車中泊でカップラーメンが食べたいと思っても、コーヒーが飲みたいと思ってもお湯がいるわけです。そこで6ヵ月の息子と家族でキャンピングカー生活を楽しんでいる筆者が、車中泊湯沸しの代表格であるJ.P.N「ワクヨさん」、Meltec「あったCarケトル」ほかで実際にお湯を沸かしてみて、その所要時間や使い勝手などを試してみました。
執筆者のプロフィール
齋藤千歳(さいとう・ちとせ)
元月刊カメラ誌編集者。新しいレンズやカメラをみると、解像力やぼけディスク、周辺光量といったチャートを撮影したくなる性癖があり、それらをまとめたAmazon Kindle電子書籍「レンズデータベース」などを出版中。まとめたデータを元にしたレンズやカメラのレビューも多い。使ったもの、買ったものをレビューしたくなるクセもあり、カメラアクセサリー、車中泊・キャンピングカーグッズなどの記事も執筆。現在は昨年8月に生まれた息子と妻の3人、キャンピングカー生活にハマっており、約1カ月かけて北海道を一周するなどしている。
車中泊でのお湯を沸かす手段
電気ケトルの定番「ワクヨさん」と「あったCarケトル」
キャンピングカーの場合、クルマを止めている状態であれば、カセットコンロでお湯を沸かすのが、もっとも手っ取り早いので、筆者は車載用の電気ケトルをあまり使っていませんでした。しかし、ふと気付くと、車中泊用電気ケトルの定番「ワクヨさん」と「あったCarケトル」と両方がそろっていました。それならが性能を比較してみよう、と考えたわけです。
まずは、簡単にそれぞれのスペックというか、概要を解説します。
「ワクヨさん」は、その名前からも想像が付くように、アウトドア用の炊飯器の定番「タケルくん」など発売するJ.P.N(ジェイピーエヌ)の商品です。
透明なポリカーボネート製の水筒といった外観。容量は400mlとコンパクトです。実勢価格は6,000円前後なので、高級品といえるでしょう。中に入れた水の温度を表示したり、指定した温度まで水を温めたり、指定温度で保温したりという多機能な面もあります。ちなみに400mlの水を沸騰させるのに必要な時間は20〜30分となっています。
一方の「あったCarケトル」はMeltec(メルテック)製です。Meltecも12Vのアウトドア炊飯器メーカーとしては知られています。
こちらは、実勢価格が3,000円前後と安いのです。筆者は先日、アマゾンのタイムセールで2,000円ほどで売られているのを見かけました。容量は1Lまで。こちらは1Lの水が約60分で沸く(約90度)となっています。お湯が沸くと自動でスイッチがオフになる「オートストップ機能」や空焚き防止機能は付いていますが、温度指定や保温はできない仕様です。
今回は、どちらも12V電源用を使って、400ml(「ワクヨさん」で一度の沸かせる限界量)をどのくらい時間で沸かせるかを実測しました。
クルマのシガーソケットでテスト
「ワクヨさん」には「危険ですので運転中や走行中のご使用はお止めください」と明記されています。「あったCarケトル」の説明文にも「走行中は絶対に使用しないでください」。そのため、実験はクルマを停止させてエンジンをかけた、アイドリング状態で行いました。
ただし、過去記事の「【車中泊のポータブル電源】ご飯が劇的にうまく炊ける「ミツルくん」がおすすめ 」でも述べていますが、アイドリングしながら駐車できるスペースは、現在の日本にはあまりないと思います。
とはいえ、どちらの製品も、走行中ではなく、エンジンが動いており、シガーソケットを2連や3連などに分岐せず、直接シガーソケットにつなぐことが条件なので、それぞれ実験しました。
まずは「ワクヨさん」です。エンジンを掛けたキャンピングカーのシガーソケットにつなぎました。400mlのお湯を沸かすのにがかった時間は、約32分30秒でした。
続いて、「あったCarケトル」での様子を見ていきましょう。「あったCarケトル」にも、しっかり計って400mlの水を入れ、お湯を沸かしました。こちらは、お湯が約90度になると、「オートストップ機能」が働くようです。なので「ワクヨさん」よりも、少し温度が低いかもしれません。しかし、沸騰までの時間は約34分20秒でした。
実際のところ、体感でいうなら、ほとんど変わらないという印象です。
ポータブル電源でも試してみた
「ワクヨさん」と「あったCarケトル」で、それぞれアイドリング状態のキャンピングカーのシガーソケットを使ってお湯を沸かした結果は、どちらも30分オーバーでした。
使った水が3月の北海道の水道水で、約14度しかなかったということもあると思います。それでも30分以上アイドリングして、400mlのお湯を沸かすというのが現実的とは思えません。たまたま、アウトドア用炊飯器の「タケルくん」や「ワクヨさん」用に設計されたポータブル電源「ミツルくん」が我が家のキャンピングカーに積まれていたので、こちらでもお湯が沸くまで、どのくらい掛かるか試してみました。
※注意※「ミツルくん」は「ワクヨさん」や「タケルくん」の使用を想定したポータブル電源ですが、「あったCarケトル」の使用は自己責任です。また、「ワクヨさん」も「あったCarケトル」もクルマのシガーソケットで使用するのが基本で、一般的なポータブル電源での使用は自己責任であることをご理解ください。
「ワクヨさん」や「タケルくん」の使用を前提に設計されたポータブル電源「ミツルくん」には、「ワクヨさん」に電源を供給する際の専用コードが用意されています。電気の効率がよくなるということなので、今回はこちらを使ってお湯を沸かしてみました。実験は、毎回「ミツルくん」をフル充電してから行っています。
さて、結果です。「ワクヨさん」でお湯が沸くまでにかかった時間は電源が「ミツルくん」の場合、専用コードで約35分20秒となりました。残念ながら、アイドリングしたほうが、3分ほど早くお湯が沸きます。
続いて「あったCarケトル」を「ミツルくん」につないで、お湯を沸かします。今回も400mlです。高電圧を保つことのできる「ミツルくん」の力もあって、特に問題なくお湯は沸きました。
ところが、所要時間は約39分50秒。こちらも、アイドリングしたほうが5分以上早くお湯が沸くようです。あまり、すばらしい結果とはいえません。
キャンピングカーならカセットコンロ
筆者はキャンピングカーで出掛けることが多いので、実を言うと、お湯を沸かすときにはイワタニのカセットコンロ「プチスリム・ドゥ」を使うことが多いのです。ひとり鍋に最適ということで発売された「プチスリム・ドゥ」は、コンパクトでアウトドアや車中泊の愛好者にも人気でしたが、販売は終了したようです。新たに2021年3月1日から発売された「FORE WINDS」に集約されたのでしょうか。余談ですが、筆者も「フォールディングキャンプストーブ(FW-FS01-BK)」がほしいです。
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カセットコンロは、基本、車内で使ってはいけないので注意してください。筆者はキャンピングカーですが、換気には気を配っています。
ちなみに、カセットコンロ「プチスリム・ドゥ」で400mlのお湯を沸かすのに掛かった時間は、3分30秒です。電気ケトルの約10分の1の時間で済むという結果が得られました。
どっちがおすすめ?
車中泊ではカセットコンロなどの使えない状況も多く、電気ケトルを使うことになるでしょう。それぞれの車載用電気ケトルのお湯が沸くまでの時間にあまり差がないことを考慮した上で、おすすめのポイントをまとめてみました。
機能なら「ワクヨさん」
価格が「あったCarケトル」の約2倍という大前提はあります。しかし、「ワクヨさん」は多機能です。まず、沸かしているお湯の温度がモニタリングできます。おかげでちゃんと温度が上がっているということがわかるので、約30分待っているときも状況が把握でき、気持ちが楽です。また、特定の温度のお湯を作り保温することができます。例えば緑茶を入れるのに60度のお湯を作り、そのまま保温ができるのです。さらに一度100度まで沸騰させて40度で保温といったことも可能なので、赤ちゃんのミルク作りなどには便利でしょう。クーラーの吹き出し口に「ワクヨさん」を保持するための専用ホルダーも付属します。高いだけあって、細かなところまでよくできているのです。
容量なら「あったCarケトル」
「あったCarケトル」の最大ポイントは容量だと思います。「ワクヨさん」で一度に沸かすことができるお湯は400mlです。これに対して「あったCarケトル」は最大で1Lになります。カップラーメンを作ると考えましょう。「カップヌードル」なら300mlのお湯でできます。しかし、「日清のどん兵衛 きつねうどん [東]」では410ml、「日清デカうま 濃厚コク旨醤油」に至っては470mlのお湯が必要になります。水の量が増えると、お湯が沸くまでの時間は延びますが、一度に必要な量のお湯が得られるメリットは大きいです。
まとめ
非常時用なら「あったCarケトル」、普段ひとりで使うなら「ワクヨさん」
筆者の場合、「ワクヨさん」はキャンピングカーに、「あったCarケトル」は普段乗っている乗用車に積んでいます。理由は簡単で、「あったCarケトル」は、非常事態が起きたとき、クルマの中でお湯が沸かせるという安心感のために積んであるのです。実勢価格は3,000円程度、それよりも安く手に入ることもあるので、なにかあったときの非常用と思っています。
これに対して「ワクヨさん」は、ポータブル電源の「ミツルくん」といっしょにキャンピングカーに積んでいます。「ミツルくん」を使えば、アイドリングなしでお湯が沸かせるからです。また、6ヵ月になる息子のミルク用のお湯200ml程度なら15分程度で沸かすことができ、冷まして保温もできるというメリットから使い分けています。
最後に、実を言うと筆者は、車載用の電気ケトルでお湯を沸かしてカップラーメンを食べられたことがほぼありません。「カップラーメンを食べよう!」という状況から、400mlで30分、1Lなら1時間以上掛けてお湯を沸かしていると、だいたい途中で挫折。待っている間に違うものを食べてしまうのです。「カップラーメンを食べよう!」という状況と、車載用ケトルのスピード感が一致しないというのが、素直な筆者の感想になります。