2021年秋、フォリップスはこのオーラルケア家電の分野に新モデルをドッと市場投入してきました。今回は、手磨きと電動歯ブラシそれぞれのメリットを取り入れた「Philips One」、水で汚れを落とすソニッケアーパワーフロッサーシリーズなどをご紹介します。
2021年秋、フィリップのオーラルケア家電が超充実
オランダ フィリップス。色々な技術の基本特許を持つ世界でもトップクラスの実力を未だに持ち続ける欧州の老舗メーカーです。別名「欧州の巨人」。本社は、オランダの地方都市 アイントホーフェンにありますが、行ってみると、でかいでかい。本当に巨大な会社です。
しかし会社の方針は実に堅実。全種類の家電が作れる実力を持ちながら、確実にニーズが途切れず、数量が出るモノを中心に据えます。要するに、日本でも大ヒットした「ノンフライオーブン」では、彼らの本筋になりえないのです。何故かというと、料理には流行があるからです。ということは、稼げる時もあるけど、稼げない時もある。フィリップスは、こう言った製品も出しますが、中心に据えないのです。
では、彼らが事業の中心に据えたのは何か。それは「照明」です。次に「シェーバー」。双方とも毎日使われ、替えの電球、替え刃と、本体を売った後でも、替えパーツで稼ぐことができる分野に力を入れました。しかしLED照明が実用化され、照明はビジネスモデルの変換を余儀なくされます。
そのため彼らは軸足を一般用から医療用に伸ばします。今ではフィリップスは、医療機器メーカーの第一人者。当然、健康ケア家電もよく練られています。その一つがオーラルケア家電です。
そして2021年秋、フォリップスはこのオーラルケア家電の分野に新モデルをドッと市場投入してきました。
4つの要素で構成されるフィリップスのオーラルケア
さて、さっそく新製品を紹介してもいいのですが、オーラルケア家電の構成を知っておいた方がいいので説明します。一口でオーラルケアと言いますが、フィリップスはそれを4つの要素に切り分け、成り立たせています。
(1)電動歯ブラシ
一つ目は「歯ブラシ」です。
歯ブラシは昔からあります。江戸時代でも歯を磨いてました。しかし、その源流は仏教だと言われています。お釈迦さまが推奨する、仏さまをお参りする前に口をきれいにする方法が歯磨きだったそうです。日本の「うがい手水で身を清め」より強力です。国民食がカレーであることもあるのかも知れません。
当時の歯ブラシは小枝を使います。片方を潰し、木の繊維をほぐし出します。インドでは歯木(しぼく。インドセンダン)が使われ、中国では楊柳(やなぎ)が使われました。江戸期に商品化されたのは、ふさ楊枝(ようじ)。明治以降、動物の体毛を使った歯ブラシになります。
これの現代版が電動歯ブラシ。手磨きとの違いは、ブラッシングの回数。手だと、2ストローク/秒がギリだと思いますが、電動だと、2〜3万ストロークしていますので、決定的な違いがあります。
(2)ブラシヘッド
二つ目は「ブラシヘッド」です。
ここも色々な工夫が取り込まれます。まず歯列にフィットするか。先端の形状、毛の長さ、密度、そして硬さ。硬さは好みでセレクトできますが、それ以外のところがよくないと十分なブラッシングができません。
(3)デンタルフロス
三つ目は「デンタルフロス」です。
単純に言うと歯ブラシの毛先が届かない歯と歯の隙間をにすることです。今までも歯間用に「糸ようじ」というものがあります。これは糸による掻き出しですが、同じことを強力な水圧でやろうというものです。ケルヒャーの高圧洗浄機で、ブロック塀を洗うと、色が変わり、かなり新品に近くなりますが、それと似たようなモノです。これがフィリップス「パワーフロッサー」シリーズです。
(4)アプリ
そして最後は「アプリ」。
オーラルケアは、歯を中心とした口内「掃除」。当然、効率と結果が求められます。これが実にわかりにくい。歯医者だって鏡を使いまくりますからね。ですから歯磨きしている当事者はなかなかわかりません。その代理、当事者の目の代わりが「アプリ」です。センサーで細かい位置を把握し、的確にケアが足らない部分を教えてくれます。初めて見ると、「大袈裟な」「子ども騙しでは」と思うかもしれませんが、使ううちに得心が行きます。無料配布されるモノですが、結構ポイント高いです。
電動歯ブラシ入門に「Philips One」がオススメ
電動歯ブラシに変えてもうまく磨けない人がいる
手磨きよりいいということで、電動歯ブラシに取り替えたのに、よく磨けていない人がいます。それには2つの理由があるようです。
1つは無闇矢鱈と手を動かしてしまうこと。手磨きの場合は、歯ブラシをその位置に当てる、そしてブラッシングの2段階ですが、電動歯ブラシの場合、ブラッシングは歯ブラシにお任せ、人様は位置を合わせるだけです。つまり手の動かし方が全く違うのです。これが苦手な人がいます。
もう1つは重さ。手磨き用の歯ブラシは、プラスチックの棒に毛を植え込んだだけ。重さは20gありません。実に軽いのです。一方、電動歯ブラシは中身がぎっしりの上、ちょっと太い。私の使っている、ソニッケアー 9900 プレステージは640gもあります。重さだけでも30倍、扱い方も真逆です。軽いブラシをせっせせっせと動かしてきた人にとって、重い上に握りにくい。しかし、いつもの癖で動かしてしまう。ブラッシングもうまく行きませんね。
また気持ちの問題もあります。「手動が電動になるなら、早く磨き終えるだろう」という考えです。調査会社によると、歯磨きに使う時間は、1分未満が約5%、1〜3分が47%と、3分未満が全体の52%を占めます。歯磨き時間に定説はありませんが、均等に全体をむらなくきれいにするとなると、よほど上手い人でも、3分以上かかるのではないでしょうか? それに対し、電動歯ブラシは、歯を4分割し、一カ所にかかる所要時間は30秒。計2分で全体を磨ける設計になっています。
健康な人生を考えると、電動歯ブラシがおすすめなのですが、普及はそこまで進んでいません。人によって合う、合わないということがありますし、歯ブラシでも十分キレイにすることは可能です。しかしトータルで考えると、電動歯ブラシが有利なことは否めません。
そこでフィリップスは考えたわけです。より多くの人に電動歯ブラシのメリットを享受してもらうためにはどうすればいいのかをです。結論は、電動歯ブラシのメリットと手磨き歯ブラシのメリットを有したものはどうか、ということです。それが「Philips One」。27gの軽量モデルです。この軽さ、乾電池によって実現したモノです。
「乾電池」の採用で何が変わったのか?
一般の電動歯ブラシの主流振動、2〜3万ストローク/分 振動していると言うことは、すごいことです。超高性能モーターと言えます。超高性能モーターの泣きどころは、電気喰いであることと、価格が高いことです。当然バッテリーは特注品です。これらがマストであるとすると、電動歯ブラシを軽く、安くすることはできません。
Philips Oneに採用されたモーターは、約13,000ストローク/分。しかし、その分軽いし、バッテリーも軽くできます。フィリップスが採用したのは、乾電池。携帯ギアのパートナー。なんたって世界共通規格。家のコンセントが地域により違い、時々成田空港で変換器を買わないければならない羽目に陥るのに対し、こちらはそんなことはありません。どこでも手に入ります。
しかも、単4形アルカリ乾電池1本で約3カ月間使用可能(目安として2分間のブラッシングを1日2回)ですから、すごいモノです。ちなみに3カ月と言うのは歯ブラシのブラシ交換目安でもあります。電池がなくなると気付きますので、電池と同時に変えればいいわけです。
そして軽くした理由はもう一つ、これは手磨き同様に、歯ブラシ自体を動かす前提で設計されています。と言うと、今まで電動歯ブラシの使い方に馴染めなかった人にもいいと言えます。
使ってみると、実に使いやすい。重いと一度当てると微妙に位置を変えにくいです。ところがすこぶる軽いのですから、自分の思った位置に当てられます。パワーがない分、当たりも柔らかく、電動歯ブラシのように完全に別物という感じはありません。入門用として実にいい感じです。
アプリ連係ではない
では、今当たり前になりつつある「アプリ連携」はどうなっているのでしょうか?結論から言うと「できません」。連係させるとしたら接続はBluetoothになるでしょうが、それなりにコストがかかります。このため、通信はNGです。しかし、エッセンスはサポートしています。電動歯ブラシが2分でキレイにするように設計されていることです。2分で1回にすると、後半の磨きが甘くなるのですが、アプリは、歯を4分割して、1つ30秒で歯磨きするように導きます。Philips Oneは、この30秒のエリア替えのアピールをします。30秒毎に「トン」「トン」と一瞬ストップします。カドペーサー機能と言います。この合図があるまで、1/4を繰り返し丁寧に磨けばいいのです。
加えて、どこにでも放り込んでおける携帯ケース付き。色はマンゴー、サンゴ、ミント、ミッドナイトブルーの4色揃っています。
気になる値段は…
さて、気になるのがお値段ですが、¥3,410(税込)。これは携帯もできる電動歯ブラシとしては重要なことです。もしかすると私だけかもしれませんが、ホテルに泊まった時など、結構歯ブラシを忘れます。ちょっと濡れているので、最後にパッキングしようと、思っているうちに忘れるのですね。2回忘れると5万円近くが吹っ飛びます。こちらは、そんなことになっても 1/8〜1/5位で済むわけです。私は、外に持って行くときは、これに決めました。
水で汚れを落とパワーフロッサーシリーズ
キーワードは「X」
こちらはブラッシングではうまく落とせない汚れを水で落とすフロッサーです。汚れを水で落とす時に、一番いいのは、ピンポイントの集中攻撃。しかし、それを可能にするのは、正確に狙えてこそ。しかしフロッサーの先端は口の中。大まかな位置はわかりますが、目で見たように的確と言うわけには行きません。このため、いいモノなのですが使いにくいと言うところがありました。
このためフィリップスは、水流の先端をX字に代えました。
X型の4方向に広がる水流が歯間や歯と歯ぐきの間の汚れを しっかり除去するのです。また、いいのは矯正器具を使用の人も使えること。矯正器具を付けているとブラッシングなどはしにくくなります。その点、水はいいですね。液体は有利です。
また電動歯ブラシのカドペーサー機能と同様に、一定間隔で水圧の強弱が変化し、短い一時停止時間が挟まれます。
ラインナップは、2つ。据え置き型のソニッケアーパワーフロッサー 3000。そして乾電池で動く、ソニッケアーコードレスパワーフロッサー 3000。
このコードレスを見た時、私はやったーと思いましたね。フロッサーは確かに歯間もきれいにしてくれるのですが、大量の水を使います。歯を剥き出しにした場合、口は水を溜めることができません。口を洗った水がダラダラ出ます。慣れないと床にこぼしてしまうかも知れません。私は入浴時使えないかなぁとつくづく思ったモノです。
それが実現しました。気楽に使えるのは、なんとも気持ちがいいモノです。
その他の新製品も
14年連続日本の歯科医・歯科衛生士が最も使用している電動歯ブラシブランド、 ソニッケアーのベーシックモデル「3100シリーズ」も新しくなります。こちらは、乾電池ではなく充電池タイプ。電動歯ブラシらしい仕様で安価モデルが欲しい人はこちらをチョイスするのもありです。
まとめ
フィリップスの強みは、医療との強い結びつきです。元々、美容家電、健康家電は、医療外と言うところで始まりましたが、今は、医療外なるも、医療の技術、考え方をどんどん取り入れなけらばなりません。その時、一番有利なのはフィリップスかもしれませんね。しかし今回のモデルチェンジの最大ポイントは価格です。安く、より良いものをというのはメーカーの使命です。
もう一つは、今の電動磨きと手磨きの幅広い差異の中に、橋頭堡を築いたことです。より自分に合ったチョイスができます。長生きする時、自分の歯があるのはとても重要なポイント。そんなとき、フィリップスのオーラルケア製品は心強いパートナーになってくれると思います。
◆多賀一晃(生活家電.com主宰)
企画とユーザーをつなぐ商品企画コンサルティング ポップ-アップ・プランニング・オフィス代表。また米・食味鑑定士の資格を所有。オーディオ・ビデオ関連の開発経験があり、理論的だけでなく、官能評価も得意。趣味は、東京散歩とラーメンの食べ歩き。