【琥珀糖(こはくとう)の作り方】買うと高いのに材料3つで簡単 色のつけ方や乾かし方、アレンジ法を丁寧に解説【ASMR】

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「琥珀糖(こはくとう)」もしくは「寒氷(かんごおり)」と呼ばれるお菓子をご存知でしょうか? 砂糖液を寒天で固め、表面を乾かした和菓子です。その涼しげで愛らしい姿は、お茶席でも人気。目に涼やかなお菓子をいただいて夏の暑さをしのぐ、昔ながらの知恵を感じます。そんな風流も味わえる伝統和菓子が、身近な材料で手作りできます。今回も栄養士養成校の恩師・青山先生直伝のレシピを、私なりにアレンジしてお届けします!

「寒氷」「琥珀糖」とは?

「寒氷(かんごおり)」は、砂糖液を寒天で固め、表面を乾かしたお菓子です。「琥珀糖」という方が、通りがいいかもしれませんね。「寒氷」は、「干琥珀(かんこはく)」「琥珀糖(こはくとう)」「干錦玉(ほしきんぎょく)」など、さまざまな呼び名があり、本記事とは異なる区別をする場合もあるようですが、ここでは青山先生伝授のレシピに沿った呼び名「寒氷」を使います。
さて、寒氷は、2つの異なる食感が楽しめるのが魅力です。表面は乾燥してシャリッと砕け、中はゼリー菓子のようにプルンとやわらか。すりガラスのような表面を割ると、キラキラと透き通った断面が現れ、まるで宝石や鉱石のよう。

氷のように涼しげな透け感が夏にぴったり!

材料も作り方もシンプル

「寒氷」の基本材料は、砂糖、粉寒天、水の3つ。さらに、好みのリキュールやジュースを加えると、さまざまな色合いと風味を楽しめます。ただし、材料と作り方はとてもシンプルですが、時間がかかります。すりガラスのような美しい姿にするために、1週間から2週間かけて表面を乾燥させなければならないのです。食べたい2週間前を目安に作りましょう。

基本レシピは、食品学専門家で私の恩師でもある青山佐喜子先生に教わりました。乾燥に時間がかかるため、学校の授業では先生が作ったお手本の試食とレシピのレクチャーのみ。実際に作るのは今回が初めてです。
*青山佐喜子先生のプロフィールは記事の最後にご紹介します。

恩師・青山先生作のお手本「寒氷」。着色はリキュールです。

先生直伝レシピをもとに、私はぶどうジュースでグラデーションに着色した寒氷作りにチャレンジしたいと思います。

【ぶどうジュース寒氷の材料】(出来上がり:11cm×14cm×高さ1.5cm)

水…130g
着色用ぶどうジュース(果汁100%のもの)…30g
粉寒天…3g
グラニュー糖…250g

※着色にリキュールなどを使う場合も30g前後を目安に、水との合計を160gにする。

ぶどうジュース寒氷の材料。この分量で60個以上作れます。砂糖の量がすごい…。

型はパウンドケーキ型を利用。ざっと水で洗って、写真くらい水滴が残った状態でOK。

砂糖と寒天の配合が重要

「寒氷」の独特の風合いを出すために、おさえておきたい材料のポイントは2つ。

◆砂糖を水分の1.5倍以上使う

大量の砂糖液を煮詰めて糖度を上げてから冷やし、乾燥させることで、寒天ゼリーを抱き込んだ砂糖が結晶化して、「表面シャリッ×中プルン」のハイブリッド食感が生まれます。砂糖が少なめでも作れますが、表面が乾きにくくなります。グラニュー糖を使用する理由は、砂糖の中でも純度が高く、結晶の粒子が細かくて水に溶けやすいから。クセのない淡白な甘さもお菓子作りに向いています。

◆寒天の濃度は水分の1.8〜2%がベスト

少し固めの寒天ゼリーに仕上げることで、口にした時の歯切れが良くなります。水160ml(160g)に対して3gの粉寒天を使うと約1.9%濃度です。

【寒氷の作り方】(調理時間:5分)固める時間・乾燥時間を除く

(1)鍋に粉寒天と水を入れて火にかけ、ヘラでかき混ぜながら煮溶かす。

寒天は90℃以上で溶け始めます(顆粒寒天は80℃で溶けます)。

(2)均一に着色する場合は、寒天が溶けてからジュースやリキュール等を加える。

(3)グラニュー糖を加えてよく溶かし、ゴムベラで静かに混ぜながら沸騰させる(泡立つ)→火を止める(泡をしずめる)→沸騰させる(泡立つ)→火を止める(泡をしずめる)を3〜4回繰り返して煮詰める。

沸騰させては火を止め、泡が消えるまで待つ。このひと手間の繰り返しで、美しい仕上がりに。

(4)水で濡らした型に流し入れ、1日置いて固める(28〜35℃で固まるため室温が高い時は冷蔵庫へ)。鍋のフチに残る白い泡は、型に流れ込むと白く濁るので入らないよう気をつける。

グラデーションの着色をする場合は、寒天砂糖液を型に流してからジュースを静かに加え、軽く全体を混ぜる。糖度(砂糖が入っている量)の差で、寒天砂糖液の上層にジュースが集まって2層になります。

数時間で固まりますが、焦らず1日置いてしっかり固めます。

(5)型から外し、好みの大きさに切る。型から外す際、型と寒天ゼリーの間をパレットナイフなどですーっとなぞるようにして空気を入れると、外れやすい。

切る前の塊は1色に見えたので「失敗した!」と思いきや、ちゃんと2層グラデーションになりました。

(6)クッキングシートの上に並べ、室内の風通しの良いところで表面を乾かす。大きめで浅めのタッパや、揚げ物用のトレイに入れるとよい。外出時は、埃と虫除けのため、下記のように簡易バリケードを施した。

在宅時は(1)の状態のまま。

上記(2)~(4)はフードカバーで代用できます。

 

写真AC

 

(7)2〜3日で表面が乾き始めます。手にくっつかない程度の半乾きになったら、裏表をひっくり返す。表面がすりガラス状になり、固くなれば完成!(1週間から2週間程度が目安)

作りたて(左)→2週間後(右)。表面が好みの固さになれば完了です。

作った日の“できたて寒氷”を食べてみるとグミに近い食感。これはこれで美味しいです。できたてが味わえるのも手作りならでは。私は、味見と称して毎日“つまみ食い”を楽しみながら乾き具合をチェックし、好みの固さを探りました。

なお、湿度と気温の高い夏はやや乾きが遅いようです。クーラーの効いた部屋で乾かすと効率的かもしれません(クーラーや扇風機の風は直接当たらないようにしましょう)。

ぶどうジュース寒氷、柚子ジャム寒氷(次項参照)のできあがり!

この透け感がたまらない〜!

完成した寒氷は、缶ケースなどに入れて保管すれば、常温保存で2週間から1ヵ月程度楽しめます(ただ、日が経つにつれ表面の固さが強くなる気がします)。手作りラッピングでおめかしすれば、ギフトにも喜ばれそうです。

缶ケースに2色の寒氷を市松に並べ、水引風の輪ゴムを飾ってみました。

日本酒入りの琥珀糖もできる!マーブル柄はどうやって作る?

子どもから大人まで楽しめる「寒氷」アレンジ

着色をジュース以外の材料で試したらどうなるのか? 確かめてみたくなり、思いつくまま「寒氷」のアレンジを作ってみました。いずれも砂糖、寒天、水は基本レシピと同じ配合。着色の材料は30〜35gで、水と合わせた合計が160gになるようにして作りました(マーブル寒天を除く)。

◆柚子ジャム(柚子茶)寒氷

柚子の皮が透けて見える寒氷を作りたくて、柚子ジャム(柚子茶)を使用。寒天を煮溶かしてから柚子ジャム、グラニュー糖の順に加え、一緒に煮詰めて均一になるようにしました。ほんのり全体が色づき、柚子の皮もキレイにちりばめられました。食べてみると、柚子の香りがふわっと口の中に広がり、美味しいです!

できたて(乾かす前)の状態。柚子の皮も透けてます!

2週間後。ジャムを使用しているためか、少しやわらかめの食感に仕上がりました。

◆かき氷シロップ寒氷

夏に出番の多いかき氷シロップ。使いきれず余ったら、ぜひお試しを。私は均一に色づくよう寒天を煮溶かした後に加えました。星形とハート形で型抜きをして、残った部分を適当に手で引きちぎり、ロックアイス(割れ氷)風に。子どもが喜びそうなポップカラーが目を引きます。シロップにも甘味料が使われているため、できあがりのお味は甘めです。

鮮やかな色が星やハートの型抜きと相性バッチリ。七夕に作っても楽しそう!

4日目。断面が多いロックアイス風の寒氷は、型抜きしたものよりも乾きが早いです!

◆日本酒寒氷

大人味の寒氷を作りたくて、冷蔵庫に残っていた日本酒でアレンジ。型に流す直前、火を止めてから日本酒を加えました。口に含んでかみ砕くと、かすかに日本酒が香り、甘さは上品に感じます。リキュールで作っても美味しそうです。

型抜き、スクエア切り、手でちぎってロックアイス風の3パターンを作りました。

3日目。まだ表面は半生状態ですが、シンプルな白が涼しげです。

◆マーブル寒氷

マーブル模様をつけたい!と、試作を繰り返しコツをつかみました。着色は、少し煮詰めてトロミをつけた、かき氷シロップがおすすめ(色が沈みやすくなります)。寒天砂糖液を型に流し、粗熱が取れたら、かき氷シロップをスプーンでランダムに数滴たらし、落ちた色溜まりを竹串でひっかく感覚で動かすと、マーブルっぽい模様になります。煮詰めないシロップやリキュールでも試したのですが、たらした瞬間に上層で色が広がってしまい、ただの色ムラになりました(涙)。失敗してもともと!くらいのおおらかな気持ちで挑戦してください。いざ切ってみるまで、どんな模様が描けているのか分からないワクワク感が、年齢を問わず楽しめます!

マーブル制作中。科学の実験みたいで楽しい!(笑)

1日置いて入刀。おおっ、マーブルっぽい!?

◆レモンすり琥珀(失敗リカバリー寒氷)

最後は失敗から生まれたアレンジです。寒天砂糖液を煮詰める際、「寒天と砂糖がよく溶けるように」と勢いよく泡立て器で混ぜたら、火を止めても白い泡が消えきらず残ってしまいました(汗)。でも、大丈夫!そんなときは「すり琥珀」にアレンジしましょう。「すり琥珀」とは乳白色の寒氷のことです。

作り方はとても簡単。煮詰めた寒天砂糖液を50℃程度まで冷まし(水あめのようにドロッとした状態になります)、泡立て器で手早くひたすら混ぜて白濁させれば完了。私は白濁後に粗熱が取れてからレモン果汁(大さじ2)を加え、さらに撹拌してなじませ、型に流しました。寒天は強い酸味を加えると固まりにくくなる弱点があるので、生のレモン果汁を使う場合は、寒天を溶かして煮詰めた後に、粗熱が取れてから加えると弱点を克服できます。レモン果汁入り寒氷、爽やかでとても美味しいです!

煮詰め途中で失敗。こんな風になったら「すり琥珀」にしましょう!

このくらい白濁するまで頑張りましょう。

白色が「レモンすり琥珀」。ピンク色(フランボワーズのリキュール入り)も作りました。すり琥珀は型抜きが似合います。

なお、本来の「すり琥珀」の作り方は、寒天砂糖液を冷ました後、すり鉢に移し変え、すりこぎで撹拌させる方法が一般的です(青山先生伝授のすり琥珀もすり鉢を推奨)。よりきめの細かい乳白色の気泡になるので、すり琥珀を極めたい場合はご参考に。

着色をするタイミングで乾きの早さが変わる

今回、さまざまな寒氷を試作して気づいたことがあります。着色の材料(ジュース、リキュール、シロップなど)を寒天砂糖液と一緒に煮詰めると乾きが比較的早く、煮詰めた寒天砂糖液に後から着色を加えると乾きがやや遅いです。特に、グラデーション寒氷やマーブル寒氷は着色液が表面に出やすく、その部分を触るとベタベタして手にもくっつきやすいので注意してください。また、着色部分は寒天砂糖液よりも煮詰めが足りないため、劣化が早い可能性があります。後から着色する場合は、完成後(乾かしてから)2週間程度で食べきるのが良さそうです。

砂糖の働きと寒天との相性

「寒氷」の主材料、砂糖と寒天について調べてみました。寒天はテングサなどの紅藻類(海藻の一種)が原料で、食物繊維が豊富。ノンカロリー(0kcal)(*1)のヘルシー食材です。その一方で、砂糖(グラニュー糖)を大量に使うため、「カロリー(エネルギー)が気になる」という人もいると思います。

今回の基本レシピで使用するグラニュー糖250gのエネルギーは983kcal。ごはん250gのカツカレー1人前(956kcal)に匹敵(*2)しますが、寒氷が60個以上作れるので1個あたり約16kcal(着色のジュース類は計算外)となります。1日5〜10個程度までなら、おやつとして問題なさそうです(*3)。ほかにも間食する場合は、加減してくださいね。

砂糖の注目すべき特性は、甘みだけではありません。高濃度の砂糖溶液になるほど、カビが生育するのに必要な水分がない状態と同じになり、保存性が高まります(*4)。また、砂糖の添加量が多いほど寒天ゼリーの透明度が高くなり、型崩れしにくくなる利点もあります。冒頭でも触れましたが、すりガラス状の見た目とシャリシャリ食感も、砂糖の量が多ければこそ。砂糖を大量に使う理由、寒天と組み合わせる理由がちゃんとあるのですね。

*(1)今回使用した粉寒天『かんてんクック』の商品に記載の栄養成分表示より
*(2)女子栄養大学出版部『毎日の食事のカロリーガイド』2018年に掲載の外食の栄養価データより
*(3)成人女性の場合で1日200kcal程度の間食が目安。間食は1日に必要な摂取エネルギーの10%程度が適量とされ、18〜29歳女性・運動量ふつう(身体活動レベルII)の場合で1日2000kcalが摂取エネルギー(推定エネルギー必要量)の目安となります。(日本人の食事摂取基準2020年版より)
*(4)砂糖が食品の水分活性を低下させ、浸透圧を高くすることで微生物の育成を抑え、腐敗しにくくします。

まとめ

レシピは驚くほど簡単な「寒氷」ですが、作ってから気長に待つ辛抱強さも必要です。毎日少しずつ変化する「寒氷」の表情を観察するうち、愛おしさが感じられ、話しかけたくなるような“育てる”感覚が楽しめます(私はそう感じました)。今回、私は1ヵ月かけて500個以上の「寒氷」を試作しました。個人的には、ぶどうジュース寒氷、日本酒寒氷、すり琥珀がお気に入りです。みなさんも自由な発想で「マイ寒氷」作りを楽しんで、暑い夏を涼やかにお過ごしください。

◆「寒氷」の基本レシピを教えてくれた青山先生の紹介

「買うとそこそこお高いのに、簡単に手作りできるのよ」とレシピを伝授してくださった青山先生。ホントその通りでした!

食品学専門家 青山佐喜子さん
博士(学術)・管理栄養士・製菓衛生師・食生活アドバイザー。短期大学の食物栄養学科などで長年にわたり多くの栄養士を育成し、数多くのオリジナルレシピを教え子たちに伝承。筆者も教え子の一人。

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※参考文献:谷口亜樹子編著『食品加工学と実習・実験』光生館,2020(青山佐喜子先生も執筆者の一人)、杉田浩一ほか『新版 日本食品大事典』医歯薬出版株式会社,2017年、(交社)日本フードスペシャリスト協会編『調理学 第2版』建帛社,2020年、下村道子・和田淑子編著『新調理学』光生館,2018、久保田紀久枝・森光康次郎編『食品学-食品成分と機能性-』東京化学同人,2017年

文◆ 野村ゆき(栄養士・編集ライター)
編集ライター歴25年以上。食と栄養への興味が高じて、栄養士免許と専門フードスペシャリスト(食品流通・サービス)資格を取得。食品・栄養・食文化・食問題にかんする情報を中心に分かりやすい記事をお届けします。どこよりも詳しい寒氷レシピ企画を目指して試作を繰り返すうち、見事にハマってしまいました。この夏、マイ寒氷を食べすぎそうで怖い…。

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