スティック型掃除機は、普段使いに必要な「吸引力」「動作時間」などをほぼ手に入れました。「基本的に完成した」と言ってもいいでしょう。商品が必要なスペックを手に入れると、商品の多様化が始まります。スポットライトが当たりはじめた掃除機に、三菱電機のコードレススティッククリーナー iNSTICK ZUBAQ(インスティック ズバQ) HC-JD2Aがあります。
スティック型掃除機が「多様化」する理由
スティック型掃除機の魅力に「初動の速さ」があります。それまでは、掃除しようとすると、納戸に行って掃除機を取り出し、電源ケーブルを引き出してコンセントにさす。頑張っても1分はかかりますかね。それに対し、スティック型掃除機は、部屋の隅など掃除機が置いてあるところまで行き、そのまま掃除。この初動の速さは魅力的なところがあり、いつしか日常の掃除は、「時間を決めてまとめて掃除する」から「気づいた時に気になる場所だけ掃除する」に変わったように思います。
そして今、スティック型掃除機は、普段使いに必要な「吸引力」「動作時間」などをほぼ手に入れました。「基本的に完成した」と言ってもいいでしょう。ダイソンなどは、キャニスター型掃除機の開発を中止したくらいです。
このように、商品が必要なスペックを手に入れると、商品の多様化が始まります。それまで基本スペックを上げること自体が進化した商品=新製品だったのですが、基本スペックで差別化できなくなったからです。いわゆるメーカーごとの差別化が求められるようになったわけです。
ここで俄然、スポットライトが当たりはじめた掃除機に、三菱電機のコードレススティッククリーナー iNSTICK ZUBAQ(インスティック ズバQ) HC-JD2Aがあります。見事に他社と違うということを打ち出したモデルです。
掃除機を出しっぱなしにするということ
「掃除機だとわからない掃除機」を作った三菱電機
掃除機を出しっぱなしにしておくということに対して、人は色々な考え方を持ちます。目立ってもいいよという人がいれば、目立っちゃダメという人もいます。
ダイソンは、この分野で非常に優れた技術を持ち、スティック型掃除機のスペックもいいものです。しかし、「派手」です。実に目立ちます。茶室に「目立つ一輪挿しの美」を持ち込んだのは利休ですが、ダイソンはそれ以上に、目立ちます。しかも花の美のように、数日で取り替えるということはできません。ずーっと目立ち続けます。ま、自分では慣れ、それほどでもと思うのですが、他人が来ると必ず指摘されますね。
スポーツカーのように肩で風斬るかっこよさを具現化するデザインと言えるのですが、スティック型掃除機はスペースライフルのような形をしているとは言え、掃除機は掃除機。「ちょっとなあ」と思う人も多いと思います。
三菱電機は、派手で目立つのではなく、目立たず、隠すことを考えました。しかし、魔法や4次元ポケットが存在しない令和では、空中からヒョイっと出すなんて技術はありません。そのために三菱電機が用いたのは擬態。スタンドに立たせた時、掃除機とわからないことを意識して作りました。それが iNSTICKシリーズです。ZUBAQは、その最終進化版。どこがすごいのでしょうか?
iNSTICK ZUBAQのどこがすごいか?
掃除機とハンディ掃除機、双方がすぐ使える!
iNSTICK ZUBAQの最も優れている点は、普通の掃除機としてサッと使えることではなく、ハンディ掃除機としてもサッと取り出せることです。
スティック型掃除機の本体は、ハンディ掃除機で両者は近しいところにあることは事実なのですが、スティック型掃除機をハンディ掃除機として使うには、延長管&ヘッドを外し、ハンディ掃除機用のアタッチメントブラシなどを装着する必要があります。
実は、これが結構面倒臭い。しかも冒頭で書いた通り、汚れを見つけて即掃除なら、ハンディ掃除機だけで用が足りることも多い。今、ハンディ掃除機も、前より伸びているそうですが、一つには、スティック型掃除機からハンディ掃除機にするのが面倒だからかも知れません。
しかし、iNSTICK ZUBAQは、そんなことはありません。横に弾くとスティック型掃除機として取れ、上に弾くとハンディ掃除機のみ取れる仕様になっています。実に便利。基本的なスペックを満たした現在、このような差別化は、大きな魅力になります。
この機構、かなり感嘆できるのですが、笑えるところも。それは、オブジェと化しているスタンドには1ヶ所、ハンディ掃除機用のアタッチメントが剥き出して装着できるようになっているのです。ハンディ掃除機は前述のように、専用のアタッチメントを付けて使うことが多いのですが、その装着が簡単にできるわけです。
しかし、そういった「剥き出し感」を嫌い、スタンドに立てた時、抽象的なオブジェ的に見えるようにしたものに、ブラシが1つ出ているのです。まるで化けそこなった狸の尻尾のようです。
コンセプト的には、デザインが至らなかったと言うことも可能ですが、あえてユーモアと言ってもいいのではと思います。居住空間なんて完璧にできませんので…。
iNSTICK ZUBAQの欠点は?
作り込んだがゆえの弱みも
このように、すごーく作り込まれた iNSTICK ZUBAQですが、それ故の弱みもあります。オブジェに見えるくらい流麗に造られた本体は、凹凸が非常に少ない。これは何を意味しているのかというと、スタンドを利用しない場合、スティック型掃除機からハンディ掃除機への変更、つまりパーツを外すのはかなりやりにくいのです。
これは作り込まれたモデルには、ままある話で、逆な言い方をすると、そこまで作り込んでいるわけです。
iNSTICK ZUBAQのスペックは?
やや重めのしっかりとした掃除機
スティック型掃除機として重要な重さは、約1.9kg。日本人としても自在に動かしやすいギリギリの重さをクリア。重めではありますが、今ドキの掃除機のスペックをクリアしています。重めですからモーター、バッテリーともいいものが使えます。また、三菱の小型サイクロンシステムは定評があり、それはZUBAQでも活きており、吸引力も十分。駆動時間も、強で約8分、自動で約40分と十分です。
また最近話題の、ヘッドクリーニング、毛絡まり対応には、2つの技術で対応しています。一つは、スタンド装着時、ヘッドローターを空転、吸引することにより、ヘッドに付着した毛をきれいにします。iRobot社のお掃除ロボットルンバは、機種によって掃除したゴミを、ロボット掃除機のダストボックスからダストタワー内の紙パックに吸引移動することができるのですが、その時のビックリするような大きな音がします。そこまでではありませんが、こちらもかなりの音がします。本人としては掃除は終わっているので、不意を突かれた感じでかなりびっくりします。
それでも絡まった毛は分解掃除をするしかないのですが、そこにもう一工夫。普通掃除機のヘッドローターは、嵌め込むような構造になっています。ところがZUBAQは、ローラーを引き抜くよう設計されています。この引き抜き孔の径を補足することにより、毛を掻き落とすわけです。
まとめ
iNSTICKシリーズは、かなり長期に渡り市場供給されてきました。発売当初は正直、先に基本スペックをもう少し詰めた方がいいのではと思ったこともあります。しかし、それらが成熟した現在、iNSTICK ZUBAQ本来のコンセプトが市場とマッチ。輝いて見えます。
三菱電機のコードレススティッククリーナー iNSTICK ZUBAQ HC-JD2A、買うなら今です。
◆多賀一晃(生活家電.com主宰)
企画とユーザーをつなぐ商品企画コンサルティング、ポップ-アップ・プランニング・オフィス代表。また米・食味鑑定士の資格を所有。オーディオ・ビデオ関連の開発経験があり、理論的だけでなく、官能評価も得意。趣味は、東京歴史散策とラーメンの食べ歩き。