ロボット掃除機は、ずいぶん進化してきました。しかし、ケーブルやペットの排泄物に対応するようにできていません。悲しいかな、わからないということはひどいもので、果敢に向かっていってしまいます。部屋の持ち主は大惨事を目にして言葉もでないでしょう。場合によっては、故障、引退を余儀なくされるそうです。
「ロボット掃除機」と「ペットの○○」の戦いに終止符?
これまでと一線を画す「jシリーズ」
落語の枕で江戸名物が語られることがあります。
「武士、鰹(かつお)、大名小路、広小路、茶店(ちゃみせ)、紫、東錦絵(あずまにしきえ)、火事と喧嘩と中ぅ腹、伊勢屋、稻荷に犬の糞」。この中で始末に悪いのが「犬の糞」ですね。人様のシステム外だと、自然がなんとかしくれるのですが、システム内だと、人間の美感、衛生観念に沿って始末しなければなりません。
これが令和になりますと、犬は、部屋中で飼われるのが当たり前。今や、90%以上が室内だそうです。そうすると、家の中は結構大変です。元々犬は、同じところでフンをする習性がありません。柔らかいところであれば、してしまいますね。
変なところにされると、ポイ捨てできる手袋で拾い、これもポイ捨てできる雑巾でゴシゴシ、最後にアルコール除菌。臭いを気にする人は消臭剤も。これは人間がいたらの話。
さて、問題は人がいない時。ロボット掃除機が活動する時です。しかし、ロボット掃除機は、ペットの排泄物に対応するようにできていません。悲しいかな、わからないということはひどいもので、果敢に向かっていきます。まぁ、手痛い目に遭います。場合によっては、故障、引退を余儀なくされることもあるそうです。
これに対し、完全と立ち向かったが、iRobot社。かなりの完成度を誇るルンバですが、まだ人には及ばないと高い理想を掲げ、CEO コリン・アングル自ら挑戦を続けています。そしてできた「j7」それまでの「i」シリーズと一線を画すロボット掃除機なのです。
ルンバ「j7シリーズ」
AIが人に近づくということ
AIが人に近づくというのは、人のように情報を得て、人のように判断し、人のように行動するということです。
まず、人のように判断するということは、人のように視覚情報から必要な情報を得ることを意味します。人の場合、情報の約85%が視覚情報です。これと同じことができるようにならなければなりません。この情報量の多さ、分析は、人間の凄さです。
このため、iRobotは、今回、デジカメで前方全部を見られる位置にセットしました。それまでもデジカメは付けられていたのですが、主には上、天井を見ていました。これは位置特定のためです。天井に近いところにあるモノはなかなか動かしませんからね。船乗りが、星を観て自分の位置を特定するような感じです。
そして前方へは赤外線などで、物体の有無、距離などを測ります。そして、問題ない強さで当てて確認する。そう、目の不自由な人が、杖で探りながら歩を進める感じです。
しかし、うまくいかないものもあります。これにあたるのが、ケーブル、ペットの糞などです。家電のケーブルを巻き込んでガチャン、糞を吸い込んで大慌てというのは、実際にあることです。私は、ケーブルトラブルが多く、スピーカーを1回。コーヒーメーカーを1回。熱いコーヒーがルンバの上にこぼれた時は大慌て。デジカメ上の透明カバーにこぼれで、カバーが熱でやられ、以降、調子が悪くなりました・・・。実害も結構あります。
当モデルは、「何かがある」ではなく、「○○がある、だから触れない」という判断ができるロボット掃除機というわけです。
優秀さはビッグデータで変わる
今回、いろいろなものを判断します。AIのプログラムも重要ですが、ビッグデータもすごく重要になります。ビッグデータにより、あれはケーブル、あれは糞。近づくなと判断するわけです。
健康データーを扱えるスマートウォッチもそうですが、センサーを搭載するなどは比較的簡単に追いつけます。問題はそれから先。健康も視認判断も、一種のアナログデータですからね。経験はすこぶる重要です。人間だって、起き抜けなど、頭が判然としない間は、見間違える時がありますよね。
それを避けるためには、こんな時にはこう見えるということを教えなければなりません。それを受け持つのがビッグデータです。
ここは、一朝一夕でできるものではありません。ずっとトップで、弛まない努力を努力をし続けてきたiRobotが強いところです。今までの販売台数:4000万台を活かす時です。しかし、それでも足りません。よりよくするために、iRobot社はオーナーに、より協力を求めるそうです。
自動回避と報告
そしてロボット掃除機が行うのは、「回避」です。これは被害を出さないようにするためです。そして「報告」。と言っても、ベラベラ喋るわけではないですが、スマホに情報がもらえます。それによりケーブルが多いところは、サルガッソウ海の様に近づかないなど、ユーザーも意識的にエリアセットができます。
より良い清掃が望めます。
ちなみに、OSはVer.3に変更。室内マップを作れるようになった時、Ver.2に変えたわけですから、iRobotも今回の変更は、「劇的」と考えているわけです。
クリーンベースも進化
しかも、今回、クリーンベースも進化しました。横幅を広げ、高さを高くしました。これはちょっと嬉しいです。以前のクリーンベースは高さがあるために、エレクターの後などにセットすると、クリーンベースが棚に引っかかることがありました。要するに隠せないのです。
それに対して今回は、「ここだけ長い」などという部分がありません。要するに、隠しやすくなったわけです。こちらもかなり大きな変更です。
まとめ
今までのルンバも、ポテンシャルは高かったです。しかし、最終目標は、疲れない、ケアレスミスをしない、人と同じ判断できちんと動く掃除機です。本当の未知の領域。開発に時間もかかりますし、オリジナリティが極めて要求されます。
IoT家電は色々出ていますが、人間同様の判断、AIまで視野に入れると、聞いているこちらが恥ずかしくなるモデルがいっぱいあります。それに対して、iRobot社は、着実に、自分達が理想と思う方向へ、高い技術とビッグデーターで進んでいることが分かります。
室内環境にもよりますし、ロボット掃除機に何を求めるのかも違いますが、末長く付き合うのでしたら、iRobot社のルンバ、特にAIを進化させた「j7」「j7+」、いいですね。
◆多賀一晃(生活家電.com主宰)
企画とユーザーをつなぐ商品企画コンサルティング、ポップ-アップ・プランニング・オフィス代表。また米・食味鑑定士の資格を所有。オーディオ・ビデオ関連の開発経験があり、理論的だけでなく、官能評価も得意。趣味は、東京歴史散策とラーメンの食べ歩き。