シェービングには、1.5 から4ニュートン(最大約400g)の圧力でシェービングすることが、深剃りと肌へのやさしさの両方を得ることが可能になるのです。弱すぎてもだめ、強すぎてもだめということで、フィリップスが採用したのが、過圧防止センサー。今後、シェーバーは刃ではなく、センサー数でセレクトする時代が来るのかも知れません。フィリップス S9000シリーズはそれを予感させるモデルです。
フィリップスの電気シェーバー「S9000シリーズ」
「毎分15万カット」って、どんなスペックよ!
ここ数年、超ハイスペックで、トップを取らんとしている家電が、男性用シェーバーです。男性用シェーバーには、商品化された時からある命題があります。「肌に優しい深剃り」です。
この命題に対応するために、今日本市場でしのぎを削っている「パナソニック」「フィリップス」「ブラウン」「マクセルイズミ」は弛まない努力を続けています。
このため、時々目を疑うようなワードが目に飛び込む時があります。今回フィリップスが新発売する「S9000シリーズ」には「毎分15万カット」とうたわれています。フィリップスのシェーバーは72枚の葉で構成されます。割ると2083(余あり)。刃一枚当たりは、毎分2000カット強です。
しかし、それでもすごいなーと思いますね。精密機器であるHDD。これで使われているモーターでも一般に7200rpm(3.5インチSATA型)。ダイソンの掃除機のように11万rpmという信じられないレベルのものも存在します。刃数が多いので、より人目をひく様に工夫したのだと思いますが、それでもすごい。
それらがヒゲを剃るのに当てられるわけですが、ちょっとでも肌に当てられると表面は持っていかれますね。ピリピリ。火照り、痒みも出てきます。フィリップスは、どうやってその課題を解決したのでしょう。
シェーバーと深剃りの関係
シェーバーの剃りのお手本は、床屋のヒゲ剃りです。肌に刃を当てて剃るのですが、間にシャボンがあります。このシャボンに肌の上を滑らせるように剃ります。肌に触れているので、ギリギリまでそれます。剃り上がりは、ツルツル。そこにヒゲがあったことなど感じさせません。
一方、シェーバーは外刃と内刃の間にヒゲを挟み込んでカットします。ハサミと同じです。肌に当たるのは外刃。もうお分かりですね。外刃の厚み分、剃れないのです。このため普通に剃ると、見た目は剃れているのですが、肌触りは「ザラ」っとなります。
これが許せないのですね。このため、ほとんどの人は肌に強くシェーバーを押しつけます。肌は柔らかいですから、外刃の厚み以上に中に入り込みます。このため、肌の表面が見事に剃られてしまいます。
このため、シェーバーが工夫した技があります。シェーバーの強みは、刃の次にまた、次の刃が来ることです。要するに初撃でヒゲを引っ掛けます。引っ掛けるのですから、ヒゲは引っ張られます。根元まで外刃に引き込まれます。そこを内刃でカットするのです。
フィリップスは「リフトカット テクノロジー」と呼ばれている技術です。実はこの技術、実はリスクも高いのです。人は、力が足らないとわかった瞬間、かなり力を込めます。制御された力であるべきなのですが、なかなか制御できません。その理由の一つには、自分の力が適正なのか、分からないということが挙げられます。
世界初の過圧防止センサーを搭載
この微妙なシェービングには、1.5 から4ニュートン(最大約400g)の圧力だそうです。この圧力でシェービングすることが、上記のように深剃りと肌へのやさしさの両方を得ることが可能になるのです。
弱すぎてもだめ、強すぎてもだめということで、フィリップスが採用したのが、過圧防止センサー。毎秒30回肌への圧力を感知し、センサー制御のインテリジェントライトリングが、青(弱すぎ)・緑(最適)・オレンジ(強すぎ)に色を変化させることでユーザーにリアルタイムで知らせます。
使ってみると、なるほど、いい感じで剃れます。
シェービング動作検知センサーも
これ以外にも、この最新のモデルは、センサーを搭載しています。モーションコントロールセンサーです。
このセンサーは、 シェービング動作を追跡して、 最適なストロークで剃れるように、 ガイドします。 「フィリップスメンズグルーミングアプリ」と連動すれば、 シェーバーが効果的な円運動をチェックしてリアルタイムにフィードバックされます。 またシェービングスコアも本体・アプリに表示できます。
人の感覚と単純な刃物で、できる「ヒゲ剃り」を高次元で再現しようすると実に大変です。
ちなみに、現在スマートホンに搭載されているセンサーは平均:4つだそうです。(正確には、4を少し越したレベル) 今後、正確さ、使いやすさを追求すると、センサーは増えていきます。特に、アナログ的な感覚をサポートする場合、センサーがないと始まりません。
剃り心地は?
慣れるまでちょっと乱雑か
肌に触れる家電ですから、剃り心地にも触れておきます。正直言うと、回転式なのでちょっと乱雑です。肌に触れる面積が大きいので、このシェーバーはヘッドを円を描くように使います。このため、細かいところはチョット苦手。円を描くように使うのは、肌の上を滑らせるためですが、それだけに慣れるまで乱雑な感じがします。
よく考えられたクイッククリーンポッド(洗浄機)と充電器
よくあるのが、洗浄機と充電器が一緒になったパターンです。多くの場合、すごく大きくなります。大体、今のシェーバー、30日近く充電なしでも使えるよう考えて設計されています。(このモデルは、センサー付きですので、電気を消費します。このため60分使用できるとなっています。)毎日したい清掃に対し、充電は回数いらないのです。むしろ、十分放電したから充電する方がベターです。
フィリップスは、それに対し、十分考慮しています。まず、この2つ完全に分けました。
クイッククリーンポッドは、単なる洗浄液タンク。ここにシェーバーを差し込み、スタート一分で綺麗になります。その後は、突き刺しぱなしでOK。そんなに大きくもありませんので、とても使いやすいです。
ちなみに、毎日清掃で、1ヶ月で交換です。週に2から3日で、約2ヶ月に1度。週に1回以上間が開くと3ヶ月です。アマゾンでみると、3つで2200円(税込)。毎日使う前提で、24.4円/日です。
充電時間は、1回約60分。5分で1回使えるクィックチャージ機能も付いています。
まとめ
スティーブ・ジョブスが、iPhoneを発想した時、それは手で情報に触れること。アナログ感覚を重視したのです。白物家電でも体に触れる部分が大きいものは、それが言えます。シェーバーは、そんな家電の一つ。いつかスマホを超える数のセンサーを持つモデルが出てくる可能性もあります。
今後、シェーバーは刃ではなく、センサー数でセレクトする時代が来るのかも知れません。
フィリップス S9000シリーズはそれを予感させるモデルです。
◆多賀一晃(生活家電.com主宰)
企画とユーザーをつなぐ商品企画コンサルティング、ポップ-アップ・プランニング・オフィス代表。また米・食味鑑定士の資格を所有。オーディオ・ビデオ関連の開発経験があり、理論的だけでなく、官能評価も得意。趣味は、東京歴史散策とラーメンの食べ歩き。