「食べすぎたらいけない」と罪悪感を感じながらおやつを食べている人もいるかもしれません。食べすぎは体にはよくありませんが、1回の食事の量を十分取れないという人にとっては、おやつは栄養補給として重要なものです。おやつを「補食」、つまり食事では十分でなかった栄養素を補うものと考えれば、心と体がホッとするようなおやつの時間を罪悪感なく楽しめます。調理にも使う身近な食材で簡単に作れる、そんなおやつについて、書籍『春夏秋冬 疲れ取りごはん 心も体も軽くなる「食べ養生」大全』著者の関口絢子さんに解説していただきました。
解説者のプロフィール
関口絢子(せきぐち・あやこ)
料理研究家・管理栄養士。東京都生まれ、川村学園短期大学食物学科卒業。「食とアンチエイジング」の関係が注目されていなかった15年以上前から、インナービューティースペシャリストとして情報を発信し、先頭を走り続ける。テレビや雑誌等のメディアを中心に、健康・美容・ダイエットに関するレシピや栄養情報を提供。2020年に開設したYouTube「関口絢子のウェルネスキッチン」は登録者15万人を超える人気チャンネルとなっている。米国栄養カウンセラー、ヘルスケアプランナー、日本抗加齢医学会認定抗加齢指導士。
本稿は『春夏秋冬 疲れ取りごはん 心も体も軽くなる「食べ養生」大全』(KADOKAWA)の中から一部を編集・再構成して掲載しています。
イラスト/祖父江ヒロコ
補食を取り入れて栄養バランスをアップ
「おやつ」って、ワクワクする響きですよね。自分の好きなものを食事の間にちょっとつまむ。それが日常の小さな楽しみという人は多いかもしれません。
でも、同時に「食べすぎたらいけない」と罪悪感を感じながらおやつを食べている人もいるかもしれません。もちろん食べすぎは体にはよくありませんが、疲れやストレスから1回の食事の量を十分取れないという人にとっては、おやつは栄養補給として重要なものです。
また、食事の量さえ取れていれば大丈夫というわけでもありません。消化吸収が悪く栄養素が十分に取り入れられない、有効成分を体内で効果的に活用できないというケースもあるからです。
1日3食に必要な栄養素を割りふって、あれが足りない、これはどうしようと悩んでいる人もいるかもしれません。そんな方にも「おやつ」はおすすめです。もともと栄養素というのは、1日のなかでそんなに厳密に考える必要はないのですが、不足しがちな栄養素や、体にいいものをおやつで補うことで、健康成分をチョイ足しできるからです。
おやつを「補食」、つまり食事では十分でなかった栄養素を補うものと考えれば「食事をきちんと取っている」「食事では必要なものが不足している」のどちらであっても、心と体がホッとするようなおやつの時間を罪悪感なく楽しめます。
おやつを手作りするというと、ちょっとハードルが高いように感じるでしょうか。食事の支度のついでや、休憩中の息抜きにちょっとの手間で作れる、調理にも使う身近な食材で簡単に作れる、そんなおやつなら心と体の栄養補給にぴったりです。ぜひ毎日の楽しみに取り入れてみてください。
不足しがちな栄養素を補うおやつ
▼ポリフェノールを補う
煮小豆
発酵あんこ
和栗のペースト
▼食物繊維を補う
サツマイモのハニーバター
焼きリンゴケーキ
完熟バナナのふわふわ
パンケーキ
▼タンパク質を補う
練りきな粉
焼きのりチーズ
血糖コントロール効果が長く続く、きな粉を間食に取り入れる
糖化は血糖値の急上昇や、食べもの自体に含まれるAGEs(最終糖化産物)によって引き起こされるということをお伝えしてきました。
食物繊維やオリゴ糖を含むきな粉は、血糖値の上昇を抑える働きが大きな食品。
しかも、セカンドミール効果を持つことがわかっています。セカンドミール効果というのは、食物繊維の多い食品を取ると、次の食事でも糖の吸収抑制や血糖値のコントロールが持続する働きです。
きな粉は、食物繊維が大豆製品のなかで最も多いといわれています。その量は大さじ1杯あたり2.7g。ゆでた大豆で1g、生のおからで1.7g程度なので、きな粉の優秀さがわかりますね。
タンパク質も非常に豊富です。大さじ1杯で5.5g、これはゆで卵1個の6gに匹敵するほどの数値です。1食あたり20gが目指すタンパク質量なので、大さじ2杯のきな粉でその半分がまかなえるということです。
なぜそんなに有効成分が豊富かといえば、栄養たっぷりの大豆を乾燥させ、さらに炒ることで栄養素がもっと凝縮するから。
カルシウムや大豆イソフラボン、血流サラサラと抗酸化のサポートをするサポニンも含まれています。
大豆イソフラボン
大豆の胚軸(芽になる部分)に多く含まれ、女性ホルモンのエストロゲンに似た働きをすることで、更年期障害の症状の緩和や、自律神経の安定、肌の新陳代謝の促進、コラーゲン生成のサポートなど、女性にうれしい働きをしてくれる抗酸化物質です。
サポニン
植物の根、葉、茎などに含まれている苦みのある成分。
特にマメ科の植物に多く含まれます。大豆由来のものは大豆サポニンと呼ばれ、コレステロールの除去や、血栓のもととなる過酸化脂質の生成を抑制する作用があります。
きな粉から手作りすれば感動ものの味と香りに
練りきな粉
▼腸活
▼免疫力アップ
きな粉から手作りすると、豆のおいしさ、甘み、旨みに驚くお菓子になりますよ。
きな粉はたくさん作って料理に使ったり、ドリンクに入れても。
炒り大豆を粉状にしてからふるって細かいきな粉にする際に、ふるいに残った粗めの粉はすりゴマのようにも使えます。和えものやドレッシングに混ぜると香ばしい風味が楽しめます。
すぐに食べない分は保存袋に入れて冷凍庫に入れると味が落ちません。
▼冷蔵保存 2週間
▼材料(10本分)
きな粉…60g
はちみつ…50g
トッピング用
きな粉…適宜
▼作り方
(1)ボウルにはちみつを入れ、電子レンジで軽くあたためてやわらかくする。
(2)(1)にきな粉を入れ、ひとまとまりになるまで練る。
(3)ラップに包み板状に形を整えたら、棒状に10等分する。ラップを外し、軽くひねってトッピング用きな粉をまぶす。
節分で余った福豆を使っても
手作りきな粉
▼腸活
▼免疫力アップ
▼材料(作りやすい分量)
乾燥大豆250g
▼作り方
フライパンをゆすりながら、中火で30分ほど大豆を炒る。大豆に色が付き、表面の皮が破けてきたら、火を止める。ミキサーやミルで粉状にして、ふるいにかける。残った粗い粉はさらにミキサーにかけ、ふるいに粒が残らなくなるまで繰り返す。冷蔵庫で1か月保存可能。※大豆の量は、フライパンの底に平らに広げられる量に。
本稿は『春夏秋冬 疲れ取りごはん 心も体も軽くなる「食べ養生」大全』(KADOKAWA)の中から一部を編集・再構成して掲載しています。
発酵させて、あんこに善玉菌とビタミンをプラス
小豆を発酵させると、栄養価がさらに高まります。
発酵あんこは、小豆麹ともいわれ、砂糖をまったく入れなくてもやさしい甘みが楽しめます。
それは小豆のでんぷんが麹菌の発酵によりブドウ糖に分解されて甘くなるから。
砂糖入りのあんこに比べてカロリーを30%ほど減らすことができます。
ゴボウの3倍ともいわれる食物繊維、高い抗酸化物質でアンチエイジングや美肌に役立つ小豆の色素アントシアニン、利尿効果や血流改善に役立つサポニンが含まれている小豆。
そこに腸内細菌の善玉菌を増やす米麹を加えると、発酵によって作られるビタミンB群がプラスされ、栄養成分がどんどん増えていきます。
しかも小豆の食物繊維と麹菌をいっしょに取ることで、腸内環境を改善する効果も高まります。
発酵によって作られるオリゴ糖も腸内細菌のエサになり、発酵によって作られた栄養素の消化吸収はとてもスムーズ。相乗効果のスパイラルを生み出します。
麹
身近な麹食品は甘酒。お米に麹を入れて甘くしたものです。
甘酒も発酵あんこも、糖質を発酵させることで、砂糖を入れなくても甘くなります。
発酵
発酵食品が体にいいといわれる理由は、素材の持つ栄養素がアップしていることに加え、微生物の働きで栄養素が分解され、消化・吸収しやすくなっているからです。
また、腸にダイレクトに働く菌、腸内細菌のエサになる菌も含むので、腸内環境を整えます。
発酵することで生まれる希少な成分とともに、腸の元気をサポートし、免疫機能も活性化させます。
麹の力で砂糖不要。まとめて作って冷凍保存を
発酵あんこ
▼疲労回復
▼腸活
小豆をやわらかくしっかり煮ることが、発酵をスムーズに進めるためのポイントです。小豆のゆで汁は、お米を炊くのに使ったり、そのまま小豆茶として飲んだりして、栄養を丸ごといただきましょう。
ゆでた小豆に麹菌を加えるのは、必ず麹菌の活動の適正温度である60℃程度に冷ましてから。熱すぎても冷めすぎても麹菌がうまく働きません。
放置とはいえ時間がかかるので、たくさん作って冷凍保存すると便利です。
▼冷蔵保存 7日
▼冷凍保存 1か月
▼材料(作りやすい分量)
小豆…300g
米麹…300g
▼作り方
(1)鍋に小豆とかぶる程度の水(分量外)を入れ、弱火で1時間煮る。
(2)ゆで汁と小豆を分け、小豆を炊飯器の内釜に入れる。小豆の温度が60℃程度に下がったら米麹を加えてよく混ぜる。
(3)60℃のゆで汁を加えながらよく混ぜ、なじんだらひたひたになるまでゆで汁を加える。
(4)炊飯器に濡れ布巾をかけ、ふたをせずに保温ボタンを押す。2時間ごとにかき混ぜながら8時間くらい保温して、最後に塩をひとつまみ入れる。※混ぜるときに固すぎると感じたらゆで汁を足す。
砂糖ゼロで罪悪感なし
発酵いもあん
▼疲労回復
▼腸活
▼材料 (作りやすい分量)
サツマイモ(ひと口大)500g、米麹200g、クチナシの実1個(なくても可)
▼作り方
鍋でサツマイモとクチナシの実をゆでる。サツマイモを炊飯器の内釜に入れてつぶし、ゆで汁を戻す。60℃まで冷ましたら米麹を入れ、発酵あんこのレシピ(4)と同様に作る。冷蔵庫で7日間保存可能。※クチナシの実はお茶パックに入れ、綿棒で叩いてから鍋に入れる。
サツマイモで冷え防止&体スッキリ
サツマイモには、女性にうれしい働きをする栄養成分がいっぱい。
皮や切ったときの断面に白く浮き出てくる液体はヤラピンという成分。腸のぜん動運動を活発にして、便秘改善やお腹の調子を整えます。
さらに、食べる前に冷やすと難消化性のでんぷん(レジスタントスターチ)が作られて善玉菌のエサになります。
食物繊維は皮の部分に特に豊富なので、なるべく捨てずにいただきましょう。
また、サツマイモには抗酸化物質もたっぷり含まれているので、疲れ取りおやつにぴったり。エネルギー源となる糖質と、それを燃やすビタミンB1が含まれるので、体内でエネルギーが作られやすくなります。
そこに、活性酸素の除去をサポートするビタミンCやビタミンE、血流を改善するアントシアニンとクロロゲン酸の2つのポリフェノール類の作用がプラスされ、冷えも予防します。
そんなサツマイモの力は、低温でじっくり加熱することで発揮されます。βアミラーゼがデンプンを分解して麦芽糖になるからです。
高いワット数の電子レンジで短時間加熱したサツマイモよりも石焼いものほうが甘いのも、この理由です。
ヤラピン
サツマイモにしか含まれない、糖脂質の一種。胃の粘膜を保護したり、腸のぜん動運動を促します。
レジスタントスターチ
穀類やいも類、豆類などに含まれる難消化性でんぷん。血糖値の上昇を緩やかにする、血中コレステロール値を下げるなどの健康作用があります。
βアミラーゼ
消化酵素。熱が加わり糊化したでんぷんから麦芽糖を生成します。麦芽糖は消化・吸収に時間がかかるので、食後血糖値の急上昇を抑えます。
レンチンでラクラク。栄養補給にぴったり
サツマイモのハニーバター
▼ダイエット
▼腸活
βアミラーゼが活性化する70℃で長時間加熱するために、ここでは200Wの電子レンジを使用します。高温しかない場合は、加熱時間を短くしてください。
βアミラーゼが理想の状態でなくても、サツマイモの甘みは味わえますし、皮ごと食べることでサツマイモの健康成分はしっかりいただけます。
また、食べる前に一度冷やすと、レジスタントスターチが増えるので、お好みで冷たくして食べてもいいでしょう。
▼材料(2人分)
サツマイモ…1本
はちみつ…適量
バター…適量
▼作り方
(1)サツマイモはよく洗い、濡らしたキッチンペーパーでしっかり包む。
(2)ラップでふんわり包み、200Wの電子レンジで10~15分くらい加熱する。竹串を刺してすっとなかまで通ればOK。
(3)半分の長さに切り、縦に切り込みを入れてはちみつとバターを挟む。※おやつの適量は、1回にサツマイモ半分ほど。
さっと作れる簡単おせち
栗きんとん
▼腸活
▼材料 (作りやすい分量)
サツマイモ(2cm厚さの輪切り)2本分、栗の甘露煮1瓶、テンサイ糖(または砂糖)40g
▼作り方
サツマイモを耐熱容器に入れ、ラップをふんわりかけて電子レンジで10分加熱する。やわらかくなったらテンサイ糖と栗の甘露煮を加え、甘露煮のシロップでお好みの固さまでのばす。冷蔵庫で7日間保存可能。※電子レンジは200Wだと30分加熱するので、ここでは600Wで加熱。
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なお、本稿は書籍『春夏秋冬 疲れ取りごはん 心も体も軽くなる「食べ養生」大全』(KADOKAWA)の中から一部を編集・再構成して掲載しています。やる気が出ない、重だるいなどの疲れに悩んでいませんか? 特に、季節の変わり目は、心や体に不調が起こりやすい時期です。「疲れ」や「なんとなく不調」を解決するのが、季節の食材や料理です。本書は、登録者数15万人を超える、著者のYouTubeチャンネル「ウェルネスキッチン」で人気があったレシピを選りすぐり、110品掲載しています。疲れの改善に特に大切な抗酸化・抗糖化を中心に、アンチエイジング、免疫力アップ、デトックスなど気になる情報を1冊に凝縮した集大成となっています。