとすれば、スマホ料金のときと同じように、首相クラスが事業者に対して値下げ圧力をかけるパターンでしょう。それでも、今すぐ半額とかは考えづらいですね」
編集部:
スマホ料金の値下げが、固定回線の価格にはまったく影響しないんですかね?
専門家:
「家にパソコンもテレビもなく、スマホだけでいいという単身者がもっと増えれば、固定回線も値下げせざるをえないでしょうね。しかし、実際には今現在、固定回線を契約しているのは、テレビを持っていて、複数の家族がいる家庭が多いわけで、そこが固定回線を手放すとは考えにくいです。よって、影響はほとんどないでしょう」
編集部:
スマホのテザリング(スマホのモバイルデータ通信でパソコンなどをネットに接続させる手段)は、固定回線の代替にならないですか?
専門家:
「これは、まったく別物と考えたほうがいいですね。スマホ回線では固定回線の代替は無理です。その最大の理由は、スマホと固定回線の月間の使用データ量です。
今、注目されているスマホ回線の新料金プランの多くは、月間20Gバイトが主流ですね。一般的に、家庭のネット使用量は、20Gバイトでは足りません。しかも大手キャリアの場合、現状では直近3日間で10Gバイト程度使うと速度制限がかかります。月間使用データ量が無制限の楽天モバイルでも、1日で10Gバイト使うと速度が制限されます。使用データ量による制限については、今後改善があるかもしれませんが、完全撤廃はないと思われます。
家庭のインターネット用途でいうと、例えばネット動画配信では4K動画1時間で7Gバイト程度のデータ量がありますから、前述の直近ルールも合わせて、毎日4K動画の映画を見ることはできないわけです。5Gが普及すれば、速度面では固定回線のライバルになるでしょうが、直近/月間のデータ容量的には、固定回線のライバルにはなりえないと思います」
編集部:
コンテンツがリッチに進化する限り、固定回線の値下げはないのかもしれませんね。
◆イラスト/はやし・ひろ
※価格は記事作成時のものです。