【原田マハのおすすめ・初心者編】グルメや旅をリアルに楽しめる4作品を紹介 温かい人間模様に笑いと涙

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最近、原田マハという作家の名前をよく目にしませんか?今年8月に『キネマの神様』、9月23日には『総理の夫』が続いて映画化。家族愛をテーマにした感動ストーリー、起死回生の人生、グルメや旅をテーマにした小説などが注目を浴びています。その中でも秋におすすめしたい4作品を厳選して紹介します。

続々と小説が映画化!原田マハは今話題の作家

今年8月に松竹映画100周年を記念した映画『キネマの神様』が公開され、現在は日本史上初の女性総理大臣とその夫を描いた『総理の夫』が大ヒット上映中。この映画の原作者である原田マハは、1962年東京生まれ。2005年『カフーを待ちわびて』で第1回日本ラブストーリー大賞を受賞し、2006年に作家デビュー。2012年『楽園のカンヴァス』で第25回山本周五郎賞、2017年『リーチ先生』で第36回新田次郎文学賞と数々の受賞歴を持つ実力派の作家です。

40代に作家デビューする以前は、森ビル森美術館設立準備室、ニューヨーク近代美術館(MoMA)などを経て、フリーのキュレーター(美術館等の展覧会の企画・運営などを行う専門職)として活躍していました。

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ちなみに原田マハの兄は小説、エッセイ、戯曲を手がける原田宗典。1984年に「おまえと暮らせない」ですばる文学賞佳作を受賞して以来、小説『スメル男』『十九、二十』『平成トム・ソーヤー』など数々の代表作を執筆しています。子どものころは、3歳上の兄と競うように本を読み、マハが作家デビューを果たしたときに「いい気になるな、本気になれ」とエールを送ったそう。
▼原田マハ公式ウェブサイト

日本史上初の女性総理大臣とその夫を描いた『総理の夫 First Gentleman 新版』(実業之日本社文庫)

www.j-n.co.jp

原田マハの小説の魅力

小説は読んでみたいけど難しいジャンルは苦手、全部読み切れるか不安……という初心者の方にも原田マハの小説はおすすめ。その魅力を解説します!

地方が舞台。自然やグルメ、温かな人柄

旅行やグルメが趣味である原田マハの小説は、自然豊かな海や山、離島などの舞台が多いことが特徴。例えば、今回紹介する『風のマジム』では、主人公のOLがプロペラ機で沖縄の離島・大東島に着陸し、ざわざわと風に揺れる、見渡す限りのさとうきび畑からストーリーが始まります。その地域に暮らす人たちの温かな人柄や方言、ご当地グルメや家庭料理など、旅行気分を楽しむこともできます!

家族愛や古き良き時代の人間ドラマ

「家族愛」は、原田マハの小説のキーワードのひとつ。様々な出来事をきっかけに分断された家族が、絆を取り戻していくストーリーは感動を誘います。また、今は近所づきあいが希薄になっていますが、原田マハの小説の世界では、ご近所さんや友人、知人たちが大きな家族のような関係で、誰かが困っていたらみんなで協力したり、喜びを分かち合ったり…。ときには笑い、ときには泣きながら小説を読んでいると、古き良き昭和の時代にタイムスリップしたような気持ちになります。

優しくてたくましい個性あふれる主人公たち

そして一番のポイントは、主人公をはじめとする登場人物がとても魅力的であることです。とはいえ、特別な能力があるとか、頭がいい、容姿端麗…というわけではなく、ごくごく普通の人物で、勝ち組というよりも、どちらかといえば負け組。正社員でなく派遣社員、不登校でひきこもり、挫折経験のある人物が多いかもしれません。けれども真っすぐな性格で、何事にも一生懸命に立ち向かい、自分で道を切り開いていく。そんな優しくてたくましい主人公たちに引き込まれていきます。

今回は、原田マハの小説の中でも秋にぴったりな旅やグルメをテーマにした4作品を紹介します。逆境に立たされながらもたくましく生きる主人公に、勇気と元気をもらえるでしょう。

パワフルな主人公から元気をもらえる!『風のマジム』

『風のマジム』(講談社文庫)

www.makuake.com

あらすじ

伊波まじむは、通信会社琉球アイコムの派遣社員として働く28歳、自分が何をすべきは判らず漠然と日々を送っていた。彼女の運命を突然変えたのは社内ベンチャー募集の告知。まじむは郷土沖縄のさとうきびでラム酒を造るという事業を提案する。まじむの夢は果たして実現するか?(『風のマジム』(講談社文庫 裏表紙より転載)

みどころ(ネタバレ注意!)

主人公の伊波まじむには、実在するモデルがいます。その人は、那覇市の民間企業のOLから、南大東島に本社を置くラム酒製造会社「グレイスラム」を設立した金城裕子さん。当時、カルチャーライターだった原田マハが取材に訪れ、インタビューが終えてから「5年後に、金城さんのラム酒が多くの人に飲まれ、私が物書きになっていたら小説を書いてもいいですか」と提案して実現したそう。
小説に登場する伊波まじむは、派遣社員という立場からいじめや偏見を受けるものの、前向きに地道に努力。そんな彼女を支えてきた祖母おばあは、会社帰りにカフェバーに誘い、ラム酒のおいしさを教えてくれました。それをきっかけに沖縄産ラム酒の実現に向けて社内ベンチャーコンクールに応募し、正社員の人たちの提案をおさえて事業化が決定。けれども、原料となるさとうきび畑の候補地探し、醸造メーカーとの交渉などに苦戦し、完成したラム酒を一番に飲ませたい祖母おばあが病に倒れたり…。絶体絶命のピンチに立ちつつも数々の課題を乗り越えて強くなっていくまじむと、彼女を応援する協力者たちにたくさんの勇気と元気をもらえます!

とにかく思いっきり泣ける!『まぐだら屋のマリア』

『まぐだら屋のマリア』(幻冬舎文庫)

www.gentosha.co.jp

あらすじ

東京・神楽坂の老舗料亭「吟遊」で修業をしていた柴紋は、料亭で起こった偽装事変を機にすべてを失った。料理人としての夢、大切な仲間。そして、後輩・悠太の自殺。逃げ出した柴紋は、人生の終わりの地を求めて彷徨い、尽果というバス停に降り立った……。過去に傷がある優しい人々、心が喜ぶ料理に癒され、柴紋はどん底から生き直す勇気を得る。(『まぐだら屋のマリア』(幻冬舎文庫 裏表紙より転載)

みどころ(ネタバレ注意!)

バス停のすぐ近く、冬の寒々しい崖っぷちにポツンと建つ古い小屋「まぐだら屋」を目指して歩いていった柴紋。湯気を上げるかつおの出汁の香りに誘われて店内に入っていくと「いらっしゃい」と明るい声で出迎えてくれたのが、女性店主のマリアでした。それまでは死を考えていた柴紋ですが、急にお腹が空いてご飯4杯を一気に完食。そんな出会いをきっかけに食堂で働くようになったのです。この食堂の定食が、実においしそうなんです。「今日は大漁じゃけえ」と知人の漁師が立派な寒ブリを、「おっ母が作っとる畑で採れた」とみずみずしい大根が持ち込まれると「今日の定食はブリ大根で決まりね」とマリア。一つひとつ丁寧に仕込んだ手作りの料理は、有名な高級料亭よりも贅沢で人の温かさが伝わってきます。開店まもなく店内は作業服を着た男たちで満席になり、「おいしかったよ」と満たされた表情で感謝される日々の中で、生きる力を取り戻していく柴紋。一方、後半にはマリアの悲しい過去が明らかになっていきます。辛い経験をしている人ほど、他人には優しくできる。ラストは子どものようにひくひくと思い切り泣いてください!

食欲の秋、新米をもりもり食べたくなる!『生きるぼくら』

『生きるぼくら』(徳間文庫)

www.tokuma.jp

あらすじ

いじめから、ひきこもりになった24歳の麻生人生(あそう じんせい)。頼りだった母が突然いなくなった。残されていたのは、年賀状の束。その中に一枚だけ記憶にある名前があった。「もう一度会えますように。私の命が、あるうちに」 マーサばあちゃんから? 人生は4年ぶりに外へ! 祖母のいる蓼科へ向かうと、予想を覆す状態が待っていた――。人の温もりにふれ、米づくりから、大きく人生が変わっていく。(徳間文庫 裏表紙より転載)

みどころ(ネタバレ注意!)

長年引きこもり生活を送っていた、どうしようもない息子・人生が、母の失踪をきっかけに父の実家である蓼科に行き、別人のように成長していく過程がみどころです。父方の祖母であるマーサばあちゃんは認知症で、人生のことはまったく覚えていませんでしたが、農作業と料理づくりは得意。昔、小学校の夏休みに訪れたときのように、温かくておいしいご飯をつくってくれました。そして、ばあちゃんと同居していたつぼみという同年代の女性が、実は離婚した父の娘という衝撃の事実を知る。そんな3人の共同生活が始まり、人生は清掃会社で真面目に働くようになります。ある日、昔話を語るように「お米の一生」について話し始めたばあちゃん。種もみから苗づくり、田植えは一つひとつ手植え、初夏には青年のようにぐんぐんと育ち、やがて穂が出て花が咲き、実がつく。話に夢中になった2人は、「やってみたい!」と言いますが、この米作りは常識では考えられない、昔ながらの「自然の田んぼ」。生半可な気持ちではできないと、ばあちゃんは反対するものの、村の人たちの協力を得て挑戦することに。田んぼの風景を見ながら米を育てていくなか、人生は自分に生きる力があることを気づきます。いよいよ収穫後、かまどに薪をくべて炊いたごはんからは、甘い香りが立ち上がる。今すぐにでも炊き立ての新米が食べたくなります!

温泉&グルメの旅に出かけたくなる!『旅屋おかえり』

『旅屋おかえり』(集英社文庫)

books.shueisha.co.jp

あらすじ

あなたの旅、代行します! 売れない崖っぷちアラサータレント“おかえり”こと丘えりか。スポンサーの名前を間違えて連呼したことが原因でテレビの旅番組を打ち切られた彼女が始めたのは、人の代わりに旅をする仕事だったーー。満開の桜を求めて秋田県角館へ、依頼人の姪を探して愛媛県内子町へ。おかえりは行く先々で出会った人々を笑顔に変えていく。感涙必至の“旅”物語。(集英社文庫 裏表紙より転載)

みどころ(ネタバレ注意!)

北海道の礼文島出身の丘えりかは、「よろずやプロ」の鉄壁社長にスカウトされて上京。東京でタレントとして華々しく活躍すると思いきや、弱小プロダクションのタレントは、“おかえり”こと丘えりか1人のみで、唯一のレギュラー番組『ちょびっ旅』が収入源。しかし、おかえりのミスで番組は打ち切り。その直後には全財産の入ったバッグを紛失してしまい、まさに“泣きっ面に蜂”の状態。ドジで間抜け、運命にも見放されたおかえりですが、何事にも一生懸命で、どんなときも笑顔を忘れない。だからほっておけず、手を差し伸べたくなる愛されキャラです。仕事仲間に支えられ、あるファンからの依頼で始まった旅の代行業「旅屋」。満開の桜を撮影するために秋田県角舘に行き、雪に見舞われるアクシデントに遭いながらもへこたれず、長年分断されていた父と娘の縁を取りもち、『ちょびっ旅』のスポンサー企業の会長と家族の絆を結びつける。「私を支えてくれる人たち。それから、旅をすること。このふたつに恵まれて。私、最高に幸せです」と語るおかえりは、芸能界では成功できなかったけど最高に格好いい。彼女のように旅を楽しみ、いろんな人と出会いたい。そんな気分にさせてくれる小説です。

まとめ

原田マハの小説の世界、いかがでしたでしょうか。読書初心者から本好きの方まで、年齢を問わずに気軽に読める作品ばかりなので、まずは手に取ってほしいと思います。ストーリーは単純明快で読みやすく、挫折しながらも一生懸命に頑張る主人公に感情移入し、叱咤激励しながらいつの間にか夢中になってしまう……。最後は家族愛や人間ドラマに涙してリフレッシュ!私にとって原田マハの小説は元気の源です。ぜひ、秋の夜長にゆったりと自分時間を楽しんでみてください。

◆文:藤田美佐子
京都市在住。フリーランスの編集兼ライターとして求人、医療、食、観光、ブライダルなど幅広い取材・執筆活動を行う。1児の母。趣味はマラソンやトレラン、美味しいものを食べたり、つくること。読書は毎日の日課で、一番好きな作家は原田マハ。

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