年末にいただいたお歳暮の箱に、マーク(ラベル)が3つも付いているものがありました。上の2つのマークには見覚えがありますが、一番下の「地球にありがとう」は見覚えがありません。皆さんは、これらのマークが何を意味しているものか、分かりますか?
SDGsとは
なぜ、マークを気にしたかと言えば、長引くコロナ禍で、すっかり在宅時間が長くなったため、ゴミの日に出す「ゴミの量」が多くなっているように感じていたからです。ゴミ減量の第一歩は、「ゴミの分別」にあると言われますよね。しかも、最近よく見聞きするSDGsにも適っています。
ゴミを減らして「サスティナブル生活」
SDGsは「サスティナブル・ディベロップメント・ゴールズ:持続可能な開発目標」として、2015年に国連で採決され、2030年までに達成しようという17の目標のこと。このなかに「ゴミを減らそう」という直接的な目標はありませんが、いくつもの目標を達成するのに関連づけられます。
SDGsにかこつけるわけではありませんが、ゴミを減らして「サスティナブル生活」へ踏み出してみませんか。
環境ラベルとは
まずは、図表(1)の答え合わせから。
一番上のマークは、通称「紙マーク」です。正式には「紙製容器包装識別表示マーク」と言います。「容器包装リサイクル法」によって、紙製の容器や包装に表示することが義務付けられているマークです。
その下(真ん中)のマークは、通称「段ボールマーク」です。一般には「段ボールの国際リサイクル・シンボル」、正式には「国際的に共通な段ボールのリサイクル推進シンボル」と言うそうです。国境を越えた物流に活用される段ボールを、世界中でリサイクルしやすいよう統一されました。マークの統一化を提案したのは、日本の段ボール産業だと聞いています。
「リサイクルマーク」の本当の意味、知っていますか?
お歳暮の箱は、フタが紙製で箱本体は段ボールでできていました。材質の違いをそれぞれのマークで表しています。
そして、一番下の「地球にありがとう」マークは、ギフトの箱詰めを商品化した、企業のオリジナルでした。その企業に問い合わせて、教えてもらいました。「この箱は再生紙でできています。」という表示もあるように、再生紙を使っていることをアピールするものです。
これらのマークは「環境ラベル」と総称され、そのなかで、上の2つのマークのように「矢印」で循環サイクルを表しているものを「リサイクルマーク」と言います。
もっとも、「紙マーク」は、容器包装が紙製であることを「識別」するための表示に過ぎません。「段ボールマーク」も同様です。実際にリサイクルできるかどうかは、また別。つまり、啓発的に「リサイクルしましょうね」という意味であって、「リサイクルできる」ことを保証しいてくれているわけはないのです。実際にゴミを減らそうと思ったら、ここからが本番と言えましょう。
「紙マーク」の他にも「識別表示」として義務づけらているマークがあります。代表的なマークを図表(2)に挙げてみました。
どのくらいリサイクルされているのか
それぞれ(左上から時計まわりに)、「アルミ缶マーク」「スチール缶マーク」「プラマーク」「PETボトルマーク」と通称されるマークで、見覚えのあるものばかりです。ゴミを分別する際に、迷わないように付けることが義務化されています。実際、どのくらい分別・リサイクルされているのでしょう? 調べてみた結果が、図表(3)です。
容器包装材の種類によって、リサイクル率などを集計している団体が異なります。それぞれ関連する業者が集まってリサイクル団体をつくり、目標(行動計画)を掲げて取り組んでいます。リサイクル率や回収率については、2020年度に掲げた目標に対し、紙製容器包装以外は達成されたそうです。
一見すると、高いリサイクル率が並んでいます。リサイクルマークの効果でしょうか。
アルミ缶、スチール缶、PETボトルのリサイクル率や段ボールの回収率は、以前から高いことが知られてきました。缶は9割超え、PETボトルも9割に迫るリサイクル率です。家庭でゴミを出す際にも分別しやすいし、スーパーやコンビニなど、回収しているところも多いですからね。
一見して高いリサイクル率の陰で、ひときわ低い「紙」のリサイクル
一方で、プラスチック容器包装のリサイクル率(再資源化率)や紙製容器包装の回収率は低く感じます。
ただし、プラスチック容器包装のリサイクル率については、図表(3)に数値を2つ記載しています。集計団体によれば、来年度からリサイクル率の集計方法が変わるので、カッコ内には来年度から適用される集計方法で数値を入れてみました。
従来の集計方法では46.5%だったものが、新しい集計方法にすると62.4%へリサイクル率が上昇します。集計団体では「リサイクル率の集計のし方は各国で異なっていたが、欧州の多くの国が採用している方法に変更することで、世界各国と比較しやすくなるだろう」と話しています。
最後に、紙製容器包装の2020年度の回収率は25.1%と、他と比べて非常に低い数値です。これでは、目標をクリアできなかったのもさもありなんと思われます。しかし、もともとの目標値も「28%以上」と、他に比べて低いものでした。それでも達成できなかったのです。
わが身を振り返えれば、紙ゴミのほとんどは「燃やせるゴミ」として出していました。本来なら「雑がみ」に分別して、資源化できたものも多くあったはずです。たとえば、箱ティッシュは、中身がなくなると取り出し口のフィルムを剥がして資源ゴミ袋に入れる一方で、本体の箱は燃やせるゴミ袋へ。何気なくしていた行動が悔やまれます。
紙ゴミの分別は面倒
いったんは反省したものの、やはり、紙ゴミの分別は面倒です。
缶やPETボトルなら水ですすぐだけですが、汚れた紙は水で洗えませんし、名前や住所などが記載された封筒や書類などもシュレッダーにかけたり、細かく裂いたりしてしまいます。汚れた紙やシュレッダーにかけた紙は資源化できません。どんな紙なら資源化できるのでしょう?
紙ゴミ分別に簡単な「チェッカー」診断
調べていたら、簡単にチェックできるサイト「古紙分別チェッカー」を見つけました。紙の種類(段ボールや新聞なども含む)と状態(汚れ具合や紙以外の付属物など)を選択すると、図表(4)のようなイラストで診断してくれます。ゲーム感覚で楽しめるので、いろいろ試しているうちに紙の分別のし方を学ぶこともできます。
たとえば、私の場合、カタログなどには、冊子の真ん中をホチキス(ステープラ)で止めてあるものがありますが、わざわざ取り除いていました。紙以外のものがあっては資源化の邪魔になるだろうと思ってのことです。ところが、このチェッカーで診断したところ、する必要のない、ムダな手間をかけていたことが分かりました。
紙の分別のし方を簡単にチェックしてくれるのは、古紙再生促進センターのHP上にある「古紙分別チェッカー」です。診断の結果が、図表(4)の「△マーク」イラストなどになった場合は、住んでいる自治体に問い合わせるか、自治体が独自に設定しているチェッカーで確認してください。
徳島県上勝町の分別の仕方
ゴミの分別や出し方は、最終的には、住んでいる自治体(市区町村)の方式に従うことが求められます。とはいえ、そうそう大きくは違わないだろうと思っていました。ところが、そうでもないのです。
たとえば、コロナ以前に私が住んでいた自治体には、ゴミ袋の指定はありませんでしたが、コロナ禍に移り住んだ先の自治体では、指定のゴミ袋を購入し、袋の色などを手掛かりにゴミを分別します。
以前の自治体のほうが「燃やせるゴミ」の種類も多かったように思います。鞄や靴などの皮製品、CDやDVD、カセットテープなどは「燃やせるゴミ」でした。
ゴミの分別・出し方は住んでいる地域でこ~んなに違う!
一方、以前の自治体では、缶、ビン、発泡スチロール、PETボトル、それ以外のプラスチック容器包装と5つに分けて出していましたが、現在の自治体では、缶とビン、PETボトル、発泡スチロールを含めたプラスチック容器包装と、分別は3つです。これだけでも、「ゴミ出し習慣が変わった」と感じました。
しかし、世の中には、もっと分別のし方を細分化してゴミの減量を図っている自治体もあります。
「ゼロ・ウェイスト」宣言をしている徳島県上勝町。その取り組みは、国内だけでなく世界的にも有名です。上勝町では、最終的に焼却や埋め立てすることなくゴミをゼロにすることを目指していると聞きます。具体的には、どうしているのでしょう?
主なゴミ分別のし方について、私の住む自治体と比べてみたのが、図表(5)です。上勝町の分別のし方が実に細かいことは分かりますが、私が注目したのは図表(5)の赤字の部分です。
まずは、新聞、雑誌、段ボールなどの紙ゴミを束ねる際に「紙ひも」を指定していることです。私も新聞、雑誌、段ボールは分けて出しますが、たいてい梱包用のビニールひもを使っていました。確かに、紙ゴミですから紙ひものほうが理に適っています。
次いで、靴や資源物でないモノを出す際には、再利用できないか「よく考えて」。こう言われると、購入するときから、ゴミを出すときのことまで考えるようになりますよね。
もうひとつが、紙おむつやナプキンも再資源化を図っている点です。そのために「専用容器」を用意しています。環境のために「布おむつ」ではなく、便利で衛生的な「紙おむつ」を使って、その後にリサイクルしたほうが、無理なくサスティナブルに生活できるように思います。
まとめ
ゴミ減量には、自治体のゴミ政策も大きく関わっていることが分かります。個人でできることは限られているのかもしれませんが、分別のし方を少し見直すだけでも、サスティナブルな生活へ一歩前進と言えます。
執筆者のプロフィール
加藤直美(かとう・なおみ)
愛知県生まれ。消費生活コンサルタントとして、小売流通に関する話題を中心に執筆する傍ら、マーケット・リサーチに基づく消費者行動(心理)分析を通じて、商品の開発や販売へのマーケティングサポートを行っている。主な著書に『コンビニ食と脳科学~「おいしい」と感じる秘密』(祥伝社新書2009年刊)、『コンビニと日本人』(祥伝社2012年刊、2019年韓国語版)、『なぜ、それを買ってしまうのか』(祥伝社新書2014年刊)、編集協力に『デジタルマーケティング~成功に導く10の定石』(徳間書店2017年刊)などがある。