病害虫は日々の観察で早めに発見しましょう。果実をおいしく安全に食べるためにも、薬剤などはできるだけ使わないようにしたいものです。病害虫を予防するポイントや薬剤のタイプと選び方、おもな病気や害虫について、書籍『おいしい果樹の育て方』著者で、千葉大学環境健康フィールド科学センター助教の野田勝二さん(農学博士)に解説していただきました。
解説者のプロフィール
野田勝二(のだ・かつじ)
千葉大学環境健康フィールド科学センター・助教。農学博士。
専門は果樹園芸学、健康機能園芸学。柑橘類の研究のほか、園芸療法・園芸福祉に関する研究も行っている。また市民とともに、サスナティブルな街づくりの活動にも参画している
本稿は『おいしい果樹の育て方 苗木選びから剪定、料理まで』(西東社)の中から一部を編集・再構成して掲載しています。
病害虫への対処法
病害虫は日々の観察で早めに発見しましょう。果実をおいしく安全に食べるためにも、薬剤などはできるだけ使わないようにしたいものです。
病害虫を予防するポイント
株内の風通しと日当たりを保つ
風通しの悪い高温多湿の環境は、病気のもととなるカビの発生につながります。枝が混みあうところは間引き剪定で、葉が茂っても内部まで風や日の光が入るようにしましょう。
日々の観察で早期に発見する
葉色の変化や害虫の食害痕がないか、卵や幼虫がいないか、日ごろから観察しましょう。見つけたらすぐに対処します。
枯れ葉や落ち葉には病原菌が潜んでいることがあるので、放置せず取り除きます。
マルチングで土からの感染を防ぐ
土も病気の感染経路のひとつ。病原菌を含んだ泥がはねたり、流れてくる雨水が病原菌を運んできたりすることもあります。
株元にワラやバークチップを敷き、泥はねを防ぐことで病気の感染を防げます。
刃物は消毒し、切り口には癒合剤を
病気をもつ植物を切ると、刃にウイルスが付着することがあります。用具は清潔を保ち、とくに刃物類は使用後に水で洗い消毒しておきましょう。太い枝の切り口は癒合剤を塗って保護します。
肥料や水のやりすぎに注意
肥料は適切な量で効果を発揮します。とくにチッ素肥料をやりすぎると木が軟弱になり、病害虫が発生しやすくなります。
鉢植えでは水のやりすぎで根腐れが起きないよう注意します。
果実は袋をかけて防御する
ブドウやサクランボなどのように雨で実が割れやすいものや、害虫の食害にあいやすいものは果実に袋をかけて予防しましょう。
鳥の食害や日焼けにも効果的です。
本稿は『おいしい果樹の育て方 苗木選びから剪定、料理まで』(西東社)の中から一部を編集・再構成して掲載しています。
薬剤のタイプと選び方
家庭栽培ではできるだけ薬剤使用を避けたいものですが、病害虫の被害で収穫できなくなるのは残念なこと。
被害が出る前の最低限の予防や、発生初期の散布なら1年を通しての散布量を最小限に抑えられます。無農薬にこだわりすぎず上手につき合いましょう。
薬剤には、病気を防除する「殺菌剤」、害虫を防除する「殺虫剤」、両方に効果のある「殺虫殺菌剤」などがあります。
果樹と病害虫の種類によって使える薬剤が決まっていますので、予防や被害に合わせて適切なものを選ぶことが大切です。
薬剤を使うとき
▼ラベルの確認
安全に使うために、散布する果樹に適用した登録農薬かどうか、使用容量、使用方法などラベルに書いてあることを必ず確認する。
家庭栽培の果樹でも、適用以外の薬剤を使用すると、農薬取締法違反で罰則対象となる。
▼散布のしかた
風が弱い朝夕の涼しい時間帯に行う。散布時は、帽子、保護メガネ、マスク、手袋、長靴、長袖・長ズボンを着用し、薬剤が皮膚につかないようにする。
生理障害について
果樹栽培では、病害虫の被害以外でも障害が起こることがあります。養分、水分、日照の過不足や気温や気候の変化などが要因となる「生理障害」です。
変色、裂果、落果など症状はさまざまですが、病害虫と見分けがつきにくいことがあります。
全体的に生育が悪かったり、葉色が変わってきたりしたら、管理の仕方を見直して、少しのあいだ様子をみてみましょう。
本稿は『おいしい果樹の育て方 苗木選びから剪定、料理まで』(西東社)の中から一部を編集・再構成して掲載しています。
おもな病気
病気は多湿状態で発症することが多いので、混み合った枝は間引きしておきましょう。病気が発生した部位はすみやかに取り除き、感染拡大を防ぎます。
病名 | 注意したい果樹 | 発生時期 | 症状 | 対処法 |
赤星病 | ナシ、リンゴ など |
4〜6月 | 葉表は赤褐色の斑点、葉裏に淡黄色の突起が出る。病斑部はやがて黒褐色になり落葉する。 | ビャクシン類の樹木から感染するので、庭にビャクシン類がある場合は春先に防除を行う。 |
うどんこ病 | ウメ、ブドウ、リンゴ、モモ など |
3〜6月 | 葉や果実が白く粉を吹いた状態になり、やがて橙色から黒に変わる。光合成が阻害され、葉や茎が変形したり果実の品質や収穫量が悪くなる。 | 剪定で日当たりや風通しをよくする。原因となる菌は落ち葉で越冬するので除去し、マルチングで土壌からの跳ね返りを防ぐ。チッ素肥料は控えめに。 |
疫病 | イチジク、 りんごなど |
6〜9月 | 高音多湿で発生。果実には暗緑色〜暗紫色の病斑が発生し、白カビができて腐る。葉には黒褐色の斑点が生じる。苗木の主幹が枯死することも。 | 発生部分は取り除き処分。土壌の排水性を高めるため堆肥や腐葉土を加え、マルチングで土壌からの跳ね返りを防ぐ。風通しをよくする。 |
かいよう病 | 柑橘類、 キウイフルーツなど |
5〜6月 | 葉や枝に縁が黄色い赤褐色の斑点が発生し、表面がでこぼことざらつく。柑橘類は果実にも発生する。 | すり傷から感染しやすいので強風に当てない。ミカンハモグリガの媒介も多いので防除を。チッ素肥料は控えめに。 |
褐色せん孔病 | サクランボ (オウトウ) |
7〜9月 | 葉に紫色の小さな斑点ができ、褐色の円形に広がる。落葉し、樹勢を弱める。 | 感染葉を放置すると、その中で病原菌が越冬し新しい感染をうむ。落ち葉は焼却処分する。 |
黒星病 | ウメ、モモ、リンゴ、ナシなど | 5〜7月 | 梅雨時の低温で発生しやすい。枝葉や果実に暗褐色の斑点ができ、広がると黒い病斑となる。 | 発生した枝や葉はすぐ除去し焼却する。ふだんから風通しと日当たりをよくしておく。チッ素肥料は控えめにする。 |
黒点病 | 柑橘類 | 夏〜秋 | 枝、葉、果実に黒い斑点ができ、果実は果皮全体が赤褐色になる。梅雨時に発生しやすい。 | 病原菌は枯れ枝で越冬するため、見つけたら処分する。剪定で日当たりをよくしておく。 |
黒とう病 | ブドウ | 4〜7月 | 新梢、若葉、幼果に発症し、黒褐色の小さな斑点がしだいに広がっていく。梅雨時に発生しやすい。 | 枝や巻きひげの病斑で越冬するので、症状が出た枝は取り除いて処分。長雨の時期は雨よけを。 |
縮葉病 | ウメ、モモ など |
4〜5月 | 新芽が伸び出すころの低温で発生。若葉が赤く変色してちぢれ、やがて火ぶくれ状になる。病斑は拡大すると白カビで覆われて落葉する。 | 菌が枝葉の表面で越冬して新芽に感染するため、落葉期の新芽が伸び出す直前に、樹木全体を洗うように石灰硫黄合剤を与えて防除を。 |
梢枯病 | オリーブ | 5〜10月 | 枝の先端が赤色や灰色になって枯れ、黒い小さな斑点ができる。葉は黄色し円形の斑点ができて、枯れる。炭疽病を併発することも。 | 枯死した部分の2〜3cm程度下から切り取り処分。切り口に殺菌剤を塗る。剪定して日当たりと通気をよくする。チッ素肥料は控えめに。 |
すす病 | 柑橘類 | 周年 | 葉、枝、果実が黒いすすを塗ったようになる。光合成が阻害され樹勢が落ちる。見た目は悪くなるが味に影響はない。 | カイガラムシやアブラムシなどの排泄物に雑菌が生じて繁殖する。剪定で込み入った枝を除き、害虫を駆除する。 |
そうか病 | イチジク、 柑橘類など |
5〜10月 | 果実に灰褐色の斑点が発生し、かさぶたのような突起になる。新梢や若葉では褐色の丸い斑点があらわれて、変形して落葉する。若木に多い。 | 葉や枝の病班部で菌が越冬するため、病気の被害にあった葉や枝、果実は切り取って処分する。 |
炭疽病 | カキ、クリ、 オリーブなど |
5〜10月 | 果実に黒い斑点ができ、楕円形に広がり落下する。新梢に発生すると、縦に亀裂が入り先端が枯れる。葉脈と葉柄にも黒い病斑ができる。 | 剪定で日当たりと通気をよくする。枯れ枝や発症枝は切り取って処分。チッ素肥料は控えめに。 |
胴枯病 | イチジク、 カキ、ナシなど |
6〜10月 | 樹皮に赤褐色の病斑が発生し、やがて表面に小さな突起が出てざらざらする。枝や幹に病斑が広がると、発生部より先が枯れる。 | 土壌の排水性を高め、幹や枝を傷つける害虫は捕殺する。太い枝を切ったら、必ず切り口に癒合剤を塗り病原菌の侵入を防ぐ。 |
灰色かび病 | キウイフルーツ、ブラックベリー、 ラズベリーなど |
6〜7月 | 花びらや葉に褐色の病斑ができ、やがて腐敗して枯れる。キウイフルーツでは果実の貯蔵中に発病することもあり、軟化して腐る。 | 剪定で風通しをよくする。カビに感染した花びらから拡大することが多いため、花ちた花弁は取り除く。雨で果実が濡れているときには収穫しない。 |
灰斑病 | ビワ | 夏〜秋 | 葉にできた斑点が淡黄色から灰白色になり、病斑が拡大すると落葉する。果実は感染部が黒く変色し、軟化して腐る。 | 前年の病斑や落ち葉で越冬するので処分する。剪定で混んでいる枝を除き、日当たりと風通しをよくする。 |
灰星病 | サクランボ、モモ、リンゴなど | 5〜7月 | 成熟間際の果実に褐色の斑点ができ、全体に灰色のカビに覆われ腐敗する。花や枝にも生じて枯死する。長雨で発症しやすい。 | 開花期と成熟期に雨よけを行う。発病した果実、発病果のついた枝は切り取り処分。病果に触れたら手を洗い消毒する。 |
バルデンシア葉枯病 | ブルーベリー | 5〜7月 | 葉に褐色の斑点ができ、やがて輪紋状に広がって落葉。病斑の中央に黒褐色の突起物がある。地際に近い若い葉から発症する。 | 湿度が高い時期にひこばえから発症しやすいので、不要な新梢は早めに切り取る。落ち葉や下草も取り除き、剪定で風通しをよくする。 |
斑点病 | ブルーベリー | 5〜10月 | 葉に灰褐色の斑点ができ、やがて周囲が褐色の輪紋状に拡大して落葉する。多発すると樹勢が弱まって、果実の生長に影響する。 | 病原菌は落ち葉や枯れ枝で越冬するので、見つけたら処分する。枝が混み合うと発生しやすいので剪定で枝を間引く。 |
ベト病 | ブドウ | 夏〜秋 | 葉に淡黄色の斑点が発生し、病斑の裏面に白カビが生じ落葉。幼果は褐色の病班が広がる。梅雨時に発症しやすい。 | 発症した新梢や幼果房は取り除く。落ち葉で菌が越冬するので処分する。チッ素肥料は控えめにする。 |
落葉病 | カキ、リンゴ など |
6〜9月 | 葉が褐色に変色後、黒っぽくなって落葉する。多発すると未熟果も落ちる。雨が降るなど多湿になると、淡褐色の胞子嚢が確認できる。 | 落ち葉で菌が越冬するので、そのままにせず焼却処分する。樹勢が弱まると発生しやすいので、堆肥や肥料を加え土壌を改良する。 |
輪紋病 | ナシ | 7〜9月 | 枝に丸く柔らかいイボができ、果実には同心円状の病斑ができて果皮がへこむ。高温時の長雨で発生しやすい。収穫後に病斑が広がることも。 | イボと周囲の樹皮を削り取って処分するか、多発している場合は枝ごと切り取る。果実は袋かけで感染を防ぐ。 |
おもな害虫
害虫は害虫そのものによる被害だけではなく、害虫の被害部分から病気を誘発することもあります。卵や幼虫など早い段階で防御するのがポイントになります。
害虫名 | 注意したい果樹 | 発生時期 | 症状 | 対処法 |
アゲハ類 | 柑橘類 | 3〜10月 | イモムシ状の幼虫が葉の縁から食害する。成長するにつれ次々に食害し、主脈だけを残して食べ尽くす。 | 見つけたら捕殺する。成虫が飛来して新梢に産卵するので、新梢の時期はよく観察しておく。 |
アザミウマ類 | カキ、柑橘類、ブドウなど | 4〜7月 | 幼虫は新葉を、成虫は果実を吸汁し樹を衰弱させる。葉は萎縮して内巻きになり、果実にはリング状の黒や褐色の斑点があらわれる。 | 成虫は樹皮で越冬するので、見つけたら削って処分。マツやスギの樹皮にもいて越冬するのでそれも探して処分。巻いている葉も除去する。 |
アブラムシ類 | 多くの種類 | 4〜6月 | 新梢や若葉に寄生し、吸汁する。吸汁された葉は萎縮して巻き込み、光合成が阻害され生育に影響が出る。すす病を誘発することも。 | 剪定で日当たりと通気をよくする。一気に大量発生しやすいので、見つけたら強い水流の水で洗い流すかブラシでこすり取る。 |
アメリカシロヒトリ | サクランボ | 6〜8月 | 若齢の幼虫が集団発生し、葉脈だけを残して葉を食害する。やがて分散した幼虫は樹全体の葉を食べ尽くす。 | 成虫の発生期に卵のある葉を処分する。若齢幼虫が発生したら枝ごと切り取り処分する。 |
イラガ類 | ウメ、カキ、 ブルーベリーなど |
6〜10月 | 毒毛をもつ幼虫が葉を食害。若齢時は集団で葉の裏面だけ食べ、成長すると分散し葉を全体的に食べる。 | 幹の地際部に作る繭を冬に取り除くか、葉裏の卵塊を春に取り除く。幼虫を見つけたら補殺。死骸にも毒が残るので素手で触らない。 |
オリーブアナアキゾウムシ | オリーブ | 3〜11月 | 樹皮の地面に近いところに卵を生み、幼虫が土壌から樹木の内部に食い入り幹の中で成長する。多発して樹が弱ると、枯死することも。 | 木くずやフンを見つけたら、侵入口を探し、穴に針金などを入れて刺殺。夜行性の成虫は雑草に隠れるので除草する。 |
カイガラムシ類 | 多くの種類 | 春〜秋 | 白色や赤褐色の殻をつけ、枝や幹に固着して吸汁する。大量発生しやすい。落葉や枝枯れを起こし、すす病を誘発することも。 | 剪定で通気をよくする。見つけたらブラシなどで直接こすり落とすか、被害にあった枝ごと切り落とす。 |
カキノヘタムシガ | カキ | 6〜10月 | 幼虫が芽や果実を食害する。実がヘタから取れて落果する前に別の実に移動することで、被害が拡大する。 | 12〜2月に粗皮削りをし、樹皮内の幼虫ごと処分。または秋に主幹にコモ(むしろ)を巻いておびきよせ、春前にコモごと焼却する。 |
カミキリムシ類 | イチジク、クリ、柑橘類、ブドウなど | 5〜9月 | 樹の幹に産卵し、幼虫が幹や枝の内部を食害する。侵入した穴からはオガクズのようなフンが出る。成虫になると樹皮をかじる。 | 産卵した箇所を見つけたら潰して除去。フンが出ている穴に針金など入れて幼虫を刺殺。成虫は見つけたら捕殺する。 |
カメムシ類 | カキ、柑橘類、ブルーベリー、 ナシ、リンゴ、モモなど |
5〜9月 | 幼虫、成虫が新芽や果実を吸汁する。果実は吸汁されると変形し、スポンジ化して食味が落ちる。マツ、サクラ、ケヤキなどから飛来する。 | 見つけしだい捕殺する。網目が15mm以下の防虫ネットで株全体を覆う。成虫は雑草や落ち葉で越冬するので、除草や落ち葉の処分をする。 |
クリタマバチ | クリ | 6〜7月 | 幼虫が新芽の内部に寄生して虫こぶを作る。芽は枝葉が伸びず、開花や結実が阻害される。 | 適切な剪定と施肥で樹勢を保ち、樹を丈夫に育てる。虫こぶは取り除く。 |
ケムシ類 | ウメ、クリ、ビワ、リンゴなど | 6〜9月 | 幼虫は小枝の別れ目に大量の糸を吐いて白いテント状の巣を張る。成熟した幼虫は葉を食害する。 | 卵のかたまりや巣を見つけたら取り除く。大きくなると薬剤が効きにくいので、幼虫の早期に防除。刺すケムシもいるので要注意。 |
コウモリガ | ブラックベリー、ラズベリー、 オリーブ、フェイジョアなど |
6〜10月 | 幼虫が地面に近い樹皮をリング状に食べながら幹の芯まで侵入し、樹が弱ったり枯れたりする。侵入部には木くずとフンの塊ができる。 | 株元の雑草が卵の越冬場所になり、幼虫のエサにもなるので、除草。フンの塊は除去し、侵入した穴に針金を入れて刺殺する。 |
コガネムシ類 | ブドウ、ブルーベリーなど | 春〜秋 | 成虫が葉脈を残して網目状に葉を食害する。鉢栽培では幼虫が根を食害する。 | 周囲の果樹や野菜、草花も食害されるので合わせて防除し、見つけしだい捕殺。樹冠下が暗いと多発するので剪定で光を入れる。 |
コスカシバ | ウメ、モモ、サクランボ、 ブドウなど |
6〜9月 | 幼虫が樹皮の下を食害し、食い入った場所からフンや樹脂が流れ出る。大量発生すると枯れる。 | 剪定や堆肥で樹勢を維持する。11月ごろに食入部付近を木づちなどでたたいて樹皮下の幼虫を圧殺する。 |
ハダニ類 | 柑橘類、ブラックベリー、ラズベリーなど | 3〜10月 | 幼虫、成虫とも葉や実を吸汁し、葉は全体が白っぽいかすり状になり落葉する。光合成が阻害されて新梢の伸びが悪くなる。 | 高温多湿を好むので、間引き剪定で風通しをよくし、熱がこもらないようにする。葉裏に水をかけて駆除する。 |
ハマキムシ類 | サクランボ、ブルーベリー、 リンゴ、ナシ、ザクロ、フェイジョアなど |
5〜9月 | 幼虫が新梢や葉を糸でつづり合わせ巻き込み、その中に潜んで食害する。果実も食害する。さまざまな落葉樹を食害する。 | 被害葉は処分する。葉を巻き込んでしまうと薬剤が届かないので、春に卵が孵化したばかりのころに薬剤を散布する。周辺樹木にも散布を。 |
ブドウスカシバ | ブドウ | 5〜6月 | 幼虫がつるの先端から侵入し、食害で中を空洞にする。食入部は少し膨らむ。被害部分は翌春に枯れる。 | 被害枝は切り取り処分する。つるの中に幼虫を見つけたら捕殺。成虫が飛来する5月下旬に薬剤散布を。 |
ミカンハモグリガ | 柑橘類 | 春〜秋 | 幼虫が若葉や新梢、果実の内部を食害して生育を妨げる。葉には白っぽく食害跡が残る。被害部からかいよう病が発生する。 | 被害を受けた枝葉は取り除く。新梢がだらだらと伸長していると発生しやすいので、チッ素肥料は控えめに。 |
シンクイムシ類 | モモ、リンゴ、ナシなど | 5〜9月 | 大きくなり始めた果実に幼虫が入り込んで食害する。新梢を食害する場合もある。 | 被害果はすぐに処分する。成虫が果実や葉に産卵する前に袋かけをする。粗皮削りで幼虫の越冬を防ぐ。 |
モモノゴマダラノメイガ | クリ、モモ、ナシ、ブドウなど | 春〜秋 | 果実の表面に産卵し、孵化した幼虫が果実に小さな穴をあけ侵入し、食い荒らす。食入部から糸でつづられた白い大粒のフンを出す。 | 被害果はすぐに処分する。樹皮の割れ目で越冬するので、樹皮が荒れないように適切な施肥を行い、粗皮削りで越冬を防ぐ。 |
本稿は『おいしい果樹の育て方 苗木選びから剪定、料理まで』(西東社)の中から一部を編集・再構成して掲載しています。
病害虫の被害例
赤星病
ナシの葉表に出た赤褐色の斑点と葉裏の突起。リンゴなどの果実にも発生しやすい。
縮葉病
表面がふくらみながら全体が縮れる。下はウメの葉。
黒星病
ウメ、モモ、リンゴ、ナシなどの果実にも出る。
黒点病
柑橘類の果実に広がる黒斑。全体が赤褐色になる。
ベト病
ブドウのベト病。葉表は黄斑点、葉裏は白カビに。果実にも広がる。
灰星病
モモに発症した灰星病。リンゴやサクランボにも注意。
黒とう病
黒い斑点が広がる黒とう病。ブドウの若葉、新梢、幼果などに発生する。
すす病
柑橘類のすす病。枝や葉に黒いすすのようなものがつく。果実にも発生するが味に影響はない。
カイガラムシ類
白粉状のものがひと塊になり粒のように見える。右はロウ状の殻に覆われたイセリアカイガラムシ。柑橘類に多い。
アブラムシ類
クリの枝に発生するクリオオアブラムシ。
ダニ類
ダニが作る虫こぶ。こぶの中にダニが生息する。
コガネムシ類
葉を食害するマメコガネの成虫。
アゲハ類
ナミアゲハの卵(左)と幼虫(右)。幼虫は葉を食害して生長を妨げるため、卵のうちに取り除くのがベスト。
ハモグリガ
幼虫の食害が白いスジ状の痕になる。柑橘類に多い。
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なお、本稿は書籍『おいしい果樹の育て方 苗木選びから剪定、料理まで』(西東社)の中から一部を編集・再構成して掲載しています。果樹を育てたいけれど、どんなものがいいのか…。基本的には自分の好きなもの、食べたいものを選ぶのがいちばんです。だた果樹栽培に慣れていない人は、庭の広さや環境、手間をかけられる時間などを考慮して育てやすそうなものを選ぶのも一案です。本書では、苗木の選び方、幼木から成木までのお世話のコツ、肥料や病害虫対策など、果樹栽培の基本的な知識や、収穫した果実の保存方法とレシピなど、豊富な写真とともに紹介しています。詳しくは下記のリンクからご覧ください。
※(6)「【果樹】 幼木期の育て方と対策 水やり・暑さ・雨・強風|ガーデニングの基本」の記事もご覧ください。