最近、私の地元の百貨店やスーパーのチーズ売り場が充実。驚くほど多彩なチーズが手に入るようになりました。でも、種類が豊富すぎて、どのチーズを買えばいいのか戸惑うことも。今回は、チーズの種類と特徴、栄養などについて、私が栄養士養成校で学んだ内容をベースにご紹介したいと思います。世界中に1000種類以上あるともいわれるチーズの奥深い世界を、ちょっと覗き見してみましょう。

チーズの歴史

みなさんもご存知のように、チーズは牛や山羊のミルクからできています。チーズは人類が作った最も古い加工食品の一つとされていますが、正確な起源は分かっていません。紀元前4000年頃の古代エジプトの壁画にチーズの製造法が描かれていることから、チーズ作りは、はるか数千年以上も昔から始まっていたことが想像されます。おそらく、人が山羊や牛を飼い、その乳をしぼり、たまたま土器などに残った乳が天然の乳酸菌や微生物の働きによって発酵し、偶然の産物としてチーズが誕生。これを発見した古代の人が、貴重なミルクをチーズにして保存できることに気づき、チーズ作りの知恵が生まれたのでしょう。

画像: ミルクからチーズが作れることを発見した人類は凄い!(写真:AC)

ミルクからチーズが作れることを発見した人類は凄い!(写真:AC)

チーズの発祥地についても諸説ありますが、西アジアのメソポタミアから始まり、トルコからギリシャ、ローマを経て、ヨーロッパ各地、中央アジア、アフリカへ伝播したと考えられています。チーズはヨーロッパの食べ物というイメージが強いですが、中東やアジアでも古くから食べられてきました。日本にも7世紀頃にシルクロードを通って中国から伝わり、牛の乳から「酥・蘇(そ)」「醍醐(だいご)」という乳製品を作った記述が文献に残っています。でも、残念なことにチーズ文化が定着することはなく、日本で本格的なチーズ作りが根付いたのは明治の文明開花以降です。

チーズの個性はミルク×風土の掛け算で生まれる

チーズ誕生から数千年後の現在、多彩な乳種のチーズが世界各地で作られています。チーズの不思議なところは、原料であるミルクの味と成分に大きな違いはないはずなのに、出来あがるチーズの形や質感、味、香りが生産地によって大きく異なる点です。動物の種類(牛、水牛、山羊、羊など)、気候、土壌や放牧環境、牧草などの飼料、作り手の技術と創意工夫などがチーズの味わいに影響を及ぼしています。チーズは大自然と動物と人間が織りなす、壮大な食の総合芸術といえそうです。   

画像: その土地の風土や自然がチーズの風味にも影響しています。(写真:AC)

その土地の風土や自然がチーズの風味にも影響しています。(写真:AC)

ナチュラルチーズとプロセスチーズの違い

さて、ここから本題です。世界に1000種類以上あるとされるチーズは作り方の違いで「ナチュラルチーズ」「プロセスチーズ」の2タイプに大別されています。それぞれの特徴は次の通りです。

◆ナチュラルチーズ

牛や山羊などの乳を乳酸菌やレンネット(凝乳酵素)の働きで分離させ、乳の中のたんぱく質やカルシウムなどを豆腐状に固め、水分(乳清=ホエー)を除き、成型したもの。元々は味のないタンパク質が酵素によって分解され、アミノ酸へと変わるため、おいしくなる。原料乳の種類、製造方法、熟成やカビ付けの有無、かたさの程度などで多くの種類に分類され、風味が異なる(後ほど詳しく紹介)。

画像: 世界中でさまざまなナチュラルチーズが作られています。(写真:AC)

世界中でさまざまなナチュラルチーズが作られています。(写真:AC)

◆プロセスチーズ

熟成度の異なる1種類以上のナチュラルチーズを加熱して溶かし、結着材(ポリリン酸など)を加え、乳化させて成型したもの。加熱によって発酵が止まるため保存性が高くなり、刺激性成分が蒸発するのでマイルドな風味で食べやすくなる。自由な成型が可能で、スティック、スライス、6ピースなど、多彩な形状が市場に出回っている。

画像: 保存性が高いプロセスチーズは冷蔵庫に常備しやすい点もメリット!

保存性が高いプロセスチーズは冷蔵庫に常備しやすい点もメリット!

ナチュラルチーズを知ればチーズが身近に

「ナチュラルチーズ」は多様性に富んでいて、かたさ、熟成方法、風味などによって細かく分類されています。比較的わかりやすい、かたさの違いを基軸にした一覧表を作ったのでご参考に。

一覧表の参考文献:谷口亜樹子編著『食品加工学と実習・実験』光生館,2020年、(交社)フードスペシャリスト協会編『三訂 食品の官能評価・鑑別演習』&『調理学 第2版』建帛社,2020、チーズ公正取引協議会リーフレット『チーズのおはなし』、ジュリエット・ハーバット監修『世界チーズ大図鑑』柴田書店,2011、チーズ&ワインアカデミー東京『チーズ』西東社,1999、旭屋出版書籍編集部 編集制作『おいしいチーズの本』旭屋出版,1998を参照にして筆者が作成

◆軟質(ソフト)チーズ

水分を多く含み、しっとり、やわらかい口あたりが特徴。熟成させないプレッシュタイプ、熟成させる白カビタイプ、山羊の乳を原料にしたシェーヴルタイプ、熟成途中で外皮を塩水や地酒で洗うウォッシュタイプなどがある。

画像: ◆軟質(ソフト)チーズ
画像: もちもちした弾力がたまらない、モッツァレラチーズ。(写真:AC)

もちもちした弾力がたまらない、モッツァレラチーズ。(写真:AC)

◆半硬質(セミハード)チーズ

表皮はややかために見えるものでも、中身はしっとり、やわらかめ。青カビによって熟成させる青カビタイプ、細菌によって熟成させるセミハードタイプがある。

画像: ◆半硬質(セミハード)チーズ
画像: 好みが分かれるゴルゴンゾーラ。食べ慣れてくるとハマります!(写真:AC)

好みが分かれるゴルゴンゾーラ。食べ慣れてくるとハマります!(写真:AC)

◆硬質(ハード)チーズ・超硬質(エキストラハード)チーズ

半硬質チーズより水分を少なくした、重量感のある大きいチーズが多い。外皮はざらついていたり、光沢があったり、さまざま。もろく砕けやすいテクスチャーで、長く熟成させたものほど、複雑で豊かな風味になる。

画像: ◆硬質(ハード)チーズ・超硬質(エキストラハード)チーズ
画像: アニメに出てきそうな“穴あき”がメンタールチーズの特徴。(写真:AC)

アニメに出てきそうな“穴あき”がメンタールチーズの特徴。(写真:AC)

画像: イタリア生まれのパルミジャーノ・レッジャーノ。市販の粉チーズ(パルメザン)はパルミジャーノ風に作られたもの。(写真:AC)

イタリア生まれのパルミジャーノ・レッジャーノ。市販の粉チーズ(パルメザン)はパルミジャーノ風に作られたもの。(写真:AC)

チーズの栄養成分を比べてみた

原料は同じミルクですが、作り方の違いによって、出来あがったチーズに含まれる栄養成分は若干異なります。主なナチュラルチーズとプロセスチーズを同じ量食べた場合の栄養成分の違いを比べてみましょう。スライスチーズ1枚分(約20g)の重さを基準に計算してみました。

◆チーズの種類と栄養成分の比較(20gあたり)

画像: ※『日本食品標準成分表2020年版(八訂)』(文部科学省)記載データより筆者が栄養価を計算、エネルギー,カルシウム,ビタミンAは小数点以下四捨五入、脂質,たんぱく質,食塩相当量は小数点一位以下四捨五入。 ※1)ビタミンAはレチノール活性当量(動物性食品に含まれているレチノール、植物性食品のαカロテン、βカロテン、βクリプトキサンチンなどのレチノール効力を合算した数値)として示されています。

※『日本食品標準成分表2020年版(八訂)』(文部科学省)記載データより筆者が栄養価を計算、エネルギー,カルシウム,ビタミンAは小数点以下四捨五入、脂質,たんぱく質,食塩相当量は小数点一位以下四捨五入。
※1)ビタミンAはレチノール活性当量(動物性食品に含まれているレチノール、植物性食品のαカロテン、βカロテン、βクリプトキサンチンなどのレチノール効力を合算した数値)として示されています。

栄養価計算をしてみて、想像以上に違いがあることに私自身も驚きました。手軽にカルシウム補給したいときはエメンタールたんぱく質も摂りたいときはエダムオリーブ油を使った料理と合わせるなら脂溶性のビタミンAが多めのチェダーカロリー(エネルギー)や脂質が気になる場合はカッテージやリコッタ塩分を控えたいならモッツアレラといった具体に栄養面からチーズ選びをしてみるのもあり!ではないでしょうか。

まとめ

近年、日本でもこだわりや個性の詰まった質の高いチーズが多く作られるようになりました。チーズほど種類があり、世界中で愛されている加工食品は他にはないかもしれません。コロナ禍が明け、再び海外や国内旅行が楽しめるようになったら、旅先でその土地特有のチーズを探して味わってみるのも楽しいでしょう。幸い今は家に居ながらでも、世界中のチーズを楽しむことができます。さまざまな種類を食べ比べして、自分好みのお気に入りチーズと出会ってください。

画像: まとめ

▼自家製カッテージチーズの作り方

文◆ 野村ゆき(栄養士・編集ライター)
編集ライター歴25年以上。食と栄養への興味が高じて、栄養士免許と専門フードスペシャリスト(食品流通・サービス)資格を取得。食品・栄養・食文化・食問題にかんする情報を中心に分かりやすい記事をお届けします。今回の記事がきっかけでチーズとワインのペアリングにどハマり中! 



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