サラダチキンは好きですか?低脂肪、高タンパク質の上、安くて、美味しいですね。唐揚げに負けない人気を誇ります。そのためでしょうか、どんどん出てくる電気鍋、電気圧力鍋には、判で押したように「低温調理モード」が存在します。そんななかでも、単独の低温調理器を発売しているメーカーがあります。今回は、その利点をサラダチキンを作り、考えて見たいと思います。
低温調理とは
最近メジャーになってきた低温調理とは、40 〜65℃で加熱調理をした料理のことです。お肉やお魚のたんぱく質は、40℃前後でおいしさを引き出しますが、65℃を超えると水分が流れ出てしまい、パサつや硬さの原因になってしまいます。
低温調理では、お肉やお魚がおいしく仕上がる温度をキープしながら加熱するため、やわらかく仕上げることができます。
また、お肉やお魚を焼いた時に、中まで火を通すと表面が硬くなってしまうことがありますが、低温調理は表面と中心部の温度差が少ないので、全体的にしっとりやわらかに仕上げることができます。
専用モデル vs 汎用モデル
聞くからにおいししそうな気がしてきますね。では、専用モデルと汎用モデルで、その差がどこにあるのか、見てみましょう。
今回、専用モデルとして登場してもらうのは、アイリスオーヤマのスリム低温調理器「LTC-02」です。
温度設定が0.5℃刻みで設定できる優れもの。メーカーレシピには、サラダチキンは67℃が美味しいとあります。ただし筐体が大きく、径、高さともに20cm以上で、容量:15L以下が要求されます。普通の両手鍋だと、ちょっと足りません。私は、パスタ鍋を使いました。パスタ鍋は吹きこぼれ対策のため、径に対し深さ(=高さ)があります。ちなみにこれに8L程度の水を張り使いました。
一方、汎用モデルは、2021年の調理家電でも一二を争う傑作機。シロカの電気圧力鍋「おうちシェフ PRO」です。
こちらは「オートメニュー」です。ちなみに設定温度は、65℃。マニュアルでの温度設定は 5℃刻み。ちょっとラフです。こちらは、設定温度になってから、ビニールに入れたチキンを入れるようにと指示されています。これ浸す湯量(1.5L)とやや少ないので、温度が安定しにくいからではないでしょうかね。オートですが、ちょっと面倒。
両方を見比べると、かたや化学実験器具。かたや調理システムという感じで、極端に違います。
料理中は、密閉されていない「LTC-02」からはハーブ(ローズマリー)の香りが一面に広がります。「LTC-02」は香り気味という感じです。
専用機と汎用機で味比べ
こんなところに差が
同時に、同じ胸肉を半分に分け作ったのですが、味はほぼ互角。肉繊維をほとんど感じさせない食感は、流石に美味しい。塩、黒胡椒、ハーブで味は付いていますが、どちらかというと薄味ですから、そのまま食べる人は、塩味を調整した方がベターかもと思います。
では差がなかったのかというと、ちょっとした差がありました。それは、食感の均一性です。
「LTC-02」は普通の鍋を使います。たっぷりとしたお湯をヒーターで温めるのですが、強制的に湯を循環させるメカニズムが付いています。要するに、温度の均一性が高いのです。
一方、「おうちシェフ PRO」は密閉されてはいますが、元々使用する湯量は多くないので、循環システムなどはありません。
この差でしょうか。「おうちシェフ PRO」に2箇所ほど、なんとなく食感が違うかなぁところがありました。まぁ、ほとんどの人は気にしないとは思いますが・・・。少なくとも、「おうちシェフ PRO」の魅力がなくなるレベルの差ではありません。
専用モデルを勧めたい人
これ位の差でしかありませんというと、その通りです。しかし、私は、温度、時間の設定が緻密にできるのがすごく気に入っています。というのは、低温調理は、今後まだまだ面白味を発揮する分野だと思います。そんな時、自分で方向性を見つけていくには、とても便利だからです。
このため料理が好きで、色々挑戦したい人にはお勧めしたいです。
また、大きな鍋が使えるので、湯煎もしやすい。クッtキングケトルも悪くないのですが、いかんせんちょっと小さい。こちらは湯も多いし、安定して色々なことができます。
今、料理というと、時間がないので・・・、面倒なので・・・、という感じの調理家電が多いのですが、そんな中にあって、温度と時間を細かくセットできるのは、色々な考えが試せてとても楽しい。
低温料理時の注意点は?
冒頭に書いた通り、低温料理は、40〜65℃。一番の問題は、食中毒です。サルモネラ菌なそは60℃3分の加熱で安全とされていますが、黄色ブドウ球菌やノロウィルスは、ちょっと微妙なところがあります。逆にいうと、食材の鮮度、衛生保存は特に重要です。
コロナ禍、冷蔵庫の衛生が気になるなら、ぜひ、大掃除の時に対応してください。安全で、美味しいと鬼に金棒です。
◆多賀一晃(生活家電.com主宰)
企画とユーザーをつなぐ商品企画コンサルティング ポップ-アップ・プランニング・オフィス代表。また米・食味鑑定士の資格を所有。オーディオ・ビデオ関連の開発経験があり、理論的だけでなく、官能評価も得意。趣味は、東京散歩とラーメンの食べ歩き。