20年前、環境対応はお金になりませんでした。今や状況は、かなり変わってきています。それは、国際的にSDGsが決められたこと、そして、教育の場でそれらが教えられるからです。今回は色々なメーカーのSDGsをまとめてレポートします。
SDGsに取り組む会社が増えたわけ
20年前、環境対応はお金になりませんでした。思いは世のため人のためとはいえ、そんなもの無視の会社とは戦えなかったのです。それはそうです。作りっぱなして終わりのメーカーと、最後まであと始末するメーカーでは経費が全く違ってきます。
今や状況は、かなり変わってきています。それは、国際的にSDGsが決められたこと、そして、教育の場でそれらが教えられるからです。後始末をしなければならないという教えは認識を変える上で重要なポイントになりました。メーカーとしては、受け入れられるところから対応している感じです。ここ数ヶ月でも、身の回りで変わったものがいくつかあります。今回は色々なメーカーのSDG’sをまとめてレポートします。
スカイラークグループ「ジョナサン」
宅配用スプーンとナイフ
単純に言うと、脱プラスチック。人間も含めて、多くものものが高分子からできています。中でもすごいのは、石油から作られた高分子樹脂、プラスチックです。軽くて丈夫、数世紀に渡り形を変えずに存在するすごい物質であり、大量生産すると安く作れますので、全世界で使われています。
ペットボトルなどは顕著な例で、人がいるところペットボトルあり。しかも使ったあとは、場所ばっかり取ると言うことで、色々なところへポイ。これが波などの影響で細かくされていくのですが、なくなることはありません。高分子は実にタフな物質なのです。このため、小さくなっても、その性質を持ちます。マイクロプラスチック(径5mm以下のプラスチックの総称)です。
海の生態系を壊すとし、今、各界から絶賛忌み嫌われております。
弁当用器などもかなり捨てられますね。ペットボトルより再利用できないので、破棄するしかないですからね。都会では、タピオカの容器が問題でしたね。ちなみに、私は5月連休、吉野山の桜がよく見える崖の下に大量の弁当箱が捨てられているのを見たことがあります。ハエがブンブン飛び回り、悪臭が酷い。一人一人は「ちょっと」という気持ちなのでしょうが、まさに暴力でした。
そんなこんなで、廃棄するものは樹脂から自然素材へ、変わろうとしています。
iRobot
「ルンバ」のパッケージ
包装と言う技術があります。この技術は、なければならない技術なのですが、最終的に使用するのは中の包んだものですから、処分されます。このため、適正包装は何かと言うことで、SDG’sだけでなく、コストダウンのたびに見直されます。
ルンバのパッケージは、Box in Boxと呼ばれるもので、輸送箱の中に数個の内箱が入っており、それぞれに「本体」「替えパーツ」などが入っており、一度使い始めた後は、「替えパーツ」の箱だけ残しておけば良いというものでした。しかし、その分、パッケージに使われる材料も多く、豪華とも言えるものでした。
ところが今回、j7+を借りたのですが、今までとは違いました。まず、外箱が薄い。中の重量を考えるとギリギリの薄さではないでしょうか? ちなみに輸送箱(外箱)の考え方は、輸送箱は壊れても、中を守ることです。日本は流通での扱いが丁寧ですから、輸送箱が傷ついていると文句をいう人がいるようですが、これは考え違いです。
そして、手かけに手をかけた瞬間、手が切れるかと思われるほどの痛みが走りました。カッティングに工夫がないので、薄いと手に食い込むのです。
中には、いつもの内箱がなく、出すときは、ルンバを斜めにする必要があり、出しにくかったです。10万円以上するモデルですから、再度仕様を見直してほしいものです。方向性は間違って言いませんが、ユーザーのことを考えると不十分です。
シロカ
イラスト付きパッケージ
輸送箱ネタをもう一つ。シロカが中の商品をイラスト付きで表示するようになりました。輸送箱の表記で一番重要なのは、倉庫の中で見誤らないことです。このため、ゴシックのガッチリしたフォントで読み誤りなどないように対応します。字より優れているのが、画ですから、一義的には倉庫ミスを防ぐためです。
しかし、最近は、コストコ系の倉庫を使った展示も増えています。一つだけ製品を前に置き、棚には輸送箱状態でぎっしりです。ポップなんて貼りませんので、輸送箱でも目立ちたいのです。このイラスト追加は、墨(すみ)一色ですので、ほとんどコストもかかっていません。これはいいアイディアだと思います。
この傾向はシロカだけでなく、アイリスオーヤマ、日立、など色々なメーカーがこの仕様を採用しています。イラストではなく、写真を使う場合もあります。写真の方が、店頭映えします。
ネスレ
“紙“の詰め替え容器から自社カフェ用Tシャツ、エプロンを作成
コーヒー粉が湿気を嫌うことは皆さんもご存知だと思います。ネスカフェには、紙容器を使ったネスカフェ エコ &システムパックがありますが、この紙が実に高密度の繊維で捨てるに惜しいレベルです。と言うことで、それらを集めて、リサイクル、服にしてしまいました。
ネスレ日本直営カフェ「ROASTELIER by NESCAFÉ (ローステリア バイ ネスカフェ)三宮」 でコーヒーを抽出した後に発生する残渣等を染料として使う、いわゆるコーヒー染めが施されています。
コーヒー染めのTシャツとしては、ハワイのクレイジーシャツのコナコーヒーバージョンを持っていました。ややぼってりとした着心地で、コーヒーの香りがずんとくるものでした。
それとは違い、やや薄手、色も薄めで、品の良さが感じられます。
廃棄物リサイクルというのは、色々と可能性は指摘されますが、どうしても原料集めが問題になります。ネスカフェ エコ &システムパックは、私も月一位で捨てています。しかし、それを回収するとなるとどうでしょうか? まず数量が集まりません。このため、現在は、ネスカフェカフェの従業員のユニフォームとして使われています。
最後に
SDGsを進めるということには色々な難問があります。今回、ご紹介した例も、やっていますという事例であり、上手くいっていうということではありません。また、同様なことをしているのも、今回あげたメーカーだけではありません。
私がこれをレポートするのは、ここ100年で無惨にもほぼ自力回復ができなくなった地球に向け、人は何をしているのかを知ってほしいからです。今後とも、見守っていきたいと思います。
◆多賀一晃(生活家電.com主宰)
企画とユーザーをつなぐ商品企画コンサルティング ポップ-アップ・プランニング・オフィス代表。また米・食味鑑定士の資格を所有。オーディオ・ビデオ関連の開発経験があり、理論的だけでなく、官能評価も得意。趣味は、東京歴史散歩とラーメンの食べ歩き。